VINのらんどくダイアリー

ご訪問ありがとうございます。 「一日一生」を銘にさまざまな人生を読書というツールを通して味わっていきたいと思っています。 響きこし言葉に貼れるさみどりの付箋そよぎて林となりぬ

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2008年08月

私たちの夢と興奮をのせた4年に1度の祭典も終盤に近づいてきましたね。

猛暑の中エコはなんのその、エアコンをつけて寸暇を惜しんで競技を見ていました。

北島康介選手や伊調馨、吉田沙保里選手の金に湧いたり、塚田真希選手の銀に悔しい思いをしたり、いろいろな判定に義憤を感じたりと忙しい夏でした


さて本日はジェフリー・アーチャー氏の最新作『プリズン・ストーリーズ』をご紹介したいと思います。

波乱に富んだアーチャー氏の人生は富に有名ですが、簡単に記してみます。

1969年史上最年少の29歳という若さでイギリス保守党下院議員に就任
1973年100万ドルの財産を詐欺により失い一文なし
1974年総選挙で政界引退
1976年自らの経験をもとに処女作『百万ドルをとり返せ』を発表、借金を返済
1985年上院議員として政界復帰
1986年スキャンダルで辞任、このあと復帰
1992年一代貴族に叙任、ロード・アーチャーの名誉授与
1999年偽証罪で逮捕、保守党追放
2001年刑が確定し入獄
2003年刑務所出所、『獄中記』を執筆、ベストセラーに


次に小説家としてのアーチャー氏の主な作品を時系列で表すと

1976年『百万ドルをとり返せ』Not a Penny More, Not a Penny Less
1977年『大統領に知らせますか?』Shall We Tell the President?
1979年『ケインとアベル』Kane and Abel
1980年『十二本の毒矢』A Quiver Full of Arrows  
1982年『ロスノフスキ家の娘』The Prodigal Dangher
1984年『めざせダウニング街10番地』First Among Equals
1986年『ロシア皇帝の密約』A Matter of Honour
1987年『大統領に知らせますか?』Shall We Tell the President?
1991年『チェルシー・テラスへの道』As the Crow Flies
1993年『盗まれた独立宣言』Honour Among Thieves
2002年『運命の息子』Sons of Fortune
2002年~2004年『獄中記地獄篇/煉獄篇/天国篇』A Prison Diary
2006年『ゴッホは欺く』False Impression
2006年『プリズン・ストーリーズ』Cat O'nine Tales


ベストセラーになった長編のいくつかを胸を躍らせながら読まれた方も多いのではないでしょうか。

有名なサクセスストーリー三部作『ケインとアベル』『ロスノフスキ家の娘』『大統領に知らせますか?』はケインとアベルの成功物語、そしてアベルの娘がアメリカ初の女性大統領になるという壮大なストーリー、私も夜を徹して楽しんだ読者のひとりでした。

アーチャー氏は上記のような長編もさることながら、短篇の名手でもあります。


本書『プリズン・ストーリーズ』は獄中で聞いた囚人仲間の経験をもとに構成された12話の短篇集で、アーチャー氏ご自身が前書きで次のように書いていらっしゃいます。

「五つの刑務所を転々としながら、二年間にわたって収監されていた間に、わたしは獄中日記の日々の記述に含めるのにふさわしくないいくつかの物語を耳にした・・・
その九篇はすべて面白おかしく肉付けされているが、どれもみな事実に基づいている」


解説を担当された訳者の永井淳氏によると、本書の原題”Cat O’Nine Takes”のcatは生きた猫ではなく、cat o’nine tails(九尾の猫)という昔罪人を打つのに用いられた九本縄の鞭のことで、猫の爪で引っかいたようなみみずばれができるところから命名されたそうです。


非日常の刑務所モノは未経験の読者にとって興味深く、日本でも安倍譲二氏などがご自身で経験された非日常を描いていて有名ですね。


アーチャー氏ご自身も偽証罪で服役中にネタをしっかり掴み取るその余裕のある作家魂には感嘆するばかり!

肝心の9篇のネタはどれをとっても英国風エスプリが全体を網羅していて構成も充実、読み応えがありとても楽しめました。

さすがストーリーテラーの名に恥じない作家です。

読んでのお楽しみにあらすじを書くのは無粋ですが少しだけ導入してみます。

ロンドンで超人気レストランを営むイタリア人マリオ・ガンポッティと国税庁の税務査察官との売上高を巡って繰り広げられる水面下でのネコとネズミの闘いを描いた「マエストロ」

妻が自分との離婚を考えていると思い込み莫大な慰謝料を請求される前に妻を出し抜くために考え出した巧妙な方法で妻を死に至らしめるが最終のどんでん返しにまでは考えが至らなかった哀れなディックを描いた「この水は飲めません」


この短編集に続いて出版された長編も服役経験をもとに書かれた内容で、「現代版『モンテ・クリスト伯』」と著者自身が自負されているそうです。

楽しみですね

我が家は地方都市の市街地、大学病院や市役所などが立ち並ぶ一角のマンションです。
まわりには小さな公園があるくらいですが、そんな我が家でも蝉の勢いのある鳴き声で目覚めることもしばしばです。

梅雨明けも蝉の鳴き声で知り、夏の終わりも蝉で知ります。
自然の不思議をしみじみ感じますね。


あぶらぜみ 空をいためて 食べている

青空に ミンミンぜみの 羽透かす

蜩(ひぐらし)や 記憶の糸を 引き寄せる


『青空の指きり』に収められた恩田皓充さんの句から蝉に関するものを拾ってみました。

『青空の指きり』を出版した当時の恩田くんは13歳!


