VINのらんどくダイアリー

ご訪問ありがとうございます。 「一日一生」を銘にさまざまな人生を読書というツールを通して味わっていきたいと思っています。 響きこし言葉に貼れるさみどりの付箋そよぎて林となりぬ

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2014年09月

鱗雲、赤とんぼ、実りの稲穂・・・秋が日ごとに深まってくる様子が手に取るように感じられる朝夕の涼しさです。

違(たが)ふなく秋深まりて金木犀の香りほのかに漂ふ夕(ゆふべ)
金木犀の香りも漂い始めました~。 

昨年亡くなった義姉が「来年の桜は見られないかも・・・」とポツリと発した言葉が忘れられませんが、年とともに季節ごとの草花の移ろいに執着するこの頃。

実りの秋の原風景には欠かせない彼岸花もそろそろ終焉を迎える時期になり・・・

畦道にかがり火のごと曼珠沙華金の稲穂を照らして尽きず
天界ゆ種の零れし曼珠沙華 天向き展(ひら)きてけふ秋彼岸

不思議な魅力を湛えた酔芙蓉ももうすぐ終わりです。


酔芙蓉のいろの移ろひ捉えんと見つむる背(せな)に夕光(ゆふかげ)射して

我が家のベランダではゴーヤとキュウリが最後の隆盛を誇っています。

同時期に植えた朝顔はもう処分したというのに、ゴーヤもキュウリもお互い負けじと競い合うように実を成らせています。

必然的にAll dayゴーヤとキュウリを使った料理ばかり。

あとバジルと青ジソ。

今日のお昼も日本そばにゴーヤの薄切りを少々。

昨日はバジル&ゴーヤのパスタ。

茂った青ジソの葉は細切りコンブと山椒の実、かつおぶしを入れて醤油ベースの佃煮したので今は丸裸になりました。

畑の真似事ライフは、真似事だからこそ楽しい♪





さて本日は垣根涼介氏著『月は怒らない』をご紹介します。


「多重債務者の借財の整理が生業。仕事で訪れた市役所でこの女を一目見た瞬間、声を失った―。
バーで女がチンピラに絡まれて目の前で転んだ。助け起こした瞬間、女の顔に釘付けになった―。
勤務先の交番の前の市役所に自転車で通う女。
結婚しているくせに私はいつもその女を探している―。
誰にも期待しない。夢なんて持ってない。だから生きるのラクだった。そんな女になぜか惹かれていく、3人のロクデナシたち。
垣根ワールドの新境地」


不思議な雰囲気を持つひとりの女と、彼女に魅了された3人の男たちの物語。

垣根氏の作品だからと図書館で手に取った本。

著者らしからぬ内容に違和感を持ち続けたまま読了。

途中得意の飛ばし読み(――;)


「誰の人生も背負わないし、背負われたくない」という自立した精神の持ち主のヒロイン・恭子。

作品の中でも恭子の過去は語られませんが、「20歳を過ぎたら全部自分の責任」というスタンスの著者が敢えて恭子の人間としての核に持ってきたといいます。

──誰のせいでもない。誰のためでもない──
今という時間にどう落とし前を付けていくか。
過去への照射はそれで変わっていく。
記憶の中の原風景は変質していく。


そんな恭子は黙して語らず、恭子を取り巻く男たちが語る中で出てくる会話や動作によって恭子をどう捉えるか、読者に委ねられています。

ヤクザではないもののアウトロー的な生活をしている梶原、軟派の大学生・弘樹、妻子持ちの警官・和田、そして公園のベンチで知り合った記憶障害のある老人・・・この4人を通して語られる恭子は当然のことながら単一ではありませんが、不幸とか幸せとかといった感情を吸収しない陶器のような、肝の据わった女性といった印象。


4人とのさまざまな会話や独白を通して著者が託した言葉の数々に思わぬ名言が散りばめられていて、それが見っけものという作品でありました。

「人のせいにしちゃ、いかんじゃろ。
それはみんな、おまんのせいや。
に起こることは、悪いこともいいことも含めて、みんなその当人のせいぜよ。
完結しろ。
自分の中で完結させい。
そうすればおまんは、自分の一歩をようやく踏める」
これは大学生・弘樹の祖父の言葉。


