VINのらんどくダイアリー

ご訪問ありがとうございます。 「一日一生」を銘にさまざまな人生を読書というツールを通して味わっていきたいと思っています。 響きこし言葉に貼れるさみどりの付箋そよぎて林となりぬ

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2013年07月

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                                      今ゴーヤがたけなわ!8本収穫しました~


数年前、「品格」という言葉が流行ってタイトルにやたら「○○の品格」と「品格」をつけたら売れるという現象がありましたが、ここ数年は「○活」が大流行。


本来の「就活」から派生して「婚活」や「終活」がまだまだ花盛りですが、今日新聞で目にした「卵活」にいたってはどこまでコトバ遊びが進化するんだろう、と呆れてしまいます。

「卵活」とは??

イースターのお祭りではありません。

新聞によると、晩婚、高齢出産傾向にある日本女性への警告として産婦人科医らが35歳をすぎると徐々に卵子の鮮度が落ちることを指摘されていますが、それを受けて鮮度が落ちる前にまず卵子を採取して凍結した後に婚活を目指すというのがデキル女の「卵活」だそうです。


スーパーで50%offの魚や肉を買ってきてすぐに冷凍して鮮度を落とさないようにして使うとき解凍している自分たち主婦のテクニックに似ているような・・・。


従来の受身のスタンスから能動へと変わりゆく女性の意識変化が見事といえば見事なんでしょうけど、なにやら本末転倒のような^_^;


3高男性に狙いを定め、既成事実を作ってできちゃった婚を母娘で画策して成功した人を身近に知っていますが、この勇ましいイレギュラーな行動の結果が不幸かというとそうではなく、とても幸せな家庭を築いているので、目的意識の善し悪しや行動の美しさと醜さに囚われることの是非に疑問符だらけのこの頃です。


自分の目的を明確にして狙いを外さない、という果敢かつスマートな行動のできる女性にはある意味憧れますが、性格上できない上にもはや「終活」途上の自分にとっては時すでに○十年遅し!


ならば、というわけでもないんですけど、老婆心ながらかような攻撃型女性に比して何かと元気のない男性の皆さんへ一言。

「卵活」までして堅牢な人生設計に余念のない女性に立ち向かうにはまず「精活」した上でさらに「婚活」にがんばってくれたまえ!




さて本日は相場英雄氏著『血の轍』をご紹介します。

著者の作品は『震える牛』の後2作目、期せずして手に取った『震える牛』がかなりの力作で読み応えがあったので著者の作品には注目していました。


専門学校を卒業後、入社した時事通信社で市場データの編集業務を担当したのち記者職に転じ経済部記者として活動
2005年『デフォルト 債務不履行』で第2回ダイヤモンド経済小説大賞(現・城山三郎経済小説大賞)受賞し小説家デビュー
2012年『震える牛』
2013年『血の轍』で第26回山本周五郎賞候補


「妻の不倫現場を凝視させられ、公安捜査員として鍛えられる男。
公安部の差し金によって娘を失った恨みを胸に刑事部に生きる男。
かつて盟友だった二人が、大事件を巡って再び相まみえる——
命を賭した、刑事部と公安部の壮絶な覇権争い。
刑事たちを突き動かすのは、正義か、威信か、それとも本能か」


いや~、久々にページを捲る手が止まらなかった警察小説!

センセーショナルな幻冬舎の誘い文句に騙されないぞと思いながら読み始めましたが、すぐに物語に埋没、今回は見城氏流のベストセラーを見つける眼力に脱帽。


自分としては前作『震える牛』以上の読後感でした。


刑事部・兎沢と公安部・志水という2人の刑事の過去の友情と現在の怨念の物語を中心に、刑事警察と公安警察の激しく陰湿なぶつかりあいを描いた作品。

過去に先輩、後輩刑事として尊敬と信頼で心を通わせていた2人、それぞれの事情を経て、一方は公安に魂を売り、まばたきさえもしない堅牢な公安刑事として名を馳せた志水、方やかけがいの家族を失うにいたった敵として徹底的に公安に戦いを挑む凄腕の刑事となった兎沢。

それぞれの肩に公安警察と刑事警察を背負った熾烈な戦いが軸にあり、それに被害者が元SIT(特殊犯捜査係)に所属していた刑事という殺人事件を据え、緊迫した凄まじい展開を見せるという構成。


