VINのらんどくダイアリー

ご訪問ありがとうございます。 「一日一生」を銘にさまざまな人生を読書というツールを通して味わっていきたいと思っています。 響きこし言葉に貼れるさみどりの付箋そよぎて林となりぬ

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2008年06月

中国産の野菜や加工食品などの記事が新聞紙上を賑わして以来、日本でも食べ物に対する関心が急激に高まったように感じます。

種々の添加物を加えない食品や無農薬野菜や果物、お米などに関心を寄せる人が私の周りでも増えてきています。

健康のために玄米菜食の食生活を実践している方もいらっしゃいます。


我が家でも夫の病気を機に一時期玄米菜食&魚のみを実践していましたが、夫が音を上げたのをきっかけにいつの間にか立ち消えとなってしまいました。


サプリメントとともに医学的に明確なエビデンスが示しにくいものであるにもかかわらず、日本古来からの玄米菜食が理想的な健康食として世界中から注目されていますね。


アメリカで巨額にふくれ上がった医療費を見直すため政府の肝入りでアメリカ国民の健康を分析、1977年アメリカで発表された「マクガバン・レポート」は当時肉類中心だったアメリカの食生活に衝撃的な警告を与えました。

それまで動物の肉がエネルギーの根源とする根強い肉に対する信奉があらゆる病気の原因になっていることを指摘し、代わりにもっとも理想的な食事としたのは驚くことに元禄時代以前の日本の食事でした。

自然の穀類に野菜、海草類、動物性タンパク質は小魚を少量摂るというもの。

これが世界の日本食ブームのきっかけになったようです。


本日ご紹介する『病気にならない生き方 ミラクル・エンザイムが寿命を決める』の著者新谷弘実氏は現在アルバート・アインシュタイン医科大学外科教授およびベス・イスラエル病院内視鏡部長を歴任していらっしゃるニューヨーク在住の胃腸内視鏡外科医として全米では有名な方です。


本書『病気にならない生き方』を筆頭に、『病気にならない生き方2 実践編』、『病気にならない生き方3 若返り編』はシリーズとして200万部を超すベストセラーとなりました。

今でこそ胃腸の内視鏡手術は広まっていますが、著者は今から40年ほど前に世界初、新谷式といわれる大腸内視鏡の挿入法を考案し、開腹せずに内視鏡によるポリープ切除することに成功された方です。

日米で約30万例の胃腸内視鏡検査と9万例のポリープ切除をされている世界的権威だそうです。


胃腸専門家であるその著者が本書で繰り返し推奨していらっしゃるのが「マクガバン・レポート」で奨励されているような穀物と野菜中心の食事です。


「膨大な臨床結果から、私は『健康な人の胃腸は美しく、不健康な人の胃腸は美しくない』ということを教えられました。
こうした胃腸内の状態を、私は『人相』になぞらえて『胃相』『腸相』と読んでいます。
健康な人の胃相・腸相はよく、不健康な人の胃相・腸相は悪いということです。
胃相・腸相にもっとも大きな影響を与えるのは、食歴と生活習慣です・・・
よい胃相・腸相をしている人の食事や生活習慣と、悪い胃相・腸相をしている人の食事や生活習慣には、はっきりとした特徴があることがわかったのです」


これらのことを踏まえて著者は肉や魚、乳製品、卵などの動物性の食べ物は食事全体の15%以下にするよう指導していらっしゃいます。

植物食と動物食は85対15が理想的なバランスとし、全体としては「雑穀や豆類を含む穀物」を50%、「野菜&果物」を35~40%、「動物食」を10~15%とするのが新谷式食事健康法だそうです。


☆食べ物はできるだけ精製していないものを自然のままで摂ること
☆牛乳・乳製品、マーガリンはできるだけ摂らないこと
☆揚げ物はなるべく避けること
☆動物食を摂る場合はできるだけ人間より体温の低い魚で摂るようにすること
☆よく噛んで満腹しないこと