「洋の東西を問わず、愚か者は常に進んで自分の墓穴を掘り続ける。
梶原はたまに思う。
二十歳を超えて起こった人の不幸は、ほとんどの場合、その本人の身から出た錆だ。
同情する必要はない」

ヤクザ紛いの梶原の内省ですが、この梶原に著者ご自身を投影させていることは想像に難くありません。

先日の続き、私の記憶の記録のために。。

すぐ忘れるこの頃です。

2泊3日の短い滞在の終わりの日、長男の車で六本木の国立新美術館で開催中の「オルセー美術館展」を観に行きました。
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「印象派の殿堂」として知られるパリ・オルセー美術館から来日した84点の絵画、テーマは「印象派の誕生」。

マネ、モネ、ルノワール、ドガ、セザンヌら印象派の立役者となった画家たちのほか、同時代のコローやミレー、クールベなど。
         

初めて名画鑑賞を体験したあーちゃん、娘と共にずっと落ち着いて鑑賞していました。

娘が「好きな絵の絵葉書選んでいいよ~」というと、ラトゥールの花の絵やマネの「笛を吹く少年」、セザンヌの静物など数点選んでいました(^^)
         

私はやはり王道のミレーの「晩鐘」、図録で何度も目にしていますが農夫の静謐な祈りの姿に深く胸を打たれました。

土に生き土に還りし人間の一生(ひとよ)迫りしミレーの〈晩鐘〉

農夫なるミレーの描きし〈晩鐘〉の大地への祈り深遠にして

こうして慌しくも充実した2泊3日の旅が終わりました。

写真はもらったプレゼント。
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ワイングラス(最近は足がないのが流行りとか)、布団用掃除機、ティファールの野菜カッター、エゴン・シーレの画集

みんな、ありがとう!! 多種多様です^_^




さて本日は安東能明氏著『撃てない警官』をご紹介します。


「模範的な警官になろうと、誰よりも強く思ってきた。
ノンキャリアながら管理部門で抜擢され、エリート部署へ配属された。
だが、待っていたのは不祥事の責任を被る屈辱の左遷…。
若き警部・柴崎令司が、飛ばされた所轄署で体験する人生初の悪戦苦闘。
他人には言えない屈託を抱えた男が、組織と世間の泥にまみれて立ち上がる人気シリーズ全七編。
第63回日本推理作家協会賞短編部門受賞作『随監』収録」


1956年静岡県生れ。
浜松市役所勤務の傍ら
1994年『死が舞い降りた』で日本推理サスペンス大賞優秀作受賞
2000年『鬼子母神』でホラーサスペンス大賞特別賞
2010年『随監』で日本推理作家協会賞・短編部門受賞(データベースより)


初めての作家さんですが、新聞の書評がとてもよかったのでamazonで購入しました。

前回レビューを書いた横山氏の跡を辿るような地味ながら充実した警察モノ、私の好みです。

ここまで書いて読者の方々のレビューをググってみると・・・なんとあまり評判がよくない・・・内容が地味でつまらない、山場がない、最後まで読まず放棄、などというレビューが半数ほど。

なるほど・・・でも私にとっては掘り出し物。

続編も購入しました^_^


部下の拳銃自殺の責任をとって、というか取らされて警視庁管理部門のエリートコースから中規模所轄署の警務課代理に左遷された柴崎が主人公。

大流行した半沢直樹の「やられたら、やり返す!」の警察版といったところ。

何者かの作為の末の左遷と信じた主人公・柴崎。

ノンキャリアながら事務方で力を発揮し30代半ばで警部という出世の階段を駆け上がっていた矢先の不本意を内包しながら所轄署でそれなりに働くうち、いままで経験しなかった「現場」に触れ、少しずつ出世に拘る頑な心情に変化が生じてくる柴崎を描いて地味ながらいい味の短篇集となっています。

最近立て続けに警察小説を読んでいますが、どの作品にも出てくるのは内部抗争、不祥事、隠蔽工作などなど。

本書の主人公からして詰め腹を切らされ、自身の身は守った上司に恨みを抱き、追放するための上司の醜聞の情報集めを陰で着々とやっているという決して正々堂々の人柄ではありません。

