VINのらんどくダイアリー

ご訪問ありがとうございます。 「一日一生」を銘にさまざまな人生を読書というツールを通して味わっていきたいと思っています。 響きこし言葉に貼れるさみどりの付箋そよぎて林となりぬ

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2015年02月

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友人の日本画家による干支の色紙
生前の母がたいへんお世話になった方の奥様・・私は幼い頃からおばちゃまと呼んで可愛がっていただいていました・・に久しぶりに電話で話しました。

以前にも書いたことがありますが、おばちゃまはひとり息子を中学2年生のとき事故とも自死とも区別のつかない亡くなり方で失われています。

私が大学1年のとき。

東京在住で年に何度か行ったり来たり、また度々旅行を共にしたりと赤ちゃんのころから接していたY君は私にとって弟のような存在でした。

おじちゃまが芝浦工業大学の物理学の先生をされていたせいか、Y君は早くから理系の才能を発揮して聡明で名の知れた少年となっていました。

将来ノーベル賞をとりたいと言っていたY君。


その事故があってしばらくは入院を余儀なくされたほどの深い喪失感を持たれたまま人生を歩んでいらっしゃるおばちゃまのことを考えると今も心が痛くなります。


杉並の広い敷地に小さな別棟の居室を建ててご自身はそこに住まれ、母屋は甥御さんご夫婦に住んでもらっての老後。

現在93歳。

2年ほど前までは古典の文学講座を受講されたり、大学で伊勢物語の講座を聴講されたり、あるいは長く老人ホームでのボランティアとしてゲームなどの指導員をしていらっしゃったのには敬服していました。


私が東京にいた頃は何度かおじゃましていましたが、遠く離れた今では気にかかりながら何もできず、時折食べられそうなものを送る程度。


手いらずで食べられる柔らかいもの、と限定して送る品々をとても喜んでくださるのでいつもネットで探しては送るのを楽しんでいます。


先日もいろんな具材のおじやセットを見つけて、これなら食べられそうと送っていたので電話でとても喜んでくださいました。


以前母の家を整理したときY君が私に宛てて書いてくれた手紙がたくさん出てきました。

辛かった想い出を掘り起こすようなものかもしれない・・など相当悩んだ末にやはりおばちゃまの手元にお返ししようと勇気を出して送りました。


おばちゃまは抱きしめたとのこと・・よかったのか悪かったのか今でもわかりません。


この世の最大の不幸は逆縁に遭うことといいます。

おばちゃまを見ているとまさにと胸が締め付けられます。


寿命がどんどん伸びてそういった不幸をちらほら耳にする昨今、長生きが果たして幸せなのかと考えてしまうのはこんなときです。


幸い我が家の子どもたちは今のところ元気でそれぞれの暮らしをしています。


この幸せが私が存命中は崩れないでほしいとただそれだけを望みます。





さて本日は垣谷美雨氏著『七十歳死亡法案可決』のご紹介です。

「2020年、高齢者が国民の3割を超え、社会保障費は過去最高を更新。
破綻寸前の日本政府は『七十歳死亡法』を強行採決する。
2年後に施行を控え、宝田東洋子(55)は『やっと自由になれる』と喜びを感じながらも、自らの人生の残り時間に焦燥感を隠せずにいた。
我侭放題の義母(84)の介護に追われた15年間、懸命に家族に尽くしてきた。
なのに妻任せの能天気な夫(58)、働かない引きこもりの息子(29)、実家に寄りつかない娘(30)とみな勝手ばかり。
『家族なんてろくなもんじゃない』、東洋子の心に黒いさざ波が立ち始めて…。
すぐそこに迫る現実を生々しく描く。
注目作家、渾身の書き下ろし」 

 
七十歳に達した日本国民は皇族以外全て1か月以内に安楽死させられるという「七十歳死亡法」が可決されたという状況から物語がスタートします。


少子化に加え高齢者の数の増加により健康保険や福祉関係に費やされる財源の逼迫に業を煮やした政府が思い余って作った法案。


現時点70歳以上の人も施行の日に自ら提示された種々の安楽死の方法の中から自己選択して亡くなってもらうといいます。

新聞の日付は2020年2月22日。


施行まであと2年の猶予があるという2018年の日本のとある一家族の話。


七十歳超の寝たきりで口の達者な姑、家庭に無関心な夫、エリート銀行員からニートに堕ちた引きこもりの息子、家を離れ介護の現場にいるにもかかわらず母親の苦悩に無関心な娘を持つ50代主婦・東洋子。