これらはなるほどとうなずける羅列ですが、私たちが常識と考えていたものの中に常識を覆すものもいくつかあります。

以下はすべて胃相や腸相を悪くする間違った健康法だそうです。


☆カルシウム摂取のために牛乳を飲む
☆腸内環境をよくするためにヨーグルトを食べる
☆果物は太りやすいので控え、ビタミンはサプリメントで摂る
☆肥満を防ぐためごはんやパンなど炭水化物は控える
☆高タンパク低カロリーの食事がよい
☆日本茶はカテキンが豊富で健康によい など

それぞれの理由については本書を読んでください。


では、どうすれば健康で長生きできるのでしょうか。

著者によると人間の生命活動を担う5000種以上の体内酵素の原型となる「ミラクル・エンザイム」を消耗しない生活を送ることが大切だそうです。


「エンザイム(酵素)」というのは、生物の細胞内に作られるタンパク質性の触媒の総称で、植物でも動物でも、生命があるところには必ずエンザイムが存在しているそうです。

お酒やたばこといった嗜好品、食品添加物、農薬な、環境汚染、ストレス、環境汚染などがミラクル・エンザイムを消耗させる原因になっていると著者は指摘します。


自然な農法で作られた穀類、野菜や果物をしっかり摂り、ストレスレスな生活を心がけることによって「健康な100歳」を目指そうと著者は締めくくっていらっしゃいます。

余談ですが、著者の推奨する「ミラクル・エンザイム」に関してはサプリメント業界が抛っておくはずもなく、様々な商品が販売されるようになっているのを見るにつけ、商魂たくましいサプリ業界に目を瞠ってしまいます(-_-;)



安価な青森旅行をネットで見つけて2泊3日の行程で三沢~奥入瀬~十和田湖を回ってきました。

旅行の前日宮城で地震があり、こんな大変なとき近辺に遊び気分で旅行に行っていいものかと被災者の方々のことが頭をよぎりましたが、ずっと前にクーポンを購入していたので一瞬の躊躇はすぐにお金計算に取ってかわりました(-_-;)


岡山から羽田経由で青森空港に行ったのですが、羽田第二ターミナルを使ったときいつもいつも感じる不満


地方のヒガミといわれるかもしれませんが、とにかく離着陸が必ずといっていいほど広い離着陸場のいちばん端(T_T)/~~~


「岡崎さんの出身地の岡山なんだからもっと岡山を優遇してくれてもいいのに」

「出身地だからこそ謙虚な岡崎さんは遠慮していちばん隅っこにしたんやろ」

毎回夫と交わす会話です。


全日空の前身の日本ヘリコプターの設立から全日空の発展に大きく貢献された第二代全日空の社長岡崎嘉平太さんはわが郷土出身です。

岡山の北に位置する吉備中央が生誕地で、そこに岡崎嘉平太記念館があります。

           
  
航空業界の発展に寄与するともに日中経済交流を通して日中友好に大きな貢献をされたことでも有名な方です。

「信はたていと 愛はよこ糸 織り成せ 人の世を 美しく」

記念館に飾られたこの自筆の言葉が岡崎さんの誠実な人柄を表しているようです。


さて話題が青森旅行からどんどん逸れてしまいましたが、学生時代に訪れて以来2度目の奥入瀬でしたが、緑滴る新緑のシーズン、14キロに及ぶ渓流沿いの道に左右から覆いかぶさるように続く緑のトンネルを通りながらときどき渓流に下りて滝や岩にぶつかる激流を眺めたり、冷たい水に手をひたしたり、自然を満喫しました。


1日目は米軍基地のある町三沢の温泉旅館に泊まりましたが、2日目は十和田湖畔のホテルに1泊。

そこで「十和田湖」イコール「青森」という私の貧しい知識が覆されました。

私たちが泊まったホテルは秋田県に位置し、十和田湖を挟んで対岸は青森県という位置関係にびっくり!


