VINのらんどくダイアリー

ご訪問ありがとうございます。 「一日一生」を銘にさまざまな人生を読書というツールを通して味わっていきたいと思っています。 響きこし言葉に貼れるさみどりの付箋そよぎて林となりぬ

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2011年08月

実家の整理をしていて箪笥の奥から着物類がたくさん出てきました。


母が上質と思っていた着物は趣味で茶道をしている娘にずっと前渡しているので半端な着物ばかりですが、中に大島がありました。



友人と一緒に作業をしていてどちらも微妙な着物の質が見分けられないので友人が持ち帰って知人のお年寄りに見てもらったところ大島と判明したので友人が記念にと私にポシェット、娘には巾着袋を作ってくれました。



思わぬ形見に変身した姿に亡きおばあちゃんが大好きだった娘はとても喜んでいました。



写真は友人お手製の大島のポッシェットと、娘がお盆帰省中に姪のあーちゃんのために作った手縫いの巾着袋、リバーシブルになっています。

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さて今回も懲りもせず池井戸氏です。


池井戸潤氏著『株価暴落』



「巨大スーパー・一風堂を襲った連続爆破事件。
企業テロを示唆する犯行声明に株価は暴落、一風堂の巨額支援要請をめぐって、白水銀行審査部の板東は企画部の二戸(にと)と対立する。
一方、警視庁の野猿(やえん)刑事にかかったタレコミ電話で犯人と目された男の父は、一風堂の強引な出店で自殺に追いこまれていた。傑作金融エンタテイメント」



カリスマ経営者の元、旧態然としたずさんな経営を続けている巨大スーパー・一風堂と主力銀行・白水銀行が舞台のサスペンス色の濃い物語となっています。



金融エンタメを書かせたら辣腕の著者ですが、ミステリーとなるとシャープな切れ味がトーンダウンしたように感じる読者は私だけでしょうか。



刑事モノは他の作家さんに任せて、と言いたくなるようなご都合主義的な違和感が今回も拭えませんでした。



著者に推理小説は不向き。



とはいえダイエーを彷彿とさせる風前の灯の一風堂に巨額の追加支援に応じるかどうかの賛成派と反対派における行内の熾烈な戦いの描写は著者の独壇場で読み応えがありました。

東日本の大震災からもう5ヶ月以上たちますが、たくさんの問題は依然解決の見通しもないまま山積したまま目を覆いたくなるような政府トップ交代劇が展開されました。


こんな状態でトップに野田氏が選ばれたからとて明るい展開はあるんでしょうか?



そんな中仮設住宅での被災者の孤独死や自殺が右肩上がりになっているというニュースが出ていました。


先日自殺された福島県南相馬市の93歳の女性の遺書を読むと怒りと悲しみに激しく心が揺さぶられます。


「・・・毎日テレビで原発のニュースみてるといつよくなるかわからないやうだ またひなんするやうになったら老人はあしでまといになるから 
家の家ぞくは6月6日に帰ってきましたので私も安心しました 
毎日原発のことばかりでいきたここちしません 
こうするよりしかたありません 
さようなら 
私はお墓にひなんします ごめんなさい」



阪神淡路大震災でも同様の自殺や仮設住宅での孤独死が度々問題になっていましたが、二次災害ともいわれるこのような実態を手をこまねいてみているだけしかできない切なさを感じます。



テレビを観ていると新しい仮設住宅が横並びで作られていて、体育館などでのプライバシーのない集団生活から解放されてやっと人間らしい生活を取り戻したかに見えるようですが、急に断ち切れた連帯感に逆に打ちひしがれる人も多いのではないでしょうか。


特に大家族での仮設住宅入居は別にして高齢者単独やご夫婦だけの場合にはよけい孤独が深まるような気がします。


仮住まいだからといって簡単な仮設住宅を安易に配置するのではなく、コミュニティハウスのように隣近所が自由に行き来できるような開かれたものが工夫されたらいいなと思いました。





