VINのらんどくダイアリー

ご訪問ありがとうございます。 「一日一生」を銘にさまざまな人生を読書というツールを通して味わっていきたいと思っています。 響きこし言葉に貼れるさみどりの付箋そよぎて林となりぬ

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2014年02月

先日観にいった映画の話。 789fe5dc.jpg


ジュゼッペ・トルナトーレ監督のイタリア映画「鑑定人と顔のない依頼人」

今も心に残る名作「ニュー・シネマ・パラダイス」や「海の上のピアニスト」を創った名匠トルナトーレ監督の久々の作品ということでそれなりのノスタルジックな感動作と思いきや・・・!

まだ観られていない方にはネタバレになるのでこれ以上言葉を重ねませんが、「豪華絢爛な意匠を凝らした“完璧なる破滅”へのミステリー」というキャッチフレーズでご想像を!

イタリアのアカデミー賞と言われるダビッド・ディ・ドナテッロ賞で作品賞、監督賞、音楽賞をはじめ6部門を受賞した作品ということでそれなりに刺激的な作品でした。

一緒に観にいった友人のうちの1人がどんでん返しといえるラスト近くのあるシーンが示唆する物語の核心が理解できず、なんのことやら、と思ったというのが私たちのの間での楽しいオチでした。




さて本日は内澤旬子氏著『世界屠蓄紀行 THE WORLD’S SLAUGHTERHOUSE TOUR』のご紹介です。

「『食べるために動物を殺すことをかわいそうと思ったり、屠畜に従事する人を残酷と感じるのは、日本だけなの?
他の国は違うなら、彼らと私たちでは何がどう違うの?』
アメリカ、インド、エジプト、チェコ、モンゴル、バリ、韓国、東京、沖縄。
世界の屠畜現場を徹底取材!いつも『肉』を食べているのに、なぜか考えない『肉になるまで』の営み。
そこはとても面白い世界だった。
イラストルポルタージュの傑作、遂に文庫化」


妙齢の女一匹、世界の屠畜現場をカメラとスケッチブックとペンを持って訪ねた渾身のルポルタージュ。


このルポの主なる主題は、人間が生きるために他の動物の命を犠牲にしている行為の現場をしっかり見ること、そしてその屠畜に携わる人々が長く差別されてきたという事実の如何を知ること。

この2つの命題を携えて著者がレポートしたのは韓国、バリ、エジプト、イスラム諸国、チェコ、モンゴル、沖縄、東京、インド、アメリカの屠畜事情。

本書で著者はあえて「屠殺」という耳慣れた言葉を使わず「屠畜」という言葉を使っています。

それに携わっている人間と、そして対象となる動物に敬意を表して。。


人間以外の生き物の命を奪って食する、この当たり前の事実から日頃目を逸らして、あたかも無きこととしている私たちへの警告として屠畜現場を精密にスケッチしているのが見所といえるでしょう。


世界各地の屠場に出向き、宗教儀式としてあるいは神への生贄として家庭内で行われるもの、商売の一環としての屠畜を行う食肉市場まで足を運び、屠畜に至る過程をイラスト入りで関係者からの話を入れ混ぜながら説明しています。


屠畜の実態や屠畜に携わる人々の屠畜に対する考え方や自ら置かれた社会的立場についての取材を通して得た膨大な情報は、未知の読者にとって一読するに値するすばらしい内容となっていますが、著者の一途な取材態度に反して文章があまりにも原始的というか稚拙ゆえ、そのアンバランスにかなり戸惑いました。

とはいえ、日頃パックに入った種々の「肉」を通して動物の命を戴くという敬虔な気持ちになるのはかなり難しい私たちにとって「肉」になる過程をつぶさに知ることで私たちの生は多くの犠牲の上に成り立っているという当たり前ながら大切なことを心に刻むきっかけになる作品です。

