VINのらんどくダイアリー

ご訪問ありがとうございます。 「一日一生」を銘にさまざまな人生を読書というツールを通して味わっていきたいと思っています。 響きこし言葉に貼れるさみどりの付箋そよぎて林となりぬ

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2016年06月

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最近手遊びに描いている透明水彩


批評性というのは、自分がどんな文脈の中にいて、いかなる役割を果たしているのかを、自分から離れて鳥瞰できる想像力のことです。
身に沁みるやら耳が痛い内田樹さんのことば。

言葉で批判するというのは安易によくやることですが、それをいったん独立させて離れたところで鳥瞰するということはとても難しい。

次々起きる事件やらなにやらで、いったん標的と決めたらとことん批評する、というか追い詰めるという昨今の風潮に恐ろしさを感じています。

とはいえ私もその一端を担っているのが否めないのが悲しい。


そして、以下の批評もじゅうぶんに鳥瞰できているかといえば・・・即座に宜うことができませんけど・・・

今回の英国のEU離脱。

本気じゃなかったけどもうちょっと個を重んじてほしいという気持ちが膨らんで見せしめに家出という行動を取ったらほんとうに孤立して後処理のたいへんさに今更ながら気づいて唖然としている・・・。

英国民も事のあと影響力のあまりの大きさに戸惑っているようですね。


国民投票での離脱派のほとんどが過去の大英帝国の栄華を懐かしむ高齢者だったという選挙結果も明らかになりました。

アングロサクソン至上主義、白人至上主義などなど。

暗躍しているクー・クラックス・クラン (KKK)とか、ネオナチとか、ときどき水面に浮かび上がってくる噂。

水面下でこれらの優越を軸とした思想がなくならないかぎり平等の平和には遠い気がします。


日本も戦前への逆行のような思想に捉われた人々もいるようでひとごとではないというのを思わせてくれる今回のことでした。




さて本日は前述の「ひとごと」にかけて・・・ただの偶然ですけど。

森浩美氏著『ひとごと』


「交通事故で幼い息子を失い、自分を責め続ける妻。
ともに悲しみを乗り越えなければならないはずの夫との間には、次第に亀裂が入っていった。
一周忌の法要が終わり、夫は躊躇いながらも、妻に意外な話を切り出すが…。(第一話「桜ひらひら」)。
幼い息子を虐待して殺した母親を逮捕―残酷な事件のニュースが、人々の心に起こした波紋…。
8組の家族の人生の転換期を、鮮やかな手法で描いた感動の連作集」 


幼い息子を虐待死させた母親の事件を共通の話題として盛り込みながら描かれた8組の家族の問題を扱った短篇集。


森氏の作品は『家族の言い訳』『こちらの事情』『小さな理由』『家族往来』と読み繋いでいます。
    
どれもきれいなまとまりのある小品でハートウォーミングな内容、ハラハラドキドキとは無縁の安心感をもって読める作品だと思いますが、いかんせん内容が軽いので強烈なインパクトがなく、読後印象に残っている作品がありません。

本書も読んだそばから忘れている、というような。

でも一瞬ほっこりするのでベッドサイドで読むにはもってこいの作品ではあります。

本書のあとがきでも、ラストに小さな光を残した、と記していらっしゃる著者。


8篇それぞれが独立した短篇ですが、虐待の末幼い息子を殺してしまった母親のニュースを背景に、それを「ひとごと」のニュースとして受け取る反面、主人公たちの現在の痛みの一部に取り入れている構成力はさすが。

よかったらどうぞ。

目まぐるしく日が過ぎていきます。

もうすぐ7月なんて驚きです。

全国、特に九州地方の雨が厳しく、ついに死者まで出ています。

「晴れの国」といわれている当地は降ってもさほどではなく、合間に洗濯物がよく乾く日もあり、こんなとき申し訳なさでいっぱいになります。


そんな中、梅をつけたり、いただきもののトマトでトマトソースを作ったり、台所仕事をぼつぼつと。

写真は知人の畑から採れた茄子とトマト、インゲンもたくさん。
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そのトマトに大量のタマネギ、そして冷凍庫にあった少量の合挽きミンチを加えて作ったミートトマトソース。
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続いて「父の日」に夫に届いたプレゼントの数々。
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服はお相伴できませんでしたが、下関直送のフグと牛タン、もなかはばっちりお相伴させていただきました~^_^

夫もとっても嬉しそう!