そしてラストに近づくにつれ二重三重の展開を用意するというサービス精神溢れる作品となっています。


また主人公2人の過去と現在を交互に描きながら、現在の堅牢な刑事魂を持つに至る2人の断裂の過程を読者である私たちに示すという手法の見事さにも感服。


ある目的に向かっての抜きつ抜かれつの激しい攻防戦のあと、計らずも数年ぶりで相まみえることとなった志水が兎沢に投げかけた言葉が本書のタイトルになっています。

「轍が違うんだ」
「なんだと?」
「公安と刑事の轍が交わることはない」



余談ですが、ボブ・デュランの曲にも同名のアルバムがありますね。

我が家にもCDがありますが、著者も意識されたのでしょうか。


過去に読んだ警察小説にも刑事警察と公安警察の陰湿な争いが出てきましたが、本書ほどその対立の深さ、熾烈さを抉り取って描いた作品は初めて。

ベストセラーになりたての横山秀夫氏や佐々木譲氏の警察小説を読んだときの高揚感を久しぶりに感じた作品でした。


警察小説に興味ある方、是非どうぞ!

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ベランダの朝顔
30年以上にわたって英語の学習参考書や問題集作りや校正の仕事を続けていたのでリタイアした当初は様々な媒体の活字のしょうもないミスが気になって気になって小説を読んでいてもすぐ朱を入れたくなる衝動に駆られていましたが、さすが3年もたつとそんな重箱の隅をつつくような粗探しの性も消え去って元来の大雑把な性格が浮上、同時に書きっぱなしの自分のブログの文章も超いい加減状態。


ときどきブログ友のトコさんに親切なご指摘を受けて慌てて直す体たらくです。


内職仕事をしていたときは辞書が手放せず、引いて引いて引きまくって確認する日々、辞書はもちろん参考書も数冊手元に置いて一冊では不安で納得できるまで参考書を放浪するのに時間がかかっていました。


自分の作った問題集は基本的には自分では校正せず他の校正者に任せますが、慎重に慎重を期して作ったはずなのに何とミスの多いこと!


一度自分の制作物の最終校正をしたことがありますが、第一校正、第二校正を経ているにも関わらず数箇所表記ミスを見つけたときには驚きというか、複雑な気分でした。


英語の学参の校正といっても英語のスペリングや文法上のミスだけ見つければいいというものではなく、ページ数から段落、改行、空白の大きさなど正しいか、フォントが統一されているか、また日本語が統一されているかなど丸ごとなので、かなり神経質になります。

特に大変なのは日本語表記の統一。

私は朝日新聞用語の手引き集というのを学んで使っていて、多くの出版社はそれに倣えでしたが、中にはその出版社好みの表記というのがあるので、資料の初見で好みを把握しなければならないのがけっこう大変でした。


話がズレてしまいましたが、本日ご紹介する作品の解説を読んでいて内職時代を思い出していました。


自分のような名もなく拙いブログ主でさえ、文に対しての責任からいろんな角度から調べることも少なからずあるので、世に出る作品ともなると作家さんの裏打ち作業はさぞ大変だろうなと察します。


たった1行の文章の裏づけに集められた資料はきっと膨大なんだろうな。


書くための確認作業、または書かないための確認作業の大変さ。


敬愛する作家・吉村昭氏が何かの媒体で書かれていたことを思い出します。

歴史的事実を踏まえた作品が得意な氏は、字数にしてほんの僅かなある1文に対してご自分の足で資料を探し、生き証人、郷土史家を訪ねるという行為を繰り返しておられますが、決して1人の証言のみに頼らず必ず同様の複数の証言を得られた場合のみ文章にするということをご自分に課して気の遠くなるような作業を積み重ねていらっしゃいました。


本日ご紹介する作品の著者もその短篇を書くに当たり、あるときは蚕を飼い、あるときはミツバチを飼育しながらその実態に迫り、作品に投影させるほどの凝り性だとか。


真山仁氏著『プライド』


「仕事の責任とは? 現代社会を生き抜く者の矜持とは! 『ハゲタカ』『マグマ』を描いた著者の傑作社会派小説集。
確信犯的に期限切れ食材を使った菓子職人の胸中に迫る表題作、変人官僚が事業仕分け人と対決する『一俵の重み』。
逆境を支えるのがプライドなら、人を狂わせるのもまたプライド。
現代を生き抜くために、絶対に譲れないものは何か。
社会問題の深層に潜む、現場の人々の一筋縄ではいかない思いに光を当て、深層心理まで描きこんだ極上フィクション六編と掌編『歴史的瞬間』を収録」


