VINのらんどくダイアリー

ご訪問ありがとうございます。 「一日一生」を銘にさまざまな人生を読書というツールを通して味わっていきたいと思っています。 響きこし言葉に貼れるさみどりの付箋そよぎて林となりぬ

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2016年04月

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先日「スポットライト 世紀のスクープ」を観に行きました。

第88回アカデミー賞作品賞&脚本賞ダブル受賞作。


2002年にボストンの小さな新聞社「ボストン・グローブ」が「SPOTLIGHT」と名づけた新聞一面に掲載して全米を揺るがす極秘スキャンダルを暴露した事件・・・神父による性的虐待と、カトリック教会がその事実を看過していたというスキャンダルに材を取った実録映画。


実際のモデルとなったボストン・グローブの2人の記者が1ヶ月ほど前の朝日新聞の土曜版に登場して、カトリック教会という堅牢な砦を取材によって穿っていった困難な過程について語っていらっしゃいました。


昨今芸能人の不倫問題や政治家の不祥事などを次々スクープして話題になっている週刊文春、辣腕編集長の存在がクローズアップされているようですが、その裏には調査や聞き取りなどの取材を積み重ね、念には念を入れた裏取り調査を繰り返して確かだと思える事実のみをピックアップしていく・・・週刊誌や新聞のみならずノンフィクションを書かれる作家の方たちも同様の手順を踏んで世に出していらっしゃると思いますが、そういった舞台裏にスポットライトを当てていてとても興味深い映画でした。



今月半ば国連特別報告者デービッド・ケイ氏が来日、日本の報道に関して「報道の独立性が重大な脅威に直面している」とスピーチされていたのを観られた方も多いでしょう。



それと前後して国際NGO「国境なき記者団(RSF)」が2016年の報道の自由度ランキングを発表しました。


日本は対象の180カ国・地域のうち、前年より順位が11下がって72位。


特定秘密保護法の施行から1年余りを経て、「多くのメディアが自主規制し、独立性を欠いている」とこれまた指摘されました。


2010年には11位だった日本は年々順位を下げ、2014年59位、2015年は61位。


ちなみに180位中1位から4位までを北欧の国々・・・フィンランド・オランダ・ノルウェー・デンマーク・・・が占め、アメリカ41位、韓国70位、ロシア148位、中国176位、北朝鮮179位、最下位はエリトリア。


RSFの調査がすべてとはいえませんが、政府による報道への抑圧と取れる言動などもあり、窮屈になりつつあると肌で感じるときが多々あります。


戦後コツコツ積上げてきた自由主義立憲主義日本の基礎が壊れませんように。





さて本日は薬丸岳氏著『Aではない君と』のレビューです。


「勤務中の吉永のもとに警察がやってきた。
元妻が引き取った息子の翼が、死体遺棄容疑で逮捕されたという。
しかし翼は弁護士に何も話さない。
吉永は少年が罪を犯した場合、保護者自らが弁護士に代わり話を聞ける『付添人制度』を知る。
なぜ何も話さないのか。
翼は本当に犯人なのか。
自分のせいなのか。
生活が混乱を極めるなか真相を探る吉永に、刻一刻と少年審判の日が迫る」


殺人者は極刑に処すべきだ。
親は子の罪の責任を負うべきだ。
周囲は変調に気づくべきだ。
自分の子供が人を殺してしまってもそう言えるのだろうか。
読み進めるのが怖い。
だけど読まずにはいられない。
この小説が現実になる前に読んでほしい。
デビューから10年間、少年事件を描き続けてきた薬丸岳があなたの代わりに悩み、苦しみ、書いた。
この小説が、答えだ。



先日アップした『ローマの哲人 セネカの言葉』の中にも記されているように、この世の誰かに起こったことは誰にでも起こりうること・・・この世界で起こっている数々の悲劇を自分のこととして捉えることの大切さについて考えさせられた作品でした。


著者・薬丸氏は少年犯罪に関する作品をたくさん上梓されていてこのブログでもたくさん取り上げていますが、本書は被害者側ではなく、加害者側の親に焦点を当てて描いて秀作です。


社会的にも働き盛りの有能なサラリーマンの主人公・吉永圭一が離婚した元妻との間にできた中学生の息子・翼の殺人事件を知ることから物語がスタートします。

仕事にかこつけて息子との距離が徐々に遠ざかっていた主人公に突然突きつけられた事件。

自分の息子が突然少年Aになってしまった男の深い苦悩が伝わってきて苦しいほど。

自分の子どもが人を殺してしまったら?