自分のためにあれこれ考えて品物を選んでくれているのを想像するだけでもったいない嬉しさです。





さて本日は益田ミリ氏著『キュンとしちゃだめですか』をご紹介します。 


「男性は気づかない、女子の甘酸っぱいトキメキ…
実はオンナって意外な場所で意外な人にときめいているんです!
歩道、電車の中、映画館、ラーメン屋の前、コンビニのレジ周辺、その他もろもろ。
生まれ消えゆくさまざまな『キュン』をエッセイ&1コママンガに」






朝日新聞に週一で連載されている「オトナになった女子たちへ」。

1コマイラストとエッセイの形で伊藤りささんと益田ミリさんが交互に掲載しているもの。

特にゆる~い雰囲気の益田ミリさんの描くイラストとエッセイがお気に入り。


いつか何かの雑誌で見た益田ミリさん本人もイラストの雰囲気そのままのゆるキャラでますます好きになりました。


伊藤りささんは子どもとご主人との3人暮らし、益田ミリさんは同居かどうかは知りませんがご両親との3人の生活というのをエッセイを通して知りました。


特段目を惹く話題というよりほぼ日常のことを描いていますが、これがけっこう共感を呼んで、ほっと一息的なものになっています。


そんなミリさんの本を図書館で見つけて早速借りたのが本書。


1969年大阪府生まれのイラストレーター。
『ふつうな私のゆるゆる作家生活』『OLはえらい』(文藝春秋)、『ちょっとそこまでひとり旅だれかと旅』(幻冬舎)、『五年前の忘れ物』(講談社)など著書多数。
絵本『はやくはやくっていわないで』(ミシマ社)で産経児童出版文化賞を受賞。
漫画『すーちゃん』シリーズ(幻冬舎)が2013年春に映画化。



本書は会社で、街中で、電車の中で、コンビニで、喫茶店で、エレベーターの中で・・・日常のあらゆるところに隠れている大小さまざまな「キュン」を集めたイラストエッセイ。

一例をご紹介すると・・・

お弁当を作る男子が人気なのだとか。書店には、男性用のレシピ本なども並んでいてオシャレなことになっている。
いいことである。塩分を控えめにして、野菜たっぷりのバランスのいい食事。ひとり暮らしの息子を案ずるご両親ならば、さぞや安心なことだろう。
しかしである。わたし個人としては、出来合いのお弁当を買っている男性を見るのが好きなのだった。夜のスーパーで、どれにしようかなぁ、という顔でお弁当コーナーをうろうろしている姿を見かけると、背後から何弁にするのか確認したくなってしまう。カツ丼に、サラダなんかを合わせて買っていたりすると、キャッ、栄養のこと考えてるぅ
かわいくなっちゃう。
あと、コンビニでお弁当を買い、レジで温めてもらっている最中というのも、なかなか哀愁があってよい。待たされているあいだ、次の客の邪魔にならないところに立ち、特にすることもないからレジ横のチロルチョコの箱なんかをじーっと見ていたりする彼らの横顔は、どことなく学校の先生に叱られた子どもみたい。
そして、温めてもらったお弁当をレジ袋に入れてもらい出て行くときは、大人の顔にもどっている。
お弁当がななめにならないよう、気をつけながら横断歩道を渡っているうしろ姿にキュンとしている女たちがいることを、彼らはきっと知らないはずである。



「気をつけて」と言われたいのだった。それも、できるだけ些細なことで言われるほうがいい。たとえば、缶切りで缶を開けているとき。
「手、切らないように、気をつけて」。たかだか缶切りごときで心配されたい、と思う。
たとえば、道を歩いていて伸びた庭木なんかに頭をかすりそうになったとき。かすったところで、怪我などしないのはわかっているのだけれど、隣を歩く男性に「気をつけて」って言われると、わたし、今、壊れもののように扱われている! と嬉しくなる。「気をつけて」は、もはや、なんだってかまわないのだと思う。
そこ、滑るから気をつけて。
まだ熱いから気をつけて。
犬いるから気をつけて。
風強いから気をつけて。
風邪ひかないように気をつけて。
気をつけて帰るんだよ。
嫌な気持ちになることのない最強の言葉かもしれない「気をつけて」。
行き付けのお店に連れられて行ったときに、「階段、急だから気をつけて」って振り向かれたら、場合によっては好きになってしまう可能性もあるので、あまり好きになってもらいたくない女には、言わないように気をつけたほうがいいのかもしれません。