そのままを事実として受け取れば、警察組織はヤクザ組織と大差なく感じられますが、上下関係に人情がしっかり絡んだヤクザ組織ほど人情的ではないし・・・。


そんなこんなで所轄署で起こる様々な事件の解決に借り出され、初めて事件の関係者と触れ合い推理を働かせるという場面もあり楽しめる作品になっています。

ただ惜しむらくはラストのいきなり感。

これから主人公はどうなるのか、という期待感を抱かせて続編に手が出る、という点においては成功といえるかもしれません。

次作は『出署せず』です。

この連休、2泊の駆け足で東京に行ってきました。

恵比寿にあるウェスティンホテルにリザーブした部屋で子どもたちが私の一足早い古希のお祝い会を開いてくれるというので。
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みんなで部屋を飾りつけて持ち込みの数々の料理やワインを用意して、夫と私の到着を迎えてくれて・・・一生の記憶に残る祝宴となりました。

家族とふがんじがらめの確かさよ子らが集ひてわが古希の宴

         



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その夜は生涯で多分・・というより絶対・・これっきりと思うウェスティンホテルのエグゼクティブルームに宿泊!
ベッドルームを含み3部屋、2つのトイレ。

イヴニングカクテルのサービスなどなど。

雑魚寝なら10人以上は泊まれそうな広さ!

何十分の一も元が取れない感じで残念ながらすぐ朝が来て、ヴィップルームでブレックファスト(朝ごはんなんて言いません)を食べ・・・迎えに来てくれた長男の車でそのまま夫と私の両親のお骨を安置している早稲田のお寺にお参りして長男の家に。

その夜は溝の口の近くに新築したばかりの長男の家に1泊。

久しぶりのあーちゃんとともにお嫁ちゃんの友香ちゃんと友香ママの作ったたくさんのご馳走を食べながらワイワイ賑やかな夜でした。

あーちゃん、とっても嬉しそう♪

お土産に持っていっていた今流行のrainbow loomで試行錯誤して作ってくれたのがこのブレスレット。

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翌朝からの続きは次のブログで。




さて本日は横山秀夫氏著『64』をご紹介したいと思います。

発刊されてからずっと狙っていた本書、先日図書館の棚で見つけ、即座に手が伸びました。

夜読もうとベッドに持ち込んだところ、あまりにもタバコの匂いが強かったので断念、翌日一日中外に干して匂いを消しました。

夫が図書館の本を嫌うのはこんなことや食べかすやシミが無造作につけられているのが理由、私もあまりひどいのはページを捲ることもいやで断念することもあります。

最小限のエチケットを守れない人が何と多いことか!


「警察職員二十六万人、それぞれに持ち場があります。
刑事など一握り。
大半は光の当たらない縁の下の仕事です。
神の手は持っていない。
それでも誇りは持っている。
一人ひとりが日々矜持をもって職務を果たさねば、こんなにも巨大な組織が回っていくはずがない。
D県警は最大の危機に瀕する。
警察小説の真髄が、人生の本質が、ここにある」


宝島社「このミステリーがすごい!2013年度版」国内編第1位
週刊文春「2012年ミステリーベスト10」国内部門第1位

本書で描かれている事件はD県警管内で身代金目的で昭和64年(1989年)に起こった7歳の少女の「翔子ちゃん誘拐殺人事件」。

7日間だけしか存在しなかった昭和64年に起こったことから「64(ロクヨン)」と呼ばれる未解決殺人事件。

「たった七日間で幕を閉じた昭和六十四年という年。
平成の大合唱に掻き消された幻の年。
だが確かに存在した。
犯人はその昭和最後の年に七歳の少女を誘拐し、殺し、そして平成の世に紛れていった。
『ロクヨン』は誓いの符丁だった。
本件は平成元年の事件に非ず。
必ずや犯人を昭和六十四年に引きずり戻す・・・」

この架空の事件の舞台となった県、横山ファンならご存知でしょうが、著者のデビュー作『陰の季節』の舞台でもあった「D県」とは上毛新聞の事件記者だった著者のグラウンドだった群馬県だというのが推察できます。

余談ですが、本書は昭和62年(1987年)に実際に群馬県で起こった「荻原功明ちゃん誘拐殺人事件」をトレースしているといわれています。


冒頭の「夕闇に風花が舞っていた」からラストの「風花が舞ってきた。その白さに、ふと、覚えたてのクリスマスローズを思った」で結ばれた文、著者の意外なるロマンティストぶりが発揮されていて何とも微笑ましい始まりと終わり。

