VINのらんどくダイアリー

ご訪問ありがとうございます。 「一日一生」を銘にさまざまな人生を読書というツールを通して味わっていきたいと思っています。 響きこし言葉に貼れるさみどりの付箋そよぎて林となりぬ

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2015年09月

川島なお美さんが亡くなられましたね。

美しいままあっという間に駆け抜けて逝った死でした。

ドラマも映画も舞台も観たことはなく関心もありませんでしたが、最期となったマスコミ登場の激やせのショットがとても痛々しく、そんなになっても笑顔でいなければならない女優魂に胸が痛みました。

舞台を降板してから数日後の死。

どんなことより女優優先というスタンスで気力のみで演じていらっしゃったと想像するとどんなに不安で辛かっただろうと切なくなります。


渡辺淳一氏に自ら売り込んでテレビでの『失楽園』のヒロインを勝ち取って以来、渡辺作品に次々抜擢されていたというのを読んだことがあります。

話題になった『失楽園』も『くれなゐ』も観ていないし原作も読んでいませんが、一つの死の形を示してくれたように思いました。

謹んでご冥福をお祈りいたします。


今日ご紹介する作品はそんな渡辺淳一氏つながりの古い作品、再読のものです。


渡辺淳一氏著『冬の花火』

「かつて著者が勤めた札幌医科大学病院に入院しながら、『短歌研究』第一回五十首詠募集の特選となり、颯爽と中央歌壇に現れた新星・中城ふみ子。
歌集『乳房喪失』は大反響を呼び、昭和短歌史にその名を刻むが、すでに乳癌で両方の乳房を切除していた彼女は死の床にあった。
それでも恋に堕ち、性の深みに堕ちてゆく。
美貌と才能に恵まれ、短くも激しい生命を燃やして31歳で夭折した歌人の愛と生の遍歴」


随分昔に読んだときはまだ短歌に関心もなかった時代でしたが、その濃縮したような生き様に衝撃を受けました。

著者の渡辺淳一氏も官能小説を次々発表される前の作品でかなりの充実感がありました。

氏の作品は評伝に限り読んでいますが、取材が行き届いていてどの作品も読み応えがあってお勧めです。


さて本書に移ります。

帯広の裕福な呉服屋の長女として生まれ、東京遊学中に短歌を始めたものの卒業後帰省して結婚し3人の子どもを授かった前後は中断、その後離婚と並行して帯広の短歌結社をスタートに再び詠みはじめました。

離婚が正式に決まった1年後左乳房に乳がんを発症し地元で切除の直後右乳房に転移がわかり続いて切除するも全身転移で放射線治療のため札幌医大病院に入院、その後数ヶ月を経て31歳の生涯を閉じました。

当時同大学の医学生だったという著者・渡辺氏によって没後20余年を経て蘇ったのが本書です。


北国の野に、街に、そして死の迫る癌病棟に、美貌と天才に恵まれながら、短く激しいい生命の炎を燃やし尽し、夭折した女流歌人の奔放華麗な愛の遍歴と、死に至るドラマをその折々の短歌を交えながら描ききって秀作です。

冬の皺寄せゐる海よ今少し生きて己の無残を見むか

失ひしわれの乳房に似し丘あり冬は枯れたる花が飾らむ


癌病棟に入院中の1954年に第1回『短歌研究』50首詠(後の短歌研究新人賞)応募作「冬の花火―ある乳癌患者のうた」が当時の編集者・中井英夫氏に見出され特選となったことをきっかけに歌集を刊行する機運が高まり、第一歌集『乳房喪失』が生まれます。


北海道の片田舎の名もない女性の第一歌集はそれまでふみ子に関わりのあった短歌会の面々によって病室で編纂されましたが、序文をだれに頼むかという段になってふみ子の口から突如文学界の重鎮・川端康成氏の名前が出たことに周囲は驚きますが、ふみ子の依頼の手紙によって川端氏が心を動かされ序文を引き受けるという異例の事態に発展、それを機に中城ふみ子の名は全国区へと広がっていきます。