こんなさまざまなキュンを「‘いつか死んでしまう私たち‘に与えられたご褒美」と言っているミリさん。

でもこれらの男性に対するキュンはミリさんの場合は色気とは無関係というか、40歳を過ぎている自分を抑制しているのが垣間見られるようなまるで母親のようなまなざしのキュンなんです。

そこがよけいかわいい!

友人からいただいた北海道直送のホタテ。

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うろを取り除き塩水で洗ってひもを食べやすい長さに切り、貝のふたに戻して少量のお酒としょうゆとバターを乗せてオーブンで焼きました。

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お酒の肴にぴったり!


もう一つの写真はSNSの友の日記に載っていたものをマネして作りました。

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ご主人が作られる創作料理がどれもおいしそうでときどきマネしていますが、これもその一つ。

豆腐をレンジで水切りして少量の塩をふりかけてキッチンペーパーに包み、冷蔵庫で8時間ほど寝かしたあと、細くスライスして間にトマトを挟み塩コショウをしてオリーブオイルをたらしたもの。

ご主人の現物とは違っているかもしれません、お許しを。

私はクリームチーズを混ぜてみました~。


これも酒肴・・・おいしかったです。


酒肴ばかりですが、悲しいかな、私はほとんど飲めません^_^;


でもお酒のみの家に育ち、お酒のみに嫁いだのでず~っと酒肴を作りつづけています。


ついでに3人の子どものうち、2人の男子は下戸、娘は底なし・・・うまくいかない我が家なんです。




さて本日は紺野仲右ヱ門氏著『女たちの審判』 のご紹介です。


「いずれ俺は死刑だ。
その前に会いたい人がいる。
極刑を受けた男が拘置所に収監された長い時間。恋人や肉親、拘置所の刑務官、裁判官、その家族や友人の人生まで変えてしまった…。
まったく新しい“獄中小説”の誕生!」


元法務省心理研究職員・紺野信吾氏と元刑務官・紺野真美子氏ご夫妻による共作によって生まれたのが本書。

第6回日経小説大賞を受賞されました。


「2人で手分けして書いているのか、人物造形に恐ろしいまでの実在感がある」

「拘置所という『未知の領域』にもかかわらず、細部の描写に優れている」

「セリフでなく場面で読ませる。ユーモアもあって物語に引き込まれる」

「時間の蓄積によって書けた小説」
・・・など3人の選者・辻原登氏と高樹のぶ子氏、伊集院静氏のそれぞれが好意的な選評をしていらっしゃいます。


特に辻原登氏はドストエフスキーの『死の家の記録』に例えて・・・
「『女たちの審判』は、現代版『死の家の記録』(ドストエフスキー)と呼んで差しつかえがない作品である。
死刑囚梶山を中心にドラマは展開するが、梶山の内面は殆(ほと)んど語られることがない。
彼をめぐる人物たち――裁判官、刑務官、職員、肉親、友人、恋人、子供――の関係図が蜘蛛(くも)ノ巣さながらに精緻に張りめぐらされ、彼らの愛、怒り、嘆き、渇き、苦悩、喜び、勇気と卑劣を通じて、梶山の存在が大きく浮かび上がるという仕掛けである。
梶山の内面・心理を極力省いた効果がここにある。
梶山はまさに蜘蛛ノ巣に捕えられた餌食であると共に、蜘蛛そのものだ。
死刑囚を抱え、執行する拘置所の内部をこれほどリアルに描いた小説は稀有だろう。
梶山の刑死から十一年後、関係する人々が雪の山形に集まるメロドラマチックな大団円を、私は良しとする。
小説はメロドラマでなくてはならない。
ドストエフスキーが成したことである」
ととても好意的。


