VINのらんどくダイアリー

ご訪問ありがとうございます。 「一日一生」を銘にさまざまな人生を読書というツールを通して味わっていきたいと思っています。 響きこし言葉に貼れるさみどりの付箋そよぎて林となりぬ

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2008年09月

Mixiのコミュニティーから広がったといわれる朝バナナダイエットが大流行ですね。

先日TVでオペラ歌手の森公美子さんが7キロ痩せた経過が放映されてますます火がついたようです。

朝食はバナナとお水だけ、昼食と夕食は何を食べてもいいというのが魅力のポイント。

そのためスーパーでは納豆以来入荷が追いつかないほどの品薄だということ、やはり昨日近くのスーパーでは売り切れでした

一億総雷同!

ずっとスリム体系の私にはまったく縁のない話ですが、バナナにはカリウムやビタミンA、Cが豊富に含まれているのでずっと前から朝バナナをヨーグルトに入れて食べています。

今から半世紀ほど前は台湾からのバナナが一般市民には手がだせないほどの超高級品でしたが、現在はいろんな国からのバナナが安価に店頭に並んでいますね。


以前読んだマンガを思い出しました。

アルツハイマーとおぼしき気難しいおばあさんを喜ばそうと家族が松茸づくしのお膳を用意したところ、「こんな裏山で採ってきたようなモン」と言ってそっぽを向いてしまいますが、バナナを出したところ「こんな高級品を・・」とあとの言葉が続かないほど大感激するというものでした。

世相の移り変わりを4コマでずばり表現してしかも笑いをとるなんて漫画の威力に敬服です。



さて今回はかなり前の作品ですが、宮尾登美子氏著『きのね』をご紹介したいと思います。

宮尾氏といえば、いまブレイク中のテレビドラマ「篤姫」の原作者ですね。

原作『天璋院篤姫』は以前ブログに載せましたのでよかったら読んでくださいね。

    http://yaplog.jp/ashy_ashy/category_5/


『きのね』レビューに戻ります。

1988年~1989年にかけて朝日新聞朝刊に連載されたものを文庫化したものが本書です。


梨園の中でも名家中の名家十一代市川団十郎とその妻千代の一生を描いた物語といわれています。


十一代市川團十郎といえばマスコミに度々浮名が登場する十一代市川海老蔵のおじいさん、そしてその團十郎に命を捧げた妻はおばあさんに当たる方ですね。

それらを知った上で読めば興味尽きない実話ですが、そんな世間の興味の枠をはるかに超えた崇高ともいえる愛を男に捧げた女の一生を描いた物語です。


父親の仕事の傾きで一家離散の末、叔母の家の居候になっていた実科女学校を出たての主人公光乃が口入れ屋の紹介で歌舞伎役を生業とする菊間の長男雪雄付の女中となる18歳から物語が始まります。


女中となったその日自分の前を通り過ぎた雪雄の姿に光乃は恐れにもにたおののきを抱きます。

「このひとの身辺から漂い立つ、ひしひしと激しいもの、研ぎ澄まされた鋭いものが光乃の眉間をしたたかに痛打したように感じられ、それはただちに、このお方の前でしくじりは決して許されまい、という、息詰まるような思い」でした。

結核療養から病癒えて舞台復帰して間もない雪雄の生来の孤独で不器用、世渡り下手の剃刀のように研ぎ澄まされた性格を一瞬で感じます。


雪雄を通して罹患した結核で最期を迎えるまでの半生を雪雄の変遷とともに耐えて尽くす光乃の姿を著者は余すところなく描いています。


周囲に認められることもなく、雪雄も産婆もいないところでたった独りで長男を産み落とす場面の著者の筆力には圧倒されます。

「たったいま、初産の大任を果たした産婦は、髪も梳かし、もんぺの紐をきちんと結んでいる」その姿に深く打たれた産婆は思わず後へ退ってその聖母子に合掌します。


長男に続き長女を授かったのち、雪雄が大名跡を襲名、正式な妻と認められた光乃の幸せは雪雄の病で断ち切られてしまいますが、その後も自分の終焉の日まで遺児十二代團十郎を支えることで人生を全うします。


