VINのらんどくダイアリー

ご訪問ありがとうございます。 「一日一生」を銘にさまざまな人生を読書というツールを通して味わっていきたいと思っています。 響きこし言葉に貼れるさみどりの付箋そよぎて林となりぬ

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草花草
現在の住まいを決めるとき徒歩圏内にスーパーやコンビニがあることが条件のひとつでした。

 

当時徒歩2~5分のところに某デパート系列のスーパー1軒とローソンが2軒。

 

ところが・・・

 

2~3年たつとスーパー、そして近くのローソン2軒も次々撤退。

 

少し足を伸ばせばコンビニは3軒あるけど、スーパーはそれっきり、
跡地には郊外型結婚式場やコインランドリー、美容院に。

 

あ~、もっと役に立つ店に移転してほしかったな~。

 

以前はコンビニはあまり利用しなかったけど、最近は支払決済やチケット購入、
重い牛乳を買うなどちょこちょこ利用しています。

 

ローソンやセブンイレブンなどが生活に密着してどれくらいになるでしょう。


もう暮らしにはなくてはならないものとなって久しい。

 

隆盛期のダイエーが作ったローソン。

 

名前はそのままだけど、今では三菱商事の子会社とか。

 

わたしが結婚したころ飛ぶ鳥を落とす勢いだったダイエー。

 

母の時代はたしか「主婦の店」といっていたような・・・。

 

長く住んでいた神戸でもすぐ近所にダイエーがありました。

阪神大震災の時、そのダイエーの製品がすべてなくなるまで売り尽くしていたのを思い出します。

近くの小学校の校庭で野宿した翌日、被災者として並んで食パンを買ったのでした。

 

中内功さんが神戸市長田区に家業を引き継いで小さな薬品店として設立したのが1957年。

その後、欧米型のスーパーマーケットを中心とする大型商業施設を戦後日本で普及させ、
近年の消費者主体型の流通システムの構築を確立させ、
日本の流通革命の旗手として大きく貢献した
ことは広く知られています。


流通科学大学を開校したり、新神戸オリエンタルシティを開いたり、
「南海ホークス」から経営権を買い取って「福岡ダイエーホークス」を発足したり・・・

企業テーマFor the Customers よい品をどんどん安く消費者に提供する」

 

わたしたち消費者にとっては願ったりかなったりの理念でしたが、
さまざまなところで反発を招いたことでも有名。

 

松下電機産業との対立・・・ダイエーが松下電器の製品を希望小売価格からの
値下げ許容範囲だった
15%を上回る20%の値引きで販売を行ったことがきっかけとなり、
松下電器側は仕入れ先の締め付けを行い、ダイエーへの商品供給ルートの停止で対抗。

その
出来事はその後長く続き「30年戦争」と呼ばれて
今でも語り草(社員であった夫らの間だけのことかもしれませんけど)。

 

松下幸之助氏が中内を京都の真々庵に招いて、
「もう覇道はやめて、王道を歩むことを考えたらどうか」と諭した
にも関わらず、
中内は応じなかったそうです。

一時は連結売上高3兆円超、関連企業を含んで6万人以上の従業員を抱えた
売り上げ日本一の商業集団に育て上げた中内氏。

 

その王国がバブル崩壊によってあれよという間に衰退の一途を辿って消えていく様
はまるで夢をみているようでした。

 

現在は関連企業はそれぞれソフトバンクやドン・キホーテ、本体はイオンに吸収されて、
「ダイエー」という名で継続している店はこの中国地方ではないのではないかと思う。

 

よい品を どんどん 安く より豊かな 社會を 一九八八年 中内功

 

新神戸オリエンタルシティの建物の一角 ― 1階の新神戸ロープウェイ乗り場
への通路入口脇の外壁 ―
にこの直筆の石板があります。

さて今回はその中内氏をモチーフに描いた楡周平氏の作品のご紹介です。

 