結論からいうと目を惹くショッキングなタイトルとは裏腹に日和見的な温かさを残して物語の幕が閉じられています。


タイトルがインパクトがあるばかりにあまりにも凡庸な展開といい、第一章で高齢化問題や年金問題を高く掲げたにも関わらず、第二章になると尻すぼみ的なつかみの甘さが目立ってなんとも残念な結果になっているよう。


現実にこのような法案が可決されたら・・・社会的な混乱とか介護関係の人たちの動揺とか、野党と与党の丁々発止とかデモとか、上を下への大混乱が巻き起こっても当然だと想像するのですが全くなし。

気負って社会的なテーマを掲げたものの、結果的には1つの家族のドラマに終ってしまったという感じ。


初めからアットホーム系物語に終始していればここまで期待はずれ感はなかったように思います。

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毎日一首と自分に課して先生に提出している短歌。

それと平行して様々な歌人の短歌集を読んで心に残った歌をノートに書き写すのがここ1年の夜の日課になっています。

恥ずかしいことながら以前から花鳥風月に心を寄せるような生活をしていなかったので、月齢カレンダーとにらめっこしたり、風の呼び名のにわか勉強をしたり、二十四節気に注目したり、それよりなにより古語の活用に四苦八苦しております。


高校時代一応古文の授業は受けた記憶はおぼろげながらあってその先生のあだ名はすぐ思い出せるのに、授業内容はさっぱりという低レベル。


そういえばサ行変格活用など機械的に覚えたけど、それをどう使うかなど皆目だった昔に比して今短歌を詠むときは切実です。


基本、旧仮名遣いで詠むことを教えられた短歌、まちがった使い方をしていると即座に指摘、説明してくださる先生の言われることを逃さないよう復習のためにフォルダに収めて折々見直していていても身についてないから度々間違いを繰り返してしまいます。

若い頃これほどの意欲があったらよかったのに^_^;


やりたい熱意を持っているときが青春といいますが、やはり年齢は争そえない、なにしろ人生の〈白秋〉の途上にあるだろう私。

一応作ったけどちょっとあそこが・・と不本意に思った個所は必ず指摘されるのには驚くばかりです。


四苦八苦してまとめた短歌の上の句と下の句の語順を変えられてすっかり模様替えされたのがすばらしく生きたり・・・何より短歌を詠むときの心にできるだけ添ってくださるという包容力に加え、自然や芸術、政治、文学など網羅した膨大な知識の集積力のある師に驚きを隠せません。


人を指導するって生半可な知識ではだめなんだなぁと思います。


真っ白な紙に今の心情を記す・・・たったこれだけなのに和歌の時代から脈々続いている短歌の世界で無数の詠み手が苦渋されていることを思うと本当は手も足もでないんですけど、いましばらく続けたいと思っています。


そして今日は二十四節気の〈雨水〉の日。

空から降るものが雪から雨に変わり、氷が溶けて水になるという時節。

草木が芽生える頃で農耕の準備を始める目安とされてきたという〈雨水〉の日。

この日に雛人形を飾ると良縁に恵まれるといわれているそうなので・・・あーちゃんのために飾りました♪

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ひさかたの光を浴びし雛一対たをやかに並(な)ぶけふ〈雨水〉の日

      土の脉潤ひ初めにし〈雨水〉なり女孫想ひて雛を飾りぬ




さて本日はピエール・ルメートル氏著/橘明美氏訳『その女アレックス』をご紹介します。


「おまえが死ぬのを見たい―男はそう言ってアレックスを監禁した。檻に幽閉され、衰弱した彼女は、死を目前に脱出を図るが…しかし、ここまでは序章にすぎない。
孤独な女アレックスの壮絶なる秘密が明かされるや、物語は大逆転を繰り返し、最後に待ち受ける慟哭と驚愕へと突進するのだ。
イギリス推理作家協会賞受賞作」


「史上初の6冠達成!」という文字が躍っている本書。

宝島社のムック「このミステリーがすごい!2015」の海外部門第1位
「週刊文春ミステリーベスト10」海外部門第1位
『ハヤカワ ミステリマガジン』「ミステリが読みたい!」海外編第1位
「IN☆POCKET文庫翻訳ミステリー・ベスト10」第1位、
英国の「英国推理作家協会 インターナショナル・ダガー賞」受賞
フランスの「リーヴル・ド・ポッシュ読書賞」受賞