いまだに東北や北陸、中部の県の位置を正しく示すことのできない恥ずかしい私です。



さて本日は姜尚中氏『在日』をご紹介したいと思います。

1950年朝鮮戦争が始まった年に在日韓国・朝鮮人二世として熊本市に生まれた著者は生まれてからの日本名永野鉄男を1972年の訪韓を機に朝鮮名に変えて今日に至っていらっしゃいます。


早稲田大学大学院政治学研究科博士課程終了後、西ドイツのエアランゲン大学に留学ののち、明治学院大学講師、国際基督教大学準教授を経て現在、東京大学情報学環教授のかたわら、執筆活動、討論番組、そして「朝まで生テレビ!」などに積極的に出演していらっしゃるので、TVの討論会などで理路整然と語られる著者を見られた方も多いでしょう。


専攻は政治学&政治思想史で分野はアジア地域主義論、日本の帝国主義を対象としたポストコロニアル理論だそうですが、私にはさっぱりわからないというのが正直なところです。


著者の専門書を読んだことのない私ですが、時々愛読する有名な松岡正剛氏のブログ「千夜千冊」に書かれていた次のような感想に惹かれて手に取ったのが本書です。

「昨日、姜尚中の『在日』という新刊が恵比寿の有隣堂に並んでいた。
まだ読んでいないが、店頭でそれを見たとき、そうか、ここまで一気に書き切るつもりだったのかという感慨が走った。
「永野鉄男」を捨てて在日朝鮮人を明示する「姜尚中=カン・サンジュン」を選んだことを含む思想的自伝のようだ。
この数年、姜尚中ほどに充実した議論を水準を落とさずに、日本の政治方針とその思想根拠についての言説を続けざまに連打している学者は少ない」


本書は講談社で出版以来、8万部を超えるベストセラーとなったハードカバー『在日』を大幅に加筆して集英社から出した同名の文庫版です。


1984年一旦は外国人指紋押捺を拒否し、埼玉県での「指紋押捺拒否第一号」となった著者ですが、苦悩の末最終的に押捺に応じたことをきっかけにプロテスタントの洗礼を受けた経験も現在の著者を知る上で大きな要因になっています。


本書『在日』ではその生い立ちと周辺の「在日」の大人たちのやり場のない怒りと悲しみが平易な文で淡々と隠すことなく語られています。

廃品回収業で生計を立てる在日一世の父母のこと、貧しさゆえに学ぶ機会がなく文盲だった母親のこと、韓国民主化運動に没頭していた早稲田大学生時代のこと、日本にも朝鮮半島にも属せない在日という立場の葛藤や孤立感が読者の胸にまっすぐに伝わってきます。


将来が閉ざされたような閉塞感に長く苦しめられていた著者は繰り返し読んだ旧約「伝道の書」 ― 「天の下のすべてのことには季節があり、すべてのわざには時がある」 ― に希望を見出します。


「わたしはこれまでの人生でパトリとしての『故郷』を父母の『祖国』に見出すことはできなかった。
その意味で、わたしは、日本とも、南北朝鮮とも折り合いがつけられないまま、半世紀あまり『在日』で生きてきたことになる。
しかし、今ではこの折り合いの悪さ、落ち着きのなさは、逆に新しい可能性に通じているのではないかと思うようになった。
その可能性が、『東北アジアに生きる』ということなのだ」


敬愛するオモニの余命を知らされたことをきっかけに心の中に鬱積した思いを吐露する思いで本書を書き留めた、と著者はエピローグで書いていらっしゃいます。


そこにはテレビや雑誌で激論を戦わす論客としての著者の姿はなく、苦悩の「在日」を力いっぱい生きた父母の息子としての姿があるばかりです。


「『よくやったね、テツオ。 テツオはようやったよ』きっと彼らはそう言ってくれるはずだ・・・
わたしの『回帰願望』は、母の死によってますます強くなっていった・・・
わたしの願いは、ひとえに朝鮮戦争のような悲劇を二度と繰り返さないことにあった」


日本中を駆け巡る「北朝鮮バッシング」に対する著者のスタンスはここでは書きませんが、「異端児」の前衛として激しい非難の矢面に立たされている著者の苦悩と解決への道しるべがこのエピローグで述べられています。


興味ある方は是非手に取って読んでください。

「昔 昔、おじいさんとおばあさんが ありました。
おじいさんは山へしば刈りに行きました。
おばあさんは川へ洗濯にいきました。
おばあさんが、川で洗濯をしていると川上から大きな桃がどんぶりこ、どんぶりこと流れてきました」