「屠畜という営みを心から愛している。
差別があろうがなかろうが、日本だろうが海外だろうが、屠畜の現場に出くわせば、スケッチブックとカメラを取り出していそいそと記録するくらい、好きなのだ。
いくら本を読んで『かわいそうかも』と思ったところで、現場にたてばそんな気持ちは一瞬で吹っ飛んで作業に見入ってしまうくらい好きなのだ」

という彼女だからこそ

「(動物を)かわいそうという気持ちが、仏教の不殺生戒を生み、部落差別の源泉のひとつとなり、そして今、部落差別についてなんの知識もなくても、屠畜場で働く人や皮を鞣す人に対して残酷だとか、怖いとか、近づきたくないと思ってしまう大きな原因となっていることは確かだろう」

という差別に踏み込んだ記述も彼女のいい意味での素朴&原始的ゆえに単刀直入な力を持って迫ってきます。


表紙の豚の笑顔のイラストが示唆するように、本書は多くの根深い問題を孕みながらも「明るいレポート」という雰囲気があるのはひとえに著者の天性の性格によるものではないでしょうか。

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寒風に すっくと立った 雨水(うすい)の日 孫もつわれは 雛をかざりぬ

今日は二 十 四 節 気でいうと雨水、立春と啓蟄の間で主張もなくひっそりと立っているような一日。

この日にお雛様を飾ると良縁に恵まれるという言い伝えがあります。


雪深い土地の人々にとっては雪が雨に変わり水になり、草木が芽吹く季節の足音が聞こえてくるような希望の季節の到来ですが、まだまだ春にはほど遠い毎日ですね。

各地での雪の被害を聞くたびに胸が痛みます。

大雪での被害やご不便、心よりお見舞い申し上げます。





さて本日は湊かなえ氏著『花の鎖』をご紹介します。

「毎年届く謎の花束。
差出人のイニシャルは『K』。

梨花は、悩んでいた。
両親を亡くし、祖母もがんで入院。
追い討ちをかけるように、講師をしていた英会話スクールが倒産。
お金がない、どうしよう。

美雪は、満ち足りていた。
伯父のすすめで見合いをした相手が、ずっと憧れていた営業職の和弥だった。
幸せな結婚。
あの人に尽くしたい。

紗月は、戸惑っていた。
水彩画教室の講師をしつつ、和菓子屋のバイトをする毎日。
そんなとき、届いた大学時代の友人からの手紙。
忘れていた心の傷が、うずきはじめた。

花の記憶が三人の女性をつないでいく。
湊かなえ『セカンドステージ始動』を告げる感動のミステリー」


ブログ友のIさんのレビューで拝見していて見たことがあるなあとうっすら記憶にあるものの定かではない、そんなとき図書館で見つけたので借りてきました。


冒頭の2頁ほどで「あっ読んだことある」とわかりましたが、肝心の物語のあらすじも靄がかかっていて・・・仕方なく粗く読了しました(――;)


私にとってそれほどにインパクトの薄いわりに構成が入り組んでいて、それを解き明かそうとするエネルギーも湧かない作品でした。


平行して描かれたストーリーが終盤でひとつに結ばれるという構成の作品は度々目にしますが、本書はそれに類する作品プラスそれぞれの物語の時間枠が異なっていたことが複雑化の要因でした。

3人の女性の3世代の物語。

時代背景の謎がもう少し早い段階で理解できるようなヒントがあれば、この作品の牽引力もぐんと増したのではないでしょうか・・・いえいえ私の読解力が衰えているだけかもしれません。


他の読者のレビューを久しぶりにググって見たところ、登場人物の相関図を書きながら読めば紐解きやすいと書いていらっしゃる方が何人かいらっしゃいました。


あらすじは上述のデータベースにあるとおり。


著者の新境地、という本書にこんな脱力系レビューで申し訳ありません。

晴れの国・岡山もこのところ何度か雪に見舞われています。

30年ほど前、夫の仕事で赴任した鳥取県米子市では1年半の滞在中、何度も1メートル先が見えないような吹雪に見舞われるという経験があり、雪国暮らしの必須アイテムであるスノータイヤやチェーン、長靴の3点セットも常備していましたが、その後は雪に縁の薄い地域への移動とともに3点セットもスキー板も処分して現在に至っています。