砂の王宮

楡周平氏著『砂の王宮』
 

 

戦後、復興へ向け活気に溢れる神戸の闇市で薬屋を営んでいた塙太吉。
推駐軍の御用聞きをしている深町の戦略的な提案に乗り、莫大な儲けを手にする。
その勢いで、スーパーマーケットを開業し、格安牛肉を武器に業績を飛躍的に向上させた。
全国展開への道を順調に進むが、ある事件をきっかけに、絶体絶命の局面に…。日本が世界経済の中心に躍り出た激動の時代を支えた男を描く圧巻の経済小説(「BOOK」データベースより)

本書は戦後の混乱期に自分の才覚を頼りに一代で流通王となった男の
成功と衰退の物語。

家業の小さな薬屋を基盤に戦後の闇の流通を利用して
ペニシリンなどを安く仕入れ闇で流し儲けた資金で
日本初のスーパーマーケットというものに目をつけ、
大阪から東京に進出するも、その間いくつかの落とし穴に嵌り込んだりしながら
持ち前のエネルギーを武器にのし上がっていく様子が
日本の黎明期の猥雑とした活気とともに描かれています。

しかし、腹心の部下の変死や不倫騒動などを絡めたあたり、
企業小説からかなり横道に逸れた感じが否めず・・・。

これらの道草を排除し正々堂々とした企業小説オンリーにした方が
よかったのではないか、という読後感を持ちました。

さまざまな流通業界に見られる大型店の出現によって被った小売業や日本独特の問屋制度の衰退など、塙太吉の成功に反比例して崩壊していったものらの変遷だけでもかなり読ませる内容だったはず。

 

タイトルの「砂の王宮」は塙太吉が一代で築いた「誠実屋」の来たる将来を暗示させるもの。

 

終盤に描かれた跡継ぎ問題も愛人の子・瀬島の登場によってより複雑感を宿して閉じるところ、
ちょっとモヤモヤが残る作品でしたが、企業小説の好きな方には魅力的な物語。

手に取ってみてください。

十六夜

今日は町の本屋の話を少し。


 20年ほど前までは地方都市にもいくつもの本屋がありました。

 

本が好きだった亡母にはお気に入りの本屋があって、女店主の方と親しくなってレジの奥の丸椅子に座ってお茶を飲みながら世間話をしていた光景が今でも鮮明に目に浮かびます。

 

わたしが大学生のとき、毎月一冊その本屋から買ってくれた漱石全集12巻は
今も唯一の本の宝として本棚に並んでいます。

 

花布(はなぎれ)ヒユウガミズキの淡き色 漱石全集書架にまどろむ

 

自分のアルバイトのお金で買った世界文學全集とか日本文学全集はとっくに処分してしまいましたが。

 

そのお馴染みだった故郷の本屋も今は消えてしまった・・・。

 

大型書店の進出に巻き込まれず生き残っている本屋はどれくらいあるのでしょうか。

 

そして時は流れて・・・今ではamazonを代表する巨大なネット書店がそれに代ろうとしています。

 

そんな中、大阪の売り場13坪の小さな本屋「隆祥館書店」が話題になっています。

 

店主は二村知子さん。

 

メディアで取り上げられたのでご存じの方も多いと思います。

 

amazonや巨大な大型書店の向こうを張って、日本でトップクラスの販売数を記録する本が
何冊もあるという。

 

惚れ込んだ作家さんに熱意を伝えるとそれに応えて多くの作家さんが来店して
読者との縁を結んでくれるという。

 

その二村さんが始めたという「1万円選書」。

 

20の質問をして一人ひとりに合った本を選んで送るという試み。 

 

娘がわたしへのプレゼントにネットで詳しく質問に答え、申し込みをしてくれたそうです。

 

半年以上前のことだそう。

 

以後待てど返信が来ない・・・きっと超多忙に紛れて忘れてしまったんだろうな・・・と娘。

 