昭和29年8月3日、31歳で永眠するまで・・本格的に歌を詠むようになってからわずか3年余という短い魂の輝きでした。

死に到る病床にいる美貌の女性

離婚を経験した薄幸の人

自らの男遍歴を臆することなく大胆に詠んだ短歌の数々

どれをとっても興味を曳き入れられる要素満載、ましてふみ子と接した男性のほとんどがその魅力の虜になるという天性のものをもっていたようです。

灼(や)きつくす口づけさへも目をあけてうけたる我をかなしみ給(たま)へ

陽にすきて流らふ雪は春近し噂の我は「やすやす堕つ」と

燃えむとするかれの素直を阻むもの彼の内なるサルトル・カミユ氏

音高く夜空に花火うち開きわれは隈なく奪はれてゐる



もっとも単に恋愛を楽しんでいたというより、死の恐怖から逃げるための自己の存在を確認するための恋愛というような見方もあるでしょう。

母親ならば子どもというのが一般的な見方でしょうが、ふみ子の求める対象は常に自分に興味を持つ男性でした。

子どもへの愛を詠った短歌もありますが、ほとんどが男性との愛恋の短歌。

春のめだか雛の足あと山椒の実それらのものの一つかわが子

子を抱きて涙ぐむとも何物かが母を常凡に生かせてくれぬ



灯を消してしのびやかに隣に来るものを快楽(けらく)の如く今は狎(な)らしつ

死後のわれは身かろくどこへも現はれむたとえばきみの肩にも乗りて

灯を消してしのびやかに隣に来るものに快楽の如くに今は狎らしつ



現代ですら衝撃的な内容の短歌の数々、噂も批判も恐れない一貫した姿勢は昭和20年後半にはとうてい受け入れがたいという負の反響が多かったのは当然の反応だったといえると思います。

しかし注視せずにはいられない短歌の数々。

よかったら味わってみてください。

われに似しひとりの女不倫にて乳削(ちそ)ぎの刑に遭はざりしや古代に

魚とも鳥とも乳房なき吾を写して容赦せざる鏡か

生きてゐてさへくれたらと彼は言ふ切られ与三(よさ)のごとき傷痕を知らず

失ひしわれの乳房に似し丘あり冬は枯れたる花が飾らむ

年々に滅びて且つは鮮(あたら)しき花の原型はわがうちにあり

漢方薬から化学薬に切り替えて丸3年、コントロールが効いていた期間を経て今年の初め頃から徐々に炎症の数値が上がってきて、途中に従来の薬を目一杯増薬しても効果がなく、手術後1ヶ月を経過して影響も徐々に薄れたと見なされたのか先日、医師より新しい薬の具体的な追加を提案されました。

様子見に2週間渡され毎朝服用することに。

聞いたことがあるようなないような薬名・・・帰宅後検索しようと思いながら薬局に寄ったところ・・・発売されて3年目の薬なので対面でインタビューする必要があると言われ・・・。

えっ、そんな薬?!

いま服用している薬も副作用てんこ盛りだし、ここ2週間ほど風邪を引いたという自覚がないのに咳が出て気になっているのに。

いちばん恐ろしいと思っている副作用が間質性肺炎やニューモシスチス肺炎。

主治医には咳のことを伝え、一応レントゲンを撮りましたが、その結果は2週間後に知らされます。

そんな中、見切り発車で服用するっていいの?


対面で聞いた薬剤師の方の話では肝臓、腎臓、消化器、骨髄、肺などに要注意といいます。


もともと化学薬品はできうるかぎり飲みたくないというスタンスで来たのにここに来て…。


帰宅後販売元の製薬会社のHPを検索すると・・・

かなりの確率で間質性肺炎で死亡・・・2000例で約20名。

他の臓器の死亡率は恐くて見られなかった。


で、仕方なく飲んでいます。

丸薬が喉(のみど)を下りてゆく朝(あした)細き茎なるわれを思へり

体感するまでにかなりかかりそう。


「もしも私が運悪く死亡例に入ったとしても、医療過誤裁判などぜったいに起こさないでね」と夫に念押し。

ちょっと大げさ・・・かな。






今日は岩合光昭氏著『ねこ歩き』のご紹介です。
 

「西へ、東へ。自由気まま。
動物写真家・岩合光昭が近年訪れた国々のネコを撮影した人気 写真集が文庫になりました。
地球のどこへ行ってもかわらないネコを通じて、いろいろな国の ヒトの動きを知ることになります。言葉はいりません。
ネコとの出会いを楽しみに、一緒に旅してみましょう」