夫のふるさとは日本海に面した舞鶴で雪の多いところでもありますが、高校卒業以降ふるさとを離れているせいか、雪に対して及び腰 (――;)

というわけで夫も運転手の1人となって仲間8人で出かける予定の県北の湯郷温泉への予約を急遽来週に延期したら・・・途端に雪が止み・・・一夜明けるとすっかりいつもの見慣れた景色に戻りました。


そんなこんなで思わぬ時間が余って・・・コロッケやクルトン、甘酒を作って時間をつぶしました。

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本日は原田マハ氏著『楽園のカンヴァス』をご紹介したいと思います。      

「ニューヨーク近代美術館の学芸員ティム・ブラウンは、スイスの大邸宅でありえない絵を目にしていた。
MoMAが所蔵する、素朴派の巨匠アンリ・ルソーの大作『夢』。
その名作とほぼ同じ構図、同じタッチの作が目の前にある。
持ち主の大富豪は、真贋を正しく判定した者に作品を譲ると宣言、ヒントとして謎の古書を手渡した。好
敵手は日本人研究者の早川織絵。リミットは七日間―。
ピカソとルソー。
二人の天才画家が生涯抱えた秘密が、いま、明かされる」



著者の作品は本書を含めて4冊既読していますが、私の中では本書がピカイチ。

      『キネマの神様』のレビューはこちら → 
      『でーれーガールズ』のレビューはこちら → 

本書『楽園のカンヴァス』は第25回山本周五郎賞受賞、第147回 直木賞候補、第10回本屋大賞第3位を受賞されています。


原田宗典氏&原田マハ氏兄妹は父親の転勤で中高時代を当地で過ごされたという地縁があり、しかもマハ氏は母校の同窓生ということで、年代の開きはかなりありますが、特別な親近感がある作家さんです。


「美術ミステリー」と銘打った本書ですが、ミステリ要素はさておき、入れ子手法が魅力を惹き立たせた作品といえるのではないでしょうか。

入れ子を使った作品は他にもいくつかありますが、本書の入れ子手法には著者のキュレーターとしての豊富な知識を通しての斬新な工夫があり、読者の興味を喚起する効果も感じられるものでした。

次へ次へとページを捲る手を休めることができない興味。


アンリ・ルソーの晩年を中心に描いた古文書としての入れ子の内容はとても興味深く、アーヴィング ストーン氏によるゴッホの評伝『炎の人ゴッホ』と甲乙つけ難く、ルソーの人生をなぞることができて、好みでなかったルソーの作品を彼の生きた背景を踏まえてじっくり鑑賞してみたいという気持ちが高まりました。


シンプルにあらすじを書けば、MoMA(ニューヨーク近代美術館)所蔵するアンリ・ルソーの「夢」と同じ構図の「夢をみた」の真贋鑑定に、MoMAのアシスタント・キュレーター・ティム・ブラウンと日本人研究者・早川織江の2人が競う物語ですが、2人の人生を含め「夢をみた」の所有者であるバイエラーが大きな役割を担って物語を牽引するというもの。
 
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「夢」
「夢」のオマージュとしての「夢をみた」の真贋に対するラストへの落とし方がミステリ作品への意図的な誘導のようで多少の違和感がありましたが、そんなことを凌駕するものがアンリ・ルソーを描いた入れ子の中にあり、遠近法も明暗法も習得し得なかった無知で下手くその日曜画家としての周囲の好奇な目に晒されながらも憑かれたように描き続けたルソーの切なさに胸が締めつけられました。


ルソーはもちろん、モンマルトルの「洗濯船」の住人であったキュビズムの創始者・パブロ・ピカソ、ドガ、ロートレック、アポリネール、ローランサンなどパリを舞台の20世紀初めの画家たちの息遣いが聞こえてくるような作品でした。

未読の方、ぜひどうぞ!