誰もが知っている童話「桃太郎」と私の住む岡山とは深いつながりがあります。


民俗学者柳田国男氏はその著書『桃太郎の誕生』で桃太郎説話の根源を遡っています。

それによると桃が流れてきた川は奈良県の大和川だそうですが、吉備の国すなわち現在の岡山に住む鬼「温羅(うら)」を退治するという命を受けた桃太郎がはるばる吉備の国に来て無事鬼を退治した功績を讃え、吉備津神社の祭神として祀ったという伝説になっているそうです。


というわけで岡山には「きびだんご」を初め、桃太郎にちなんだものがたくさんありますので、よかったら覗いてください。

       http://www.city.okayama.okayama.jp/museum/momo/menu.html

また岡山県マスコットとして2006年に誕生した「ももっち」は「桃太郎」をアレンジしたものだそうです。

全国的な話題になった彦根のキャラクター「ひこにゃん」の人気に追いついてほしいものです。



さて本日は柳田国男氏や折口信夫氏によって確立された民俗学に材をとった短編小説をご紹介したいと思います。

北森鴻氏著『写楽・考

美貌の民俗学者、蓮城那智を主人公にしたミステリーの文庫最新作です。


このところ北森ワールドに浸っています。

このブログでも3作アップしていますのでよかったら読んでくださいね。

     http://yaplog.jp/ashy_ashy/category_28/





北森氏の著書をシリーズ毎に簡単に分類してみます。

蓮丈那智シリーズ 『凶笑面』『触身仏』『写楽・考』
旗師宇佐美陶子シリーズ 『狐罠』『狐闇』『緋友禅』『瑠璃の契り』
香菜里屋シリーズ 『花の下にて春死なむ』『桜宵』『蛍坂』『香菜里屋を知っていますか』
有馬次郎シリーズ 『支那そば館の謎』『ぶぶ漬け伝説の謎』 
その他 『狂乱二十四孝』『冥府神(アヌビス)の産声』『メビウスレター』『闇色のソプラノ』『メイン・ディッシュ』『屋上物語』『パンドラ’Sボックス』『親不孝通りディテクティブ』 『孔雀狂想曲』『親不孝どうりラプソディー』など   


本書は「蓮丈那智シリーズ」第三弾、4編からなる連作短編集。

「異端の民俗学者が、日本美術史上最大の謎、『あの絵師』に挑む」


短髪、美貌の民俗学者、東敬大学助教授、学会からは異端者扱いを受けているにもかかわらず、従来の常識にとらわれない超然とした態度で常人では考えつかない発想で論文を発表し続けている蓮丈那智がその強引な行動で助手の内藤三國と佐江由美子を巻き込みながら謎を解いていきます。


★村を凶事から守る「御守り様」といわれる人形が破壊され、持ち主の当主も殺害される事件と憑代―すなわち常民の住む現世と異界である常世との境目に位置する憑依物―についての考察をした「憑代記(よりしろき)」

★細長い湖が円湖と名づけられた謎を突き止めていく過程で明らかになった現実の殺人事件を扱った「湖底祀(みなそこのまつり)」  
  
★大学院生だった那智が昔遭遇した殺人事件が時を経て解き明かされる過程で興味深い絡みをみせる保食神(うけもちのかみ)に関する考察をした「棄神祭」

★伝説の絵師であり、現在もなお謎のベールに包まれた東洲斎写楽をタイトルに冠した表題作「写楽・考」

学会誌に発表された式直男という謎の人物の書いた「仮想民俗学序説」と式氏の失踪事件に関与するはめになった那智が窮地から見事な推理で脱出する様子を描いています。

論文の中に登場する「絡繰箱」や「べるみー」というキーワードからフェルメールに行き着くプロセスが鮮やかに描かれています。

ここでは「旗師宇佐美陶子シリーズ」の陶子や「香菜里屋シリーズ」の香菜里屋とおぼしきビアバーが登場して読者を楽しませてくれます。


全体を通してオアシス的役割を果たしているのは助手の内藤三國と那智のかけあい。

「ミ・ク・ニ」と耳元で囁かれると硬直してしまう小心&自虐的な三國のユーモラスな姿に隠れファンは多いのではないでしょうか。

多彩な楽しみ方ができる短編集です。

この4月22日に死刑判決の出た山口光母子殺害事件の差し戻し審判決は日本中を関心の渦に巻き込みました。

遺族である夫の本村洋さんが判決後の記者会見で語られた言葉に涙を誘われた方も多かったのではないでしょうか。

「万感の思いはあるが、喜びやうれしさという簡単な言葉ではない。
重い判決がでて、遺族がどうやって生きていくかが課題です」

事件から9年余りの重い歳月と癒されない悲しみの深さが体全体から感じられて胸がいっぱいになりました。


差し戻し審の法廷で展開された奇想天外と思われるような被告の主張について
「翻したのが一番悔しい。事実を認めて、誠心誠意、反省の弁を述べて欲しかった」
と言われていたのに深く共感しました。


