VINのらんどくダイアリー

ご訪問ありがとうございます。 「一日一生」を銘にさまざまな人生を読書というツールを通して味わっていきたいと思っています。 響きこし言葉に貼れるさみどりの付箋そよぎて林となりぬ

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2007年04月


ヨーロッパの観光地やレストランの格付けで有名なフランスのタイヤメーカー「ミシュラン」がついに日本上陸したとの記事が新聞に載っていましたね。

ホテル、レストランに☆の数(最高三つ星)でランク付けした赤い表紙の「レッド・ガイド」は有名ですね。

レストラン・ホテルに関しては2005年にニューヨークとサンフランシスコ版の出版を皮切りに、今年11月にアジアで初めて「ミシュランガイド東京」が出版されるそうです。


新聞に掲載されていたのは日本版旅行ガイドで、日本全国の観光地に☆をつけています。

最高の三つ星に輝いたのは「京都」「奈良」「姫路城」「厳島神社」「富士山」など。

ミシュランの4人の担当者が約2ヶ月ずつ日本を訪問して決めたということですが、繊細な日本文化をフランス人がしっかり掌握できるのかしらと思いますが、あまり拘らず受け取れば楽しい話題づくりにもなるのではないでしょうか。

ちなみにわが岡山は一つ星でした(-_-;)  もっともです、納得_(_^_)_



本日はロバート・B・パーカー『初秋-Early Autumn』をご紹介したいと思います。


私立探偵スペンサーシリーズでおなじみのハードボイルド作家として有名ですね。

ボストン大学修士課程修了後保険会社勤務を経て、もう1度ボストン大学に戻り、チャンドラーやハメットなどのハードボイルドの研究で博士号をとったという変り種。

1973年にスペンサーシリーズ第1作目『ゴッドウルフの行方』でデビュー、

1976年『約束の地』でMWA(アメリカ探偵作家クラブ)賞最優秀長編賞、

以後現在までスペンサーシリーズは年1作のペースで上梓。

他に元アル中警察署長ジェッシイ・ストーンシリーズ、女性探偵サニー・ランドルシリーズ、

また私は未読ですが、レイモンド・チャンドラーの遺稿を完成した『プードル・スプリング物語』、

同作家の『大いなる眠り』の続編として書かれた『夢を見るかもしれない』があります。


本書はスペンサーシリーズの7作目、読者にハードボイルドを超えた感動を与えてくれる傑作といわれています。


離婚した夫が連れ去った息子を取り戻してほしいという依頼がスペンサーに舞い込むところから物語が始まります。

不仲の両親の駆け引きの恰好の材料としてのみ利用される少年ポール。

わが子には何の関心も示さない両親の間で翻弄され、周囲に固く心を閉ざし食欲さえもなくし、すべてに無気力無関心になることで辛うじて自己を保っている15歳の少年に、持ち前のおせっかいの血が騒ぐスペンサー。

両親とは離れたところで擬似家族を営みながら、ポールに自立の大切さを教える計画を立てるスペンサーに、最初は拒否姿勢を見せていた恋人スーザン・シルヴァマンも徐々に協力するようになります。

「どうだい、一役買わないか」
「ポール・ジャコミンの救済?・・・相談にのる気はあるわ。 
でも、あなたにこの問題に深入りしすぎてもらいたくないの」
「彼は短期間に大人になる必要があるんだ。 独立できるようにならなければならない。
彼にとってはそれが唯一の途なんだ。 
彼は15歳で子供であることをやめなければならない」
「それで、そうする方法をあなたが教えてやるの?」
「そうだ・・・春は過ぎたんだ。 ポールにとっては初秋だ」

マッチョで運動アディクトの元ボクサースペンサーが考えた単純かつ直截的なポール改造トレーニング計画。

早起き、3度の食事、ジョギング、屈伸運動、ベンチプレスなどなど、そして森の中の基礎からの小屋作り。

そしてポールが背負っている人生の厳しさ、大人になることの痛みを正面から教えます。

「両親は頼りにならない。
両親が何かやるとすれば、お前を傷つけること位のものだ。
お前は両親にたよることはできない。
お前が今のようになったのは、彼らのせいだ。
両親が人間的に向上することはありえない。
お前が自分を向上させるしかないのだ」

