VINのらんどくダイアリー

ご訪問ありがとうございます。 「一日一生」を銘にさまざまな人生を読書というツールを通して味わっていきたいと思っています。 響きこし言葉に貼れるさみどりの付箋そよぎて林となりぬ

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2016年11月

先日、映画「聖の青春」を観にいきました。

原作・大崎善生氏著『聖の青春』と出合ったのは2008年。

そのときの感動は今でも覚えています。


怪童・村山聖棋士と著者・大崎善生氏との出会いは「将棋世界」の編集長時代だそうです。


村山が1998年に29歳という若さで夭折したあと2年後に、『聖の青春』を上梓、第13回新潮学芸賞、将棋ペンクラブ大賞を受賞しました。


その後大崎氏は小説家として数々の作品を上梓、今日に至ります。


その原作に深い感銘を受けた読者としては・・・

映画自体を独立させたものとして鑑賞すれば、すばらしい出来だったと思います。


特に村山役の松山ケンイチはこの役に徹するために体重を20kg以上増やしたといいます。

村山役に松山ケンイチが決まったというのを何かで読んだときは、とんだミスマッチとがっかりしていましたが、ネフローゼで浮腫んだ村山の体型といい髪形といい、役者ってすごいなぁと驚嘆するほどの役作りに感服しました。


「この役ほどスタート地点に立つまでに時間のかかった役はありませんでした」とは松山ケンイチの弁。


それに加え、羽生善治役の東出昌大がこれまたすごい!

羽生氏から実際使用されていたメガネを譲り受けたということですが、いつも寝癖のある髪型といい、対局中の扇子を使う無意識動作といい、これにも深く感服しました。

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そして最後に村山の大阪時代の師匠・森信雄役のリリー・フランキーが自然体を貫いた演技でこれまたすばらしかったです!


原作で村山と師・森の交流を描いた感動のシーンはほとんど省かれていて、映画は村山と羽生の交流を主に立たせて仕上げていましたが、それはそれで感動を呼ぶ主題となったことでしょう。


村山は亡くなり、羽生は46歳になった現在まで将棋界の各称号をほしいままに、タイトル獲得数歴代一位に燦然と輝いています。


人間の寿命は神のみが決めるといわれていますが、せめてもう少し存分に対局させてあげたかったと思います。






さて本日は奥田英朗氏著『我が家のヒミツ』
のご紹介です。

「どうやら自分たち夫婦には子どもが出来そうにない(『虫歯とピアニスト』)。
同期との昇進レースに敗れ、53歳にして気分は隠居である(『正雄の秋』)。
16歳になったのを機に、初めて実の父親に会いにいく(『アンナの十二月』)。
母が急逝。憔悴した父のため実家暮らしを再開するが(『手紙に乗せて』)。
産休中なのに、隣の謎めいた夫婦が気になって仕方がない(『妊婦と隣人』)。
妻が今度は市議会議員選挙に立候補すると言い出して(『妻と選挙』)。
どこにでもいる普通の家族の、ささやかで愛おしい物語6編」


2002年第4回大藪春彦賞(『邪魔』)
2004年第131回直木三十五賞(『空中ブランコ』)
2007年第20回柴田錬三郎賞(『家日和』)
2009年第43回吉川英治文学賞(『オリンピックの身代金』)


いったい魔法のポケットをいくつ持っておられるのか、と思われるような著者はミステリーからユーモア小説、スポーツ小説など驚くほどの守備範囲の広さで私たち読者を楽しませてくれています。


その中でも特に私のお気に入りは「家」シリーズ。


第20回柴田錬三郎賞を受賞された第一弾『家日和』に続き、第二弾は2011年刊行の『我が家の問題』、そして本書『我が家のヒミツ』が2015年の刊行です。


第一弾『家日和』のキャッチコピーは「それぞれの家庭内の『明るい隙間』を名手が描く短編集」。

第二弾『我が家の問題』は「「ささやかでも悩ましい、それでも家族が一番」。

この2行を見ただけでさまざまな家庭内の小さな隙間に生まれた明暗を巧みに描いてほろりとさせられるとわかる内容。


本書も然り。


本書には6篇の短篇が収められています。


「虫歯とピアニスト」「正雄の秋」「アンナの十二月」「手紙に乗せて」「妊婦と隣人」「妻と選挙」


どれもさまざまな家族のかたちを描いて秀逸。


平易な文体に家族間の温くみを織り込んで、ちょっぴりのユーモアとペーソスを滲ませた物語の数々。


夫婦間での出来事あり、家族間での出来事あり、、どれも家族間の微妙な機微が会話を通して描かれていて・・・・・はてさて著者はずっと独身のままと記憶していますが、どうしてこのように女、男、親、子どもの立場で心を寄せることができるのか??