たいていの書店の店頭に積上げられていて・・・抗えなくて年末に買いました。

「ミステリーの通たちから驚愕と絶賛の声!」
「あなたの予想はすべて裏切られる!」
「慟哭と戦慄の大逆転サスペンス」
「大反響! たちまち増刷!」
「絶賛の声、続々!! 詳細は帯ウラを参照」

このキャッチコピーを目にして買わずにいることができるでしょうか。。

「緊張感に溢れ、攻防から目が離せなくなる」−池上冬樹氏
「衝撃度はまず半端ではない」−関口苑生氏
「二転三転の展開と驚愕の結末が実に魅力的」−権田萬治氏


若く美しい女・アレックスが誘拐されるところから物語がスタート。

目撃者の証言により捜査を開始する警察。


物語は誘拐されたアレックスと、捜査を担当することになった警部・カミーユ・ヴェルーヴェンの2人の視点によって交互に章が切り替わるという構成になっています。


前半は誘拐され犯人が作った狭い木箱に閉じ込められもはや死を待つだけになったアレックスの詳細な描写に終始。

これだけでかなりきわどくサスペンスフルというより、現実的な四面楚歌の状態に手に汗を握る要素がたっぷり。

そして平行して警部・カミーユを中心にした捜査班の刑事たちの人生をからませながら被害者であろう謎の女・アレックスに行きつくまでの行程が描かれていて、他の警察モノとほとんど変わりないと思える内容。


「訳者あとがき」によると・・・

「この作品を読み終えた人々は、プロットについて語る際に作品以上に慎重になる。
はネタバレを恐れてというよりも、自分が何かこれまでとは違う読書体験をしたと感じ、その体験の機会を他の読者から奪ってはならないと思うからのようだ・・・
そうこうするうちに、誘拐事件で始まった物語は様相も次元も異なる事件へと発展し、読者を乗せた船は大きな舵を切る(それも一度ならず)」


ミステリ評論家・オットー・ペンズラーによると・・・

「私たちがサスペンス小説について知っていると思っていたことのすべてをひっくり返す。
これは、近年でもっとも独創的な犯罪小説で、巧みな離れわざに私は繰り返し翻弄された。
次に何が起ころうとしているのかやっと理解できた、と思ったとたん、足をすくわれるということが二度も三度もあった」

どうやらこの作品のあらすじに踏み込むことは最大の神秘的特徴である領域に踏み込むことになり、これから読む読者の興味を根こそぎ奪いかねないので要注意ということでしょうか。

なのでこれ以上ネタバレになりそうなことは控えますが、「物語は大逆転を繰り返し、最後に待ち受ける慟哭と驚愕へと突進するのだ」というキャッチコピーの下最大の期待感を持って読み終えた私としては「えっ! これで終わり?」という感じだったことだけ記しておきます。


サスペンスとしての筋立ては上記のような肩透かしでしたが、主役のひとりである警部・カミーユ・ヴェルーヴェンとその部下たちの造形がとても魅力的に描かれていて惹かれました。

それに刑事たちを中心とした会話の中に散りばめられたユーモアのセンスがイギリスほどではないにしてもフランス的香りがしてちょっと楽しめました。

SNSで親しくしていただいている年若い友人のUさんが日記に若いころからの読書歴を書いていらっしゃったので私も整理してみました。707fda2a.jpg



小学校の頃は2歳下の弟といっしょに近所の貸し本屋さん(懐かしい言葉!)でもっぱらマンガ本を借りては枕元に積み重ねて競って読んでいました。

さいとうたかをがそのころのお気に入り。

「ゴルゴ13」でブレイクする前の作品群でオカルティックな作風だったと記憶しています。

弟と共同で借りるので少女マンガはなし。


中高一貫校の中学に入学したとき大好きだった5歳上の姉が高校3年で図書委員長をしていたのに影響を受けて、その頃から急激に本を読むようになりました。

図書館で手当たり次第という感じ。

覚えているのは『赤毛のアン』の読書感想文が校内で代表となって外部のコンクールに提出されたこと・・・その後どうなったか記憶にないところをみると選外だったのか。

京都の大学に入学した姉が帰省するたびにヘッセの作品をお土産に買ってきてくれたのもその頃。

〈堀辰雄〉と〈ヘッセ〉が大好きだった姉の影響を受けて『風立ちぬ』や『車輪の下』『春の嵐』『知と愛』『デミアン』など読んでいました。

特に『デミアン』はその後の私の読書生活に大きな影響を与え、今に到るまで折り折りに読む大切な本となりました。


高校生になってからは密かに慕っていた先生の影響下、自然主義文学へと傾倒して、島崎藤村の『破壊』『夜明け前』や田山花袋の『蒲団』、徳田秋声の『縮図』など、精一杯背伸びして読んでいましたが、どこまで理解していたやら^_^;