図書館での立ち読みでしたがみずみずしい感性には驚くばかりでした。


本書の巻末で立松和平氏が「小手先のことを越えた豊かな発想が息づいていて、空想に近いおおらかな世界がとらえられているのがこの作家の特徴である」と解説していらっしゃるそのままです。

ちなみに恩田くん5歳のときに詠んだ句だそうです。

南天を とろうとおもえば 落ちにけり


さて本日は曽野綾子氏著『一枚の写真』をアップしたいと思います。

あるきっかけで知り合った著名なカメラマン助手の青年の手で撮られた様々な写真を通して曽野自身を投影した作中の主人公「私」が一瞬の映像の中に捉えられた様々な人間模様を想像し感じ取るという連作、明も暗もある人生の1コマをクローズアップした小さな30の物語になっています。

何気ない小品の数々、それぞれの写真に登場する人々の人生もさることながら、「私」とカメラマン助手の青年の何気ない会話にも人間や人生の深遠さや温かさ、哀しさなどが感じ取られて、、胸を打たれました。


30話にはそれぞれいろいろな思いが溢れる読後感がありましたが、そのうちの1話をご紹介したいと思います。

それはカメラマン助手である青年が偶然車中で隣り合わせになった婦人を通して知った物語「星になった少年」です。

青年がカメラマンであることを知った婦人が軽井沢の自宅の庭のジャーマン・アイリスを撮りにきてはどうかと誘ったのがきっかけでその婦人と1人の薄幸の少年の物語を知ります。

母を亡くして軽井沢の夫人の庭を訪れるようになった親友の忘れ形見の少年と婦人の会話には抗いのできない人生の哀しみがあふれています。


「小母さまは、あの世があるとお思いですか。
そしてもし僕が早死にするようなことがあったら、母は喜んで僕を迎えに来てくれる、とお思いですか?」

「僕、会えると信じてるんです。
僕と母はとてもいい仲でした。
魂のことを語り合ったという気がした日もいっぱいありました」

そして少年は母の後を追うように病死してしまいます。

「とにかくここが星になった少年の庭です」と婦人はジャーマン・アイリス咲き乱れる庭を青年に指し示しました。



解説を受け持たれた外尾登志美氏は次のように締め括られています。

「曽野文学の世界はいつも本質に切り込んでいる。
そしてその一つ一つが系統だてられ積み重ねられて類い希な建造物のように屹立している。
それは私たちの人生の道しるべとなり、いま目の前にあるごく普通の現実の中に、深い意味と、輝きを、再発見させるのである」

私が感じていることをすべて表現してくださいました。

「のろしは あがらず のろしは いまだ あがらず」

1992年にがんで亡くなられた作家井上光晴氏の墓石に筆刻された自作の詩だそうです。

戦争や差別を主題にした作品を多く遺し、異能の作家といわれた井上氏の作品は未読ですが、瀬戸内寂聴氏の仏門入りの動機となった男性として話題を呼んだことでも有名ですね。


その井上氏の長女である井上荒野氏が2008年上半期の直木賞を受賞されて、父親の光晴氏が再び脚光を浴びているという記事が出ていました。

光晴氏は生前「群像文学賞」や「太宰賞」などの選考委員を務められていましたが、芥川賞候補になったものの落選、華々しい賞とは無縁の作家でした。


本日はその井上氏の長女井上荒野氏著『森のなかのママ』をご紹介したいと思います。

1989年『わたしのヌレエフ』で第1回フェミナ賞
2004年『潤一』で第11回島清恋愛文学賞
2005年『だりや荘』で第26回吉川英治文学新人賞候補
2006年『誰よりも美しい妻』で第27回吉川英治文学新人賞候補
2008年『ベーコン』で第138回直木賞候補
2008年『切羽へ』で第139回直木賞受賞

児童文学翻訳者から出発された氏には他に光晴氏のことを描いたエッセイ『ひどい感じ 父・井上光晴』を2002年に出版していらっしゃいます。

そこでは家族の目を通した光晴氏の規格外の性格や生き方、考え方が描かれていて光晴氏研究者にとっては興味深い内容となっています。


「荒野」は光晴氏がつけた本名で、人と変わった劇的な一生を送るようにとの願いで『嵐が丘』からとられたそうです。


このたび直木賞を受賞された『切羽へ』は未読ですが、評論などによると光晴氏の故郷の南の島を舞台に宿命の出会いに揺れる男女の機微を描いた内容だそうで、「切羽」とはそれ以上先へは進めない場所のことを表しているそうです。