まるで浄瑠璃のようだと評される著者の文体によって光乃の究極とも思えるような崇高で密やかで、そして激しい愛情が立ち上がってきて私たち読者の胸を打ちます。


もはや現代では死語となった「耐える愛」にしたたか打ち付けられてしまいました。

反面、主人公の中のあまりの自己犠牲的精神に反発を感じながら読んだのも事実です。

私が住んでいる岡山は「晴れの国岡山」というキャッチフレーズがあるほどお天気マークが多い県ですが、旭川、高梁川、吉井川という3本の一級河川の流域面積が県全体の面積の80%を占めているそうです。


瀬戸内海を隔てたお隣の香川県では年中水不足ニュースが流れますが、こちらはお陰様で水不足とは無縁な生活です。


そんな岡山なのに夫のゴルフのときに限ってよく雨が降ります。

週間天気予報では前後ずっと晴れマークなのに昨日だけ雨(――;)

それも早朝目覚めてしまうほどの激しい雨音!


どうなることかと思っていましたが、スタート時には雨も止み、曇り空のまたとないゴルフ日和だったそうです。

夕方持ち回りの大きな優勝カップを持ち帰った夫、久しぶりのご機嫌ゴルフだったようです。


この優勝でハンディがぐんと少なくなり、もう一生涯優勝はないかもしれないな、といいながら嬉しそうでした。

何はともあれ、機嫌がいいことはめでたいことです”^_^”



さて、今回は西加奈子氏著『ミッキーかしまし』をご紹介したいと思います。


私が属しているSNSの読書コミュで話題騒然の本書。

図書館に行く度、在庫をパソコンで検索しますがいつも貸し出し中(-_-;)


「さすがひっぱりだこなんだわ」と深く納得して引き下がっていましたが、先日飛び込んできました、私の視野に!!

いつかは借りられる予約システムが大の苦手な私はいつも出たトコ勝負で本をチョイスしますが、、、なんとラッキーなこと! と心の中で大興奮!


父親の赴任先テヘランで生まれ、小学生までカイロで過ごし、その後大阪へという帰国子女、2004年『あおい』でデビュー
2005年『さくら』が20万部を超えるベストセラー
2006年『きいろいゾウ』が話題作に
2007年『通天閣』で織田作之助賞受賞

Wikipediaによるとざっとこのような経歴の31歳妙齢の女性です。


「テヘランで生まれ、エジプト・大阪で育った若手人気作家「ミッキー」。
その波瀾万丈、驚天動地、抱腹絶倒の日々を、奔放なイラストを添えて描く超爆笑エッセイ!」


あまりに若い作家さんの著書は敬遠しているので、上記の作品はすべて未読ですが、『webちくま』の連載を書籍化したという著者初のエッセイ集の評判があまりにも芳しく、私の笑いのツボを刺激してくれそうで、もうたいへんな期待感!

で、読み始めましたが・・・全然笑えない

あれっ? そんなはずはない、こんなに爆笑評判なのに


著者との年齢差は大きいですが、私はお笑いだったら何でもOKの吉本系熟年おばさんを自認しています。

笑うことに関しては自信があったはずなのに・・・お願い、笑わせて!

戸惑いながら読了。


それにしても天衣無縫、意図的なていらいのない自然な文章、他人の目を妙に意識しない率直さ、お酒が大好きなキュートな女の子であるということがよくわかりました。

読書にふさわしい秋の足音が聞えてくるような季節になりましたね。

私の夢は湿気のない南の島の大木の下で1日寝そべって読書三昧することです。

気温はちょうど25度くらい、目前には深いブルーの遠浅の海が広がり、木陰の白いテーブルにはちょっとつまめる軽食がタイムリーにどこからともなく運ばれてきて・・・書きながらあまりの環境のちがいにバカバカしくなってきたのでこの辺でやめます。


さて、先日ご紹介した『禁断のパンダ』は「このミステリーがすごい!」大賞受賞作でしたが、本日は「江戸川乱歩賞」受賞作『沈底魚』曽根圭介氏著をご紹介したいと思います。


日本のミステリー作品に授与される主要な賞の両輪といわれているのがこの2つの賞ですが、賞金は「このミス…」が1200万円、「乱歩賞」が1000万円で、「横溝正史賞」や「松本清張賞」、「鮎川哲也賞」などに比べて断トツに高額です。

ちなみに現在世界で最大のミステリ団体の権威ある賞はMWA(アメリカ探偵作家クラブ)賞、別名エドガー・アラン・ポー賞で、特に最優秀新人賞と最優秀長編賞、ペイパーバック賞の3部門が有名で、ジョン・ル・カレやフォーサイス、ルース・レンデル、ロバート・パーカーなど名だたる作家がずらり受賞。