もし多すぎて埋もれていた申し込みを見つけてくれたら嬉しいな。

 

どんな本を選んでくれるのか興味津々です。

 

アルルカン

池井戸潤氏著『アルルカンと道化師』
 

東京中央銀行大阪西支店の融資課長・半沢直樹のもとに、とある案件が持ち込まれる。
大手IT企業ジャッカルが、業績低迷中の美術系出版舎・仙波工藝社を買収したいというのだ。
大阪営業本部による強引な買収工作に抵抗する半沢だったが、やがて背後にひそむ秘密の存在に気づく。
有名な絵に隠された「謎」を解いたとき、半沢がたどりついた驚愕の真実とは(「BOOK」データベースより)




「半沢直樹」シリーズ
6年ぶりの待望の最新作。

 

2004年『オレたちバブル入行組

2008年『オレたち花のバブル組』

2012年『ロスジェネの逆襲』

2014年『銀翼のイカロス』

2020年『アルルカンと道化師』


著者の作品はすべて網羅していますが、やはりいちばん血沸き肉躍るのが「半沢直樹」シリーズ!

 

わたしは観ていませんがTVドラマでも大人気を博していたようですね。

 

「基本は性善説。だがやられたら倍返しだ」

 

わたしたちも含め拍手喝采する多くの人々は、社会の一員として組織に関わっている以上
半沢直樹になりたいけれど後先を考えると勇気が出ない・・・
そんなジレンマから応援という形になっているのではないでしょうか。

 

同じ勧善懲悪でも「水戸黄門」と違うところは「半沢直樹」が上級国民ではなく
一介のサラリーマンであるということ。

 

さて本書、時系列でいうとシリーズ第1作『オレたちバブル入行組』の前日譚に当たる作品
「半沢直樹」シリーズファンならお馴染みの
浅野支店長や小木曽、
そしてまだ頭取になる前の中野渡の名前もちらと出てきてファンサービスも満点

 

半沢直樹が東京中央銀行の大阪西支店の融資課長として赴任して日が浅い頃に起こった
美術出版社の買収案件に端を発する物語

 

TVでもおなじみの大和田に相当する悪代官役は業務総括部長の宝田。

今回は宝田が銀行内部に強引な根回しをして進めようとしている
M&A(企業売買)計画が軸になって物語が動いていきます。

 

その買収計画に絡んで登場するのが元ZOZOの社長・前澤友作氏を彷彿とさせる
新進
IT企業ジャッカル
の創業者・田沼時矢。

アートコレクターとしても有名な前澤氏がzozo社長時代にバスキアの絵を
123億円で落札したことは一時話題になりましたが、本書に登場する田沼時矢も
アートコレクターとして物語の核になるある画家の絵を集めているという設定。

その田沼時矢が業績低迷中の小さな美術系出版・仙波工藝社
法外な値を付けてまで買収したがっている真の理由は?


本書はその謎解きを通して銀行員・半沢の躍動が光ります。

タイトルになっている「アルルカンと道化師」は
ひとりの無名の画家が世界に認められるきっかけとなった作品。


〈アルルカン〉や〈ピエロ〉はピカソやセザンヌ、ルオーなどが好んで取り上げたモチーフのひとつ。


その魅力的なモチーフを取り上げた
2人の画家の数奇な物語ともいえるでしょう。

これ以上は本を手に取ってのお楽しみということで記しませんが、
興味ある方はぜひどうぞ!

おすすめです!