次男の愛犬・小春やブログで知ったネコちゃんたちの写真を繰り返し見ている動物好きな私を慰めようと思ってか、先日の入院中に夫が買ってきてくれたもの。


世界中のネコのショット、満載です。

ギリシャ、イタリア、トルコ、モロッコ、アメリカ、キューバ、そして日本の四季の中のネコたち、最後にイワゴーさんちの海ちゃんとにゃんきっちゃん、柿右衛門、ケナのショット。

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出版と並行して日本各地で「ねこ歩き」というタイトルの写真展が開催されているので観られたネコ好きの方もいらっしゃると思います。


どのネコも自然体で撮られていて、イワゴーさんのカメラに怖じけた様子がありません。


日常の片隅にいるネコのスナップの中にちょっとおもしろいものが混じったという感じ。

文庫本サイズで写真のネコたちを風や光、波などの風景が包んでいてやさしい写真集です。

よかったらどうぞ。

次男からウィークデイの昼間に電話があり、ペット可のホテルに泊まらないかというお誘い。

小春に会えるチャンスと心浮き立つ申し出ではありましたが、体調が沈んでいて外出も控えている昨今なので泣く泣く断りました^_^;

一般企業では恒例お盆休みを返上して出勤していたので変則の休みを取っているらしい次男。

めったに電話がかからないのでしばらく引き止めて会話。

どうやら自宅かららしく、その間小春のいたずらを注意したり、小春が糸くずを飲みこんだと大騒動で中断したり・・・会話どころでなく忙しいこと!

チビのいたずらっ子がいて目が離せない様子に笑ってしまいました。

吠えることはめったになく無言で駆けずり回るらしい。

おしっこのしつけも中途半端でゲージから出るとそこら中おしっこをするとか。

けっこうなめられている様子。

動画を送ってくれてそれを繰り返し観て慰められています。

それにしても独身のお年頃の男子がペットと2人で休みを過ごす・・・早く人間のお相手を見つけて・・・母の願です。




今日は小川洋子氏著『最果てアーケード』のご紹介です。

「ここは、世界でいちばん小さなアーケード――。
愛するものを失った人々が、想い出を買いにくる。
小川洋子が贈る、切なくも美しい記憶のかけらの物語。
天井は低く、奥行きは限られ、ショーウインドーは箱庭ほどのスペースしかない。
そのささやかさに相応しい品々が、ここでは取り扱われている。
使用済みの絵葉書、義眼、徽章、発条(バネ)、玩具の楽器、人形専用の帽子、ドアノブ、化石……。
どれもこれも窪みにはまったまま身動きが取れなくなり、じっと息を殺しているような品物たちばかりだ」


「BE・LOVE」連載のコミック(有永イネ/画)の原作として初めて書き下ろした小説。


主人公は時代から取り残されたような小さなアーケードの大家でもあり配達係をしている「私」。

このアーケードで生まれ、16歳のときアーケードの持ち主だった父親を火事で亡くして以来大家となった彼女の目を通してアーケードにある店主たちやお客たちの人間模様を描いた連作になっています。

アーケードの中心にある小さなパティオが彼女と飼い犬・べべの居場所。

それぞれの店主とお客のやり取りがよく聞こえるほどの小さな小さなアーケード。


レース店、義眼屋、ドーナツ屋、ドアノブ屋、勲章屋、紙屋など時代から置き忘れられたような風変わりな店と訪れるお客もまた退廃的な雰囲気が漂っています。

現世の話かそれとも・・・途中から時間という枠を取り外したような窪みにすっぽり入り込んでつましい生の営みを紡いでいるような・・・。

義眼屋や遺髪レース屋の醸し出す独特の雰囲気が読了後も言葉で描けない余韻を残した作品でした。


「幻想的」というありきたりの言葉で表わすには抵抗がありますが、儚く切ない物語です。

次々発生する台風。

台風18号の影響で東海地方の各地で浸水の被害が出ているようですね。

台風の悲惨な影響がほとんどない当地に住んでいると他人事のようにテレビで観るだけですが、今から25年ほど前3年間だけ転勤で当地に住んでいたときの話。


当時Sハウスが造成した団地の一軒家に住んでいた3年の間に2度団地全体が浸水、床上までの被害はありませんでしたが、自動車などが浸水という経験をしました。

造成のとき基礎の盛り土が少なかったというトラブル。

同じ団地にそのSハウスの中四国支部のトップが住んでいらっしゃって、団地の住人たちに台風が来るたびに責任を追及されると、親しくしていたその奥様が言われていたのを覚えています。