『検視官』で一躍有名になったパトリシア・コーンウェルや、私の大好きなメアリ・W・ウォーカーも受賞作家です。  
   
日本人では初めて桐野夏生氏の『OUT』が2004年度エドガー賞にノミネート、残念ながら選ばれませんでしたが名誉ある快挙として話題になりましたね。



さて寄り道してしまいましたが、曽根圭介氏『沈底魚』に戻ります。

著者曽根氏は大学中退後、サウナ従業員、漫画喫茶の店長を経て
2007年『鼻』で第14回日本ホラー小説大賞短篇賞
同年本書『沈底魚』で第53回江戸川乱歩賞を受賞されました。


「乱歩賞史上、もっともスリリングな公安ミステリー、堂々登場!」

市民に紛れて暮らす眠れるスパイ・スリーパーすなわち「沈底魚」をタイトルにしたエスピオナージ(諜報)ものです。

「大臣経験者の現職大物議員がスリーパーとして中国に機密情報を流している」という中国人亡命者の衝撃的な証言がアメリカからもたらされるところから物語がスタートします。

主人公不破を初めとする中国担当の警視庁外事2課の個性的な捜査員たちが、警察庁のキャリアの女性理事官のもと事件の真相を探る過程で闇の諜報活動や捜査員同士の探りあいに翻弄され、右往左往する姿を克明に描いていて秀作です。

「このミス大賞」受賞作『禁断のパンダ』に比べて、肩に力を入れない自然体のこなれた文体、抑制された会話体に光るものを感じました。


果たして本物の沈底魚は誰か、二転三転する目まぐるしい展開に読者である私も最後まで翻弄されてしまいました。

選考委員の方々の評をお読みください。

綾辻行人氏「物語の進められ方が後出しジャンケン的にすぎる」

大沢在昌氏「職業として公安刑事を務める男たちの描写が秀逸である。近年の乱歩賞にはなかった良質のスパイストーリーだ」

真保裕一氏「現在の社会情勢をふまえて物語作りに取り組んだ挑戦の姿勢を高く評価したい。刑事たちの存在感も抜きんでていた」

半年ほど前、朝日新聞に宝島社主催の「このミステリーがすごい!」大賞を受賞された拓未司氏のインタビュー記事が出ていました。

34歳という年齢そのままの若くて元気なその辺にいる若者という風貌で好感が持てましたが、記事を読んだ私はいささか驚いてしまいました。


経歴を見ると、高校卒業後大阪あべの辻調理師専門学校で学び、フランス料理店に勤務したのち、友人と共同経営した店の経営が厳しくなり、ピザチェーンの正社員に転職、そのとき高校卒業以来初めて読んだ宮部みゆき氏の『火車』に感銘を受けて作家になることを決意されたということです。


奥さんにその決意を伝えると返ってきた「なれば」という言葉を支えに、同じチェーン店のアルバイトに身分を変え生活費を稼ぎ、「句読点やカギ括弧の使い方を勉強しながら」、江戸川乱歩賞と「このミス大賞」を目指して書き続けたそうです。

「周りはもちろん『無理やろ』と思っていた。でもそれがエネルギーになった」


そして2年でデビューを果たし、同じ主人公のシリーズ物となる次作を執筆中で、料理は格好の息抜きになる、とインタビューの記事にありました。


私の驚きをご想像ください。

私事ですが、彼の倍ほどの年と経験を重ねて、読書歴○○年、小説を書いてみたいという気持ちと暇はありあまりほどある私、句読点もどうにか正しい位置につけられると自負していますし、もちろん『火車』も読みました!

なのに・・・1冊読んだだけで作家を目指し、1冊書いただけの本が受賞するなんて!

あまりの驚きにその記事を切り取って保管したくらい。


いつかその泥縄式(だろうと想像)の受賞作を読んでやろうじゃないの、と思っていたところ、先日図書館で目に飛び込んできました。


『禁断のパンダ』拓未司氏著

神戸が舞台の「美食ミステリー」、主人公でピストロのオーナーシェフである若き料理人幸太に著者自身を投影させた内容には「さすが料理人!」と感動する箇所が至る所にありました。

とにかく料理の描写がすごい!

いやはや、堂々としたものです。

これが「句読点やカギ括弧の使い方を勉強しながら」書いた文?