刑罰の意義について
「社会が安全で平和な環境をつくれるか考える契機にしなければならない」
と語っていらっしゃったのが印象的でした。



本日は本村さんの指摘される現行の刑罰の意義に関して告発ともいえる内容の労作をご紹介したいと思います。


日垣隆氏著『そして殺人者は野に放たれる』

100年あまり前に制定された刑法第39条「心神喪失者の行為は、罰しない。心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する」にスポットをあて、多くの現実に起こった事件を例に挙げ、現実にそぐわない判例を重ねる司法に鋭い切込みを入れています。


著者日垣氏はジャーナリストとして活躍する中

1999年『「買ってはいけない」はインチキ本だ』で文藝春秋読者賞

2001年『偽善系�U 正義の味方にご用心!』で編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞・作品賞

2004年本書で第3回新潮ドキュメント賞    をそれぞれ受賞していらっしゃいます。


また発行しているメールマガジン「ガッキィファイター」には根強いファンがいらっしゃるようです。


歯に衣を着せぬ過激な発言で敵も多いといわれている著者ですが、中学1年だった弟が学校で刑法にも少年法にもかからない13歳の同級生に突き落とされて殺害され、学校事故として処理されたという経験に加えて、その悲しみや憤りから家庭崩壊が進み、兄が総合失調症を発症し、以後精神病院に入院したままであるという経験を持っていらっしゃいます。


そんな著者だからこそ、「人権」という名の下に精神障害者の犯罪報道を控えざるを得ないメディアや後押しする人々、納得のいかない判決を連発する司法などに対する告発に共感や納得を感じる人たちも多いと思います。

「日本は世界一、犯罪者に優しい国であり、量刑が最も 軽い国なのである」


本書を書き上げるのに10年の歳月をかけたという著者についてノンフィクション作家である高山文彦氏は次のように書いていらっしゃいます。

「・・・いまの日本の、起訴前におこなわれる精神鑑定のおぼろさ、そしてひとりの心理学者がつくりあげた精神鑑定の体系にいまなお引きずられて、「心神喪失」や「心神耗弱」を判子でも押すように量産しつづける司法の無能ぶりはどうか・・・

いつもながら日垣の書くものは、安穏と時をやり過ごす者たちの肩を鋭く揺らす。

なぜこのような執念の作を著したのか、本書にはその動機をうかがわせるプライベートな記述もあって、私は日垣の覚悟に頭が下がった。

登場する犯罪者たちは、原則として実名である。これも覚悟の一端だろう」



本書における著者の主な主張を簡単に挙げてみます。

★殺人などを犯した犯人が精神病の疑いがあれば、鑑定によって起訴しないことが多いが、その理由は起訴した事件が無罪になれば検察官自身の将来に響くことが原因である。

★刑法第39条に対してあまりにも安易な適用で無罪や減刑をいいわたす傾向があり、しかも野に放たれた39条該当者に対しての医療措置が不十分である。

★心身喪失を偽装して無罪や減刑を勝ち取った疑いのある犯人でも、短期間だけの入院措置ですぐに社会に戻されるケースが多い。

★以上のことから、犯罪者の結果責任を問うべきだとする刑法の改正ならびに精神病の犯罪者の加療施設の充実を早急に実現すべきである。


膨大な取材を通して書かれた本書は旧態然とした法曹界や精神鑑定のあり方にするどい問題点を投げかけていると思いますが、少年犯罪の被害者の家族であり、いつなんどきでも加害者になりうる精神病を兄に持つ著者の経歴が、本書における著者の強い主張を更に補強している、という感じを受けました。