大学に入学してからはもっぱら欧米の文学作品、それも1800年代のものがほとんど。

アルバイトで稼いだお金をつぎ込んだ河出書房の全集は結婚後の引越しの度にいっしょに移動していましたが、ある時期すべてを処分して今は手元にありません。

ユゴー、ゲーテ、トルストイ、ドストエフスキー、モーパッサン、ブロンテ姉妹、ディケンズ、バルザック、ゴーゴリ、ゾラ、T・S・エリオットなど羅列してみると懐かしさがこみ上げます。

卒論にジョージ・エリオットの『フロス河畔の水車小屋』を選び、大方1年ほどかけて資料を集めて書きました。

ジョージ・エリオットはあまり面白みのない作家ですが、『サイラス・マーナー』に心惹かれたきっかけがあり選んだのですが、資料が乏しく苦労したことを覚えています。


それにしてもあの頃の学生って私を含めみんな真面目だったなあ。

アルバイトの連続と学業・・・特に勉学が好きだったわけでもないのに。


卒論を書くため、教会で牧師さんに頼んで英文タイプを借りて、独学でブラインドタッチを練習しましたが、今に到るまで指が覚えています。

また外国文学のほかに、学生運動が盛んな時期だったのでお定まりの柴田翔の『されどわれらが日々』や『三太郎の日記』など・・・たいした悩みもないのに(――;)


そして結婚、相手も話してみると毎日の読書が習慣になっている人でしたが、まったく噛み合わず・・・今に到るまで。。


欧米ミステリを読み漁ったのは30代から50代、アガサ・クリスティから始まってエラリー・クイーン、レイモンド・チャンドラー、パトリシア・ハイスミス、ジョン・グリシャム、トマス・ハリス、エドガー・アラン・ポー、R・D・ウィングフィールド、ルース・レンデル、サラ・ウォーターズ、P・D・ジェイムズ、スコット・トゥロー、メアリ・H・クラーク、スー・グラフトン、トマス・クック、パトリシア・コーンウェルなどなどなど・・・思いつくまま羅列したので年代不順。

この中で特に大好きだったのがスー・グラフトンのABCシリーズ!

随分楽しませてもらいました^_^


夫は私とは分野が違う欧米スパイ小説が好みで、あらゆるスパイ小説が本棚にひしめいています。


そして60代前、ブログのレビューをアップし始めた頃と一致しますので、それ以後の傾向は・・・川の水が高きから低きに流れる例に漏れず、より楽な方へと走っております。


というわけで今燃えているスポーツ系エンタメ!

堂場瞬一氏著『水を打つ』

「競泳自由形の日本記録を持つ矢沢大河は、前回の五輪の4×100mメドレーリレーでは僅差でメダルを逃がし、雪辱を期している。
そこに現れたのが高校3年生の小泉速人。
不穏当な言動で選手の反発を買う小泉は、新型水着『FS‐1』を身につけて好記録を叩き出す―
個人競技におけるリレーとは何か、ツール(水着)とは何かを迫真の筆致で描く問題作」

「突拍子もないことは書くべきでないと思うんです。
甲子園で場外ホームランを打つ高校生とか、水泳男子の100メートル自由形で、いきなり45秒台を出す選手は出てこない。
小説ですからファンタジーへ振るのはアリですが、僕自身の好みではなくて。サスペンスと融合させないのも、スポーツを汚すことにならないか、という気持ちがあるから。
スポーツ小説をマンガ的にとらえている方には、僕の作品は物足りないかもしれません・・・
スポーツ小説にも名作と言われるものはたくさんありますが、中学生とか高校生の成長過程を描くのがひとつのパターンとなっている。
それはもちろんアリで、感動的でもあるんだけど、僕はあまり好きじゃなくて(笑)。
てっぺんに来ていて、物凄くワガママな人を書きたい。
アスリートって、基本的にエゴイストじゃないですか。
チームスポーツでもそうで、レベルが上がるほどそういう傾向は強まる。
実は爽やかなものでなく、エゴのぶつかり合いがあって、それによって技術が高められている。
人間臭いいやらしさは絶対にあるわけで、それを表現したい」