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通り雨すぎて澄みたる中空に辛夷の花がひかりを弾く


夫が右鎖骨を骨折して約
2か月、やっと右手でお箸を持つことができるようになりました。

 

複雑な骨折ではないので手術はせずに三角巾で右手を吊って過ごしていました。

 

利き手の右手なので不自由なことが多く生活全般を補佐しなければならず、
多忙でしたが、娘が翌々日に心配して帰省してくれて力強い助っ人として
支えてくれて大助かり
(^^♪

 

まだ完全ではありませんが、これから肩全般のリハビリが始まる予定。

 

なにしろワガママを絵に描いたような気難しい夫ゆえ扱いに手こずると想像していましたが、
補佐するたびに「ありがとう」を返してくれるのでほっと一息。

 

趣味の油彩画も囲碁もお休みしているので、とにかく一日も早く日常を取り戻してほしいと
願うばかり。

 

少し先が見えてきました~。

 

 

 

 

矜持 

今野敏氏他著『警察小説傑作編 矜持』

 

犯人も割れ、自白も取れた傷害事件に、独り納得できない新人刑事の安積は……「熾火」(今野敏)
タクシー強盗事件に隠された意外な真相とは。「帰り道は遠かった」(黒川博行)
新宿署の鮫島と、殺人事件の重要な情報を寄せてきた中国人美女の思惑が交錯する「水仙」(大沢在昌)など、確固たる信念で事件に挑む警察官の姿を描いた六篇を収録



「熾火
 今野敏
遺恨 佐々木譲
帰り道は遠かった 黒川博行
死の初速 安東能明
悩み多き人生 逢坂剛
水仙 大沢在昌


以上
6篇からな
る警察傑作短編のアンソロジー。

警察小説を書かせれば名うてといわれる作家群。

それぞれの持ち味が生かされた短篇集でしたが、一押しを選べと言われれば、
黒川氏の「帰り道は遠かった」でしょうか。

軽妙な大阪弁の掛け合いが持ち味の黒川節が炸裂。

相棒刑事同士のおふざけタッチの会話の妙といい、捜査の末の手柄話が一瞬で
水の泡と消えたラストのオチといい秀逸でした。

短篇なのでナイトキャップ代わりにどうぞ!

 

3か月に一度の総合病院受診日。

 

9時に着いてまず血液検査と尿検査、そして1時間半後が診察という運び。

 

朝食抜きで血液検査をするのが正しいのは知っているのですが、

これくらいの血液検査ではたいして影響はないだろうという
いい加減な解釈でいつもは軽く朝食を摂っていくところ、

今日は久しぶりにヌキで検査してみました。

 

帰宅後、前の検査数値表と比べたところ素人目にはほとんど変化なし。

 

変化があるとすればコレステロールや血糖値くらいかなと思っていますが、糖尿病の既往症はないので、わたしの検査項目には血糖値関係の数値はピックアップされていないのでわからない・・・。

 

ということで血液と尿を採取したあと院内カフェで朝食。

 

Breakfastの外食もなかなかいいな(^^)

 

友人作のマスクホルダーを初めて使ってテーブルに(^^♪

マスクホルダー

これから診察予約までたっぷり1時間半はあるのでゆっくり

トーストを食べながら持参の文庫本を読み・・・

 

そして予約時間ぴったり10時半に待合室へ。

 

それから待つこと3時間強・・・なんのための予約!@@!

 

文庫本も読み終わり、仕方なくスマホでソリティアをしていると

充電ランプが切れかかってしまった"(-""-)"

 

やっと名前を呼ばれて診察室へ・・・ドクターと二言三言約10分。

 

会計が終わって時計を見たら15時過ぎ。

 

9時から6時間の長丁場に疲れ果てました。

 

帰り道、食材を買って帰宅したら別の友人から手作りの

なんともかわいらしい切手が貼られた封筒が!

やーちゃん2やーちゃん1
開けるとマトリャーシカのようにもう一つかわいらしい手書きの封筒。

 

友人のお母さま作のマスクと、読みたかった友人の手作り短歌冊子。

 

タイトル「螺旋階段」という短歌集。

やーちゃん4やーちゃん3

わたしの娘くらいの若い友人の感性をたっぷり楽しませていただいたことは
言うまでもありません。

 

疲れが吹っ飛びました(^^♪

 

Yちゃん、ありがとう!!