また作品の核となる死刑囚・梶山の描き方について、高樹のぶ子氏は「現場の息苦しいほどの臨場感は、この世界に身を置く夫婦にしか書けないだろうが、同時に小説の中心に存在する死刑囚の気持ちを、空白のまま置いておくだけの文学的な配慮にも舌を巻いた」と記していらっしゃいます。


本書は拘置所という特殊な舞台を選んでいるだけに、特殊な社会にだけでしか通用しない隠語や習慣を散りばめて読者に真向かう斬新さで勝負している作品です。


4章から成り立つ本書はそれぞれの章ごとに語り手を配置し、その語り手の視点を通して1人の人間―死刑囚の梶山智樹―に光を当てるという構成になっています。


最初の章の語り手は肥後拘置所の女性刑務官・母里(もり)直、第2章はそれから7年後の博多拘置所において刑務官の土橋祐二というふうに変わり、それとともに捕らわれの身である梶山を取り巻く人々にもさまざまな心理的な変化が起こります。


それらは読んでみてのお楽しみとしますが、いかんせんかなり読みにくい作品です。


梶山を巡る周囲の視点の移り変わりになかなかついていくのがしんどかったというのが正直な読後感。


取り上げた題材はとても目新しく興味深いものではありましたけど。

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朝起きて・・・

まず仏前に緑茶。


以前は朝から晩まで緑茶を飲んでいましたが、せっかく食事で摂取した鉄分を壊すというのを知って以来、食事前と夜は止めています。

放射線の後遺症で貧血気味の夫のため。


お嫁ちゃんが大量に、それも定期的にルイボスティを送ってくれるのでそれを飲んでいます。

ちなみにルイボスティはマメ科の一種で、南アフリカ共和国は西ケープ州のケープタウンの北に広がるセダルバーグ山脈一帯にのみ自生する針葉樹様の葉から製造する健康茶。

カフェインがまったく含まれていない上にカルシウム、ナトリウム、マグネシウムなどのミネラルやSOD(スーパー・オキシド・ディスムターゼ)様酵素が多く含まれているので抗酸化の高いお茶として注目されています。

丹色なるルイボスティからたちのぼる母なる大地アフリカの息


でも日中は大好きな緑茶。

その合間に夫は豆を挽いてコーヒー、私は紅茶。

結構な量の水分を取っています。


たくさん消費する緑茶は宇治のお茶本舗で大人買いをして常時冷凍庫に保存しています。


そんな日本茶好きを知っている次男が静岡と京都からそれぞれ飲み比べてみて、とドドッと送ってくれたのがこれ↓

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大切に大切に飲み始めて今のところいちばん右の宇治玉露が最高の甘露です(^^)

いつもありがとう!





今回は森見登美彦氏著『夜は短し歩けよ乙女』をご紹介します。 


「『黒髪の乙女』にひそかに想いを寄せる『先輩』は、夜の先斗町に、下鴨神社の古本市に、大学の学園祭に、彼女の姿を追い求めた。
けれど先輩の想いに気づかない彼女は、頻発する“偶然の出逢い”にも『奇遇ですねえ!』と言うばかり。
そんな2人を待ち受けるのは、個性溢れる曲者たちと珍事件の数々だった。
山本周五郎賞を受賞し、本屋大賞2位にも選ばれた、キュートでポップな恋愛ファンタジーの傑作」


2003年『太陽の塔』で第15回日本ファンタジーノベル大賞受賞
2007年『有頂天家族』
2007年『夜は短し歩けよ乙女』で第20回山本周五郎賞受賞
2010年『ペンギン・ハイウェイ』で2010年日本SF大賞受賞
2014年『聖なる怠け者の冒険』で第2回京都本大賞受賞


著者の作品は『有頂天家族』を読んだだけ・・・しかも肌が合わず、という読後感だったので以後敬遠していましたが、次男のところから持って帰っていた一冊だったので遅まきながら読了。


舞台は京都。


男子大学生である「先輩」と「後輩」である黒髪の乙女の恋模様が「先輩」と「後輩」のそれぞれの視点で交互に描かれています。

密かに想いを寄せるものの正々堂々としたアプローチができない純情硬派の「先輩」と、稀にみる純情無垢な「後輩」にからんで個性豊かなというかちょっと奇妙な登場人物が多々。