著者・堂場氏は登場人物の造形についてこのように述べていらっしゃいます。

前にアップした箱根駅伝が主題の『チーム』の「水泳版」というところでしょうか。


主な登場人物は自由形の日本記録を持つ矢沢と前回のオリンピックにおいて銀メダリストの今岡。

そして新型の高速水着・FS-1を着用して平泳ぎの日本記録を泳ぐたびに更新する高校3年の小泉速人。

前回のオリンピックの競泳において僅差でメダルを逃した矢沢と今岡はまもなく開催される東京オリンピックでの雪辱を心に期していますが直前の平泳ぎ予選で腰を痛めたのがきっかけで現役を引退した今岡の代わりに新人の小泉が競泳に加わることになりますが、まわりの先輩たちに傲岸不遜な態度をとり続ける小泉を監督初めコーチ、先輩たちは扱いかねる中、オリンピックの代表コーチになった今岡は小泉の頑なな態度の背景にあるものを探るために北海道の小泉の実家や中高時代の小泉と接触した人々を訪ね歩くという作業を通して小泉の心に近づいて解きほぐしていくというのが1つの骨子。

この作品のもう1つの柱は小泉他多くの選手が身につけて記録を塗り替えている新型水着とその開発者・久本の努力と苦悩の物語。


世界的に有名なメーカーとは比べようのない小さなスポーツメーカーの開発した新型ハイテク水着は、その極小メーカーの政治力のなさゆえにオリンピック委員会に着用を認可されないという最悪の事態になったことで、今まで身に着けて泳いでいた選手たちに大きな打撃を与えます。

たかが水着、といえどこれほどまでに選手に動揺を与え、泳ぐ活力を失わせるものとは!

アスリートにとって「道具」とはかくに心理的に、または身体的に依存するものなのか?


近年のスポーツ記録の飛躍的向上は人間の運動能力やトレーニング法の進歩もさることながら、施設や用具、ユニフォームなど競技側面の改良が大きく寄与していることは否めないと本書の解説を担当していらっしゃるノンフィクション作家の後藤正治氏も書いていらっしゃいます。


しかし本書のクライマックスはその依存を乗り越えてメドレーリレーに挑む場面です。

結果はここでは記しませんが、感情的に縺れた糸が一気に収斂していく過程を読んでほしいと思います。

お勧め作品です!

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節分が過ぎ、立春もあっという間に過ぎましたね。

鬼追ひの名残りの豆がベランダで立春の朝の陽を浴びてをり

川の辺にひともと咲きし紅梅の蕾ふくらみけふは立春

春は名のみというのがぴったりの寒さですが、木々や草花には春の萌しが見えて待たれる春。

短歌を始めてから自然の移り変わりとか二十四節気にとても敏感になりました。

えっ、その年で?!と驚かれること必至ですけど^_^;

昨年のカレンダーに二十四節気が載っているのがあってよくチェックしていましたが、今年の家中のカレンダー(何と数えてみたら全部で7つ!@@!・・・夫が各部屋、トイレまで掛けるのが好きなようで)のどこにも掲載されてないので、予定のメモ代わりにしている卓上カレンダーに12月までの二十四節気を書き込みました~・・・逃がしてなるものか。。。


昨年も一応二十四節気を入れて短歌を詠みましたが、今年も詠めたらいいな~。


連日寒いので家に篭って短歌作ったり、こんなことしていました。

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本日は柚木麻子氏著『あまからカルテット』の簡単なレビューです。

「女子中学校の頃から仲良し四人組の友情は、アラサーの現在も進行中。
ピアノ講師の咲子、編集者の薫子、美容部員の満里子、料理上手な由香子は、それぞれ容姿も性格も違うけれど、恋に仕事に悩みは尽きず…
稲荷寿司、甘食、ハイボール、ラー油、おせちなど美味しいものを手がかりに、無事に難題解決なるか!?」


「恋する稲荷寿司」「はにかむ甘食」「胸さわぎのハイボール」「てんてこ舞いにラー油」「おせちでカルテット」という5つの食べ物にちなんだ小品。

女子中学で仲良しだった30歳目前の4人の女子が繰り広げる友情&恋愛物語・・・一つ一つの物語中に起きた小さな事件を4人が力を合わせて解決していくという構成になっています。

いずれもファンタジー的な友情が描かれていてちょっとばかり非現実感は否めませんが、ふんわりとした陽だまりのような作品になっています。

それぞれ特化した食べ物が出てきますが、今回はすぐ作りたいというような魅せられたものはありませんでしたが、強いて挙げるとするなら「ラー油」かな?