また逆に自分の子どもが誰かに殺されてしまったら?

繰り返し繰り返し頭の隅に置きながら読み進みました。

殺人者は極刑に処すべきだ。
親は子の罪の責任を負うべきだ。


こんなストレートな思いだけではとても言い表せない深い思いを抱かされた作品。


吉永の息子・翼は14歳。

2000年に少年法が改正され、14歳以上は刑事罰の対象となっています。


本書では加害者の父・吉永の苦悩とともに、被害者の父親・藤井の苦悩の姿も描かれています。


どちらの保護者も警察などを通して事件の真実を知ることができないという現実やマスコミの報道から知るということの理不尽にも触れています。


警察にも面会した父親にも差し向けた弁護士にも何も語らない息子に苦悶する吉永はついに「付添人」という道を選択します。

―◆少年及び保護者は、家庭裁判所の許可を受けて、付添人を選任することができる。ただし、弁護士を付添人に選任するには、家庭裁判所の許可を要しない。(少年法10条1項)保護者は、家庭裁判所の許可を受けて、付添人となることができる。(少年法10条2項)◆―


自分のせいなのか。
翼が人を殺してしまったのは
父親である自分の責任なのか。


付添人として認められ、審判を見守りながら自分なりに息子の心に寄り添う努力をする吉永。

命について考えてほしい。
その命がなくなったとき、そばにいる人がどんな気持ちになるのか・・・・・考え続けながら過ごしてほしい。


吉永がもがき苦しみながら翼と真っ向から向かい合おうとする真摯な姿によって徐々に徐々に重い口を開いていきく翼。

「心を殺されるのは許されて身体を殺されるのは何故許されないの?」

「動物を殺すのは許されて何故人を殺すのは許されないの?」

翼の問いかけに対してとっさに答えることができない吉永。

この重い問いかけに吉永が答えるのは翼が自由の身になってしばらくしてある出来事が起こってからです。


それらを含め機会があれば読んでほしい作品です。

先日、当市北にある半田山植物園での小さな歌会に参加しました。

未だ余震が続いて不安な毎日を過ごされている被災者の方々には申し訳ないような風ひかる一日。


当地に長く住みながらこの植物園は初めて。


もう桜は終わっていましたが、山の斜面を利用した園庭にはさまざまな樹木や花が咲いていました。

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郵便の木といわれるタラヨウ(多羅葉)

やわらかな若葉が美しい季節です。







さて本日は中野孝次氏著『ローマの哲人 セネカの言葉』をご紹介したいと思います。


「2千年前に,こんなにも生き生きとした思想家がいた! 
人生,貧困,死など,誰もが一度は突き当たるテーマをとりあげ,真に自由に生きることを説くセネカ。
その文章は無類の魅力をもち,悩める人を力強く励ます。
今まで日本ではあまり知られていなかったセネカの世界を,中野孝次が一挙に書き下ろす、現代人のためのセネカ入門」


本書は古代ローマ時代のストア派に属する哲人で、ローマの第5代皇帝ネロの幼少時の家庭教師を務め、治世初期のネロ皇帝を支えたといわれるセネカ(紀元前1年頃~-紀元後65年)の言葉の中からこれぞと思い入れのあるものを集めて、中野孝次氏が現代人向けにやさしい言葉で紹介している概説書。


中野氏の死生観が色濃く投影されていますが、著者が書かれた当時の日本の不況の状況を鑑みた内容でとても読みやすく共感部分の多い作品となっています。


人の一生で誰もが遭遇する別れや死という永遠のテーマを取り上げてそれぞれの具体例を挙げ、深く考察して答えを導くというセネカの手法に中野氏がご自身の考察をするという構成。


「マルキアへの慰め」「人生の短さについて」「道徳についてのルキリウスへの手紙」「ヘルヴィアへの慰め」「幸福な人生について」「心の落書きについて」「閑暇について」「神意について」