今回は伊吹有喜氏著『四十九日のレシピ』をご紹介します。



「熱田家の母・乙美が亡くなった。
気力を失った父・良平のもとを訪れたのは、真っ黒に日焼けした金髪の女の子・井本。
乙美の教え子だったという彼女は、生前の母に頼まれて、四十九日までのあいだ家事などを請け負うと言う。彼女は、乙美が作っていた、ある『レシピ』の存在を、良平に伝えにきたのだった。
家族を包むあたたかな奇跡に、涙があふれる感動の物語」



熱田家の主婦・乙美が亡くなって四十九日までの残された家族と乙美の心温まる奇跡の物語。
乙美の死後自分たちにとってかけがえのない存在だったことに気づく夫・良平と4歳から乙美に慈しんで育てられた継子の百合子。



私たちは喪ってはじめてその人が本当に大切な存在だったことに気づくんですよね。



そしてその人のことを深く知らなかった、知ろうとしなかった自分の怠慢さに取り返しのつかない虚しさを感じます。


この物語に登場する良平と百合子も生前の乙美の日常や考えていることを何も知らなかったし知ろうともしなかったことに後悔の念が溢れます。


そんな悲嘆に潰されそうになっている中、生前の乙美に四十九日の大宴会の準備を頼まれたという少女イモトと不思議なハルミが現れて四十九日までの後ろ向きの2人の生活を支えてくれます。


ここに登場するたちはそれぞれに何かしら重い問題を抱えながら亡き乙美に支えられて生きる力を与えられる様子が平易な文で描かれています。



夫の愛人の妊娠により離婚を決意した娘の百合子の深い失意からの回復の過程で背中を押した普段無器用な父親・良平の言葉に感動したり、夫と愛人の傍若無人な振る舞いに怒りを覚えたり、物語なのに読者にそんな感情を抱かせる力を持った作品です。


特に夫との間に子どもを設けることができなかった百合子の女性としての苦しみや悲しみには同じ女性として深い共感を覚えます。


子どもを持たないということがあたかも女性失格のような風潮のある世間や自分の感覚に押しつぶされそうになる百合子に、同じく自身も子どもを持たなかった乙美の友人によって語られる言葉も感動的です。


あとに遺された良平と百合子のために乙美が残してくれた生きるための元気の素がいっぱい詰まったレシピには泣かされます。



亡くなるときはひっそりとが理想の姿でしたが、私も乙美の年表のように周りのみんなから人生の年表にたくさんのことを埋めてもらえるような充実した丁寧な日々を過ごすという目標を持って明るくさりげなく誰かの支えになれるような、そんな豊かな人生が送りたいと思わせてくれる作品でした

8月23日は夫の誕生日でした。


その日の夜孫娘あーちゃんから電話があり、いつものようにとりとめのないおしゃべりが延々と続きます。


夫も私も心の中ではおめでとう電話だろうとわかっているのに肝心のあーちゃんが一向に夫の誕生日の話題を出さず、「SSのアサガオ咲かなくて残念だね~。あすかのアサガオ36個も咲いたの。SSのアサガオ咲いてたとしたら何色?」などと埒が明かず、ついに「え~と、え~と、え~と・・・ママに代わるね」と言って要領を得ないおしゃべりのあとママに交代してしまいました。


ママによると、どういう気持ちでそうなるのかわからないけど目をウルウルさせてついにおめでとうが言えずに電話の横で涙を溜めているそうです。



最後にママに後押しされて夫に涙声で「SSお誕生日おめでとう」と言って一件落着しましたが、これでは学校での様子が目に見えるよう、先が思いやられます。



いまテレビ界で超売れっ子の芦田愛菜ちゃんと同じ1年生、愛菜ちゃんはクラスで一番小さいらしいですが、あすかが並ぶときっと頭ひとつ分大きい体。



それなのに・・・愛菜ちゃんがテレビに映るたび、あまりのしっかり度合いに夫も私も驚きを通り越して別世界の人としか思えません^^;



いつだったか愛菜ちゃんが出演者の大人にマルマルモリモリの振り付けを教えていて、なかなかできない出演者に向かって発した言葉にはのけぞってしまいました!