横山ファンとして待ちに待っていた7年ぶりの著者渾身の647ページ。

これぞ横山作品といえる独特のはぎれのよい短い文章や会話で登場人物に血を通わせ、様々な人間を造形していく、7年の沈黙が何だったのかという感じで横山ワールドが生き生きと展開していき・・・

著者の頭の中で温めに温めていたことをうかがわせる密度の濃いすばらしい作品でした。

様々な警察小説の主人公の王道ともいえる颯爽たる刑事より、地味な事務方を主人公に据えるという横山作品の特徴そのまま、今回も人事やマスコミ、議会対策を主に扱う警務部に属する広報官という日の当たらない部署にいる警官を主人公としています。

D県警の広報官・三上義信の家族に起こったある事件を背景に、D県警で起きた過去の事件を掘り起こしながらD県警の暗部の核心に迫っていくというもの。

警察内部の軋轢、警察と新聞記者との齟齬、犯罪被害者家族の苦悩、三上自身の家族の苦しみなど内容は幾筋へも枝分かれしながらラストでは現実的な収束へと導く力量もさすが。

愚直ともいえる三上の苦悩の息遣いが聞こえてくるような臨場感ある作品でした。

各地で天変地異が起こっていますね。

広島の悪夢も覚めやらぬうちに東京や北海道ですさまじい豪雨の映像が流れ、物的人的被害が出ないことを祈るばかりです。

以前アメリカのアル・ゴア氏が警告を鳴らした地球温暖化に対する根本的な対策がこの地球で最も早急にそして真剣になされなければならないのでは・・・いがみ合いやそれから発展した戦争、日本に関しては利権に発した原発促進政策などやっている場合か・・・と思いながら一個人としてはガソリンを使って買い物に出かけていますけど(――;)


9月8日は十五夜、翌日は十六夜、当地は両日ともご機嫌なお天気で観月にはもってこいの日和でした。

真円度は9日の十六夜の月がより高かったそうですが、肉眼では違いがわからない程度。

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どちらも美しい望月、リビングから見上げたらまあるい月が夜空にぽっかりと浮かんでいました。

まさやかな名月の宵夫とわれ冷酒を飲みつつ〈月光〉を聴く(9/8)

いざよひて昇りし月はおほどかに大地照らせり蝉殻までも(9/9)


季節の移り変わりに目を向け観月をして短歌を詠むなどという行為はやはり平和だからこそできるのだと思うと今の境遇にしみじみと感謝が湧いてきます。

とはいえ1ヵ月ほど前左膝の炎症が突然復活して曲げ伸ばしができず歩きにくかったのを3回の鍼灸治療で快復させていただいて喜んだのも束の間、今度は頼みの右肩から腕に強い痛みが生じて使い物にならない状態での観月。

昨日またまた鍼灸に行き当面の痛みを取っていただきましたが、当分卓球はできそうにない感じ、左肩は骨の破壊度が大きく修復不能が続いていて鍼灸で少し可動幅の広がりを保っているものの上がらない状態なので右肩だけが頼りという状態ですが、なんとか家事をこなせているのでこれも感謝というところでしょうか。

持病があると発想の転換が非常に大切であると痛感しています。

絡め取られると身動きや心動きならないので、あまり気にせず動いているというのが現状です。




さて本日は久しぶりに池井戸潤氏著『銀翼のイカロス』のご紹介です。


麻薬(我が家では夜寝る前の読書本をこう呼んでいます)が切れたので禁断症状が出た夫について本屋さんに行ったとき、店頭に積上がっていた本書をさりげなくねだって買ってもらいました。


ついでにいうと本書版元・ダイアモンド社のものは手に馴染まず紙も目にそぐわず好まないのだけど・・・文春文庫あたりで版権を買って発刊してほしいのだけど、待っていても埒があきそうにないので。


「半沢直樹シリーズ第4弾、今度の相手は巨大権力!
新たな敵にも倍返し! !
頭取命令で経営再建中の帝国航空を任された半沢は、500 億円もの債権放棄を求める再生タスクフォースと激突する。
政治家との対立、立ちはだかる宿敵、行内の派閥争い――
プライドを賭け戦う半沢に勝ち目はあるのか?」