以上の構成からなります。


誰かに起こったことは誰にでも起こりうること・・・この世界で起こっている数々の悲劇を決して他人事として捉えなければもっとお互いに安らぐことができるでしょう。


このような心構えを前提にして全章が説かれています。


例えば、「マルキアへの慰め」では、若くして息子を失った母親に対し、息子は短くとも充実した人生を送ったと説きます。

「泣いて不幸に打ち勝てるものならば、みんなで一緒に泣きましょう」と呼びかけつつ、しかしながら「悲しみは役に立つか」と問いかけながら、「無益な悲しみは止めてください」と締めくくっています。


「人生の短さについて」では、膨大な時間を浪費してなお時間が足りないと嘆く私たちに向けての警告。

人生はまだまだ続くだろうという根拠のない思い上がりを捨て、今日が貴重な最後の日と自分に命じることを説いています。


「ヘルヴィアへの慰め」では、今まで築いてきた地位や財産が一瞬に失われたとしても、それは運命がただ取り返しにきただけなのだと説きます。


「心の落ち着きについて」では、田舎からローマに出てきたばかりの親戚の若者の身の上相談に応じて書かれています。

大都会の中でもし孤立して孤独になり生きる勇気をなくしたとしても、人はその存在そのものによって他者を力づけることができるということを心するようにと説いています。


「これはお前一人の胸にしまっておけ、人に教えるなという条件つきで知恵を授けられるのなら、僕はおそらくそれを突っ返すでしょう。
どんなに善きものでも、仲間がいないのでは持っていても楽しくない」


先日来日されて話題になったウルグアイの元大統領ホセ・ムヒカ氏が2012年6月にブラジルのリオデジャネイロで開催された「持続可能な開発会議」でのスピーチの一部「貧乏なひととは、少ししかものを持っていない人ではなく、無限の欲があり、いくらあっても満足しない人のことだ」はセネカの箴言を引いていらっしゃいます。

痛くとも耳と心を開いて受け取るべき言葉があふれています。

機会があれば開いてみてくださいね。

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先日倉敷観光を共にした友人のことを書きたいと思います。

私より十歳ほど若い彼女と知り合ったのは12年ほど前。

大阪の小さな医院。

そこは内科医院を標榜している一般的な個人病院でしたが、独特の治療法によって難治性のアレルギー疾患やリウマチなど免疫疾患を完治させるというので有名な病院でした。


ドクターは母校の元京都大学の本庶佑教授によって解明された遺伝子学的メカニズムに基いて治療するというもの。

簡単に記すとIgM抗体やIgG抗体がクラスチエンジして最後はIgE抗体に変化して、アトピーに使われてしまうシステム。


具体的な治療は極めて東洋医学的なもの・・・化学薬品を徹底的に排除して大量の漢方生薬とお灸と鍼灸を用います。

患者の日々の努力にすべてがかかっているような治療法。


リウマチやアトピーの化学的な標準治療といえば、IgG抗体やIgE抗体の暴走を抑制する薬物療法が主流ですが、このドクターの療法はどちらの抗体を生産させるだけ生産させてクラスチェンジを起させるというもの。

共鳴した患者さんが全国から集まっていました。


現に治療を始めて半年後には理論どおりクラスチェンジが起こり、リウマチ指標を著す炎症数値はすべて正常値になりました。


その時期、同じように正常値になっていた彼女を含めた数人の患者さんを集めてドクターが開いた研究会で彼女と親しく話したのが始まりでした。


その後数年は正常値を保ちましたが、そのうち徐々に徐々に症状が悪化してどんなに努力しても再度のクラスチェンジは起こりませんでした。


そして漢方生活に見切りをつけ標準的な化学療法の世界へ切り替える決心をするのにまた数年、ドクターの洗脳から抜けるのに相当の年数がかかってしまいました。


いったんはこの治療でほぼ治癒状態になった経験が大きな壁となり、私が標準的治療に切り替えて数年してもまだ彼女は洗脳から抜けきれず悪化の一途を辿り、ついに車椅子生活になり・・・その間、何度電話やメールで悲痛な絶望を聞かされたか数しれません。


少しずつ少しずつ洗脳を解いて標準治療に切り替えるよう彼女の心をほぐしていくのに数年、やっと1年半前漢方薬に見切りをつけ化学薬品を服用する決心をして同時に両膝関節の置換手術を受けました。


それからの彼女の勇躍には頭が下がります。


痛み止めの座薬さえ人の助けなくしてはだめだった廃人同様だった彼女。


前へ前へ・・・トレーニングにより一歩一歩歩けるようになり、車椅子から脱出、ご主人や娘さんの支えなしで買い物を、という当たり前のことができるようになり、ピアノを習い発表会に出て、ついに絵本の読み聞かせのボランティアに復帰されました。