文字の間からディッシュの芳醇な香りが漂ってきて、目がくらみそう!

「主人公が語ることは自分自身の考えを反映しています。熱は入りましたが、料理のパートで執筆に苦労した記憶はないです」


「ミシュランガイド」と肩を並べる「ザガットサーベイ」レストランガイド神戸の料理部門ランキングで押しも押されぬ断トツ1位に輝いているフレンチレストラン「キュイジーヌ・ド・デュウ」での結婚披露宴の豪華会食シーンがのっけから五感に迫ってきます。

「フォアグラのメレンゲ仕立て――とろけるようなフォアグラの濃厚さと鮮度の良さはもちろんのこと、脇を固めるアスパラガスのほろ苦い甘みとふわふわの食感のきめ細かいメレンゲ、そしてその中に忍んでいたトリュフの鮮烈な香りが一体となった、素晴らしい一品」


数々の料理の合間の主人公幸太と神業的な味覚を持つ料理評論家中島翁の美食談義が文章の行間から立ち上がってきて味覚を直撃します。

この結婚披露宴を前ふりに、物語はミステリーとして主人公幸太と刑事青山の両サイドから展開していきます。


事件の詳しい内容は書き控えますが、ミステリーとしてのストーリー性は今一歩、ミステリー本としては大味で、説得力に欠ける殺人、登場する刑事も小説用のティピカルな人物設定でした。


各選考委員の方々もこの点を指摘されています。

「ミステリーとしては構成に難があるが、グルメ小説的な魅力は、ミステリー部分の欠点を補ってあまりある」    大森望氏
「『このグルメ小説がすごい』賞ならば文句はない。だが、肝心の殺人事件を中心としたミステリーとしての構成がぎくしゃくしてる」  吉野仁氏


それにしても文章力は期待以上で、美食ミステリーとしてのすばらしさには感服しましたが、私個人としては物語の内容、特に後半の展開がどうにも受け入れがたい、読後感がはなはだよくない小説でした。


次回はこの筆力を存分に発揮した爽快なミステリーを期待しています。

インターネットや携帯電話が浸透し、若い世代の中には固定電話を引かない人や新聞を定期購読しない人々が増えてきているようですね。

ニュースはタイムリーなものがネットですぐ読めるということですが、私はやはり紙を手に取って読む、という行為がとても好きです。


転勤の多かった我が家は一貫して朝日新聞を購読していますが、それに夫が日経を加えたり、転勤先の土地事情を知るためその土地の地元紙を加えて購読してきました。

そんな事情で、5年前岡山に帰ったとき地元紙である山陽新聞を2年ほど購読しました。


本日ご紹介する飛鳥圭介氏著『おじさん図鑑』はその山陽新聞に定期的に掲載されているコラムが1冊の本になったものです。

本書のあとがきによると、1990年秋から東京新聞、中日新聞、北海道新聞で連載スタートしたものが評判を呼んで徐々に広がり、山陽新聞を初めとする全国の地方紙で週一回の読み物として人気を博しているようです。


内容を要約すると、おじさんたちの妄想、夢、希望、失望、怒りなどを織り交ぜて現実の生活の中での喜怒哀楽を描いたものです。

時にはしんみりとした哀愁を誘い、時には抱腹絶倒、人生の微妙な機微をしっかり掴んでいて、これが何とも人間味に富んでいて、週一の連載が待たれる読物でした。

現在は山陽新聞の購読を止めていますが、当時はあまりのおもしろさに毎回切り抜いていたくらいです。


そんな懐かしい『おじさん図鑑』が1冊の本として図書館で私の目に飛び込んできたときの喜び!

とうとう全国デビューしてくれたんだなあという保護者さながらの感慨!


そしてこの単行本で明らかになった世の中の「おじさん」を代表とする著者のお顔はまさしく私が想像していた「おじさん」そのものでした。

こういってはナンですが、街中や居酒屋のカウンターにいても全く目立たない「おじさん」代表の好人物のお顔がそこにありました”^_^”