2人は小屋を完成し、ポールは5マイル走れるようになり、ベンチ・プレスで150ポンド挙げられるようになり、やりたいことが見つかり、少しだけ大人になります。

これから始まるポールの寮生活を前に2人は語ります。

「おまえは努力して追いつかなければならない。
しかし、必ず追いつける。
たったひと夏で自分がやったことを考えてみろ」
「ただし、ぼくは、なにも自分のものにすることができなかった」
「できたよ」
「なにを?」
「人生だ」

いたるところ古今の文学や詩の気障な引用をちりばめ、上滑りなジョークが得意の自信家のスペンサーらしからぬこの余韻のある心ニクイせりふにノックアウトされない読者がいるでしょうか。

その後のポールの成長ぶりがスペンサーシリーズで時々確認できることは読者にとって嬉しいことです。

またの機会に別のパーカーの魅力をご紹介したいと思います。



桜の時期も終わり、ハナミズキの街路樹が瑞々しい季節になりました。

北アメリカ産で別名アメリカヤマボウシ、花言葉は「私の想いを受けてください、返礼」だそうです。

東京からワシントンのポトマック河畔に贈ったソメイヨシノ3000本のお返しに40本のハナミズキの苗が贈られたのが始まりと公的にはいわれています。

2004年にアテネオリンピックで女子マラソンで金メダルに輝いた野口みずきさんはこの花にちなんで命名されたそうですね。


さて、流行の波に乗るのを不本意とするへそ曲がりの私は「華麗」ブームが少し下火になったようなので、本日は山崎豊子氏『華麗なる一族』をアップしたいと思います<(_ _)>


1970年3月から2年半をかけて週刊新潮に連載された本書は当時から話題を呼んだようです。

1974年、山本薩夫監督、大介役佐分利信、鉄平役仲代達矢で映画化、

同じ年に大介役山村聡、鉄平役加山雄三でTV化、

そして今年、大介役北大路欣也、鉄平役木村拓哉で大ブレイク、原作を凌ぐ勢いで話題になっていましたね。

原作での主役は父親の大介だと思いますが、今年のTVではキムタク人気に乗って鉄平を中心に描いているようですね。

私は映画もTVも観ていませんが、原作を読んでの個人的な感想では鉄平役はキムタクでは少し骨細のような気がしています。


著者山崎豊子氏は毎日新聞社学芸部に婦人記者として勤務、上司であった井上靖氏の指導を受け、勤務のかたわら書いた小説『暖簾』で1957年にデビューされました。

1958年『花のれん』で直木賞、

1959年『ぼんち』で大阪府芸術賞、

1962年『花紋』、1968年『花宴』で婦人公論読者賞、

1991年『大地の子』で文藝春秋読者賞を受賞されています。

他に1963年より「サンデー毎日」に連載された『白い巨塔』や『不毛地帯』、『二つの祖国』、『沈まぬ太陽』など、大阪を舞台の初期作品から視野を大きく広げ、それぞれの業界に旋風を巻き起こしているといっても過言ではありません。

綿密な取材力には定評がありますが、その虚実ないまぜにした構成により度々各方面から批判を受けていることでも有名ですね。



さて本書は、現在の三井住友銀行に端を発した旧神戸銀行と旧太陽銀行の合併劇(両行の合併銀行である太陽神戸銀行と旧三井銀行が合併→さくら銀行と改名→更に住友銀行が合併→三井住友銀行に至る)と山陽特殊製鋼の粉飾決算による倒産事件を題材にしたといわれています。


また万俵家は神戸の岡崎財閥、帝国製鉄は新日本製鐵、大同銀行は元太陽銀行または元協和銀行をモデルにしているといわれていますが、真相はわかりません。


現実でも近年、銀行再編成により上記三井住友銀行のほか次々新銀行が誕生しました。

旧三菱銀行、旧三和銀行、旧東海銀行、旧東京銀行の合併で三菱東京UFJ銀行、

旧興銀、旧第一勧銀、旧富士銀行合併でみずほ銀行、

旧大和銀行、旧あさひ銀行合併でりそな銀行など。

我が家は以前から一勧と三和を利用していましたが、それぞれ「みずほ」「三菱東京UFJ」となり、以前の銀行の影すらないネーミングで、戸惑ってしまいます。


45年も前に書き上げられた本書ですが、久しぶりに読み返してみても、テーマとする題材があまりにも現代にフィットする内容に驚くばかりです。


都市銀行再編の不穏な動きを受けて、ランク第10位の阪神銀行頭取万俵大介が暗躍する企みの犠牲になる長男鉄平との確執が巧みに描かれていて、物語性に富んだ内容になっています。