左の写真はピカソの「鳥籠」、右はルソーの「飢えたライオン」 小説内に出てきます。
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ネットで親しくしていただいているSさんが書道を習い始められて丸一年、ブログ日記に時々お目見えする手習いの百人一首の歌を見て、はるか昔の記憶がいつも呼び起こされています。  6e309a9a.jpg



新婚時代、夫の実家に帰省するお正月は元教員だった義母を中心に義姉義兄たち家族で百人一首大会なるものが催されるのを目の当たりにしてこれはいかんと慌てた末っ子の嫁の私、帰宅後から毎日家事をしながら百首覚えるということを自分に課しました。


そしてめでたく百首覚えて・・・その年の帰省はほっとした気持ちの記憶だけはあるものの、結果は覚えていないほど遠い出来事になった昨今。


苦労してせっかく覚えた百首も途中からの途切れによってぼんやりと薄れ、上の句と下の句が入れ替わったり、すべて忘れたり。。。


そんな中、Sさんが提供してくださる(私のためではありませんが)のをチャンスと捉え、繰り返し口ずさみ記憶を呼び起こしているこの頃です。


手習いの3首の歌のご紹介とともに82歳の師のすばらしさに触れていらしたSさんの今日の日記の内容は胸に響くものがありました。

お元気で努力を惜しまない前向きな師である先生のお母様も105歳でお元気とか。


私の母は100歳と25日でこの世を去りましたが、昨今は100歳を超えて先生のお母様のような充実した日々を過ごされている方のことをよく耳にします。


私の介護いかんによってはまだまだ生きていてくれたのではないかと後悔先に立たずの哀しみが胸を衝いたことでした。




さて今回は角田光代氏著『ロック母』をご紹介します。


「川端康成賞受賞の表題作を含む傑作短編集。
初の芥川賞候補作から川端賞受賞作『ロック母』まで、角田光代の15年にわたる代表作を集めた全7編の『ベスト短編集』。
角田文学のすべてがわかる唯一の試み」


1992~2006年、著者25歳~40歳までに書かれた7篇が時系列に収められた短編集ですが、それぞれが独自の主題を持って闇の中から浮かび上がってくるような強い存在感のある作品集となっています。


著者25歳のとき、芥川賞候補になったという「ゆうべの神様」を筆頭に微妙に変化していく文体とともに年齢毎の興味の対象の移り変わりを追うといういろんな楽しみが詰まった作品でした。



◆好奇な世間の目に晒されたとある地方の片隅で毎日壮絶な夫婦喧嘩を繰り返す両親の下で暮らす高校生の少女の淡々とした日々の果てに仕出かした出来事を描いた「ゆうべの神様」

芥川賞候補になった際、作品の大略として「ぐれた娘が家に火を放って逃亡する」と総括した編集者には著者ともども失笑しましたが、その通りのあらすじでありながらまったく違う、と思わせる必然性を荒削りな25歳の筆に感じさせた筆力が見事です。


◆不本意な妊娠をして何の決断も先延ばしにして帰省した娘を待ち受けていた実家の荒れた父母の関係を描いた「ロック母」

川端康成賞を受賞したという本作品はラストの締めのない騒がしさで幕を閉じるという変化球的な趣向ですが、娘が青春時代に熱中していたニルヴァーナを終日大音量でかける母親の、不如意な現実に要塞を築こうとするような行為が切なさを誘いました。


好きかと聞かれれば明確に頷けない作品群ではありますが、改めて著者の物語を作る能力の高さには目を瞠ります。

このところ安い電動のコーヒーミルはないかな、とネットで検索したり買い物の度に気にかけて探していました。

先ごろ行った倉敷にある三井アウトレットのキッチン用品専門店の店員さんにamazonで買ったのがいちばん安いですよと言われ、それもそうだな、と思い直してamazonで購入しました。

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写真の手前、右が電動ミル、左が手動ミル、奥がコーヒーメーカー