そしてついに当地に杖も車椅子もなしで新幹線で来るという壮大だった目的を達したのでした。


久しぶりに会った彼女は元来のモデルのようなスタイルも戻り、すっくと立った姿はとても寝たきり生活5年のキャリアを感じさせませんでした。


どん底を経験して生きながら死んでいた彼女。


弛まない努力で見事に蘇っていてとても感無量の2日間でした。







さて本日は生島淳氏著『箱根駅伝 ナイン・ストーリーズ』のご紹介です。

「『箱根』だけは、泣けてしまう・・・
どうして箱根駅伝は泣けてしまうのだろう。
2015年、青山学院大学初優勝から駒沢、東洋、明治、早稲田…奇跡と真実のストーリー」
日本のスポーツイベントとして、最大の人気を誇る「箱根駅伝」


今やお正月二日間の欠かせないイベントになっている箱根駅伝。


私を含め箱根駅伝ファンにとっては垂涎の本書、何気なく図書館の棚にあったのを見つけました!


本書はベテランのスポーツライターである著者が「陸上競技マガジン」に連載していた記事をまとめたものです。


大学生たちの涙や歓喜の裏側にどのような物語があるのか・・・「青山学院の初優勝を支えて」など参加校の監督や選手たちたちの箱根駅伝に賭けた熱い思いを描いた9篇のストーリーを収録しています。



「山の神」という言葉は、二〇〇七年に誕生した。
 この年、順天堂大学の今井正人が小田原中継所で準備していると、同じ五区を走る日本体育大学の北村聡が、
「順天堂大には『山の神』がいますからね」 と記者に話していたのだ。
 今井は二年、三年と五区を走り、それぞれ区間新記録を出していた。二年のときは十一人抜き、三年では五人抜きでトップに立っている。たしかに山には絶対の自信を持っていた。北村は、「なるべく今井さんと一緒にいく形で走りたいです」 とも語っていたが、実際、ほぼ同時でのスタートとなった。
「早めに勝負をつけよう」と考えた今井は、前半に少しだけ無理をして入り、北村を振り切って前回マークした自分の記録を更新して順天堂大を首位へと導いた。走り終わって日本テレビの中継を見てみると、「山の神、ここに降臨!」 と叫んでいるではないか。
 こうして「山の神」が誕生したのである。


続いて東洋大の柏原竜二が2009年の箱根駅伝でデビューを飾り、5区に4年連続出場、4年連続の区間賞に加え、区間記録を3度更新したことなどから「二代目山の神」と呼ばれました。


それに続くこと、2015年青山学院の神野大地が5区において区間新記録を打ち立て、「三代目山の神」となった経緯が描かれています。


ちなみにこの3人の山の神は金栗四三杯を受賞しています。


山の神三代以外にも日本の長距離界をリードしてきた瀬古利彦の物語、そして原や渡辺、西、酒井監督といったそれぞれの大学で名を馳せた監督たちの箱根駅伝への熱い思いが伝わってきて胸が熱くなります。


また「横に曲がった人もいる」で取り上げられた青山学院大学の高橋宗司。

2013年に8区で区間賞を獲得した彼のエピソードもとても興味深く描かれています。


たった2日間で終わる箱根駅伝ですが、その2日間のために膨大な年月を費やして機の熟するまで努力を重ねる、ただ感服というほかない日々の精進。


それぞれの監督や選手たちのこれまでの人生や箱根駅伝に賭ける気持ち、スポットライトの当たった人もそうでない人も併走してきたそれぞれの苦悩と努力と失望と喜びが文章のなかに溢れていて読後感のとてもよい作品となっています。


ぜひどうぞ!