光晴氏の次女であり荒野氏の妹さんの名前が「切羽」であることからの発想でしょうか。



さて本題の『森のなかのママ』に戻ります。

「一枚の絵」に連載していたものに加筆して単行本化し、2004年には文庫としても刊行されました。


「亡き父の個人美術館に暮らす女子大生とその母の周囲に起こるドラマを卓越した筆さばきで描いた秀作」

5年前箱根の旅館で「困った死」を迎えた高名な画家の一人娘いずみの目を通して語られる60歳になっても天衣無縫な女性の魅力を持った不思議なママとそれを取り巻く男たちの何気ない日常。


森の中にある小さな個人美術館に暮らすママを冷静な目で観察しているいずみはあることをきっかけに次第にママを見る目に変化が起きます。

もしかしたらママは自分の人生に起こった大波に呑み込まれず、どうにか渡り合うために天衣無縫さを甲羅のように身に着けていったのではないかと。

「私は、ママのほんの一部分しか見ていなかったのかもしれない。
もしかしたらママは、とってもスゴイ人なのかも」

大学生いずみに語らせた文章は簡素で少女小説のような雰囲気を醸し出しています。

物語全体が森のフィトンチッドに包まれたような、そんな心地よさを感じさせる読後感でした。


ゴーヤの季節です。

少し前までは沖縄限定だったゴーヤも今では日本全国夏の風物詩になるほど。


いつも愛読させていただいている先輩方のブログもゴーヤ満載!


まずは吉備高原ですばらしいブログを発信していらっしゃる大先輩zensanさんがゴーヤのグリーンカーテンの写真をアップしていらっしゃいます。
            
              http://zenmz.exblog.jp/

同じく大先輩ttfujiさんはご自宅で栽培されたゴーヤを使っての料理を披露していらっしゃいます。
  
              http://ttfuji.exblog.jp/7354733/

私もカレーゴーヤチャンプルーにトライしましたが、カレー粉が食欲を刺激してとてもおいしかったです。
ttfujiさんのブログを訪問されていた沖縄在住のンチャさんによると、売れて黄色や赤くなったゴーヤは苦味がなくなり甘みが出てくるのでサラダにしたり、そのまま果物のようにして食べてもおいしいとのことです。

同じく大先輩のi&iさんからはゴーヤ茶の作り方を教わりました。
         
              http://itsu-70.at.webry.info/200808/article_2.html

中のわたを取り除き薄く半月に切って干すだけだそうです。


乾燥したものを容器に入れて年中使えるようなので、たくさんできるゴーヤを無駄にしなくていいですね。



前述のンチャさんによると直射日光を当てて育てたゴーヤは、ビタミンCが豊富に含まれているだけでなく、抗活性酸素物質も多く含まれているので、美容と健康にとてもいいそうです。


しっかりゴーヤを食べて酷暑を乗り切りましょう!




さて本日は第51回江戸川乱歩賞受賞作『天使のナイフ』薬丸岳氏著をご紹介します。


「少年犯罪における大問題『加害少年の社会復帰か、厳罰による贖罪か』に鋭く迫る硬派ミステリー」


著者薬丸氏にとって本書は事実上のデビュー作だそうですが充実度は歴代の乱歩賞受賞作品のなかでも秀作です。


5人の選考委員の方々がぶっちぎりの高得点、満場一致で推挙されたのもうなずける内容。


井上夢人評 「少年法が抱える問題点を、様々な角度から描いた社会派推理小説だ。
ややもすれば説教くさくなったり告発が鼻につきかねない難しいテーマを、作者は丁寧な筆致で、サプライズを用意したエンタテインメントに仕上げている」

逢坂剛氏評 「少年犯罪、少年法に対する熱い視線が感じられるし、贖罪の問題まで踏み込んだ作者の姿勢は、十分に評価してよい」

乃南アサ評 「緻密な構成力でドラマチックに仕上がっており、読者を引きつける力のある作品だった」



生後五ヶ月の娘の目の前で13歳の少年3人に妻を惨殺された夫・桧山貴志の物語です。


少年法をめぐる是非の議論は様々な事件が発生するたびに話題に上りますが、この小説は少年法を取り巻く問題点を被害者と加害者の両方の視点から描くという難しい手法に挑んでいて最後まで大きな破綻を見せないストーリーに仕上がっています。


しいて欠点をあげるとすれば、登場人物の物語をあまりにも非現実的に作り上げているところから、ドキュメンタリー的な要素からだんだんに逸脱して終盤に入ったところではないでしょうか。


少年犯罪の被害者と加害者があまりにも重なり合いすぎているところにくどさとご都合主義を感じた読者も多かったのではないかと思いますが、緻密なプロットでこのような重いテーマをまとめあげた力量には感服しました。

別の作品を読んでみたい作家のひとりとなりました。

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