テレビで一躍有名になった半沢直樹シリーズ第4弾、第3弾『ロスジェネの逆襲』では関連の証券会社・東京セントラル証券への出向を命ぜられた半沢直樹が粉飾決算をあばいた功績を認められ古巣の東京中央銀行本社へ復職したところで終っていますが、本書は営業第二部次長に戻った半沢が中野渡頭取の命を受けて経営危機に陥って久しい帝国航空の再建を担当することになったところから物語がスタートします。


それまで審査部が担当していたという帝国航空の再建を営業第二部に移したことからお定まりの行内の軋轢が生じ、半沢は内外の敵と戦うことを余儀なくされるのもお馴染み。


こんどこそ本気で再建するよう帝国航空の経営陣に説き、半沢を中心に練り上げた修正再建計画が採用された矢先に衆議院選挙の結果進政党へと政権が移り、流れが大きく変わります。


それまでの憲民党色を一掃するという単純な発想の下新しく国土交通大臣に就任した白井亜希子大臣が帝国航空の債権プランとして打ち出したのが私的機関を軸に展開する「帝国航空再生タスクフォース」。


そのタスクフォースによって突きつけられた7割の債権放棄を巡って半沢の行内外の敵との戦いが展開されるという筋立て。


それにしてもほんの少し前に起こった民主党の政権交代劇とその後のJAL再生タスクフォースを想起させる内容が実録的な面白さではありました。


結果も事実に倣っていますが、物語としては銀行内の隠蔽された過去の不正融資や半沢シリーズではおなじみになっている金融庁・黒崎検査官との一騎打ち、進政党の黒幕と銀行の癒着など、次々に明るみに出てピンチに陥る半沢直樹の逆転劇が見られて溜飲が下がるのも前作と同じで読者の興味を次に次にと誘いますが、本書を読んで感じたことを少々。


映像での半沢直樹があまりにもブレイクしたあとの本書、穿った見方というのは重々承知で感想を書くと、本書において著者はかなり映像に引っ張られての執筆と感じました。


著者の頭の中のイメージとしてテレビの半沢と他の登場人物が既にあり、そのイメージを通して書かれてているような。。

テレビの視聴者に阿っているように感じたのは穿った見方かもしれませんが。


お定まりのように登場する黒崎検査官もさることながら、同僚の渡真利や近藤の言動もいかにも空疎な狂言回し的で必然性があるのかないのか、なんだかなぁという感想を持ちました。

もっともだんだんシリーズに慣れてきた贅沢我侭な読者としての感想かもしれませんが。


5年ほど前に実際に起こった政権交代劇の結果、民主党の前原誠司国土交通大臣が前政権の「日本航空の経営改善のための有識者会議」を廃止して「JAL再生タスクフォース」を設置した結果債権放棄をめぐって銀行側の反発のため短期間で解散し企業再生支援機構へと引き継がれ、その後稲盛和夫氏が再生に尽力したのは記憶に新しいので、そういった事実を踏まえて銀行側からの視野の下で読むと大変興味深い物語となっています。


実際の社会では「正義」が勝つことはたいへん珍しいといわざるを得ませんが、テレビの「水戸黄門」同様、真っ当な「正義が勝つ」という筋立てをいつもラストで用意してくれている著者に敬服です。

代々朝日新聞を購読している我が家。

夫の実家も私の実家も朝日新聞、幼い頃からなじみの新聞。

一時日本経済新聞をプラスした時期もありましたが、基本的にはずっと朝日新聞。

今までに多々齟齬はありましたが、それでもと続けている中、立て続けに不信感が積み重なって・・・怒っています。

最近の朝日新聞はやることなすこと良識というものを忘れたような行為に驚くばかりです。


過ちがあれば潔く反省し謝るという至極明瞭な行動を意地でも取らず、その上池上氏の原稿掲載騒動に見られるように報道の基本である「言論の自由」すら抑えるという態度、広告源である週刊誌の批判的な文字は塗りつぶすなど言語道断という感じ。