「一俵の重み」「医は…」「絹の道」「プライド」「暴言大臣」「ミツバチが消えた夏」「歴史的瞬間」

上記の7篇の小編が収録されています。



著者の作品は次男に勧められて『ハゲタカ』を読んだきりですが、本書を読んで改めて著者の題材の範囲の広さに驚嘆します。

出版社のデータベースでの著者の紹介文は次の通りです。

「作品の対象に徹底的に迫る取材力と緻密な文体を併せ持つ、社会派の新たな旗手」


6篇の小編と1篇の掌編からなる本書、6篇の主人公は農水省官僚、医師、絹織物に賭ける元研究者、菓子製造工場のマイスター、大臣、元カメラマンの養蜂家と様々な分野で自らの仕事にプライドを持ち真摯に仕事に打ち込んでいる人々。


本書のタイトルにもなっている「プライド」という言葉は日本語で表すと「矜持」とか「誇り」に相当すると思いますが、おおむね人生の途上で様々なものに躓き傷ついたとき、持ち合わせているプライドの強さ弱さの度合いによってプラスにもマイナスにも自分を奮い立たせる役目を持っているのではないでしょうか。


他人から見たらほんの些細な泡沫のような矜持でも生きる支えになるのは多くの人が経験していると思います。


ここに登場する主人公たちは周囲の思惑などに振り回されながらも自らのプライドを第一義に自分の正しいと思った道に邁進する様子を描いて秀作です。


『日本の農業が必ず復活する45の理由』の著者として農業問題に精通されている淺川芳裕氏の解説文によると、著者はここ数年農業に強い関心を示しその粘り強い取材や学びを通して農業小説を執筆されているということです。


冒頭で記したように本書執筆のために蚕とミツバチの飼育をするという徹底ぶりを鑑みて次の作品も期待大、楽しみです。


あとがきで著者は「何のために人は働くのか。そして、どうすれば矜持をまもることができるのか」という命題に対して「心に太陽を持て」という山本有三氏による詩を紹介されています

 他人のためにも言葉を持て
 なやみ、苦しんでる他人のためにも。
 さうして何でこんなに朗らかでゐられるのか、
 それをかう話してやるのだ。
 唇に歌を持て。
 勇気を失ふな。
 心に太陽を持て。
 さうすりゃ何だってふっ飛んでしまふ。


著者は結びに「心にプライドを持て!」とつけ加えておられます。


それぞれの短篇の内容は読んでみてのお楽しみ!

読み得の部類に入る作品です。

真山氏を未読の方、一度お試しを!

いじめが原因での自殺が後を絶ちませんね。  1fc549e7.jpg



私自身は幼稚園の頃、近所の体の大きな男の子に追いかけられたというかすかな記憶以外、特にいじめられたという記憶がありません。


今と違って昔は環境的に情報も氾濫していないし、のんびりしていた時代のせいかとも思いますが、親友に言わせれば私はいじめられ体質だそうです。


なので自分でも気がつかないうちにいじめられていたのかもしれませんが、知らないことはなかったことと同義語なのでおおむね幸せな学童期だったとします。

近くの緑道公園風景
小学校3年生になる孫は性格が内気で優しいといえば聞こえはいいのですが、争いの渦にいてもひとり気づかないというのんびりやの女の子。


幼稚園の頃からイス取りゲームでは必ず最後に残り、同級生同士のカバン持ちゲームではどうしたことか必ずカバンを持たされ・・・となると周囲はいじめを心配するのですが、本人はいたってのんきで友達も多くて学校が楽しくて仕方ない模様。


息子であるパパは幼い頃は多動症ではないかと心配するほど落ち着きがなく機敏だったのでママ似なのか。


パパは「まあいじめられていても本人は気づかないから、きっといじめ甲斐がないだろうな~」と暢気に笑っています。


このまま楽しい学校生活が続きますようにと祈らずにはいられません。




本日アップする作品はそんな少女の陰湿ないじめの世界を扱ったものです。


芦沢央氏著『罪の余白』


「高校のベランダから転落した加奈の死を、父親の安藤は受け止められずにいた。
娘は、なぜ死んだのか。
自分を責める日々を送っていた安藤の前に、加奈のクラスメートだった少女が現れる。
彼女の協力で娘の悩みを知ったとき、待っていた現実とは―。
大切な人の命を奪われたとき、あなたはどんな償いを求めますか。
第3回野性時代フロンティア文学賞受賞作」