 

そしてマスクホルダーのUちゃんも!

 

 

ザリガニ

ディーリア・オーエンス氏著&友廣純氏訳『ザリガニの鳴くところ』
 

 

ノース・カロライナ州の湿地で男の死体が発見された。
人々は「湿地の少女」に疑いの目を向ける。
6歳で家族に見捨てられたときから、カイアは湿地の小屋でたったひとり生きなければならなかった。
読み書きを教えてくれた少年テイトに恋心を抱くが、彼は大学進学のため彼女のもとを去ってゆく。
以来、村の人々に「湿地の少女」と呼ばれ蔑まれながらも、彼女は生き物が自然のままに生きる「ザリガニの鳴くところ」へと思いをはせて静かに暮らしていた。
しかしあるとき、村の裕福な青年チェイスが彼女に近づく
みずみずしい自然に抱かれて生きる少女の成長と不審死事件が絡み合い、思いもよらぬ結末へと物語が動き出す。
全米500万部突破、感動と驚愕のベストセラー(「BOOK」データベースより)

 

著者について

1944年ジョージア州生まれの動物学者、小説家

1981年カラハリ研究プロジェクトでロレックス業績賞(元夫のマーク・オーエンズと共同受賞)

1984年『カラハリ―アフリカ最後の野生に暮らす』ジョン・バロウズ賞受賞

1985年米国自然史博物館のジョン・バロウズ賞受賞 

1993年カリフォルニア大学優秀卒業生賞

1994年黄金の方舟の漕手賞

2019年『ザリガニの鳴くところ』で小説家としてデビュー

「このミステリーがすごい!」2021年度版海外編第2位
2020年週刊文春ミステリーベスト10」海外部門第2位
「ミステリが読みたい! 2021年度版」2020年ミステリ・ベスト・ランキング海外編第3位

 

ずっと読みたかった作品。

 

図書館の棚で見つけたとき嬉しくて小躍り・・。

 

1969年、アメリカ合衆国の南東部ノース・カロライナの湿地で

地元のアメフトのスター選手・チェイス・アンドルーズの変死体

発見されたところから物語がスタート

地元有力者の息子。

事故か殺人か・・・警察の捜査で浮かび上がったひとりの女性・カイア。

時は遡って1950年代、黒人への人種差別が歴然としていたなか、
白人のなかでもホワイトトラッシュと呼ばれる最下層に属していた両親の間に生まれたカイア。


暴力が日常化していた父親、やさしい母親と兄ジョディと湿地の掘立小屋に住んでいたが、
やがて次々家族が出ていき、
6歳のころからたったひとりで暮らすことになったカイア。


差別と悪意
を小さな身に享けながら懸命に生きようとする孤高の姿がなんとも切ない。


しかし切ないだけではない、
湿地という豊かな自然のなかでカモメ、ホタル、カマキリ、
そしてきのこなど自然の食べ物に囲まれ、貝の採集で倹しい生計を立てながら
湿地に育まれ美しい女性に成長していくカイア。

ホワイトトラッシュの子という蔑みのなかでもカイアに温かい眼差しを向けてくれる
少数の温かい人々にも恵まれ、ボーイフレンドもできて幸せに手が届きそうだった矢先、
突然起こった事件。


本書はミステリーとして上梓したようですが、ミステリーという味つけがなくても
すばらしい小説として深い余韻の残る作品でした。


舞台になっている湿地の描写の美しさ。


湿地は、沼地とは違う。

湿地には光が溢れ、水が草を育み、水蒸気が空に立ち昇っていく。


特に湿地に棲む昆虫たちの描写のすばらしさ・・・動物学を本業とする著者ならではの巧みな筆致。


その自然と寄り添いながら孤高に生きていくカイアの成長する過程の心模様の描写の繊細さ。


どれをとっても秀逸の内容。


ミステリーであり、カイアの成長譚であり、生物の桃源郷のような湿地帯は
人間にとって決して手離すべきではないという生物学者としての示唆。


レイチェル・カーソンの氏の『沈黙の春』に通じるものがある内容。


ぜひどうぞ!!