「基礎をしっかり覚えていただいて・・・練習を積んでいただいたらできるようになりますよ」



これが1年生の子どもの言葉! 目が点になりました!@@!



あーちゃんがこの丁寧語を使えるようになる日まで私たちは生きているでしょうか???



それでも私たちにとっては超カワイイあーちゃん、健康であれば何も要らないと思ってはいますけど。




写真は夫への私のプレゼント。7fce6b16.jpg


夫の大好きないしいひさいち氏のマンガ全集です。

夫曰く「ますますバカになる後押ししてくれるんやな」だと。





さて本日は湊かなえ氏著『夜行観覧車』のレビューです。



デビュー作『告白』の評判があまりにもすごかったので手にとって以来、私が好む作風と違うのでもうやめようと思いながら図書館の新刊ばかり置かれた棚にあったので自動的に手を伸ばして・・・



ほぼ近々発刊の本にはよほどの幸運がないかぎり図書館ではお目にかかれないのでついつい手にしてしまうのです。



「高級住宅地に住むエリート一家で起きたセンセーショナルな事件。
遺されたこどもたちは、どのように生きていくのか。
その家族と、向かいに住む家族の視点から、事件の動機と真相が明らかになる。
『告白』の著者が描く、衝撃の「家族」小説」



一連の著者の作品を通して感じるのは隠すべき人間の心の負の部分をこれでもかと描くことによって私たち読者の覗き見的な興味を喚起して作品の世界にぐんぐん引き寄せるという商法がとても巧みな作家さんであると感心します。



新聞の三面に小さく掲載されるような日常茶飯事に起こる事件を取り上げ、その悲惨な結果よりもそれに至る過程の人間の心の闇に重きを置いているというのが大きな特徴。



本書では高級住宅地とされているひばりヶ丘のある家庭で起きた家族間殺人事件を核に隣り合わせに住む遠藤家と小島家、そして事件を起こした高橋家の人々の一人称語りを通して発端の殺人事件へのアプローチが行われていますが、肝心の事件への深堀はなく不消化のままで終わっています。



今回著者がテーマとしているのは一言で言えば女性、特に母親の心の中に潜んでいる我が子を介しての世間に対する虚栄心の愚かさといえるのではないでしょうか。


その虚栄心が発端となって心の歪みを呈したかに見える遠藤家の中学生・彩香の造形は生々しく彼女の口を通して出る粗野なセリフや暴力的行為には大変な臨場感があり、小説とはわかっていながらあまりの利己的論理の正当化に懲らしめてやりたいほどの憎憎しさを感じてしまうのは著者の力量によるものだと思います。



先に「覗き見的な」と書きましたが、第三者的に登場する小島家の主婦の存在そのものが三面記事を興味本位で読む私たちを代表する側の人間であるというのが当たっているかもしれません。


問題のない家庭はないということをわが家庭に置き換えて振り返るなど論外の小島家の主婦は両隣のの家の苦悩を覗き見することで自尊心を満たそうとしますが、彼女自身もまた息子夫婦との間に抱えた問題に気づかずにいるというこっけいさで事件の渦中にいる人々を批判している様子はまるでお昼のワイドショーで他人事のように事件の批判をする私たち視聴者を皮肉っているような著者の意図が感じられます。



著者のこのような手法が魅力といえばその通りなんですけど、読了したあとは肌に不快感がまとわりついたような読後感を今回も抱いてしまいました。



ラストは決して悲劇的に終わるのではなく何となく安易に前向きにまとめたという結論に逆に尻切れトンボの違和感が残るほどのあっけなさでした。

少し前何かのお笑い番組を観ていたらゲストに日本中央競馬会(JRA)栗東所属で大活躍の福永祐一騎手が出ていました。


お父さんである福永洋一さんは昭和54年の毎日杯の落馬事故で脳挫傷を負い再起不能になった悲劇の天才騎手として競馬に不案内な私でも記憶にあります。


デビュー3年目の昭和45年から落馬する前年の昭和53年まで9年連続のリーディングジョッキーとして君臨し、昭和54年にもダントツの成績で毎日杯を迎えていたときの突然の悲劇だったそうです。