著者・芦沢央氏は出版社勤務を経て「第3回野性時代フロンティア文学賞」を受賞した本作でデビューされました。

新人とは思えない構成力、筆力です。


「切り札の多さが魅力の作品だ。  娘をいじめ事故死に追い込まれた父の復讐は『告白』と被る部分はあるが、手札の豊富さで読者を飽きさせない」(池上永一氏評)

「世の中を悪意で見下すことでしか生きていられない咲という少女の発想と行動は、小娘の浅知恵であればあるほど、その悲痛な叫びがずっと耳に残る。  エンターテインメント作品に紛れこませようとしても滲んできてしまう、この著者の只事ではないエネルギーを私は感じた」(山本文緒氏評)



「どんな償いを相手に求めれば、自分は納得できるのだろうか」という問いが本書の出発点だったと著者は語っていらっしゃいます。


本書の主人公はあくまで娘を不慮と思われた事故で亡くした父親ですが、著者は登場人物の多角的視点を軸に独白という形でそれぞれの心情を掘り下げることに成功しています。


特に亡くなった娘の同級生の視点で語られる瑣末な日常に紛れ込ませた悪意の心情の延長線上に起こす数々の行動にはやり場のない深い憤りや怒りを感じます。


スクールカーストといわれるいじめの根の深さ、表立っては滑らかでどの角度から他人に見られてても不穏を感じさせないスマートさの恐ろしさ。


背景に勘案すべき複雑な家庭環境があるとは思えないごく一般的な家庭の子女のうちに秘めた悪意のエネルギーの強さはたじろぐほど。


池上氏の評にも書かれていましたが、湊かなえ氏の『告白』に似た作品です。


事件に至る経緯を心理状態を中心に絞込み、後半では真実を突き止めた父親の立場から相手を追い詰めていく、、、しかし直接手を下していない相手に罪を認めさせることの困難さにたじろぐ父親を描いています。


無自覚な罪に対する相応の罰はあるのか。


主人公の父親が最後に身を挺して答えを出したラストは圧巻でした。

今、池井戸潤氏が熱い! 

先週よりTBSでスタートした「半沢直樹」、視聴率も順調のようですね。


第一話をヴィデオに撮り損ねて、まあいいかと諦めていたところネッ友のIさんが再放送を教えてくださったので・・・一気に2週分観ました~。


第一話を観た段階でやはり原作との相違とか不適切なキャストに落胆してもうやめておこうかなと思いながら・・・ついつい観ているうちにミスキャストだと思っていた堺雅人に意外に嵌りました。


原作とドラマはまったく別物と認識はしていますが、ついついこんなのあり?と批判心が湧いてきて・・・。



「ドラマの原作を提供するに当たって、キャストや脚本には、一切の注文をつけない・・・
そして、映像であるドラマには、書籍の読者とは一線を画す、一般視聴者というお客さんがいる。
読者なら馴染みでも、視聴者となると、ぼくにはその好みや思考は皆目わからない。
小説は読者に向けて書かれたものだが、その内容が、必ずしもドラマとしてふさわしいかというと、どうもそうではないような気がする・・・
映像という手段を使って人間を描くこと。それによって一般視聴者を感動させる演出を加えることについて、ぼくはシロウトである・・・
原作を提供したとしても、映像化された作品は、必然的に原作とは全くの別物になる」


著者の池井戸氏でさえこんなに割り切っていらっしゃるのに、やはり演出を通しての役者さんたちの現実離れしたオーバーリアクションや受け狙いのセリフに違和感がムクムクと湧き上がってきます。


主役の半沢は仲村トオルが適役だと思っていたので(勝手に)、見始めは違和感がありましたが、案外堺雅人がはまり役かもと思えて・・・ただ同僚の渡真利と近藤は私の中では完全なミスキャストのような。

渡真利役の及川がいただけない、その上精神疾患の既往症を克服した近藤は原作ではそれを感じさせない体格外見の持ち主なのにテレビでは名前は知りませんがいかにも神経質を絵に描いたような役者さんを起用。

反して金融庁の主任捜査官・黒崎の片岡愛之助はぴったんこかんかん!