cチューリップ

今日は3月11日。

未曾有の災害の10年目です。

毎年この日近くになるとTVや新聞に「いま」の状況が掲載されて

胸の奥にあるわたしたちの記憶が鮮烈に呼び戻されます。

忘れることのできない日。

全国でいまなお4万1000人以上の方々が避難生活を余儀なくされているという。


宮城県内では東日本大震災で関連死を含め約
1万人が亡くなり、

今も1200人以上が行方不明のまま。


もし自分の身内が津波に流され
10年行方不明のままだったら・・・

そんなことを思うと居ても立ってもいられない気持ちになります。

原発事故の後処理も遅々として進まない中、オリンピック招致のために世界に向けて
プレゼンテーションした安倍氏の文言が蘇ってきて怒りが治まりません。


Some may have concerns about Fukushima.
Let me assure you, the situation is under control

フクシマについてお案じの方々がいらっしゃるかもしれません。
私から保証をいたします状況は統御されています。

 

悪寒 伊岡

伊岡瞬氏著『悪寒』
 

大手製薬会社社員の藤井賢一は、不祥事の責任を取らされ、山形の系列会社に飛ばされる。
鬱屈した日々を送る中、東京で娘と母と暮らす妻の倫子から届いたのは、一通の不可解なメール。
“家の中でトラブルがありました”数時間後、倫子を傷害致死容疑で逮捕したと警察から知らせが入る。
殺した相手は、本社の常務だった―。
単身赴任中に一体何が?絶望の果ての真相が胸に迫る、渾身の長編ミステリ(「BOOK」データベースより)

 

久しぶりに「詰腹を切らされる」「上位下達」という言葉を
思い出しました。

 

この社会に生きている限り、いくら表面的には風通しよく
平等を唱えても上下関係はなくならないし、
それが高じていじめやハラスメントに発展している例は山とあります。


特にサラリーマン社会においては顕著、
森友学園をめぐる財務省の公文書改ざん問題で
自死された
赤木俊夫さんの事例を筆頭に、表に出ない事例は数えきれないほどだと思う。

本書の主人公・藤井賢一も詰腹を切らされてサラリーマン人生が暗転していったひとり。

会社の方針でただ上司の命令に従って関わった事象によって
すべての責任を押しつけられ遠地に飛ばされた賢一の家族を襲った悲劇を描いた物語。

本書は『痣』で活躍した真壁刑事&宮下刑事が再登場するということで手に取ったもの。


『痣』では真壁刑事がほぼ主人公でしたが、本書の主人公は藤井賢一、
彼というフィルターを通して語られています。

 その賢一の家族が起こした事件を補助的に捜査する刑事として登場する真壁。

会社の不祥事の責任を取らされた不運なしかも要領が悪く鈍感な中年男という設定の賢一
に家族への向き合い方のヒントを与えたのが真壁・・・
相変わらず一匹オオカミ的な翳ある役どころ。

さて本書の本筋に戻ると

賢一の単身子会社赴任中に、賢一が以前在籍していた大手製薬会社の重役を
賢一の妻・倫子が撲殺したという奇想天外な事件。

単身赴任先では上司にいじめられ、原因もわからないまま妻と娘に電話も帰宅も拒絶された
賢一のあまりの鈍重な気働きのなさは一読者ながらイライラが募るほど。

しかし、物語の展開がおもしろく目が離せず一気読み。 

初めから犯行を自供した妻のあまりのスピード感のある送検や、
取り調べの主流である警察組織の貧弱さが少々目立ちましたが、
一転二転の展開が興味を曳く作品でした。

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