長男の命と引き換えに手に入れた上位行大同銀行吸収合併の後、業界第5位の東洋銀行頭取に就任した大介が会心の笑みを浮かべるところで物語の幕閉じが用意されていますが、その先には合併第二幕が密かに潜行していることをにおわせて筆を擱くあたり、さすが社会派作家の旗頭とうなずけます。

当主大介を中心とする妻妾同居の家庭生活は筆にするにはおぞましい限りのもので、暗黙のうちにそれを受け入れる家族全員の思惑が果てしなく描かれていて、著者渾身の作ながら、読み手である私は体に滓を纏ったような感覚に陥りました。

大介の愛人高須相子を中心とする閨閥づくりに翻弄される万俵家の子どもたち。

「根回し」「思惑」「裏工作」などの行為&言葉自体に拒否反応がある庶民の私にとって想像を超えた世界を垣間見られた点では意味のある読書でした。

小学生の頃より本が好きだった私は今まで読みっぱなしだった本の題名だけでも記録しておこうと思ったことがきっかけでブログを始めました。

以前はホームページを作成していましたが、より手軽なブログの流行をきっかけにこちらに完全移行してちょうど1年、分野も内容もアトランダムな読書雑感ではありますが1年間で約140冊をアップすることができました。

独りよがりな拙い雑感を読んでくださる方も少しずつ増え、ときには嬉しいコメントをいただけたりすることで、とても励みになり、感謝の気持ちでいっぱいです<(_ _)>

子どもたちも巣立ち、夫との気ままな2人暮らし、結婚当初から夫も本に親しむ人だったので、ベッド周りは本の山の我が家です。

夫と私の本への嗜好がバッティングすることは全くといっていいほどなく、購入に関しては効率の悪さを嘆きながらも歩み寄ることはありません。

特に夫からの歩み寄りはゼロという状態の中、私自身もビジネス物、スパイ物、歴史物が好みの夫から勧められて読んだ本は5本の指にも満たないくらいですが、その中の1冊が今日ご紹介する『ナイロビの蜂』です。


先ごろ映画化され、妻役のレイチェル・ワイズがアカデミー賞助演女優賞を獲得したことでも話題を呼んでいますね。

著者のジョン・ル・カレは、複雑なスパイ小説が好きな夫が昔開拓した作家の1人です。

近年ソ連や東西ドイツの統合などでスパイ小説の時代は終結したといわれ、夫の落胆もかなりですが、先日ロシアの諜報部員が放射性物質を飲まされて暗殺されるという事件もあり、まだまだ闇の世界で暗躍するスパイは健在というべきなのでしょうか。


イングランド出身のル・カレはスイス・ベルン大学、オックスフォード大学を卒業後、教師としてイートン校で奉職した後、英国情報局秘密情報部に勤務、再びオックスフォード大学で学び、外務省書記官となり西ドイツに赴任という経験の持ち主です。


デビュー作1961年『死者にかかってきた電話』は外務省勤務の合間に書かれた小説で、権威あるCWA(英国推理作家協会)賞シルバー・ダガー賞受賞。


1964年には職を退き本格的な執筆活動を開始、ドイツ勤務期間に見聞きした東西冷戦下の諜報活動を描いた著者の代表作といわれる『寒い国から帰ってきたスパイ』ではMWA(アメリカ探偵クラブ)賞最優秀長編賞&CWA賞ゴールド・ダガー賞受賞。

『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』『スマイリーと仲間たち』と並んでスマイリー3部作と呼ばれている人気シリーズの1作『スクールボーイ閣下』ではCWA賞ゴールド・ダガー賞を受賞しています。