オネエキャラがぴったりです。

まあ名もない一主婦に批判されてもね、視聴率も取れているし、というところでしょうか。


半沢シリーズ『オレたちバブル入行組』『オレたち花のバブル組』『ロスジェネの逆襲』と読み継いできて次作を首長状態で待っていますが「週刊ダイヤモンド」で『銀翼のイカロス』が絶賛連載中ということで、できたらいきなり文庫で刊行してほしい!



さて本日は池井戸潤氏つながりの作品。

池井戸潤氏著『ようこそ、わが家へ』

出せばベストセラーという今をときめく流行作家である池井戸氏の作品なのに、嬉しいことにいきなり文庫で登場した作品です。

2005年から2年間、雑誌に連載された小説の文庫化。

2009年に上梓した直木賞候補作『空飛ぶタイヤ』より前に書かれた作品です。

ハードカバーだと購入を躊躇するところ、今回は早速買いました!


「真面目なだけが取り柄の会社員・倉田太一は、ある夏の日、駅のホームで割り込み男を注意した。すると、その日から倉田家に対する嫌がらせが相次ぐようになる。
花壇は踏み荒らされ、郵便ポストには瀕死のネコが投げ込まれた。さらに車は傷つけられ、部屋からは盗聴器まで見つかった。
執拗に続く攻撃から穏やかな日常を取り戻すべく、一家はストーカーとの対決を決意する。
一方、出向先のナカノ電子部品でも、倉田は営業部長に不正の疑惑を抱いたことから、窮地に追い込まれていく。
直木賞作家が“身近に潜む恐怖”を描く文庫オリジナル長編」


本書の主人公は上記の半沢直樹と違って池井戸作品では最弱の主人公、貧弱な外見のみならず性格的にも超がつく真面目&小心な主人公。

銀行から中堅メーカーへ総務部長として出向中の52歳の倉田太一。


データベースで要約されているように、今回は私生活でのストーカー的な嫌がらせ問題と職場での経理不正問題という2本柱になっていて、それぞれが独自にストーリーを展開させていきます。


前者のストーカーを巡る物語では目に見えない敵に振り回され苦悩する家族の姿を中心に一致団結してこの顔なし名なしの敵に立ち向かっていくという結果的にはハートウォーミングな家族の物語となっていますが、トラブルの種をあれもこれもと少し盛り込みすぎの感があったのは残念。


でも池井戸氏の力量が発揮されるのはやはり後者の企業における不正疑惑問題。


銀行からの出向というもの申すには弱い立場の上、元来気弱な性格の主人公が社内の経理に長けた女性の協力の下不正を暴いていく過程の描き方はやはり本領発揮という言葉がぴったり、中小企業の苦しい資金繰りの実態や銀行本体と出向という立場の微妙な関係などが物語に巧みに織り込まれていて作品自体に現実的な色をつけています。

多少のご都合主義的展開はあるものの勧善懲悪が活きている安心感のある作品に仕上がっています。

池井戸ファンの方、ぜひどうぞ!

知人の畑にトマト狩に行ってきました。2157fbdf.jpg


サラリーマンの傍ら土日だけ知り合いから無料で借りた畑で野菜栽培をしています。

今年はトマトの苗を150本植えて収穫が追いつかないとのこと。


長い畝に沿って様々な種類のトマト!

アイコに似た黄色いプチトマトがおいしくて食べながら収穫していたらお腹一杯になりました~。1fb2ed60.jpg



完熟している桃太郎は雨が降った後の晴天で強い太陽にあたったせいだとかで割れ目ができているのがほとんど、これはトマトソース行きだなぁと思いながら採りました。


全く農薬を使わない昔ながらのトマトの青臭い大地の味を味わっています。


トマト狩の翌日の昨日はず~っとトマトソース作り。
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ニンニク、玉ねぎのみじん切りを大量に炒めて、皮を剥いて種を残したトマトの乱切りを山盛り入れて月桂樹を加えてコトコト中火で煮込みます。

途中、バジル、ハーブソルト、コンソメキューブ、黒コショウ、赤ワインを加えてまたコトコト。

ジプロックに保存できるくらい水分が飛んだら出来上がり。

結構長時間火にかけていました。


まったく味をつけず、調理のとき好みの味を加える人もいるようですが、私はいつもしっかり味をつけて冷凍保存しています。

写真はズッキーニとシークアーサーの木、初めて見ました~。
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さて本日は篠田節子氏著『百年の恋』のレビューです。