本書に見られる正義の一刀両断の切り込みに対して読者は、その著者の経歴ゆえにわずかな疑問の余地も許されないような気持に陥ることがなきにしもあらずではないか、そんな姑息な考えが頭をもたげたのも事実です。

1年後に施行される裁判員制度における私たち国民の姿勢にもつながることとして、正義、ヒューマニズムという名の強い主張に一直線に巻き込まれず、180度の角度からも慎重にしっかり事実を見据えるという訓練が必要になるような気がしました。


とはいえタブー視されている問題に勇気ある一石を投じた点で、特に司法関係者に読んでいただきたいと思いました。



友人にガーベラをもらいました。

花弁が糸状になった珍しい品種と八重になったものです。

別名アフリカセンボンヤリという名が著すように原産地は熱帯アジアやアフリカだそうです。

熱帯を思わせるオレンジや黄色などの華やかな色合いが多いのもうなずけますね。

日本で切り花用として流通している品種は現在2000品種以上もあるそうです。

花言葉は「崇高美、神秘」。


茎が長いまま花瓶に4~5cmくらいの水を入れて挿し、水に浸かった茎の部分が弱ってきたら4~5cm切り落としてまた水に挿す、ということを繰り返すと長く鑑賞できるそうです。





さて、本日は横山秀夫氏の『看守眼』をご紹介したいと思います。


短編の名手といわれている横山氏は今まさに旬の作家!

短編ばかりでなく長編においてもすばらしい書き手であることは多くの作品が証明しています。



このブログでも簡単な横山氏の経歴とともに長短編取り混ぜて8編ご紹介していますので、よかったら読んでください。

      http://yaplog.jp/ashy_ashy/category_2/


☆『ルパンの消息』  ☆『第三の時効』  ☆『クライマーズ・ハイ』  ☆『出口のない海』  ☆『真相』 
☆『陰の季節』  ☆『臨場』  ☆『震度0』

中でもイチオシは『クライマーズ・ハイ』! 昨年のベスト10に入れました!




「刑事を夢見て看守台に座り続けた男 ― わかるんだよ。 刑事にはわからなくてもな」

本書にはこの表題作のほか5編の短編が掲載されています。


看守、ルポライター、調停委員、警察署の情報管理課員、地方新聞の整理記者、知事公室秘書課長という様々な舞台の主人公の日常に潜む魔の刻を臨場感ある筆致で緊迫の人間ドラマに仕立てています。


★29年間刑事を夢見ながら留置場の看守として歩んできた男が自らの勘を頼りに過去の死体なき殺人事件の真相を追い求める姿を描いた「看守眼」

★無名のルポライター只野が、突然舞い込んだ兵藤電機会長の自伝の仕事をするうち自らの欲によって潜んでいた落とし穴に嵌ってしまう様子を描いた「自伝」

★家裁の調停委員のゆき江の前に離婚調停で現れた女を通して抱いた優越感が、あることをきっかけに見事に逆転する様を描いた「口癖」

★管理するM県警察のホームページを早朝ジャックされた立原が保身のために追い詰めた犯人の言葉によって今までの自分の人生を省みる様子を描いた「午前五時の侵入者」

★長い外勤記者から整理部に異動になった高梨が犯したミスによって巻き込まれた殺人事件の真相を追う様子を描いた「静かな家」

★県知事の秘書課長を全力で真面目に努めていた倉内に降りかかった思わぬ不運を、新しく台頭してきた新人秘書の様子と対比して描いた「秘書課の男」


警察小説作家として独壇場にいる著者ですが、『クライマーズ・ハイ』の舞台となった著者自身の古巣の新聞社などを舞台に、縦横無尽に主人公を操る筆力にはいつもながら感服します。

今年1月からNHK大河ドラマシリーズとして宮崎あおいさん主演で放映されているテレビドラマ「篤姫」を観ていらっしゃる方も多いでしょう。

篤姫に関しては1985年にも佐久間良子さん主演でドラマ化されました。


私はどちらのドラマも観ていませんが、宮尾登美子氏による原作とは大分隔たりがあるようですね。

宮崎あおいさん演じる篤姫はその雰囲気からしてとても明るく可愛い女性として描かれているようですが、原作の篤姫は沈思黙考、ストレートに感情を表さない男勝りなタイプとして描かれています。