熊本を中心に九州が大変なことになっていますね。

震度7を観測した最初の地震のとき、我が家でも夫がすぐに感知して私も身構えましたが揺れがかなり長く続きました。

急いでテレビをつけると熊本が震源地とのこと。


翌朝になると被害状況が徐々に明らかになり・・・亡くなられた方々も続々と。


その間かなりの余震が続き・・・これは大変な状況だと胸が騒ぎました。


なにはともあれ福岡市近くにお住まいのブログで親しくしていただいている友人が心配ですぐブログを覗くと大きな揺れに動揺されていましたがご夫妻とも無事だということで安堵しました。


ところが・・・中一日置いて更に大きな地震・・・気象庁はこれが本震と発表。


その後も本震に劣らないほどの強い余震が続き、被災者の方々の恐怖はどんなだろうと想像すると言葉がありません。

神戸で震災を体験している私はその恐怖が手に取るようにわかって苦しいです。


事実最初の地震のあと、高齢だからと避難勧告を断って何とか持ちこたえた自宅でひっそり一夜を過ごされていた老ご夫婦が16日未明の地震で持ちこたえられず倒壊した益城町のご自宅に閉じ込められ、ご主人の方は亡くなられたそうです。

何と悲惨なこと!


そんな被災地に追い討ちをかけるようにまた雨の降るおそれがあるそうです。


どうぞどうぞこれ以上の犠牲者が出ませんようにと祈っています。


何もできない私はもどかしくテレビで情報を知るばかりですが、まずは日本赤十字社に募金をしようと思っています。





さて今回は佐藤早苗氏著『特攻基地 知覧始末記』のご紹介を少し。

「太平洋戦争末期、退勢を挽回するために最後の手段として敢行された百死零生の『特攻作戦』―投じられた海軍特攻兵7898名、陸軍特攻兵1707名、計9605名。
知覧基地を飛び立ち、開聞岳を越えて自ら肉弾となって散った若き特攻隊員たちの素顔を、証言者・新資料で捉えた感動の物語」

著者・佐藤早苗氏は画家からノンフィクション作家に転向され、『特攻の町・知覧』で日本文芸大賞ノンフィクション賞を受賞、本書はその第二弾といえる作品です。



長い間行きたいと思いつづけていた知覧。


ずっと以前約束していたのをやっと仕事の合間を見つけて次男が計画してくれ、今月下旬に行くことになっていた矢先のこの度の地震。


物理的にも心情的にも無理と判断して先延ばししました。



この知覧への旅のためにと事前に読んだのが本書。


それより遡って高倉健主演の『ほたる』を観たり、水口文乃氏著『知覧からの手紙』を読んだりと私なりに準備をしていました。


本書にはこの『知覧からの手紙』に登場する穴澤利夫少尉と婚約者の智恵子さんはじめ、愛国精神を抱いて果敢に海の藻屑となられた数名の特攻隊員の半生が描かれていますが、著者が特に力を入れておられるのが現状の靖国神社への扱いや国防の大切さというのが不自然なほど顕著に感じられてとても違和感を抱いた作品となりました。


あまり読後感がよくなかったのでこれをもってレビューとします。




桜が散り始めた先週、大阪からの友人と倉敷に行ってきました。


大原美術館が初めてという友人と久しぶりの美術館。


ちょうど主だった絵画は貸し出し中、目玉のエル・グレコの「受胎告知」もモネの「睡蓮」もありませんでしたが、ラッキーなことに学芸員の方の館内での1時間の講座に参加できました。


児島虎次郎のヨーロッパでの軌跡と購入したそれぞれの絵のいわれなど知ることができました。


そして美術館の近くのレストランで至福のランチ。
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後日談ですが、驚いたことに私たちが美観地区を倉敷川に沿って散策中にニアミスで東京在住のSNSの友人がお母様と散策されていたことがSNSにアップされた日記と写真で知りました。


あれっ? 昨日行った場所と同じ写真!


ほんと、目と鼻の先でのすれ違い・・・こんなことってあるんですね。






さて本日は高殿円氏著『マル合の下僕』をご紹介したいと思います。


「学歴最高、収入最低、おまけに小5養育中の、29歳私大非常勤講師(ワーキングプア)。
俺には、大学で生き残るしか道はない!
マル合――それは、論文指導ができる教員。
関西最難関のK大で出世ルートを歩むはずだった俺は、学内派閥を読み間違え私大に就職。
少ない月収を死守しながら、姉が育児放棄した甥っ子も養っている。
そんなある日、大切な授業を奪いかねない強力なライバル出現との情報が……。
象牙の塔に住まう非正規雇用男子の痛快お仕事小説」


1976年兵庫県生まれ。
2000年第4回角川学園小説大賞奨励賞を受賞し、『マグダミリア 三つの星』でデビュー。
第1回エキナカ書店大賞受賞作『カミングアウト』をはじめ、『カーリー』、『トッカン 特別国税徴収官』、『剣と紅』、『上流階級 富久丸百貨店外商部』、『シャーリー・ホームズと緋色の憂鬱』など著書多数。


このブログでも『トッカンVS勤労商工会』をご紹介していますのでよかったら覗いてください。


著者・高殿円氏の知る人ぞ知るお仕事小説!