「さえないライター稼業の真一が射止めたのは、容姿端麗、頭脳明晰、3歳年上のスーパーエリート梨香子。
出会って4ヶ月で結婚はしたけれど、それこそ百年の恋もさめるような悲惨な日々がはじまる。
仕事はできるけど、家事はいっさいダメな妻。
妙に冗帳面で生活巧者の夫。
かみあわないふたりの毎日は、梨香子の妊娠で、そのキテレツぶりに拍車がかかる。
逆転カップルの結婚生活を描く傑作コメディ」


15年の市役所勤務ののち作家へ転身された著者・篠田節子氏の受賞暦は次の通りです。

1990年『絹の変容』で第3回小説すばる新人賞
1997年『ゴサインタン』で第10回山本周五郎賞
1997年『女たちのジハード』で第117回直木賞
2009年『仮想儀礼』で柴田練三郎賞
2011年『スターバト・マーテル』で芸術選奨文部科学大臣賞をそれぞれ受賞


小説すばる新人賞受賞作となったデビュー作『絹の変容』に見られるように著者の得意分野はSFタッチのホラー小説。

このブログで唯一アップしている著者の短篇小説『家鳴り』もその系統を踏むものです。

2000年の作である本書は著者の得意とするジャンルから大きくかけはなれた内容、好き嫌いは別としてこんなのも書けるんだなあと改めて引き出しの多さ驚きます。


版元のデータベースにあるように「傑作コメディ」という視点で読めばそれなりにおもしろい内容ですが、歴史的認識の上に立った男と女という概念への私たちの固定観念の根深さというものを見せつけられた作品でした。


「女らしく、男らしく、妻らしく、夫らしく、母親らしく、父親らしく、子供らしく、大人らしく、
そんな言葉に、私たちは追い詰められ、傷つけられる。
『らしい』なんて言葉は、それを使う人にとってだけ都合がいいようにできている」


「男と女の関係に理想はない。
それぞれのカップルで、それぞれにふさわしい関係を見つけ出し、育てていけばいい。
昔からの役割分担どおりの関係もあれば、まったく正反対の役割分担もあるだろう」


「自分の子供は可愛いと思うわよ、たぶん。
でも自分の子供しか見えてないっていうか、自分の子供が他人にとっても可愛いと信じ込んでて、どんなド厚かましいことでも平気でやっちゃう母親って、世の中にいるじゃない。
あたしは、ああはなりたくないわねぇ」


「他人の子供なんか、可愛いわけがないじゃないの。
女の人だったら、子供をかわいがる、っていうのは、思い込みだ。
そうじゃない女性だっている」


本書は10年以上前の作品ですが、育児休暇を取った男性が未だに新聞ダネになるくらいだし、横浜市を除いて待機児童の問題は未解決だし、何より当の男と女の考え方自体がほぼ一時代前と変わらないという点で進歩しているとは思えません。


社会的概念はさておき、本書のストーリーに時折入れ子のような形式で挟まっている主人公である真一の育児日記、著者のあとがきによると共同で仕事部屋を借りている作家仲間の1人・青山智樹氏の作だそうです。


著者は青山氏の育児日記にモチーフを得て合作したという経緯があるそうですが、そこだけゴシック体で書かれてはめ込まれた育児日記、後半に進むに従いどんどん分量を増していてさすがに違和感があり飛ばし読みをしてしまいました。

とても成功しているとは思えないこの入れ子合作、「育児奮闘記」は別の単独作品として刊行したほうがよかったのではないでしょうか、ただしこの奮闘記自体が読むに値する価値があるかどうかは別問題ですが。


男女の性差別意識を風刺した読み物としてはとてもおもしろく、育児日記を外せばサクサク読めるエンタメ小説、登場人物の男女をそっくり入れ替えたらまさに今も昔も脈々と続く男社会&家庭の現状が見えてきて納得できる、そんな作品でした。

余談ですが、本書は2005年にNHKでドラマ化されたそうです。

妻・大林梨香子に川原亜矢子さん、夫・岸田真一に筒井道隆さん。

超エリート美人妻の川原さんはまさに当たり役、筒井さんはちょっとカッコよすぎ感はあるものの、コンサバを潜ませた頼りない自由業の男、大体の雰囲気は当たりだったかも

知人が届けてくれた夏野菜を使って揚げ浸しを作りました。0ec4188b.jpg


パプリカにピーマン、なす、オクラなどが揃う夏の定番、夫も大好物です。

今回は他にズッキーニも入れて。

なすはすごく油を吸うので揚げたあとキッチンペーパーでしっかり油を除いても出汁の表面は油だらけ^_^;