我が家の本棚にはこれらの作品がずらりと並んでいますが、私はすべて未読です。


長い間スパイ小説家の第一人者として君臨している著者ですが、作風は暗く、重厚、登場人物を通して語られるアイロニカルな会話を自由自在に操るところさすがイギリスオックスフォード出身とうなずけます。



さて本書は日本語では『ナイロビの蜂』ですが、原題は『The constant gardener』・・・園芸が唯一の趣味である主人公ジャスティンを示唆しているようで興味深いタイトルです。


前半の主役と見紛うウッドロウによる狂言回し的な導入部分を何とか投げ出さず耐えて読み進むうち、だんだん秘密の迷路への入り口が見えてくる・・・こういう表現がぴったりの小説です。


ケニアの首都ナイロビの英国高等弁務官事務所の外交官、温和で誠実、庭いじりを唯一の趣味とする英国紳士ジャスティン・クエイルは、初めのうちは読者である私の目には地味で退屈、事なかれ主義の男性として物語の片隅に平凡に存在するだけです。


そのジャスティンの年の離れた若い妻テッサが人類学者リチャード・リーキーの発掘現場へ行く途中惨殺されるという事件が発生します。


HIVなどに侵されたアフリカスラムの人たちのために積極的な勇気ある活動をしていたテッサと、常に彼女の活動から一線を画していたジャスティンの不思議な夫婦関係。


事件の真相を闇に葬ろうとする外務省を中心とする動き、官僚たちの思惑などが次第に浮き彫りになるあたりからようやく秘密の入り口がはるかかなたに見えてきます。


自分の職務と園芸以外には興味の道を封じ込め、受け身的な生き方を貫いていたジャスティンが妻テッサ殺害の原因を究明するうち、徐々に勇気ある人間に変貌をとげていく様が見事な筆致で描かれています。

「今必要なのは、思いきり息を吸い込んで、彼女の秘密の世界の中心へ飛び込むことだった。彼女の旅のすべての道標とマイル標石に目を止めること、自己を滅し、彼女を再生させること、ジャスティンを殺し、テッサを生き返らせることだった」

無責任な企業利益の追求が発展途上国を滅ぼすと信じたテッサ。

アフリカに焦点をしぼり利権をむさぼろうとする巨大製薬会社と癒着した官僚たち。

テッサの死を追いかけるうち、途方もない巨大なブラックホールへと踏み込んでしまうジャスティン。


いくつもの巴の圧力をすり抜け、跳ね返しながら渾身の力でジャスティンが行き着いた真実の結末を描くことで著者はこの世の中のどうしようもない影の部分を示したかったのかもしれません。

70歳にして「白い厄病」の治療新薬を使って闇で進めるアフリカ人への人体実験という恐るべき題材に挑んだル・カレの若いエネルギーに畏敬の念を抱きました。


「この物語はいっさい現実世界にもとづいていない・・・
しかしこれだけは言える。  製薬業界のジャングルを旅するうちに、現実に比べれば、私の話は休暇の絵葉書ぐらいおとなしいものだと思うようになった」・・・著者の覚え書きより・・・


日本でもインフルエンザの治療薬タミフルの副作用に関する報告などで癒着の問題が浮上していきている昨今、ル・カレの言葉は重みがありますね。

最近は今まで車を使っていたところをせっせと歩いています

昨日は夏と見紛う日差しの中、予約していた朝食用の天然酵母食パンを買いがてら歩きました。

少し寄り道して往復8000歩


そろそろ紫外線が気になる季節がやってきましたね。

春から初秋にかけての期間に1年間の約70~80%の紫外線が降り注ぐということです。

昔は紫外線はビタミンDを作るのに役立つということで日光浴を奨励していましたが、そのためには数分浴びるだけで十分という研究結果が出て、人体への悪影響の方がクローズアップされるようになりました。

紫外線には
☆ 皮膚の奥まで届き、老化を促進させるA波
☆ 遺伝子に直接届き、皮膚がんの要因にもなるB波
☆ オゾン層に吸収され地表にはほとんど届かないC波
があるそうです。

1980年代にそのC波から生物を守ってくれていたオゾン層に穴が開いているのが発見されました。

エアコンなどの冷却材であるフロンガスが原因とわかり、禁止などの対策がとられましたが、それまでに放出されたフロンガスが現在もゆっくり上昇を続け、オゾン層を破壊し続けているそうです。