今まで手動ミルで豆を挽いていた夫がある日突然、「もういやだ、電動がいい!」と反乱を起こしたので、それ以来、コーヒーをあまり飲まない私が挽いていました(――;)


結婚のとき婿入り道具に座布団一枚とレコードとサイフォンを持ってきたくらい夫はコーヒー好きで、以後さまざまな変遷を経て、大勢が飲むときは10杯はゆうに煮出せるVitantonioを、自分だけのときはネルを使っています。

私はコーヒーより紅茶を好むので、夫はひとりで黙々と毎朝淹れています。


そういえば私が人生で初めてコーヒーを飲んだのは小学4年か5年のとき。

縫製工場を経営されていた同級生の家に遊びに行ったとき、事務員の人に出されたのが初コーヒー。

大人扱いにちょっとびっくりしながら飲んだコーヒーの苦かったこと!

たしかお砂糖を山盛り入れたのに(――;)


以前、SNSで、夫が挽くコーヒー豆や淹れたてのコーヒーの香りはとても心地いいのに飲むのはあまり…と書いたら、「では一緒にコーヒー店に行って2杯注文して、VINさんは2杯分の香りを、僕は実物を2杯、割カンで!」とすてきな提案をしてくださったネッ友のHさん、お元気ですか?





さて今回は唯川恵氏著『ため息の時間』のレビューを少し。

「男はいつも、女にしてやられる。ちょっとほろ苦い大人のラブストーリー集。

愛したことが間違いなんじゃない。ただ少し、愛し方を間違えただけ──。
完璧に家事をこなす妻を裏切り、若い女と浮気する木島。
妻が化粧をするのを許さなかった原田。
婚約寸前の彼女がいるのに社内で二股かけた洪一。
仕事のために取引先の年上女性に近づく孝次……。
裏切られても、傷つけられても、性懲りもなく惹かれあってしまう、恋をせずにいられない男と女のための恋愛小説9篇」


著者の名前はよく目にしますが、今まで未読、これが初めての作品です。


2002年『肩ごしの恋人』で直木賞
2008年『愛に似たもの』で柴田錬三郎賞をそれぞれ受賞


本書は1996年~2001年にかけて、「小説新潮」、「週刊朝日」などに掲載された作品を収録した9篇の短篇集となっています。


男女間の恋愛を主な主題に、女性の心の機微を描いた作品を展開していらっしゃるそうですが、本書の特長は9篇すべてが男性の視点から男女間のさまざまな縺れを描いているという点で著者の新しい試みといえるでしょう。

が、女性の頭で考えた男性の男性目線といったところ。


9篇それぞれが主人公にとって妻であったり、恋人であったり、浮気相手であったりと対象は違っていても共通するのはシュールに仕上がっている作品群。


雰囲気的には私の好みではありませんでしたが、男のずるさよりも女の計算高い賢しらさが一枚も二枚も上手という内容が多く、さすが女性作家!と感じました。


夫の不倫を初めのうちは責めていた妻がある時期を境に何も言わなくなったのをいいことに不倫を継続していた夫に突然離婚を突きつけた妻との顛末を描いた「バス・ストップ」は女の怖さを描いて秀作でした。

以下抜書きで少し・・・

ある日、帰宅すると妻と娘は出て行っていた。
弁護士が訪問し「離婚して欲しい」と。
今までの浮気の証拠を妻がしっかりと握っていてそれを理由に。
しかし、それならそれでいい。
杏子の代わりなどいくらでもいる。
奈美もこれで結婚できると喜んでいる。
杏子より一回り以上も若い女だ。
もう一度人生をやり直せる。
それを思えばむしろありがたいぐらいだ。