料理を作っても撮影をすぐ忘れるので今回はバッチリ。


豚柳川も作ったのでこれも忘れず撮りました。b26eed59.jpg




今年は昨年以前のがまだ一瓶あるので漬けるつもりはありませんでしたが、スーパーで見事な南高梅が安価で売られていたので2kgだけ漬けました。52daf6af.jpg


写真は紫蘇を入れる前の白漬け。

ふっくらして見るからにおいしそう・・・もっとも写真撮影がヘタなのでおいしそうにはみえませんけど^_^;



そして「めんつゆ」作り。


定期的に作っては冷蔵庫に保存を繰り返しています。

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ソーメンの季節なのですぐなくなります。


今日は外出の予定がなかったので、こんなことでずっと台所に立っていました。












さてまたまた海堂尊氏の作品です。

『ブレイズメス 1990』


ずっと読み続けてきて著者特有の荒唐無稽の飛躍ぶりがちょっと…という感じを抱いて以来、やめようと思いながらつい手に取った作品。

数多い海堂作品の中で好きだった『ブラックペアン1988』の続編だったからというのが大きな理由。


研修医・世良の成長譚を描いた『ブラックペアン1988』から2年、1990年の東城大学医学部付属病院を舞台に、主人公・世良の前に1人の天才心臓外科医・天城雪彦を登場させた物語。


「小説現代」に2009年~2010年まで連載されていたものを単行本化したものが本書です。


天城雪彦を取り巻く登場人物も多彩で、前作後外部病院での研修を終えて腹部外科グループに所属した世良雅を初め、他作品でもお馴染みの腹部外科グループ講師・高階権太、東城大学医学部付属病院院長で総合外科学教室教授・佐伯清剛などが波乱を起こします。


今回も海堂氏のお遊び的人物造形はますます爆発して驚くばかりの人物を作り上げています。


天城雪彦

モナコ公国のモンテカルロ・ハートセンターで外科部長を務める心臓外科医という設定、ダイレクト・アナストモーシスという世界で1人しかできないという高度な技術を確立し、全患者を救ったことからモナコの王室から「モンテカルロのエトワール」の称号を得ています。


これだけでも眉つばもののスケールのデカさですが、この外科医、驚くべき拝金主義者で、彼の手術を望む大金持ちに全財産の半分をギャンブルに賭けさせ、賭けに勝った患者だけに手術を施すという前代未聞の患者分別を行うという強烈なキャラクターとして登場。


こうしてみると、海堂氏の描くパターンが見えてきます。

医師という枠組みを大きく外れてはいるものの腕に覚えのある医師が、権威の権化である象牙の塔の大学病院に乗り込んで、竜巻のような騒動を引き起こすというもの。


その中に医学的な重要テーマを盛り込むというのが著者のパターンですが、今回の作品の軸になるテーマはズバリ「命と金」。


医療における第一義は「人道」とばかり、これまで触れずに遠巻きにしてきた「金」の問題に天城医師を通して鋭く切り込んだのが本書です。


利潤追求の権化としての天城VS患者の命優先を掲げる高階の対立が見ものですが、いかんせん天城doc.のキャラが強すぎて高階doc.が霞んでしまったのは残念でした。

こんな純粋な時代が高階doc.にもあったというのが、私を含め海堂作品を網羅されている読者の方には驚きではないでしょうか。


それにしても天城doc.の「医学を進歩させ、医療を継続していくには金がかかる。よって金持ちと貧乏人が同じ症例なら、迷わず金持ちを手術する」という主義主張に対して、わずかに高階doc.の「医師の使命は患者の治療にあり、断じて集金が目的になってはならない」という言動が絵に描いた餅のような儚さで浮き上がったほか、明確で納得な論破が読み取れなかったのは残念でしたが、きれいごとではない世界の恩恵を受けているのも事実と思うと、患者としての立場の弱さを感じてしまいます。


医療倫理においてはあってはならない天城doc.の主張は、確かに現実世界そのものをいい当てているのではないでしょうか。


やはり金は強い!

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