洗濯物や布団を干したりすることで日光消毒という恩恵もありますが、裏をかえせば紫外線の持つ細胞への殺菌力の強さを表しているので人体には有害だそうです。

ちなみに市販の日焼け止めには2種類あり、SPFはB波を、PAはA波を防いでくれます。

最近はTVでも夏場は毎日紫外線情報を流している局もありますね。

外出するときはできるだけ紫外線対策をする必要がありそうですね。



さて本日は曽野綾子氏『二十三階の夜』をご紹介します。  


1985年~1998年にかけて文芸誌に掲載したものを単行本にしたものです。

著者が日常や旅の途上でふと出会った人々の生活や思い出の1コマを10の小舟に乗せて運んできた、そんな物語です。


それぞれの小舟の主人公は著者が列車で偶然隣り合った男性、ルルドへの旅の途中で出会った元神父、南米で出会った修道女、取材現場のダムの近くの温泉地で出会った女性など・・・

これら様々な主人公との何気ない会話を糸口にその背後に背負った重い人生の断片をすくい取って描いています。


どの人生にも著者の意図する主題がしっかり織り込まれているのは見事というほかありません。


「私の場合、書きたい思想的な主題が先行している。
しかし私が書くのは、哲学でもなく、心理学でもないのだから、私は饒舌な贅肉の部分で小説を組み立てるべきであり、むしろ骨組みなど全く見えない肉の魂、脂の層だけで小説が出来上がっているように見せかけなければならない」

これは「白いスニーカー」の中で著者が明らかにした創作に対する手法です。


「青母子」では偶然列車で隣り合わせた男性の物語の中に著者の思想というべきものが垣間見えます。

「・・・僕は、1人の人生が消えるというのは、こういうことなんだな、ということがよくわかるような気がするんです。
僕たちは、せっせと働いて、死ぬまでに少しでも何かを残して死にたいなんて考えてるんですがね、しかしそれは、どうも思い過ごしですな」

「・・・私たちが死んでも、すぐ皆忘れますから」

「それはすばらしいことだとは、思われませんか。 忘れなかったらどうなります?
地球上、怨念だらけになりますよ」


表題作「二十三階の夜」は心が浮遊するような物語です。

東南アジアのある国に赴任した3人家族の物語。

日本人小学校に通う1人息子の万引きをきっかけに家族の捉え方に決定的な亀裂を見出す夫と妻。

蝶に極端な嫌悪を抱く妻が二十三階の夜の住まいで決断した帰国。

「僕たちを置いて帰ると言うなら、僕にはそれをとめる力はない。
だけど、それで多分僕たちの家庭は決定的にだめになってしまうよ」

「だって私が生きていられなかったら、家庭も何もないでしょう」


妻が恐れる蝶で飾り物を作る貧しくも逞しい暮らしの現地人の姿を対比させながら、著者は運命に流されるままの生き方もまた苦しみから逃れる1つの賢明な方法だと示唆されているように思いました。

本日はトリイ・ヘイデンの処女作である『シーラという子』をご紹介したいと思います。

1980年に体験を元に書かれた本書『ONE CHILD』は現在28カ国語に翻訳され、いまなお世界中の人々に感動を与えて続けています。

著者トリイ・ヘイデンについては日本語版のHPがありますので、興味ある方はごらんになってください。
       
     http://www.torey-hayden.com/japan/one_childj.htm


アメリカモンタナ生まれの著者は当時学区の「くず学級」と呼ばれるところで教えていました。

精神遅滞、情緒障害、学習障害、問題行動、身体的障害など、どの分野にも分類できない子どもたちを寄せ集めた学級でした。

ひどい神経症で激しい発作を繰り返すピーター
2回の自殺未遂で喉に人工チューブを挿入したタイラー
小児自閉症で叫び声や金切り声を出すマックスとフレディ
身体的性的虐待の犠牲者で黙児のセーラ
小児分裂病のスザンナ
強迫観念症のウィリアム
乱暴かつ盲目のギレアモー