本日ご紹介する『天璋院篤姫』は宮尾氏初めての歴史小説として昭和58年から59年にかけて日本経済新聞夕刊に連載されたものです。


宮尾氏の作品では過酷な運命に翻弄されながらも自分を見失うことなく自分の人生を貫くという芯の強い女性が常に主人公として登場します。


筆を起こすまでの膨大な下調べには定評があり、堅牢な基礎に裏打ちされた文章は緻密で独特の色があり、しかも登場人物のそのときどきの感情をしっかり織り込んで読者の胸にまっすぐ飛び込んでくるような力があります。




私はほとんどの宮尾作品を読んでいますが、このブログでアップしているのは『菊籬』のみですので、追々ご紹介したいと思います。

      http://yaplog.jp/ashy_ashy/category_5/


1962年初めて上梓した『連』で婦人公論女流新人賞を受賞されたのをかわきりに
1972年『櫂』で第9回太宰治賞
1977年『寒椿』で第16回女流文学賞
1979年『一絃の琴』で第80回直木賞
1982年『序の舞』で第17回吉川英治文学賞
1989年『松風の家』で第51回文藝春秋読者賞
1995年『蔵』でエランドール賞特別賞  をそれぞれ受賞していらっしゃいます。

賞に恵まれない無冠の作家も多い中、その筆力にふさわしいすばらしい経歴ですね。


さて本書にもどります。

「夜明けの桜島は、肩の辺りからほのかな桃いろに染まり、噴煙は線香のように細くまっすぐに立ち昇っている」

篤姫が江戸幕府13代将軍徳川家定の御台所となるため、養父島津斉彬が城主の鶴丸城を出発する早朝から著者はこのように筆を起こしています。

薩摩島津家の分家筋の姫として幼い頃より日本外史を友とし男勝りの気質でのびのびと育った島津敬子が島津斉彬にその器量を見込まれ養女となり、斉彬の特命を受け江戸幕府13代将軍徳川家定の御台所として江戸城に送り込まれますが、病身の夫とは夫婦の契りもないまま、2年をまたずに夫家定に先立たれてしまいます。

時はペリー来航や明治維新台頭の足音がかすかに聞えるような尊皇攘夷の嵐の真っ只中、まるで堅牢を誇っていた徳川幕府衰退を見届けるために存在したような篤姫の明治16年に息を引き取るまでの激動の運命を、著者は史実に沿って詳細に描いています。

大奥3000人の総師として崩壊する将軍家を最後まで諦めず支え続けた器量の篤姫を描く傍ら、14代将軍家茂の御台所となった和宮の定まらぬ嫁としての器量を対比させながら描いていて圧巻です。


本書を執筆した動機として、本書末尾に掲載された直木賞作家綱淵謙錠氏と対談で次のように語っていらっしゃいます。

「前からずっと和宮のことをいろいろ読みますうちに、やはり非常に徳川にいじめられたというようなことを読んだり聞いたりしていて、何か違うんじゃないかみたいな感じがありました」

綱淵氏はそれを受けて、「僕たちの天璋院というイメージは、不思議なことに、あの当時の攘夷派の浪人たちが和宮を持ち上げるために天璋院を叩くという誤りを犯したのですが、その誤った観念でつくられていました」と語っていらっしゃいます。


和宮に関する小説としては有吉佐和子氏による『和宮様御留』が有名ですが、これは「和宮替え玉説」というテーマを元に1978年に上梓されベストセラーになったものがあり、本書と合わせて読むとより興味深いと思います。


本書はそんな和宮との嫁姑の確執もさることながら、篤姫を養父島津斉彬が老中阿部正弘や伊達宗城、水戸斉昭などの開明派大名と結束し抱いた大改革の野望の布石とする経過や、開明派の押す一橋慶喜の人となり、浦賀に来航したペリーと幕府の折衝、篤姫婚礼の仕度のために特使として斉彬から遣わされたのちの西郷隆盛の様子など、充実した文体で激動の一時期が存分に描かれていて読み応えのある物語でした。


雰囲気の違うテレビドラマもおもしろいと思いますが、是非本書で別のおもしろさも味わってみられたらいかがでしょうか。

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