偶然を装ってさまざまなアプローチをするものの、すべてが空回りする先輩の行動の数々と鈍感を絵に描いたような後輩のすれ違いが何ともおかし味を誘います。


レビューを検索してみると概ね評判が上々のようでしたが、年代的な境界線によって相当ポイントに開きがあるような作品でした。


片方の主人公として登場する黒髪の後輩の言うに言われぬかわいらしさは認めますが、あまりにも浮世離れした造形に、これは単なる恋愛小説というよりファンタジーとして読めば納得の世界。


著者の構築した理想の女の子像がここに集結しているという感じ。


この乙女の作り出した・・・というより著者が作り出した造語がまたかわいらしさを増幅・・・

おともだちパンチとか、万能のお祈り「なむなむ」とか、むんと胸を張るとか・・・著者の頭の中のワールドを覗いてみたいほどでした。


世の男性の心の中にはきっとこんな乙女が理想像としているんだろうな。


女性を長くやっている私としては幻想の中でしかいないとほぼ確信が持てるのですけど。


熱の入らないレビューになってしまいました。

ノルディックウォーキングの講習会の前座で講師の方が話された「幸福感」と「幸福度」について。


「幸福感」というのは人それぞれの主観的な思いなので一律にまとめられないものですが、「幸福度」というのは次のようなファクターを鑑みて数値化したものだそうです。

1. 1人当たりの国内総生産
2. 社会的支援=社会福祉、困難なときに助けてくれる人がいるか
3. 健康寿命
4. 社会的自由=人生の選択肢が幅広いか
5. 寛容さ
6. 汚職のなさ

国連が毎年春先に発表する「世界幸福報告書」が今年も出たそうです。

2016年度の「最も幸せな国」の第1位はデンマーク、2位にスイス、以下アイスランド、ノルウェー、フィンランドと、上位の多くを北欧諸国が占めました。

内戦が続くシリアは157ヵ国中156位、最下位はアフリカのブルンジ。

ちなみに日本は53位だそうです。

ついでに米国は13位、英国は23位、フランスは32位、ロシアは56位、中国は83位。



続いて日本国内の「47都道府県の幸せ度ランキング」を法政大学が発表しています。

40のデータを「生活・家族部門」「労働・企業部門」「安全・安心部門」「医療・健康部門」に分け、社会経済統計を活用して、都道府県の幸福度を分析してランキングを付けたそうです。

日本一に耀いたのは福井県、2位は富山県、3位は石川県と日本海側の北陸3県が上位を占める結果となりました。


特徴としては比較的人口の少ない県が上位20位までに入っています。

残念な最下位は大阪の47位、東京都は38位でした。


講師の方の分析では「幸福度」というものが人との温かい交流を結べる環境に比例するのではないかと。


1人では決して生きていけない私たちの求めているものを端的に表わしているのかもしれません。


個人的にはどんな苛酷な状況のなかでも「幸福感」を持てるよう日頃から小さな幸福を見つける努力をしたいなと思います。






さて本日は村田喜代子氏著『焼野まで』 をご紹介します。 

「大震災直後、子宮ガンを告知された。
火山灰の降り積もる地で、放射線宿酔のなかにガン友達の声、祖母・大叔母が表れる。
体内のガン細胞から広大な宇宙まで、3・11の災厄と病の狭間で、比類ない感性がとらえた魂の変容。
前人未到の異色作」


2011年の東日本大震災直後に子宮体がんが見つかり、放射線治療を受けた著者の体験に基いた作品でありながら、はるかにノンフィクションを超えた壮大な広がりのある作品となっています。


「同じ体験をしても別の人が書けば違う話になる。がんとの闘病を芯にしながら、不思議でちょっと変な自分流の小説にしたいと思ったんです」


震災直後に子宮体がんに罹患した「わたし」がX線の四次元照射による特殊な放射線治療を選択してその施設のある九州最南端のウィークリーマンションに滞在するところから物語がスタート。