東京在住の通信社役員、現在60歳、日本百名山のうち八十ほど制覇された登山家でもあるそうです。


ここでいろいろ書くよりも短いコラムなので、少しピックアップして楽しんでもらいたいと思います。

    
納得」より

テレビのグルメ番組を見ていると面白い。とにかく大げさなのである。
たとえば、毎日行列ができるラーメン屋が紹介されたとき、そのナレーションがこうだ。

「メンにこだわり、汁にこだわって三十年。
その徹底したこだわりの中から生まれた究極のラーメンが、今、堂々と登場する」

ごく普通のラーメンが映され、タレントが一口か二口すすって感に堪えないかのように目をむく。
そして言うのだ。 「う―む。マジにうまいッス」

次に、頑固そうな店主が出てきて、決めのセリフを吐く。「わたしは、このラーメンに命をかけてますから!」

すごいのである。さんざんにこだわったあげく、命懸けでラーメンを売っているのだ。
ここまでは笑って見ていたおじさんだが、次のシーンが逆リンにふれた。

タレントがおもねるように、「これで六百円なんてマジ信じられないスヨ」と言ったのを受けて、「原価はとっくに割っていますけどね、自分が納得できればそれでいいんです」と店主が大ミエを切ったのだ。

いくらなんでもこれはない。大げさは愛嬌としても、ウソはいけない。
赤字なら店の存続そのものが不可能ではないか。

「ウソをつくな。利益は出ていると、正直に言うべきだろう!おれは納得できないぞ!」
おじさんはテレビに向かって、むなしい遠ぼえをするのだった。


ここだけの話」より

おじさんの世界では、前言葉というのがあり、よくこんな念押しをする。

「ここだけの話だがね!」
「君のハラに収めておいてほしいのだが…」
「君の口の固さを見込んで…」
「よそにもらしたら困るが…」
「これはマル秘の話…」

話し手は、声を落とし、いかにも秘密を明かす態度をとる。
聞き手の方も、それに合わせて前かがみになって聞き耳を立てる(フリをする)。

話の中身は、他人の悪口、会社の人事異動の情報、タメにするうわさ話が圧倒的に多い。
要するに大したことではないのだ。

しかし、「ここだけの話」で「秘密」だったはずなのに、また聞き手が約束どおりに他言していないのに、一週間もすると「どこでも」「公然」とささやかれている。

つまり、話し手は、「君だけに」という話を、みんなにしゃべっているのである。

話したくて話したくてたまらないのだ。 それが証拠に……。

上司に「口の固さを見込んで」と言われたおじさんが、「いや部長、私は口が軽いので有名で、秘密なんぞ守れるわけがないんです。マル秘話は勘弁して下さい」と断った。

上司は驚いた表情だったが、メゲない。

「その君の率直さを見込んで、ぜひ聞いてほしいのだよ」

聞かぬなら聞かせてみせようここだけの話。


名前の記憶」より

記憶力が悪いのは今に始まったことではないのだが、最近、おじさんは特に人の名前が覚えられない。
会合などでそんな人に声をかけられると大いに困る。

「山田さん、どうもごぶさたしております。お元気でいらっしゃいますか」と、見知らぬご婦人から丁寧にあいさつされた。
見知らぬ、といってもどこかで会ったことのある人に違いない。

先方は、おじさんのことをよく知っている様子なのだ。

「いえいえ、ごぶさたはお互いさまで、ハハハ」だどと適当な社交辞令で済ませたいのだが、先方が離さない。

「で、どうですか。最近は相変わらずですか」

何が相変わらずなのだろうか。話の中身が見えない。これもあいまいに、おじさんは応じた。

「どうもねえ、相変わらずといっていいものかどうか、ハハハ、いやはや困ったもんです」

すると、相手のご婦人はマユをひそめ、声も一段落としてささやいた。

「お困りなんですか…。やっぱりねえ…。大変ですねえ」

ナンだ、なんだ、なにがどうしたのだ。

「アハハハ、ま、大したことはありませんがね。ワハハハハ」

笑い声を大きくして、その場は切り抜けて。が、後になっておじさんは苦しむのである。
―――あの人はだれ、そして、一体何の話をしていたのだろう。


最後に「私だけ?」より

最近よく投書欄や評論のコラムなどで、「…と思うのは、私だけであろうか」という結びの文章を目にすることが多くなったような気がする。

文の前段は大体が世相や清二に対する慨嘆で、それに続いて例えば「こんな自然破壊のひどい日本に住みたくない、と思うのは、私だけであろうか」、あるいは「何よりも政治家のリストラが急務である、と思うのは、私だけであろうか」といった具合に使われる。