事故後昏睡状態が続き廃人同様の重い障害が残ったことまでは知っていましたが、その福永洋一元騎手の長男が武豊騎手に次ぐ2番目の速さでJRA通算1000勝を達成したほどの優れた騎手に成長していたのは知りませんでした。



JRA賞最多勝利新人騎手も獲得、父・洋一さんが落馬事故を起こしたときわずか3歳だった祐一騎手、現在35歳ですがまだまだ活躍が続きそうです。




今回ご紹介する作品にはこの悲劇の元騎手を初め過去にスポーツの世界において第一線で活躍された6人の方々が登場します。


後藤正治氏著『奪われぬもの』



後藤正治氏といえばノンフィクション作家として数々の作品を上梓されていますが、特にスポーツの分野の造詣が深くスポーツ・ノンフィクションを多く手がけていらっしゃいます。



現在作家活動のほか、神戸夙川学院大学学長という二足の草鞋を履かれて活躍されています。



このブログでも過去に『奇蹟の画家』という孤高の画家・石井一男氏の半生に迫った渾身の作品のレビューを書いていますので読んでくだされば嬉しいです。



さて本書に戻ります。


「人はなぜ戦うのだろう?
戦い抜いた果てになにを見るのだろう?
マラソンの有森裕子、競馬の福永洋一、ボクシングの高橋直人...。
時は容赦なく彼らの夢を、力を、プライドを奪いさる。
しかしなお“奪われぬもの”の一条の光。
それこそがファンの眼を射る。
練達の筆が冴えるスポーツ・ノンフィクション六篇」



ここに登場する人物はマラソンの有森裕子、競馬の福永洋一、プロ野球の福間納、ラグビーの林敏之、競輪の中川茂一、ボクシングの高橋直人(敬称略)の6名の方々です。



オリンピックメダリスト・有森裕子は同郷である上、バルセロナとアトランタでの活躍に手に汗を握った記憶のある有名なマラソンランナーとして私の中では特に認知度が高く、福永洋一、福間納、林敏之まではどうにか記憶にある程度ですが、後の中川茂一、高橋直人両名は私にとって全く知らない人でした。



にもかかわらず著者の浮き彫りにしたどの人物像も心に響いてあまりあるものとして描かれています。



光と影を孕んだ競技生活で自己を突き詰めるあまり進むべき道を見失いそうになりながらもある芯のところで矜持を持ち続けて選手生命を全うした姿には胸を打たれます。



これら過去の競技者を描くとき、著者はその生々しいプライベートは極力排し、それぞれの競技人生の中で何を悩んだか、どのように決断したかなどに重きを置いています。


ただ冒頭に挙げた福永洋一の生い立ちからデビューへの茨の道、そして天才ジョッキーとしての原動力となった資質と精神力に迫った取材はすばらしく、事故後重い後遺症を夫人やその後両親など一丸となって渾身の力で洋一を支えている様子には深い感動を覚えました。



文面上の洋一とその妻と、過日テレビに登場していた愛息・祐一騎手がオーバーラップして、落馬事故という不幸な中にも祐一騎手の活躍という嬉しい花が咲いてよかったとしみじみ思いました。

「京都市東山知恩院前上ル 一澤帆布製」と縫い込まれた赤枠のタグが無地のキャンパス地に粋に映えている京都の一澤帆布のかばんは学生を中心として今も人気ですね。


帆布と呼ばれる綿および麻製の厚布が素材で耐久性に優れているので写真、登山、地質調査などの機材運搬用のかばんとしても根強い支持を受けているそうです。


その一澤帆布が前会長・信夫氏の死去に伴い発見された内容の著しく違う2通の遺言書を巡って遺された遺児たちが激しく争った相続トラブルは新聞紙上でも紹介されたので記憶にある方も多いと思います。


詳しい経過は擱くとして、2001年の信夫死去に遡ること1997年に作成されていた第1の遺言書の内容は生前から会社を支えていた社長である三男・信三郎に自社株の67%を相続させるというものでしたが、当時東海銀行員だった長男・信太郎が生前個人的に預かっていたとして第2の遺言書を提出したことが騒動の発端となりました。