また慰安婦問題に関する読者の声は一切載せない・・・不思議感を通り越してありえないことと不信感が募ります。


これほど世論が盛り上がりを見せて新聞購読数に危機感をもって初めて慌てて池上氏の記事不掲載を一転して掲載する、謝る・・・すべてが後手後手で呆れるばかりです。


これでは世の中のさまざまな事象に対して正当なる批判的な記事を書いても素直に頷くことができません。

ツイッターなどによると良識ある記者の方々がたくさんいらっしゃるというのは理解しています。


どうぞ総意として良識というものを見せてほしい、と切に願います。





さて本日は桐野夏生氏著『だから荒野』をご紹介します。

「46歳の誕生日。
身勝手な夫や息子たちと決別し、主婦・朋美は1200キロの旅路へ―
『家族』という荒野を生きる孤独と希望を描き切った桐野文学の最高峰!」


著者の作品に関してはジュニア小説を手がけたのち江戸川乱歩賞を受賞した女性探偵ミロシリーズ第一作『顔に降りかかる雨』や『天使に見捨てられた夜』くらいまでがすばらしく、シリーズ最後の『ダーク』となると別人格のようなミロが登場して著者ご自身の人格の荒廃のようなものを感じて引けてしまう、そんな印象を持っています。

といいながらいくつかトレースしてアップしていますが、好みとはいえない作風が続いています。


そんな中本書は著者独特の毒の薄い作品、その分インパクトに少々欠ける作品となっています。


身勝手で利己的な夫と2人の息子に軽視されている46歳主婦・朋美が自らセットして迎えた自分の誕生パーティの席で今までの忍耐の緒が切れてそのまま夫の車に乗って家出を決行するというもの。

家出決行の背景として夫と息子2人の手前勝手ぶりにはいささか呆れて共感しますが、主人公も思春期の息子たちが受け入れないという理由で食事を作ることをとっくに放棄しているという主婦。


唯一家出決行を知らせた親友との昔語りに思い出した昔の恋人が長崎にいるということで宛てのない行き先を長崎に設定するという短絡ぶりがおもしろい。

この辺りまではまだ読ませますが、旅の途中の高速道路でティアナを乗り逃げされてしまい、ヒッチハイクで長崎で原爆の語り部をしているという老人とその身の回りの世話をしている青年に出会ったあたりから思わぬ方向の小説となって、首を傾げるばかり。


語り部を通して長崎原爆の実態を語らせているのも中途半端な感じ出し、母親を嫌い身勝手なはずだった息子が母を頼って長崎に来たりで、あらあらという感じ。


そして最終的にはいかにも安易に元の鞘に収まるという締めはなんとも凡庸な予定調和作という感想を持ちました。
著者は「荒野」と「妖野」を挙げてなにやら主人公の行動を総括していましたが、これもいわずもがなという、ちょっと著者風スパイスの薄い作品でした。

短歌をイロハから勉強しているともっともっと若いころから始めておけばよかったという思いがしきり。

後悔の1つは恋の歌が詠めないこと。

もっとも若かった頃だと詠めたかというと疑問ですけど。

そのほかにも錆びついた感性では詠めない歌が多いこと。

与謝野晶子氏や中城ふみ子氏の短歌の情念濃厚な歌はあまり好まず敬遠しがちですが、淡い恋心を覚えた頃の最中の密かに胸がときめく心情など詠むほどに若い頃からスタートしていれば・・・など仕方ないことを悔やんでいます。

様々な女流歌人を輩出した早稲田大学の短歌講座は有名で現在も佐佐木幸綱氏が指導していらっしゃるようですが、若かったら受講したいほど羨ましい。

そんなことを次男に話していたら、大学時代に一般教養で佐佐木幸綱氏の講座を受講したことがあるそうな。

次男が短歌を詠んだなど聞いたこともなかったのでびっくり。

単位も取れたのか落としたのか知らないけど。

「初心者には短歌はハードルが高いからまず俳句から入ったら?」

「今からでも聴講生になったら?」

何をおっしゃいます、俳句のほうがずっとずっとハードルが高いのでありまする。

おしゃべりには14文字多い短歌の方か安心なのです、言いたいことが言えて(――;)

過ぎ去った年月は戻らず。。


やはり今関心のある事柄しか詠めない・・・主に草花、天候、時事、病老死などなど・・・特に病老死が得意^_^;