一時期「食べるラー油」が流行ったことがありましたね。

いくつか買って試したことがありますが、どれも継続とはいかなかったような・・・。


一般的なラー油の作り方は油を熱して粉唐辛子にかけるそうですが、この作品に登場するのは・・・上質の胡麻油に唐辛子や調味料を漬け込んで半年ほどかけてゆっくり熟成させて作るそうです。

漬け込む調味料は白胡麻、醤油、砂糖、味噌、素揚げしたニンニク、ショウガ、ネギなどなど・・・作ってみたい気がします。

チャーハンに隠し味として加えても、ラーメンに落としてもおいしそう♪

お正月にテレビで「芸能人格付けチェック」というのを毎年観ています。

「ワイン」や「音感」、「味覚」などの分野に分けて、それぞれ価格的に超一流といわれるものと、方や私たち御用達の安売り店で購入できるものとを同時に出してそれぞれ芸能人たちが味わい、どちらが最高級のものかを選ぶというもの。

いつ頃からか観はじめて我が家のお正月番組の定番となりました。

そんな中前人未到の格付けチェック30連勝を果たしているのがGACKT。

味覚といい、音感といい、芸術的センスといい、文句なしにぶっちぎりです。


GACKTは歌手らしいのですが、歌も聴いたことがない私はこの番組でGACKTの感性のすごさを知りました。


「いくら魅力的でもこんな人が同居人なんてぜ~ったいいやや」と娘。

GACKTの自宅の寝室には自前の「滝」が流れているそうです(――;)

娘よ、安心して・・頼んでもぜ~ったい同居はしてくれません。


例えばお婿さんとして我が家に来たとしたら・・・想像しただけで心房細動が起こりそう(――;)

せっかく苦労して治したのに^_^;


我が家では相当力を入れたつもりの5000円のワインでもおかわりを勧めたら「いえ、もう十分に堪能させていただきました」と柔らかい言葉で断られそう。


ではどんな人がお婿さんならいいかとつらつら考えて・・・福山雅治もだめ、速水もこみちもだめ・・・美男系は軒並み気を張りそうなので・・・あとはお笑い系かしら。

お笑い系でも人柄がいいのがいいな~・・・あまり稼ぎがあると格差がありすぎてこちらが卑屈になりそうやし・・・さんまは?・・・だめだめ収入ありすぎ・・・なんてたわいのないことを考えて時間をつぶしておりました。


どれだけヒマなん?






さて本日は井上荒野氏著『そこへ行くな』のご紹介です。


「長年一緒に暮らす男の秘密を知らせる一本の電話、中学の同窓生たちの関係を一変させたある出来事…
見てはならない『真実』に引き寄せられ、平穏な日常から足を踏み外す男女を描く短編集。
第6回中央公論文芸賞受賞作」


日常に潜む目に見えないような綻びがじわじわと裂け目を広げ、気づいたときには既に手当ての域を超えている・・・こんな状況を捉えてうまい作家さんです。


しかし読後感はよくない・・・肌に馴染まない違和感が競りあがってくるのを感じながらページを捲る手が休まない・・・そんな7篇の短編集。


自分の来し方に全面的に満足している人は別として、誰しも「あのときもっと違った選択肢があったのではないか」という人生のターニングポイントの存在に苦い思いを持っていらっしゃる方は多いのではないでしょうか。

私も振り返ると・・・あります。


そのときはそれ以外の選択は考えられなかったはずなのに、時を経ると「あれでよかったのか」と思える悔悟に似た気持ちに陥ります。

そんなのに似た感覚。


間違った方向に進んでいっていることがわかるのに何故か歩を止めることができない。


また自分の行動の結果ではないのに思わぬところから降りかかってくる悪意や裏切り。


それぞれの短篇に場所の名前をつけた小品にはこれでもかという日常の魔を潜ませた物語が用意されています。

確かに人生には不条理が満ちているけど、目を背けることも大切だというのを学ばせてくれた作品。


怖いものみたさで読んでみたいと思われる方、どうぞ。

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