そんな団地全体が浸水した日、自転車登下校の高校生だった長男が学校帰りに5,6人の男の友人を連れてきて、浸水の中を何が楽しいのか自転車で嬉しそうに走り回ってはしゃいでいました。


今朝のテレビの映像を観ていてそんなことを思い出しました。

映像で男子生徒は水しぶきを浴びながら楽しそうに自転車を泳がせていましたが、一方女子生徒の雨粒が当たって不快そうな表情の対比が興味深かったです^_^;

被害に遭われている地区の方、お見舞い申し上げます。






本日は水口文乃氏著『知覧からの手紙』のご紹介です。


「終戦直前、挙式を間近に控えていた穴沢利夫少尉は、知覧から飛び立ち還らぬ人となった。
婚約者へ宛てた手紙では、自分のことは忘れて幸せに生きよと綴りながら、最後に、ほとばしる感情を吐露していた―『智恵子会いたい、話したい、無性に』。
戦後六十二年。
残された婚約者が、今なお穴澤さんを想いながら語り尽くした貴重なノンフィクション」


本書は著者・水口氏が智恵子さんへのインタビューを通して書き綴ったノンフィクションとなっています。


智恵子さんと穴澤さんとの出会いは東京高等歯科医学校(現在の東京医科歯科大学)の図書室。

昭和16年、司書になるという夢を持ち17歳の智恵子さんは女学校を卒業後文部省図書館講習所に入学、夏休みに実習を受けるために出向いた東京高等歯科医学校で運命ともいえる出会いをしたのでした。

穴澤さんは当時中央大学の学生、法律の勉強をするために大学に進学、学費の足しに図書室で働いていた19歳。

その後昭和18年10月志願して特別操縦見習士官1期生として入隊、昭和20年3月婚約するも4月12日陸軍特別攻撃隊「振武隊」として知覧を飛び立ち南の海に消えました。

その4日後の16日に届いた遺書。

・・・婚約をしてあった男性として、散って行く男子として、女性であるあなたに少し言って往きたい。
 「あなたの幸を希う以外に何物もない」
 「いたずらに過去の小義にかかわるなかれ。あなたは過去に生きるのではない」
 「勇気を持って、過去を忘れ、将来に新活面を見出すこと」
 「あなたは、今後の一時々々の現実の中に生きるのだ。穴沢は現実の世界には、もう存在しない」
 ――今更、何を言うか、と自分でも考えるが、ちょっぴり慾を言ってみたい。
 1 読みたい本
   「万葉」「句集」「道程」「一点鐘」「故郷」
 2 観たい画
   ラファエル「聖母子像」芳崖「慈母観音」
 3 智恵子 会いたい、話したい、無性に。
   今後は明るく朗らかに。
   自分も負けずに、朗らかに笑って往く



昭和47年生まれの水口氏のインタビューに84歳の智恵子さんが語った言葉。

「あなたたちは、命は尊いものだと教えられているでしょうけれど、あの時代は、命は国のために捨てるべきものだったの。
今とは、あまりに価値観が違うから、わからないと思うことも当たり前かもしれないわね」

「私たちは戦争がいかに悲惨なものかを知っています。間違った事実が伝わらないように、今、話しておかないと、と思ったのです。
あの時代を生きて、身をもって体験したことを語る人は、毎年少なくなっている。
長く生かされていることに、何らかの使命が課せられているとしたら、それは語り部の役割かもしれませんね」



戦死が美化されてた・・というより美化しなければ心の折り合いをつけることができなかった時代。

逝った人も遺された人も一生拭い去れないほどの傷を受けた戦争。


体験した人でないと語れない重い内容のノンフィクションです。

水槽に生(あ)れしばかりの子メダカのあえかな命の息づくが見ゆ
これは6月に親メダカが産んだ卵を無事に親から離し、別の水槽に移してそっと子メダカの様子を観察していたとき詠んだものです。

生まれたばかりの透明な小さな小さなメダカが必死で泳ぐさまが愛おしく飽きずに眺めていました。

親から離れた塊卵が一匹ずつのいのちとして遊泳しはじめる様子を見ていると生命の不思議を感じてしまいます。

そうして育った20匹ほどの子メダカですが、その中に1匹だけ立ち泳ぎするメダカを発見。

他のメダカより二回りほど小さく、四六時中立ち泳ぎしています。

尾びれを懸命に動かして休むことがない様子を見ていると体も成長しないだろうな、と可哀想になります。

手に乗せて泳ぎ方を教えてあげたいほど。


そんなことを思いながら、先ほど思い立ってネットで検索してみたところ出てきました!