上述のトッカンシリーズ第二弾を読んで、その縦横無尽の書きっぷりにファンになりました。


ちなみに著者は女性ですが、筆致は男性的・・・有川浩氏の作風とちょっと似通っているかな。



主人公は大学までは人も羨むエリートコースを歩み、しかし学内派閥でのヨミが外れたのを潮に私大の非常勤講師として働いている瓶子貴宣。


専任講師の座を確保しようと悪戦苦闘するも、どれもこれも裏目に出て頭を抱える主人公を中心に、腹にイチモツもニモツもある教授陣や同僚、そして主人公の姉に育児放棄されて貴宣の家に身を寄せている甥っ子・誉が脇を固めて興味深い物語が展開します。


象牙の塔のカーストには不案内でタイトルの「マル合」がなんたるか、とんと知りませんでしたが、それは世間知らずの私だけ?

とも思いましたが、本書に基いて一応簡単な説明を。

マル合とは論文指導ができる教員のことで、文部科学省教員組織審査において審査された教員のランクのことを指す。
一口に教員とはいえ、細やかなヒエラルキーが存在するのだ。
マル合の下が。論文指導の補助ができる教員のことで、合格判定を出すことはできない。
ただマル合に言われて指導の補助をするのみである。
さらに下が。これは授業を持っている大学院の教員になれるかどうかということ。
つまり大学の准教授や教授にも、マル合やら可やらいろいろいるわけである。
これが、M(修士号)とD(博士号)と二段階あるわけで、その最頂点に君臨するのがDマル合
すなわち、博士論文の合否を判定できる資格をもった教授、ということになるのだ」



高学歴ワーキングプアの貴宣は1コマ12000円/月の私学の非常勤講師。


私にとっては未知の世界だけにすんなりと読めましたが、読後にレビューをググってみると、かなりの読者の方々がリアリティに欠けるという指摘をされていました。

非常勤講師の収入が1コマ12000円/月というのは安すぎるし、学内の会議や委員会にでることもないというのが主な指摘。


それらを差し引いても大学における助教や非常勤講師という立ち位置の厳しさに加え、経済的な厳しさが伝わって勉強になりました。


加えて実の母親に育児放棄された甥っ子との貧乏二人三脚がなかなかにハートフルに描かれていて読後感は充実していました。

よかったらどうぞ!

「世界で一番貧しい大統領」として有名なウルグアイの元大統領ホセ・ムヒカ氏(80)がご自身の伝記が日本で出版されるのに合わせてご夫妻で来日されていましたね。

記者会見の様子がテレビにも放映されたので多くの方が観られたと思います。


柔和な笑顔のテディベアのようなご夫妻は瞬く間に日本中の人気者になりました。

私もその1人。


「生活水準の高い日本の人たちが、世界はどこに向かっていると考えているのか、聞いてみたいと思っていました。
将来の夢を語ることなしには、私たちの未来はないからです・・・
科学や技術が発展し、寿命も長くなっていますが、貧富の格差も広がってしまいました。
若い人にはこのような間違いを繰り返さないでほしいと思う・・・
若者には、豊かさを求めるあまり絶望する生き方をせず、毎朝、喜びがわき上がるような世界を目指してほしいと思う」


2012年6月にブラジルのリオデジャネイロで開催された「持続可能な開発会議」(通称:リオ+20)で各国首脳のスピーチの終盤に登場されたウルグアイの大統領ホセ・ムヒカ氏の十数分のスピーチは伝説のスピーチとして世界中を感動の渦に巻き込みました。

わが国でも『世界でいちばん貧しい大統領のスピーチ』『世界を動かすことば 世界でいちばん貧しい大統領のスピーチ』として出版されてベストセラーとなっています。







くさばよしみ氏編中川学氏イラスト『世界でいちばん貧しい大統領のスピーチ』








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会場にお越しの政府や代表のみなさま、ありがとうございます。