2000年に作成されたとされるその遺言書では信太郎に80%の株式を保有させるというもの。


2通の遺言書では新しい日付で作成された内容が有効になりますが、2通の遺言書の内容が全く異なることから「第2の遺言書」の真贋に三男の信三郎が訴訟を提起し、長い争いの末第2の遺言書は無効であるとの最高裁判決を得て長男・信太郎による「一澤帆布」は休業に追い込まれました。


紆余曲折の末結果的に現在東山で長男・信太郎が受け継いだ本来の「一澤帆布」と三男・信三郎による「一澤信三郎帆布」、さらに四男・喜久夫による「帆布カバン喜一澤」が並んでいるそうです。


そして2011年に信三郎が「一澤帆布」のブランド復活、一澤帆布工業株式会社の店舗にて営業を再開すると発表、「一澤帆布」ブランドと騒動後設立した「一澤信三郎帆布」とは当面併売されるということで一連のお家騒動は落着したのでした。



今日はこの一澤帆布騒動に材を求めた1篇を含む短編集のご紹介です。



池井戸潤氏著『かばん屋の相続』


「池上信用金庫に勤める小倉太郎。その取引先『松田かばん』の社長が急逝した。
残された2人の兄弟。
会社を手伝っていた次男に生前、『相続を放棄しろ』と語り、遺言には会社の株全てを大手銀行に勤めていた長男に譲ると書かれていた。
乗り込んできた長男と対峙する小倉太郎。父の想いはどこに? 
表題作他5編収録」



『鉄の骨』に端を発した池井戸作品のレビューも10回を超えました。



本書は6篇の短篇で構成されていますが、解説の村上貴史氏によると2005年から2008年にかけて「オール讀物」に掲載された作品を1つにまとめたものだそうです。


著者はこれらの作品を書きながら『シャイロックの子供たち』や『空飛ぶタイヤ』、『鉄の骨』を並行して上梓していたということですから、池井戸氏の頭のポケットの底なしの題材を縦横無尽に操る能力には驚くばかりです。



本書に収録されている6篇はすべて中小零細企業と銀行を舞台の著者がもっとも得意とする分野だけあって充実しています。



行員人生を賭して自分の担当する中小企業を助けようとする銀行員の真摯な姿に胸を打たれる作品もあれば、瀕死の中小企業を見殺しにする銀行の非情に怒りを覚える作品もあり、ラストも希望の光が見えるものもあれば救いのない切ないものもあり、ほっとするラストを用意した他作品よりはすこし現実的といえると思います。



それぞれ東京第一銀行、京浜銀行、池上信金を舞台に融資などの業務を別として行内での上下関係や確執、融資先との折衝など興味深い内容がぎっしりです。


タイトルを見ただけで一澤帆布の騒動を想像した表題作の「かばん屋の相続」は著者がそこに着想を得た作品であることに間違いはないと思いますが、実際の騒動の発端こそ書き出しに採用しているほかは著者オリジナルの作品として読み応えのある着地は見事というほかありません。

お勧めです。

ここ2,3日やっと涼しくなりましたが、それまでの暑さといったら!

節電に向けての固い意志もどこへやら、お盆を挟んでエアコン漬けの毎日でした。


麺類大好きな夫は家にいるときのお昼は麺類と決めていて、最近は連日ソーメンが続いています。



体調がイマイチなので我慢して市販のめんつゆを利用していましたが、どうにも味が合わず肝心のソーメン自体もおいしくないので重い腰を上げて自家製のめんつゆを作りました。



めんつゆなんて本当はすぐ作れるのですが、我が家のリビングとキッチンの天井に張りついている感知器が異常な働き者でわずかなアルコールやみりんでも即座に反応してマンション中に鳴り響く警報が警備保障会社に繋がり、警備員の人が駆けつけて事情聴取の末、管理室のパネルでストップ操作するまで鳴り止まないので平身低頭という騒動をかなりの回数起こしていて恐怖症になっているのでたくさんの日本酒とみりんを使うめんつゆは恐くてキッチンでは作れないのです。