この8人の子どもたちに29歳の助手アントン、手助けをする中学生のウィットニー、そしてトリイ・・・全部で11人のこのクラスに無理矢理押し込まれた12人目の少女シーラとの約5ヶ月間の闘いと再生の記録です。


4歳のとき母親によってハイウェイに捨てられ、愛する弟ジミーと別れ、酒びたりの父親によって日常的な虐待を受けていたシーラ。

6歳のとき3歳の子どもを誘拐し、木に縛って火を付け重傷を負わせたシーラがトリイのクラスに来ることになったのは州の精神病院の小児病棟に空きがなかったためでした。


「彼女をとりまく世界は非常に信頼のおけない世界だった。
その世界に彼女は唯一自分が知っている方法で立ち向かっているのだ・・・
言葉を発することもなく涙も見せずに立ち向かうとは、なんと勇気ある子供だろう」


不安から感情を爆発して騒動を起こしたシーラはトリイに初めての言葉を発します。

 「あたしをぶつ?」  「いいえ、私は子供をぶつようなことはしないわ」

少しずつ少しずつシーラの閉ざされた心の扉が開きます、トリイの愛によって。

 「シーラ、あなたはできるだけの努力をしてがんばったわ。  それがだいじなことなのよ。
あなたがどれを正しくできて、どれをまちがったかなんか、どうでもいいことなの」


「あたし、ぜったい泣かないんだ・・・誰もあたしを痛めつけることはできないんだよ。
あたしが泣かなければ、あたしが痛がってることはわからないでしょ。        
だからあたしを痛めつけることにはならないんだよ」   「泣くことが役にたつことだってあるわ・・・ある意味では、泣くっていうのはいいことなのよ。 うまくいけば痛みを洗い流してくれるわ」

トリイはシーラを膝に抱き『星の王子さま』を読み聞かせます。

王子がキツネと‘仲良くなる’-キツネは‘飼いならす’と表現します-くだりにシーラは引き込まれます。

「王子さまがキツネを飼いならすように、わたしを飼いならしたんだ。
だからいまのあたしはトリイにとって特別なんだ」   「そう、あなたは特別よ、シーラ」

「あたしもトリイのこと大好きだよ。  世界じゅうでいちばん特別の最高の人だよ・・・
あたしからぜったい離れていかない?」    「いまは私があなたの先生よ。でもいつかは終わりになるときがくるの」

「トリイも、他のみんなとおんなじじゃないか。 あたしを置いてっちゃうんだ。
あたしを飼いならしたくせに」   「そうじゃないのよ、シーラ・・・最初はちょっと悲しいかもしれない。でもやがてはすてきに思えるようになるの お互いのことを考えるたびに、心がほのぼのとした気持ちになるわ。 どんなに離れてても、私たちがどんなに楽しかったかを忘れることはないのよ。
思い出は誰にも消せないのよ」

親に捨てられ、虐待されて周りに心を閉ざしてしまった儚いほど小さな少女。


トリイが繰り返し繰り返しの忍耐と受容のこころで頑なな少女の心をだんだんに溶かし、そして少しずつ扉を開き、ついには笑顔をもらう様子はまるで春の雪解けのようです。


そして別れがやってきます。

「悪い子になってやるっていったけど、本気でいったんじゃないんだ。いい子にするから・・・
トリイのために」   「いいえ、私のためにじゃないわ。  あなたのためにいい子になるの」

こんな別れの言葉で物語が終わりますが、シーラの厳しい人生はこれからも続きます。


本書の続編ともいうべき『タイガーと呼ばれた子』ではその後のシーラの過酷な人生を彷彿とさせるようなトリイとの再会や確執などが描かれています。

次の機会にご紹介したいと思います。


前述のトリイ・ヘイデンのHPには8人の学級の仲間、そして助手アントンとウィットニーの現在が書かれています。

トリイからの旅立ちの後しばらくしてトリイの元に送られてきたシーラからの英文の手紙もこのHPで公開されています。


トリイへ、いっぱいの“愛”をこめて

他のみんながやってきて
わたしを笑わせようとした
みんなはわたしとゲームをした
おもしろ半分のゲームや、本気でやるゲームを
それからみんなはいってしまった
ゲームの残骸の中にわたしを残して
何がおもしろ半分で、何が本気なのかもわからずに
ただわたしひとりを
わたしのものではない笑い声のこだまする中に残して