と、喜んでいたのもつかの間専業主婦になった奈美は主婦としての役目を全く果たさない。
家事は奈美にとってはどうにでも価値を見いだせない仕事なのだった・・・

きっとかつての自分の家が完璧すぎたのだろう。
杏子がそうしてきた。
その完璧さにすっかり慣れて、どうにも今の生活になじめない・・・

「朝飯位食わせても罰は当たらないだろう」
「あなたって、前の奥さんによほど甘やかされてきたのね。
過保護に育った息子と同じ。
そんなのじゃ、老後、苦労するわよ」

あの一年、杏子は妻として限りなく尽くした。
木島は、夫の気持ちを取り戻したい一心の事だと思っていた。
でも、違った。
違うという事に、ようやく気付いた。
杏子は一年をかけて、木島をどうしようもなく手のかかる厄介な夫に仕上げたのだ。
それが杏子の復讐だったのだ。



タイトルの「ため息」とはきっと身勝手な男たちの、自分がしでかしたことの思わぬ結果に対する青息吐息のため息なのでしょうね。

先日テレビを観ていたら世界的なオペラ歌手の中丸三千絵さんがトーク番組でワインについて話していらっしゃいました。

マリア・カラス・コンクールでイタリア人以外で初めて優勝、現在まで唯一の日本人優勝者ということで、ワンステージの上限はなんと2000万円!

ワインに魅せられて資格も取得し、ステージで稼いだギャラすべてをワインにつぎ込んだこともあったそうで、1本1000万円のワインを飲んだこともあるそう。

どんな味?と聞いた司会者に「唾液と同じような味」と答えていらっしゃいました。

唾液と同じようなら唾液を溜めて飲んだら・・・と1000万円の使い道のトンデモ贅沢さに驚きを通り越した私ですが、今の彼女はそんな過去の行為を省みて、ばかなことしたな~と振り返っていらっしゃいました。

今は1本1万円程度のワインを楽しんでいらっしゃるそうです。

1万円といっても庶民には甚だ贅沢な値段ですけど。


我が家でも夫は食事どきのアルコールは欠かせませんが、結婚当初は日本酒がほとんど、その後ブランデーになったり、ウイスキーだったりと紆余曲折があり、現在は芋焼酎のお湯割りを少しだけ。

単身赴任中ブランデーを飲みすぎて・・・というか真の因果関係はわかりませんが、がんセンターの医師によるとタバコとブランデーが食道ガンの近因であろうと戒められました。

で現在はほんの少しの食前酒を楽しむ程度になっています。


子どもたちが小さい頃の夫の将来の夢は成長した息子たちと男同士でお酒を酌み交わすことだったようですが、長じた息子たちは揃いも揃って2人とも下戸という不幸。

その代わりといってはナンですが、娘が不甲斐ない弟2人分を引き受けて余りあるほどすごい!


ワイン党の娘が帰省すると夫もお相伴するのを楽しみにしていて、近くのワイン専門店で様々なワインを買ったり店主や娘に教えてもらったりで多少ワインの産地や種の知識も増えたこの頃。


中丸三千絵さんの1万円ワインが3本~6本買えるくらいの値段のワインがほとんど。
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私たちにはちょっと高価だったり、味覚にあったり、珍しかったりなどのワインのエチケット(ラベル)は残しておくと産地や生産年、ぶどうの種類などが記録できて次に買うときの参考になるということでエチケット保存シートに貼って楽しんでいるにはいるんですけど、私には産地や種の見分けもできないし、味の深さもほとんど感じないんですけどね。





さて本日はR・D・ウィングフィールド氏著『冬のフロスト』をご紹介します。


ジャック・フロスト警部シリーズを楽しみにしていらっしゃる読者(含む私)には待望の新刊!

ブログ友のいちさんが早々に読破され、レビューをアップされていたのを拝見して、遅まきながら購入しました。

上下2巻の太い本、といちさんのブログで知り、覚悟して・・・読了しました^_^;


著者のR・D・ウィングフィールド氏は2007年に亡くなられましたが、本書の他、あと一冊”A Killing Frost”は日本で未刊行です。

日本でも数々のミステリ部門で第一位を獲得、英国でもTVドラマ化されているフロスト警部シリーズ。


『羊たちの沈黙』などでおなじみのトマス・ハリス氏同様にR.D.ウィングフィールド氏の作品はこのシリーズでは6作のみ(短篇としてはあと1作あります)という寡作の作家さん。