で、今回は玄関先にカセットコンロを置き、廊下側から扇風機で蒸発するアルコールを外に送りながら作りました^^;


今回も500mlペットボトルに2本作ったのでしばらく安心。   0321b299.jpg



市販のを使われているようでしたら簡単でおいしいので1度作ってみてください。


以下に大雑把な割合ですが記しておきます。


◆しょうゆ2:みりん1.5:酒1:だし1 に出し昆布を入れて煮立て沸騰する直前に鰹節をひとつかみ入れ沸騰したらガスを止めて2,3分置いてキッチンペーパーなどで漉してペットボトルなどに詰め替えて、食べるとき適当に冷水で割ります。



保存料も何も入っていませんが冷蔵庫でかなり長く保ちますし、そーめんつゆ以外にも煮物にも使用できておいしいのでお勧めです。





さて本日は西村賢太氏著『苦役列車』をご紹介します。


第144回芥川賞受賞作、『きことわ』の朝吹真理子さんとのダブル受賞でも話題になりましたね。


このブログでも『小銭をかぞえる』『暗渠の宿』のレビューをアップしていますのでよかったら読んでください。


過去に2度候補になり3度目の正直で射止めた芥川賞ですが、本人によれば川端康成賞の方に強い憧れを持っているそうです。



現在では珍しい破滅型私小説の書き手としての作品はどれもこれも半ノンフィクション的で著書と等身大の主人公の忸怩たる日常を描いています。



本書も例に漏れず、あちこちの作品でおなじみの内容が19歳の主人公・貫多のその日暮らしの日雇いの日々に初めてできた同世代の専門学校生との交流を中心に描かれています。



「僕もふだん誰とも話さないし、友達も一人もいない」という著者が貫多を遠して冷静にその理由を分析しながらも生来のこらえ性のない破滅的な性格ゆえに歯止めが効かない様子が仔細に描かれていておかしみを誘います。



23歳のとき大正時代の無名の作家・藤沢清造の作品に出合い「僕よりダメな人がいて、それで救われた」という著者は受賞に際し「自分よりダメなやつがいるんだなという気持ちになってもらえれば書いたかいがある。それで僕も辛うじて社会にいれる資格が首の皮一枚、細い線でつながっているのかなと思う」と述べておられます。



「友もなく、女もなく、一杯のコップ酒を心の慰めに、その日暮らしの港湾労働で生計を立てている十九歳の貫多。
或る日彼の生活に変化が訪れたが……。
こんな生活とも云えぬような生活は、一体いつまで続くのであろうか――。
青春に渦巻く孤独と窮乏、労働と痛飲、
そして怨嗟と因業を渾身の筆で描き尽くす、平成の私小説家の新境地」



本書が芥川賞を受賞したことには賛否両論があり正直私も頭には疑問符が並んでいて両手を広げて受け入れる作品とは言い難く、逆にあまり積極的に手を伸ばしたくない部類の作品ですが、読み出すと止まらない不思議な力をもっているんですよね。



作品全体にどれくらい負の自分を表わす言葉が出てくるか・・・少し拾ってみただけで出るわ出るわおもしろいほど。

「根が人一倍見栄坊にできている」
「自暴自棄な生来の素行の悪さ」
「学業の成績のとびぬけた劣等ぶり」
「根が子供の頃からたかり、ゆすり体質にできている」
「根が意志薄弱にできてて目先の慾にくらみやすい上、そのときどきの環境にも滅法流され易い」
「根が全くの骨惜しみにできている」
「生来の陰鬱な気質に加え、自ら人との間に垣根を作りたがる傾向」
「根が案外の寂しがり」
「自身の並外れた劣等感より生じ来るところの、浅ましい妬みやそねみに絶えず自我を侵蝕されながら・・・」



これら自己分析確かな性格が災いしてか初めてできた友人との関係が崩壊に向かう様子が綿々と綴られているのが本書。


他作品ではその崩壊の対象が女だったり仕事だったりという徹底的なダメんズストーリーですが読了してしまうんですよね・・・感想にもならないレビューでした。

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