そのときあなたがやってきた
おかしな人で
とても普通の人間とは思えなかった
そしてあなたはわたしを泣かせた
わたしが泣いてもあなたは大して気にかけなかった
もうゲームは終わったのだといっただけ
そして待っていてくれた
わたしの涙がすべて歓びに変わるまで

日本の新幹線と速度を競っているフランスの高速鉄道TGVが時速574.8kmを記録したとの発表がありました。

日本の新幹線は最高で山陽新幹線の300kmということですからいかに驚異的な数字かわかります。

この時速で行くと、東京~大阪間を約1時間で走るそうです。

そうなると東京~大阪間は通勤圏内に入るのでしょうか。


フランスシラク大統領はフランスの鉄道技術に力を入れ世界にアピールしていますが、安全面ではやはり日本の新幹線は安定しているようです。


最初欧州連合の鉄道技術を導入していた台湾もトラブルが続いたため、途中から日本方式に切り替えたということです。

試運転中の日本のリニアモーターカーは2003年に581kmを記録しましたが、実用化にはまだまだ遠いようです。


どんどん速度を競って時間の無駄を省く努力をする一方で、今スローライフが見直されています。

速さを手に入れることによって失うものの多さに気づいた人も多いのではないでしょうか。

携帯電話やパソコンなどを思い切って手元から離し、のんびり周囲を見回す1日を作ってみるのもいいでしょうね。



ということで今日は日本の古きよき時代を彷彿とさせるようなアフリカからのゆっくりした物語をご紹介したいと思います。

アレグザンダー・マコール・スミス氏著『No.1レディーズ探偵社、本日開業』


1948年ジンバブエ生まれのスコットランド人である著者Smith,Alexander McCallはアフリカやイギリスで学びスコットランドで法学部教授になったあと、ジンバブエのボツワナに戻り、最初のロー・スクール設立に尽力しました。

現在エジンバラ大学で医療法教授の任についておられるかたわら、執筆活動をしていらっしゃいます。


アフリカのボツワナを舞台の本書は1998年無名の出版社から出したところ口コミでベストセラーとなりました。

その後、第2弾『キリンの涙 ミス・ラモツエの事件簿(2)』

第3弾『No.1レディーズ探偵社、引っ越す ミス・ラモツエの事件簿(3)』を上梓されています。


舞台となった南アフリカの北カラハリ砂漠にあるボツワナは南アフリカ共和国、ナミビア、ジンバブエに囲まれたフランスより少し大きい面積の国です。

1966年イギリスから独立後はダイアモンド採鉱事業が経済の中心となって成長を続け、世界最貧国グループからいちはやく抜け出したといわれています。


そのボツワナで唯一の女探偵プレッシャス・ラモツエ、34歳、太めのバツイチ、「サバンナのミス・マープル」と呼ばれる女性の探偵物語―というより人生物語です。


父親の遺した牛を売り首都ハボローネで探偵社を開いたラモツエの元に次々舞い込む失踪人探しや浮気調査など些細な事件の依頼を持ち前の聡明な洞察力と知恵で解決していきます。


アフリカのサバンナそのままののんびりした丸い体に温かさがいっぱい詰まったマ・ラモツエのキャラクターが読者の心にひだまりを作ってくれる、そんなストーリー満載です。


事務所の前には大きなアカシアの木、背景に広がる雄大なアフリカの自然。

目を瞑れば地平線までさえぎるもののない広大なアフリカのサバンナが広がります。

そんな光景を眺めながら、マ・ラモツエと3時のお茶にルイボスティーを飲んで人生を語る・・・そんな夢のような至福の時が過ごせたらいいな(^_^)v


ハラハラドキドキ感のない探偵物語、でも柔らかい叡智が溢れんばかりの物語。


行間からにじむマ・ラモツエの豊かな人間性、過去の夫選びの失敗から得た教訓など
どれをとっても真実がいっぱい詰まった本です。


文化も習慣も遠くかけ離れたアフリカと日本、人間の心模様は世界共通です。

疲れた心と体に是非どうぞ

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