ここに招待いただいたブラジルとディルマ・ルセフ大統領に感謝いたします。私の前に、ここに立って演説した快きプレゼンテーターのみなさまにも感謝いたします。国を代表する者同士、人類が必要であろう国同士の決議を議決しなければならない素直な志をここで表現しているのだと思います。

しかし、頭の中にある厳しい疑問を声に出させてください。午後からずっと話されていたことは持続可能な発展と世界の貧困をなくすことでした。私たちの本音は何なのでしょうか?現在の裕福な国々の発展と消費モデルを真似することでしょうか?
質問をさせてください:ドイツ人が一世帯で持つ車と同じ数の車をインド人が持てばこの惑星はどうなるのでしょうか。

息するための酸素がどれくらい残るのでしょうか。同じ質問を別の言い方ですると、西洋の富裕社会が持つ同じ傲慢な消費を世界の70億〜80億人の人ができるほどの原料がこの地球にあるのでしょうか?可能ですか?それとも別の議論をしなければならないのでしょうか?

なぜ私たちはこのような社会を作ってしまったのですか?

マーケットエコノミーの子供、資本主義の子供たち、即ち私たちが間違いなくこの無限の消費と発展を求める社会を作って来たのです。マーケット経済がマーケット社会を造り、このグローバリゼーションが世界のあちこちまで原料を探し求める社会にしたのではないでしょうか。
私たちがグローバリゼーションをコントロールしていますか?あるいはグローバリゼーションが私たちをコントロールしているのではないでしょうか?

このような残酷な競争で成り立つ消費主義社会で「みんなの世界を良くしていこう」というような共存共栄な議論はできるのでしょうか?どこまでが仲間でどこからがライバルなのですか?

このようなことを言うのはこのイベントの重要性を批判するためのものではありません。その逆です。我々の前に立つ巨大な危機問題は環境危機ではありません、政治的な危機問題なのです。

現代に至っては、人類が作ったこの大きな勢力をコントロールしきれていません。逆に、人類がこの消費社会にコントロールされているのです。私たちは発展するために生まれてきているわけではありません。幸せになるためにこの地球にやってきたのです。人生は短いし、すぐ目の前を過ぎてしまいます。命よりも高価なものは存在しません。

ハイパー消費が世界を壊しているのにも関わらず、高価な商品やライフスタイルのために人生を放り出しているのです。消費が社会のモーターの世界では私たちは消費をひたすら早く多くしなくてはなりません。消費が止まれば経済が麻痺し、経済が麻痺すれば不況のお化けがみんなの前に現れるのです。

このハイパー消費を続けるためには商品の寿命を縮め、できるだけ多く売らなければなりません。ということは、10万時間持つ電球を作れるのに、1000時間しか持たない電球しか売っては行けない社会にいるのです!そんな長く持つ電球はマーケットに良くないので作ってはいけないのです。人がもっと働くため、もっと売るために「使い捨ての社会」を続けなければならないのです。悪循環の中にいるのにお気づきでしょうか。これはまぎれも無く政治問題ですし、この問題を別の解決の道に私たち首脳は世界を導かなければなりません。

石器時代に戻れとは言っていません。マーケットをまたコントロールしなければならないと言っているのです。私の謙虚な考え方では、これは政治問題です。

昔の賢明な方々、エピクレオ、セネカやアイマラ民族までこんなことを言っています。
「貧乏なひととは、少ししかものを持っていない人ではなく、無限の欲があり、いくらあっても満足しない人のことだ」

これはこの議論にとって文化的なキーポイントだと思います。

国の代表者としてリオ会議の決議や会合をそういう気持ちで参加しています。私のスピーチの中には耳が痛くなるような言葉がけっこうあると思いますが、みなさんには水源危機と環境危機が問題源でないことを分かってほしいのです。
根本的な問題は私たちが実行した社会モデルなのです。そして、改めて見直さなければならないのは私たちの生活スタイルだということ。

私は環境資源に恵まれている小さな国の代表です。私の国には300万人ほどの国民しかいません。でも、1300万頭の世界でもっとも美味しい牛が私の国にはあります。ヤギも800万から1000万頭ほどいます。私の国は食べ物の輸出国です。こんな小さい国なのに領土の90%が資源豊富なのです。