さて今日は衝撃的な恋歌を挙げて今日のレビューを始めたいと思います。

君にこそ恋しきふしは習ひつれ さらば忘るることもをしへよ
明治時代に人気歌塾「萩の舎」を主宰していた中島歌子氏の有名な恋歌です。


朝井まかて氏著『恋歌』

「樋口一葉の歌の師匠として知られ、明治の世に歌塾『萩の舎』を主宰していた中島歌子は、幕末には天狗党の林忠左衛門に嫁いで水戸にあった。
尊皇攘夷の急先鋒だった天狗党がやがて暴走し、弾圧される中で、歌子は夫と引き離され、自らも投獄され、過酷な運命に翻弄されることになる。
『萩の舎』主宰者として後に一世を風靡し多くの浮き名を流した歌子は何を思い胸に秘めていたのか。
幕末の女の一生を巧緻な筆で甦らせる」


1959年大阪生まれ
2008年『花競べ 向嶋なずな屋繁盛記』(改題)で第3回小説現代長編新人賞奨励賞2013年『恋歌』で第150回直木賞受賞
他の著書に、江戸の庭師一家の奮闘を描く『ちゃんちゃら』、大坂の青物問屋を舞台に浪華男と江戸娘が恋と仕事の火花を散らす『すかたん』、女三人組のお伊勢詣り珍道中を活写する『ぬけまいる』など


各界の評から
◆恋愛小説は小説の起源であり、絶えることのないテーマである。一途の恋を描く、一途の女性作家が蝶に化身した。(伊集院静氏)

◆これまであまり語られることのなかった史実を、見事に娯楽小説に仕立て上げている。じつにドラマチックで、作品に力があった。(東野圭吾氏)

◆私はこの作品の後半を幾度も読み返した。そして読み返しながら、1人の作家の才能というものが大きく開花し、読者の心を鷲掴みにするさまを体験した。本書は、紛れもなく作者の最高傑作であり、本年度におけるベスト作品である。(縄田一男氏)

◆どうしてこんなことになってしまったのか。その叫びが、慟哭が、鋭く読者の胸を抉る。やりきれない。たまらない。でも読むのをやめられない。後に、朝井まかて初期の傑作と呼ばれることは間違いない。必読の一冊である。(大矢博子氏)


構成といい筆致といい大変充実したすばらしい作品でした。

中島歌子氏の「萩の舎」は題名は忘れましたが樋口一葉を主軸とした作品に登場した折に読んで歌塾の様子や主宰者・中島歌子氏についても大まかなアウトラインは知っていましたが、本書はその中島歌子氏の娘時代から歌塾を主宰するまでの苛烈な半生を描いて秀逸な作品となっています。


裕福な商家の娘だった歌子(本名・登世)が幕末の江戸で初めての恋を成就させ天狗党の志士である水戸藩士・林忠左衛門に嫁ぎますが、尊皇攘夷の急先鋒だった天狗党は同じ水戸藩の諸生党との激しい内乱に翻弄され、夫と引き離されやがて自らも投獄されるという苛酷な運命を辿ります。

これら史実に基づいた内容は中島歌子の手記という形で描かれています。

「忠と不忠が糸車のように入れ替わったあの時代の、何と不条理であったことか」

手記に書かれた歌子の慟哭のような叫び。


同じ仲間でありながら、イデオロギーの違いに端を発した内戦は報復の報復に次ぐ報復の連鎖を生み天狗党と諸生党のお互いの殺戮により結果的に水戸藩は維新から切り捨てられ自滅しますが、囚われの身になりながらも常に保ち続けた矜持に圧倒されます。


著者は直木賞受賞後の会見で次のように語っていらっしゃいます。

「『負けない小説』を目指そうと思う・・・史実とフィクションがないまぜになっていることを忘れるほどに酔い、作者の企みを超えて読者が胸を躍らせてくれるものを書こうと」

そういった意味でも本書は成功作であることにまちがいありません。

一途な想いで激動の世を生き抜いた女の見事な生き様!

尊王攘夷の急先鋒でありながら結果的に切り捨てられた水戸藩の、それも天狗党の妻の視点に立って描いているのが新鮮で本書の見どころとなっています。

いつの世も男たちによる戦争に女や子どもたちが巻き込まれて運命に流されていく、この理不尽な不条理が何とも切なくて心の痛みなしには読めませんでした。

世界に目を転じてみればいまもなお様々な国で進行形のかたちで繰り返されている戦いの悲惨さを思わずにはいられません。

夕映えを戦火と見紛ふことのなきまほろばの世の永くあれかし
お粗末さまでした。

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