関東に住む子どもたちが夫の古希祝を計画してくれるというので上京。
還暦を迎えた直後から相次ぐがんに見舞われた夫が生還して元気に今日を迎えられるのは言葉では言い尽くせない行幸という感じが家族の中にあります。
中学の卒業文集で将来の夢について他の生徒たちが「医者になって人助けをすること」など社会に向けての中学生らしい夢を書いていた中、唯1人「隠居になること」と書いて失笑を買ったという夫。
できれば50代でリタイアしたかったはずが現実には周囲がリタイアを認めてくれないということもあり、やっと遊べるようになったのはここ2,3年。
働きたくても仕事がないという人々から見れば何と贅沢なと反発を買いそうですが、仕事から解放されたいと中学生のときからひたすら望んでいた夫になかなか望みが叶えられないというのは運命の皮肉でしょうか。
念願叶って現在はやっと1つだけの名誉職を残して比較的遊びの計画が自由になるので本人は至って満足しています。
というわけで箱根・奥湯本の温泉宿で一足早いお祝い旅行を楽しんできました。
長男が運転するワゴン車で全員が移動、自然あふれる露天風呂で源氏蛍を観賞したり、雉料理を堪能したり、帰りは御殿場のアウトレットでショッピングを楽しんで帰宅。
次の日は音楽好きな夫のために長女が用意した「ブルーノート」のサプライズ。
アメリカから来日したMJQ(マンハッタン・ジャズ・クインテット)の生演奏とお酒を堪能して一連のお祝い旅行も終わりました。
みんなありがとう!(といってもこのブログ、家族の誰も見ませんが)
さて本日は湊かなえ氏著『告白』です。
新幹線のお供にと駅の構内で購入したのがこの話題本。
ハードカバー時代図書館では常時貸出中、今更というほどの話題作、早々と文庫化、映画化もされ好評のようですね。
2008年『聖職者』で第29回小説推理新人賞
2008年『告白』で「週間文春ミステリーベスト10」で第1位、
「このミステリーがすごい!」で第4位
2009年『告白』で第6回本屋大賞受賞
著者は中国新聞のインタビューに答えて「緻密な構成の支えとして、徹底した登場人物の性格付けを心がけており、『履歴が決まれば人物が動いてくれる』として執筆前にはどんな脇役でも履歴書を作り込んでいる」と 語っていらっしゃるところ、ある種似たようなミステリを描く作家・天童荒太氏と同じようなスタンスの作り方をされているようです。
私のように「このミス・・・!」や「本屋大賞」受賞作という前評判に煽動されて手に取られた方も多いでしょう。
映画はまだ観ていませんが、さまざまな小説の映画化では疑問符だらけのキャスティングが多い中、主演の松たか子さんは主人公の心の無機質な感じをよく捉えていてぴったりの配役だと想像しています。
さて本書についての感想です。
6章から構成された本書、1章ずつにある事件の関係者が登場し、一人称語りで事件の核心に迫るという構成になっています。
愛するわが子を生徒2人の手によって殺された女教師の復讐の物語。
構成自体にはあまり破綻はなく、読者の覗き見趣味を刺激して終盤まで一気に読ませる力は新人とは思えないものがありますが、人間の負の部分をここまで追い詰めて書ける作家さんの内面を知りたいと思うくらい後味の悪い作品でした。
第1章から6章まで「聖職者」「殉教者」「慈愛者」「求道者」「信奉者」「伝道者」というあまりに大上段すぎるタイトルとそれに比してあまりにも週刊誌ネタのような内容とのアンバランスにまず違和感。
第1章の主人公の女教師の生徒への語りには引き込まれるものがありましたが、語りというにはひとつの事柄について説明的過ぎるのが目立ったところ。
娘殺しの犯人と指摘されたA君とB君の1人語りものちに出てきますが、文体の不自然さを感じたのがBの母親の日記です。
果たして日記にここまで多弁に文を重ねる人がいるのか、自分のストレスを刻み付ける日記に「です」「ます」調で記すか、などなど不自然満載。
事件から不登校を続け、あげくは母親殺しの犯人となるBの周辺を明らかにするために登場させたBの姉による亡き母親の日記の開示はこの作品に不可欠のものだったのかどうか。
著者は最初の章の「聖職者」で第29回小説推理新人賞したあと、出版社の求めに応じて加筆して『告白』を刊行したそうで、より人間の醜悪さをデフォルメするような章を次々加えることで完成度の高いものを目指したようですが、あまりにもリアリティのない唐突な幕切れに唖然とした読者も多かったのではないでしょうか。
筋立てに大きな破綻は見られないと書きましたが、内容的には上述のほか、HIVの取り扱いに非常な違和感を覚えました。
HIVに関しても余分な誤解を受けぬようにとの配慮か著者特有の説明的解説をふんだんに散りばめ布石を打っているように見えますが、復讐の材料にHIV患者の血液を用いるという発想に不快感が湧くのが否めませんでした。
いろいろ書きましたが興味本位で最後まで読ませるという意味では話題本でした。
還暦を迎えた直後から相次ぐがんに見舞われた夫が生還して元気に今日を迎えられるのは言葉では言い尽くせない行幸という感じが家族の中にあります。
中学の卒業文集で将来の夢について他の生徒たちが「医者になって人助けをすること」など社会に向けての中学生らしい夢を書いていた中、唯1人「隠居になること」と書いて失笑を買ったという夫。
できれば50代でリタイアしたかったはずが現実には周囲がリタイアを認めてくれないということもあり、やっと遊べるようになったのはここ2,3年。
働きたくても仕事がないという人々から見れば何と贅沢なと反発を買いそうですが、仕事から解放されたいと中学生のときからひたすら望んでいた夫になかなか望みが叶えられないというのは運命の皮肉でしょうか。
念願叶って現在はやっと1つだけの名誉職を残して比較的遊びの計画が自由になるので本人は至って満足しています。
というわけで箱根・奥湯本の温泉宿で一足早いお祝い旅行を楽しんできました。