1984年『クリスマスのフロスト』:「週刊文春」1994年ミステリーベスト10/海外部門1位
1987年『フロスト日和』:「このミステリーがすごい! 1998年版」海外編ベスト10 1位
1992年『夜のフロスト』:「週刊文春」2001年ミステリーベスト10/海外部門 1位
                「IN★POCKET」文庫翻訳ミステリーベスト10/評論家部門1位
1995年『フロスト気質』:「週刊文春」2008年ミステリーベスト10/海外部門 1位
1999年『冬のフロスト』
2001年『夜明けのフロスト』(短篇)
2008年『A Killing Frost』

訳者はいずれも芹澤恵氏、雰囲気をしっかりつかんだ名訳にいつも感服しています(^_^)

芹澤恵氏あってのフロストシリーズ!


さて本書に戻ります。

「寒風が肌を刺す一月、デントン署管内はさながら犯罪見本市と化していた。
幼い少女が行方不明になり、売春婦が次々に殺され、ショットガン強盗に酔っ払ったフーリガンの一団、"怪盗枕カヴァー"といった傍迷惑な輩が好き勝手に暴れる始末。
われらが名物親爺フロスト警部は、とことん無能で好色な部下に手を焼きつつ、マレット署長の点数稼ぎが招いた人手不足の影響で、またも休みなしの活動を強いられる......。
大人気警察小説第5弾」

そして

「冬のデントン市内で起きた事件の数々は、警部お得意の勘頼み捜査が的中したものを除き、大半が未解決のままだった。
少女誘拐の容疑者は不在となり、売春婦を狙う連続殺人犯はいまだ野放し。
マレット署長の小言には無視を決め込み、モーガン刑事の相次ぐ失態はごまかしてきたが、それも限界だ。
どでかい失策に州警察本部の調査が入るわ、"超能力者"が押しかけるわでデントン署は機能不全の瀬戸際、フロスト警部もついに降参か!?」と続きます。

上記の出版社のデータベースを読んでいただけたらあらかたの筋はクリアできると思いますが、このシリーズの妙味はあらすじとかミステリ度などにはありません。


「一月の肌を刺す寒風が、錆の浮いた《閉店》の看板に頭突きをくれ、その勢いで廃業したガソリンスタンドの出入口に渡された、看板の鎖も大きく揺れた・・・」

出だしの文章を読むだけでイギリス独特の悪天候が醸し出す陰気な風景が目の前に浮かんでくるような芹澤恵氏の名訳に思わず惹き込まれます。


そしてこのトバ口からこれでもかという悪条件の職場であるデントン署でこれでもかという数々の大小事件が乱暴に入り組んでくるといういつものパターン。

一見乱雑なあれやこれやのプロットが、実は後々重要な鍵となるというのもいつものこと。


このシリーズの魅力はこれら喧騒の中、フロストを初めとする一癖も二癖もある登場人物たちの造形とともに吐き出されるセリフのおもしろさにあります。


さすがバートランド・ラッセルやバーナード・ショウ、サマセット・モームなど辛らつなジョークがお手のものとする哲学者や作家を輩出したお国柄。


「下品なユーモアを連発し、推理という点では、これほど間抜けな警部もいないが、不思議な人間的魅力がある」

フロスト警部シリーズの大ファンだという故・なだいなだ氏の評がぴったり。


加えて本書で新たにフロストとコンビを組む「芋にいちゃん」こと若いダメ警官のドジさ加減に手を焼くフロストの様子、お馴染みのデントン署長マレットの嫌味たっぷりのお人柄とともにフロストたちとの応酬が何とも笑いを誘います。


下品でデリカシーというものを持たないはずのフロストが時折思慮や情の深さを見せる場面を見つけると砂漠に光る石を見つけたような得した気分になったりして。


「ぜひどうぞ」とは言いがたい気の遠くなるようなデントン署内での冗長な出来事を綴った文章ですが、耐えられる方、ぜひどうぞ!

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