毎日数分間の照射のためにそのオンコロジーセンターに通う以外やるべきこともない中、震災と津波と原発事故の詳細をテレビや書物を通して知る日々。


福島では原発の放射能被害に苦しんでいるという事実と、方や「わたし」は毎日放射線を体に浴びることで蘇ろうとしていることに対する矛盾。


そんな狭間を行き来しながら、放射線の副作用というべき倦怠感から宿酔に苦しみ夢うつつの状態を体験する「わたし」。


東北の壊滅的状態をテレビで観ながら、身近なところに目を移せば焼島が噴火を繰り返している・・・命の源を生み出す子宮に放射線を浴びせるということと、抗い難い大地のエネルギーが「わたし」の頭の中で結びつきます。


「『焼野』というのは私の中では、地球が生まれる熱が噴き出す火山地帯なんです。
それに子宮も宇宙と呼応するものですよね。
この小っちゃな体の中のがん細胞をきっかけに、地球から宇宙までを見通す視点を持てたら、書く喜びはあるなと思った」


 「生と死は裏表で、死があるからこそ、生が輝くわけですよね。
生きることがこんなに大変だって気づいたら、死ってすごく荘厳なものなんだな、と。
その理解が深まったことで、今度また何か書けるかもしれない」


一日2グレイの照射を受けてただウィークリーマンションへ帰って寝ている日々にも人との出会いや別れが訪れます。

同じガン治療で知り合った女性との会話や、同病の元同僚との電話での会話が幻想の世界へと「わたし」とともに読者を引き込んでいきます。


そして治療の終末期になり、自分を取り巻くすべてが幻のように思えてくる「わたし」の夢の中に繰り返し愛する祖母が現れたり・・・。

「わたし」が治療をしている「オンコロジーセンター」とその祖母が唱えていた「おんころころ、そわか」との交叉。


現実に起こった大災害や病気を通して人間の四苦「生老病死」を主題とした幻想の世界が繰り広げられて読み応えがある作品となっています。


村田ワールドの真骨頂といえる本書、未読でしたらどうぞ!

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5月31日に当市の住宅街のマンション駐車場で指定暴力団神戸山口組系池田組の幹部が射殺されたというニュースが全国ネットで流されました。

昨年の山口組の分裂騒ぎに端を発しているという見込みがあって大きな報道となったようです。

その後1週間もしないうちに神戸山口組と敵対関係にあるもう1つの山口組の6代目組長篠田建市の出身母体で中核組織「弘道会」の傘下組員が実行犯として出頭して一件落着・・・とはならないのがこの世界。


暴力団の組織には詳しくないので(当たり前ですが^_^;)知りませんでしたが、当地にある池田組は神戸山口組の金庫番ともいわれ、潤沢な資金源となっているそうです。


その池田組の事務所が、いまは解体してありませんが元実家の近くにあるそうです。


そんなところがあるとも知らず、母が存命中は毎日能天気に通っていましたが。


これらのことを知ったのはテレビの情報番組。


山口組の詳しい組織図とともに、長年暴力団相手の刑事として暴力団と対峙してこられた元マル暴刑事がコメンテーターとしてわかりやすく解説されていました。


ちなみに「マル暴」とは暴力団の「暴」の字を○で囲ったことからついた隠語だそうです。


警察モノの小説の中でも飛びきりのヤクザ主体の小説の中でしか見たことのない隠語がその退官された元マル暴刑事の口からバンバン飛び出して・・・迫力のあったこと!


その飛びきりの警察モノのひとつが今日ご紹介する作品です。


黒川博行氏著『悪果』

「癒着、横領、隠蔽、暴力・・・日本の警察の暗部を描き出すノワールの傑作!
大阪今里署のマル暴担当刑事・堀内は淇道会が賭場を開いているという情報を掴み、金曜日深夜、賭場に突入し二十八名を現行犯逮捕する。
堀内は、賭場に参加していた学校経営者を経済誌編集・坂辺を使いゆすり始める…
かつてなくリアルに描かれる捜査の実態と癒着、横領、隠蔽、暴力…
日本警察の真実のなかにあぶりだされる男たちの強烈な光と闇」


警察モノといえばすぐ思い浮かぶのは佐々木譲氏、横山秀夫氏、今野敏氏、堂場瞬一氏、そして本書の著者・黒川博行氏などなど。


警察小説が好きな私は和モノ洋モノを問わず、様々な警察小説を開拓してきましたが、日本の作家の中で佐々木氏や横山氏よりずっと前に黒川氏の作品にのめり込んでいた時期があります。