「立ち泳ぎ病」

はっきりした原因は不明らしいですが、Micobacterium という細菌の感染が疑われるそうです。

他のメダカに病気が感染しないように隔離することが肝心と書かれていました。

早速、明日隔離する予定ですが、さびしいだろうな。





さて本日は今野敏氏著『自覚: 隠蔽捜査5.5』をご紹介したいと思います。

「この男の行動原理が、日本を救う!
��変人〞警察官僚の魅力が際立つ超人気シリーズ第七弾。署長・竜崎伸也はぶれない。
どんな時も――誤認逮捕の危機、マスコミへの情報漏洩、部下たちの確執、検挙率アップのノルマなど、大森署で発生するあらゆる事案を一刀両断。
反目する野間崎管理官、��やさぐれ刑事〞戸高、かつて恋した畠山美奈子、そして盟友・伊丹刑事部長ら個性豊かな面々の視点で爽快無比な活躍を描く会心のスピンオフ!」


本書は2011年~2014年にかけて掲載された作品をまとめた短編集、7編の短編が収録されています。

時系列的に並べると『隠蔽捜査』→『果断―隠蔽捜査2』→『疑心―隠蔽捜査3』→ 『初陣―隠蔽捜査3.5』→『転迷―隠蔽捜査4』→『宰領―隠蔽捜査5』→『自覚―隠蔽捜査5.5』となっています。
 
本書はスピンオフ第2弾。

スピンオフ第1弾である『初陣―隠蔽捜査3.5』は主人公・竜崎伸也の幼馴染のキャリア官僚である警視庁刑事部長・伊丹俊太郎を主人公として描かれていましたが、本書は大森署で起きた事件を中心に竜崎を立てて書かれていてgood!

個人的に伊丹の造形が好みでないので、7篇の終わりにのみ出てくる本書、とても読みやすく、前回レビューで記した「マンネリ」を撤回するほど読後感がよかったです。


◆大森署副署長・貝沼悦郎の視線を通してブレない竜崎を描いた「漏洩」

管内で起きた連続婦女暴行未遂事件の被疑者を逮捕したという某新聞のスクープ記事を朝刊で目にして捜査情報の漏洩を知り署長である竜崎に知られずに事態の収拾を図りたいと右往左往する貝沼の苦悩と竜崎の明快な論理立ての末の解決の対比が興味深く描かれています。


◆『疑心 隠蔽捜査3』でアメリカ大統領来日の警備を担った竜崎の補佐に選ばれた女性キャリアの畠山美奈子、珍しく竜崎が恋心を抱いた彼女が再び登場する「訓練」

スカイマーシャルという航空機に搭乗してハイジャックなどの犯罪に対処する武装警察官の訓練に抜擢された畠山が他のメンバーの言動や厳しい訓練に打ちひしがれてかつての上司である竜崎に相談、竜崎の的確な助言により前向きな気持ちを取り戻す様子を描いています。


◆竜崎とそりが合わないと一方的に思っている第二方面本部管理官・野間崎正嗣が登場する「人事」

新しく第二方面本部長に就任した弓削篤郎警視正へのレクチャーで大森署の竜崎署長のことを説明した野間崎の言葉に興味を持った弓削が竜崎に面談を申し込んだことから小さな物語がスタート。
権威・慣習に左右されず原理原則に忠実な竜崎が浮き彫りになっている私の好きな作品です。


その他、大森署刑事課長・関本良治を通して竜崎を描いた「自覚」、大森署地域課長・久米政男、大森署刑事課強行犯係長・小松茂をそれぞれ立たせた「実地」と「検挙」。


そして最後がお馴染みの警視庁刑事部長・伊丹俊太郎が登場の「送検」。

竜崎の幼なじみでありキャリア警察官の同期である伊丹俊太郎。

要職にありながら気軽にマスコミに登場、自分をプロデュースすることに長けた目立ちたがり屋である彼と竜崎との対比が興味深い内容となっています。


多作作家である今野氏は多くの警察小説の中で登場人物のキャラクターを多々造形していますが、私はこの「隠蔽シリーズ」の竜崎がいちばんのお気に入り!

造形に成功しているといえるいちばんのキャラクターとして定着、安心して読めます。

ぜひどうぞ!

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