おじさんはこの結語を目にするたび、「そうだ、お前だけだ」とつい口に出してしまう。

この文章に、一種の気取りと鼻持ちならない自己陶酔とを感じてしまうのだ。

どんなにいいことを書いていても、この結語ひとつで台なしになってしまう。

中身に共感できても、最後にひっくりかえしてしまうのだ。

「どうしてこういうクサイ書き方をするんだろう。『…と思うのは、私だけではあるまい』と言い切ってくれれば、読む方も〈そうだ、そうだ、オレだてそう思う〉となるではないか。
それをキザっ田らしく『…と思うのは、私だけであろうか』なんて書かれたヒにゃ、どうしたって〈そうだよ、お前だけだよ〉と言いたくもなろうじゃないか」

ちなみに、おじさんは周囲の人間にも聞いてみた。

十人のうち十人とも、おじさんと同様の反発を感じたという。

こんな結語は使うべきでない、と思うのは私だけではなかったのだ。


すみません、その「一種の気取りと鼻持ちならない自己陶酔」を感じさせるゴウマンな一文を時々書いているのがこの私です、しかも読む人は反発を感じるだろうなぁと思いながら

ではなぜ書くかと問われると、ひとえに文才のあまりの貧しさゆえに、文のつなぎや適当な言葉が見つからず、おさまりのいい「…と思うのは私だけでしょうか」をついつい安易に使っていました、それも赤面しながら・・・

お許しください<(_ _)>

これからは極力不快で不遜、クサい文は避けるため、文章力を磨いていきたいと思っていますので、これに懲りずに読んでくだされば本当に感謝です!

先日テレビのクイズ番組にとても優雅で興味深い言葉遊びが出ていました。

観ていらっしゃった方も多いと思いますが、「ぼた餅」に関するものです。

昔は春のお彼岸に先祖への供物としてどの家庭でも作られていた「ぼた餅」は小豆餡を牡丹の花に見立てて「牡丹餅」と名づけられたそうですが、面白いのは四季それぞれに趣向を凝らした名前がつけられていることです。

春は「牡丹餅」、夏は「夜船」、秋は「御萩」、冬は「北窓」

☆夏☆ ぼた餅は餅つきのような杵で搗く派手な音を出さずに作るので、周りの人に知られないというところから「搗き知らず」→「着き知らず」→「夜船」だそうです。

☆秋☆ 小豆餡を秋のお彼岸の時期に咲く萩の花に見立てて「御萩」

☆冬☆ 夜船と同じく「搗き知らず」→「月知らず」→「北窓」

春秋のお彼岸にぼた餅を食べる習慣は江戸時代からだそうです。

小豆の赤色には災難が身に降りかからないようにする邪気払いの効果があるとする信仰が先祖の供養と結びついたようです。

本当に日本語は奥が深いですね。



さて本日は第134回直木賞&第6回本格ミステリ大賞受賞作『容疑者Xの献身』東野圭吾氏著をご紹介したいと思います。

2005年度の「週刊文春ミステリーベスト10」&「このミステリーがすごい!」&「本格ミステリ・ベスト10」それぞれ第1位にも輝きました。


現在ベストセラー作家として不動の地位を築かれている著者ですが、『秘密』でブレイクするまでは文学賞に応募するたびに落選するなど、不遇の時代も長かったようです。


このブログでも『手紙』をご紹介していますのでよかったら読んでくださいね。

   http://yaplog.jp/ashy_ashy/archive/100

『手紙』読了のあと、『秘密』『赤い指』『時生』『白夜行』を読みましたが、私の中でアップを喚起するものがあまりなく、読みっぱなしとなっていました。

今回文庫化したのをきっかけに直木賞受賞作で「ガリレオシリーズ」初の長編として話題になっている本書を購入しました。


さて感想は・・・

読者が低年齢化しているといわれる東野作品、期待せず読みましたが、かなり満足度の高いものでした。

著者もご自身の作品の中でベスト5に入るといわれている自信作。


不遇の天才数学者石神におとずれた初めての恋のため、持てる限りの頭脳を駆使して命がけで仕掛けた完全犯罪と、そのトリックの謎に挑む石神のかつての親友である物理学者湯川の対決。


捜査が難航する過程で湯川が石神の犯行の真相に気づく根拠が少々弱くてこじつけ感がありましたが、全体的に細部のヒントの配置も無理がなく、ラストで顕わになった石神の命を賭した深い愛情が胸に迫りました。

ミステリーとしてよりも純愛物語としての要素が勝った物語でした。

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