長男が運転するワゴン車で全員が移動、自然あふれる露天風呂で源氏蛍を観賞したり、雉料理を堪能したり、帰りは御殿場のアウトレットでショッピングを楽しんで帰宅。
次の日は音楽好きな夫のために長女が用意した「ブルーノート」のサプライズ。
アメリカから来日したMJQ(マンハッタン・ジャズ・クインテット)の生演奏とお酒を堪能して一連のお祝い旅行も終わりました。

みんなありがとう!(といってもこのブログ、家族の誰も見ませんが)

新幹線のお供にと駅の構内で購入したのがこの話題本。
ハードカバー時代図書館では常時貸出中、今更というほどの話題作、早々と文庫化、映画化もされ好評のようですね。
2008年『聖職者』で第29回小説推理新人賞
2008年『告白』で「週間文春ミステリーベスト10」で第1位、
「このミステリーがすごい!」で第4位
2009年『告白』で第6回本屋大賞受賞
著者は中国新聞のインタビューに答えて「緻密な構成の支えとして、徹底した登場人物の性格付けを心がけており、『履歴が決まれば人物が動いてくれる』として執筆前にはどんな脇役でも履歴書を作り込んでいる」と 語っていらっしゃるところ、ある種似たようなミステリを描く作家・天童荒太氏と同じようなスタンスの作り方をされているようです。
私のように「このミス・・・!」や「本屋大賞」受賞作という前評判に煽動されて手に取られた方も多いでしょう。
映画はまだ観ていませんが、さまざまな小説の映画化では疑問符だらけのキャスティングが多い中、主演の松たか子さんは主人公の心の無機質な感じをよく捉えていてぴったりの配役だと想像しています。
さて本書についての感想です。
6章から構成された本書、1章ずつにある事件の関係者が登場し、一人称語りで事件の核心に迫るという構成になっています。
愛するわが子を生徒2人の手によって殺された女教師の復讐の物語。
構成自体にはあまり破綻はなく、読者の覗き見趣味を刺激して終盤まで一気に読ませる力は新人とは思えないものがありますが、人間の負の部分をここまで追い詰めて書ける作家さんの内面を知りたいと思うくらい後味の悪い作品でした。
第1章から6章まで「聖職者」「殉教者」「慈愛者」「求道者」「信奉者」「伝道者」というあまりに大上段すぎるタイトルとそれに比してあまりにも週刊誌ネタのような内容とのアンバランスにまず違和感。
第1章の主人公の女教師の生徒への語りには引き込まれるものがありましたが、語りというにはひとつの事柄について説明的過ぎるのが目立ったところ。
娘殺しの犯人と指摘されたA君とB君の1人語りものちに出てきますが、文体の不自然さを感じたのがBの母親の日記です。
果たして日記にここまで多弁に文を重ねる人がいるのか、自分のストレスを刻み付ける日記に「です」「ます」調で記すか、などなど不自然満載。
事件から不登校を続け、あげくは母親殺しの犯人となるBの周辺を明らかにするために登場させたBの姉による亡き母親の日記の開示はこの作品に不可欠のものだったのかどうか。
著者は最初の章の「聖職者」で第29回小説推理新人賞したあと、出版社の求めに応じて加筆して『告白』を刊行したそうで、より人間の醜悪さをデフォルメするような章を次々加えることで完成度の高いものを目指したようですが、あまりにもリアリティのない唐突な幕切れに唖然とした読者も多かったのではないでしょうか。
筋立てに大きな破綻は見られないと書きましたが、内容的には上述のほか、HIVの取り扱いに非常な違和感を覚えました。
HIVに関しても余分な誤解を受けぬようにとの配慮か著者特有の説明的解説をふんだんに散りばめ布石を打っているように見えますが、復讐の材料にHIV患者の血液を用いるという発想に不快感が湧くのが否めませんでした。
いろいろ書きましたが興味本位で最後まで読ませるという意味では話題本でした。