黒川氏の描く刑事は、上に挙げた佐々木氏や横山氏の描く刑事とは一味違い、一言でいうなら横暴、下品・・・河内に近い大阪弁を駆使しての語り口といい、ふるまいといい、何とも粗野という言葉がぴったりの面々が登場する分、血の通ったほんまもんという感じが伝わってきておもしろい。


しばらくご無沙汰していましたが、最近『悪果』と『繚乱』を立て続けに読んでいたところ、SNSの友人Uさんが『悪果』のレビューをアップしていらっしゃったので思い出して今日のレビューとなりました。


著者・黒川氏はかつて高校の美術教師という経歴。

大のギャンブル好きで、故阿佐田哲也氏の薫陶を受けたり、故藤原伊織氏とはマージャン仲間だったという逸話を読んだことがあります。

1983年『二度のお別れ』で第1回サントリーミステリー大賞佳作
1984年『雨に殺せば』で第2回サントリーミステリー大賞佳作
1986年『キャッツアイころがった』で第4回サントリーミステリー大賞受賞
1988年『河豚の記憶』で第41回日本推理作家協会賞(短編および連作短編集部門)候補
1992年『封印』で第14回吉川英治文学新人賞候補
1996年『カウント・プラン』で第49回日本推理作家協会賞(短編および連作短編集部門)受賞&第116回直木三十五賞候補
1997年『疫病神』で第19回吉川英治文学新人賞候補&第117回直木三十五賞候補
1999年『文福茶釜』で第121回直木三十五賞候補
2001年『国境』で第126回直木三十五賞候補
2007年『悪果』で第138回直木三十五賞候補
2014年『破門』で第151回直木三十五賞受賞


直木賞候補になること5回、6回目でやっと受賞を果たされました。


直木賞受賞の報も雀荘で受け、受賞会見で賞金の使い途をたずねられた著者は「マカオに行こうと思ってます」と発言されていました。


ちなみに著者は権力をかさにきて悪知恵を働かせる警察組織が大嫌いだそうです。



さて本書の舞台は大阪、架空の警察署「今里署」。

主人公はノンキャリアのマル暴係巡査部長・堀内。

縦割りの階級組織の中でキャリア組が幅をきかせる警察内で出世を早々と諦めた現場一筋のマル暴刑事のダーティな日常が著者の綿密な取材力と筆力を通して描かれています。


「38にもなっていまだに巡査部長いうのは、よほど試験に向いてないんやね」

「おまえ、殴られたいんか・・・教えといたろ。
警察官は三とおりある。
ごますりの点取り虫と、まじめなだけのボンクラと、ほんまもんの捜査ができる本物(モノホン)の刑事や。
おれは本物のマル暴担やぞ」


優秀なマル暴刑事たる由縁はすなわち優秀なネタ元を抱えているかどうか。

数名のネタ元を手なずけるために必要な経費は、ああそうですか、と署が交際費として計上してくれるわけもなく・・・となると恃みはヤクザ顔負けの非合法な資金調達の腕。

ヤクザまがいのシノギの数々。


本書でもネタ元からの大掛かりな賭博開帳の情報を元に相棒の伊達とともに賭博開帳の現場に踏み込み、一毛打尽に組員及び張り客を一斉捕縛、その張り客のひとりである専修学校の理事長に対して、子飼いの経済誌のオーナーで強請屋の坂辺を使って暴露記事を書かない代わりに雑誌の広告料の名目で金をせしめようと画策するところから事が深みに入り・・・殺人事件へと発展すると同時に堀内は警察手帳をヤクザ風の男らに奪われます。


そこから堀内&伊達コンビの奔走・・・図体のよい、目つきの鋭い2人が大阪のミナミをガンを飛ばしながらガニ股歩きする姿が目に浮かぶよう。

個人的には漫才コンビ「サンドウィッチマン」の伊達と富澤がチラチラ。


特に前半部分はスピード感がなく、倦むほどに冗長でしたが、それを過ぎたあたり、中盤以降のストーリー展開がさすが黒川氏といえるような綿密な筋立てで一挙に終盤へ。


ほんまもんのエンタメ小説です・・・本書で得た裏社会の知識は役には立てませんが、よろしかったらどうぞ!

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