私の同志である労働者たちは、8時間労働を成立させるために戦いました。そして今では、6時間労働を獲得した人もいます。しかしながら、6時間労働になった人たちは別の仕事もしており、結局は以前よりも長時間働いています。なぜか?バイク、車、などのリポ払いやローンを支払わないといけないのです。毎月2倍働き、ローンを払って行ったら、いつの間にか私のような老人になっているのです。私と同じく、幸福な人生が目の前を一瞬で過ぎてしまいます。

そして自分にこんな質問を投げかけます:これが人類の運命なのか?私の言っていることはとてもシンプルなものですよ:発展は幸福を阻害するものであってはいけないのです。発展は人類に幸福をもたらすものでなくてはなりません。愛情や人間関係、子どもを育てること、友達を持つこと、そして必要最低限のものを持つこと。これらをもたらすべきなのです。
幸福が私たちのもっとも大切なものだからです。環境のために戦うのであれば、人類の幸福こそが環境の一番大切な要素であるということを覚えておかなくてはなりません。

ありがとうございました。


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「私たちは発展するためにこの世にやってきたわけではありません。この惑星に、幸せになろうとしてやってきたのです」

「貧乏とは少ししか持っていないことではなく、無限に多くを必要とし、もっともっとと欲しがることです」

「今の地球の危機の原因は、環境の危機ではなく政治の危機なのです」


あまりにも胸にずしりと重く響く言葉が詰まって・・・思わず買い物の手、エアコンのリモコンを押す手、食べ物を口に運ぶ手が止まってしまいました。


1935年にウルグアイの首都・モンテビデオの貧しい家庭に生まれ、10代から政治活動を始め、反政府運動組織に加わってゲリラ活動を行い、4回逮捕・投獄され、最も長い服役期間は13年に及んだそうです。

国の政治体制が大きく変わる過程で釈放後に左派政治団体を結成、1995年の下院議員選挙で初当選。

2005年に農牧水産相として初入閣し、2009年についに大統領選に当選、2010年には大統領に就任。

任期中は給料のほとんどを福祉団体に寄付し、大統領公邸ではなく郊外の農場に住み、中古車を自ら運転するなど、つつましやかな生活を送る姿は国民から高い支持を集めて、惜しまれながら任期の5年を経て退任されました。

任期中、マリフアナ合法化や同性婚合法化など先進的な政策を進められたことでも知られています。


彼は「世界一貧乏な大統領」と言われていますが、それは収入が少ないのではなく、収入の9割近くを寄付して、ご自身は家とトラクターだけで生活しているためと言われています。

彼の個人資産は大統領就任時2010年の段階で、18万円(1987年型フォルクスワーゲン・ビートルの査定額)だったといいます。

「発展は幸福を阻害するものであってはいけないのです。
発展は人類に幸福をもたらすものでなくてはなりません。
愛情や人間関係、子どもを育てること、友達を持つこと、そして必要最低限のものを持つこと。これらをもたらすべきなのです」

「私たちは発展するために生まれてきているわけではありません。
幸せになるためにこの地球にやってきたのです。
人生は短いし、すぐ目の前を過ぎてしまいます。
命よりも高価なものは存在しません」

「人は物を買う時は、お金で買っていないのです。
そのお金を貯めるための人生の裂いた時間で買っているのですよ」

「もっと良い世の中の目指すということは中古車を集め、乗客率を倍にするということではありません」

「人間はもっと良い暮らしを持つためにものが必要なのですが、それを達成するために消費と仕事をどんどん増やさなければ行けない計画的陳腐化や底を知らない消費主義社会にイエスと言ってはいけません」

「若い人には恋する時間が必要。
子どもが生まれれば、子どもと過ごす時間が必要。
働いてできることは、請求書の金額を払うことだけ。
職場と家の往復をするだけに時間を使っていると、いつの間にか老人になってしまいます」

「お金があまりに好きな人たちには、政治の世界から出て行ってもらう必要があるのです。
彼らは政治の世界では危険です。
お金が大好きな人は、ビジネスや商売のために身を捧げ、富を増やそうとするものです。
しかし政治とは、すべての人の幸福を求める闘いなのです」



「パナマ文書」の流出により大騒ぎになっているタックスヘイブンを利用しているどこやらの首相や大統領、大手企業の面々にぜひぜひぜひ耳と心を傾けてほしいと思います。

天国はいかに美(は)しきか想像の果ての縁なきタックスヘイヴン

もっともっと縁のないような生活を心がけなければ!

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