いつも著者の作品を通して感じる疑問です。


特に好きなのは「虫歯とピアニスト」と「手紙に乗せて」ですが、前者は結婚して5年ほど、どうやら子供が授からないかもとモヤモヤしたものを抱えながら歯科医院の受付で働いている31歳の敦美が主人公。

その歯科医院に歯の治療のため著名なピアニストが訪れるところから物語がスタート。

そのピアニストのファンだった敦美とピアニストとの会話を通して、自分の生き方をもう一度再確認する敦美とその夫の関係がとてもすてきに描かれていて、ピアニストの心の変遷も含めてほのぼのとした読後感。


「手紙に乗せて」は50代で妻を亡くした父親を持つ息子が、同じ経験を持つ上司から父親への手紙を託され、その手紙によって父親が徐々に生きる気力を取り戻していく過程が息子の目を通して描かれていて、なんだかほっとします。


最後の「妻と選挙」の登場人物は前作でもおなじみの大塚一家。

幼かった双子の息子たちも本書では大学生となり、いっぱしの口を利くまでに成長。

本書では奥田氏を連想させるN木賞受賞作家の大塚氏も小説家として少々翳りが出てきて、N木賞受賞直後は銀座のクラブだった出版社の接待が、ここのところ居酒屋となり、大塚氏が提案する次回作にも担当編集者が難色を示すという微妙な変化に落ち込む様子が自虐的に描かれていて、読者としては作家と出版社の駆け引きの内幕を覗いたという感じ。

この短篇の中で、主人公を通して、この「家」シリーズも第三弾で打ち止め的な会話があり、これが著者の本意なら、ファンとしてがっかりだなぁと思っているところです。

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遊びをせんとや生れけむ、戯れせんとや生れけん、遊ぶ子供の声きけば、我が身さえこそ動がるれ

後白河法皇が平安時代に編集したとされる『梁塵秘抄』の一節。

作者不詳の口伝として歌われたものだそうですが、私も自然に口をついて出たことに驚いた・・・ということは・・・高校時代にでも暗記させられたのか?


新聞の「折々のことば」にロジェ・カイヨワによる「遊び」の定義が載っていたのを読んでいるうちに思い出したのです。

いかなる富も、いかなる作品も生み出さないのが、遊びというものの特徴である
遊びは目標を定めて何かを作るのではなく、時間とエネルギーと器用さの純粋な浪費だとカイヨワは言っています。


なるほど・・・子育ても仕事も終わり、今は生活のすべてが遊びの範疇にある自分にはよ~く理解できる言葉です。


平安時代の庶民の口伝を通してみれば「遊び」を人生の大きな目的としてもいいんだ、とちょっと安心できるような・・・。

律儀な日本人気質をちょっぴり持ち合わせている私は用なしの自分の存在が何とはなしに堂々とできないでいるのですが、人生も社会も遊びという隙間がなければ息をつけない、とカイヨワが結んでいるので、まあ年齢的にもよしと許そう、と納得しております。


ということで遊びで描いたハガキ絵と遊びでアップした読書ブログです。

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本日は五十嵐貴久氏著『編集ガール』のご紹介です。 

「高沢久美子は出版社に勤める27歳。
といっても経理部員だ。
会社には秘密だけれど、単行本編集部に勤務する31歳の加藤学とは付き合って三年。
そろそろ結婚の話も出ている。
ところがある日、ワンマン社長の長沼からいきなり新雑誌の編集長に任命された。
以前、適当に書いた企画書が通ってしまったのだ!
女性ファッションの通販雑誌を自分で創刊するなんて、久美子にできるわけがない。
新編集部のメンバーは社内よりすぐりのツワモノばかり。
その上、彼氏の学まで部下になるなんて!
素人ばかりの編集部は前途多難…」


以前このブログにもアップしている『交渉人』『交渉人 爆弾魔』がけっこうおもしろかったので、著者の名前と「編集」というタイトルに惹かれてピックアップしたのですが・・・なんとも軽い作品。

これが「交渉人」シリーズの著者?


私の好きな奥田英朗氏の「家」シリーズをもっともっと薄っぺらく軽くしたようなお仕事小説といえばいいのでしょうか・・・。


ある中堅出版社の経理部員の女の子が軽いノリで応募した企画が変人社長の目に留まり正式採用、その企画を遂行するための雑誌編集長に任命されてからのドタバタの成功物語。


編集経験がまったくない主人公が任命に抗っている間、あれよという間に社長の鶴の一声で新しい編集部がセットされ、そこに文芸編集員の恋人が部下として異動してくるというありえない展開の嵐。


結果的に新雑誌の編集は成功裏に終わりますが、あまりにもお粗末な主人公の手腕といい、新雑誌が出来上がる過程の貧弱さといい、軽くは読めますが、消化不良の感は否めませんでした。

★★というところでしょうか。

毎年たくさんのカモが飛来してくる当地・玉野市の深山公園の赤松池。

紅葉も見頃だということで行ってきました。


お目当ての紅葉はいまひとつといった感じでしたが、赤松池に憩っている半端ない数のカモたちの賑やかさに圧倒されました~。

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市公園緑化協会によると北半球の寒波の影響で今年の飛来数が急増したのではないか、とのこと。

シベリアなどから千羽以上が飛来しているそうです。


夜間は近くの川や児島湖などで過ごし、正午前後までに餌を求めて赤松池に来るといいます。


このような光景は2月いっぱいまで続き、3月から4月にかけて繁殖のために北に向かって飛び立つそうです。

アイガモ、ヒドリガモ、オナガガモ、コガモなどの色や形がとりどりのカモが入り乱れていてどれがどれかわからない状態。



そんな中にひときわ大きいコブハクチョウが三羽、周囲に気持ちを乱される様子もなく悠然と水に漂っていました。

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が、いったん餌を前にするとかなり獰猛、他を威嚇しながら餌を独り占め。

岩に上がったその脚を見ると猛禽類の脚のよう。

白鳥は哀しからずや空の青うみのあをにも染まずただよふ

牧水の歌の優雅なイメージとは不釣合いな脚に強靭な生命力を感じました。







今回は古野まほろ氏著『新任巡査』をご紹介します。 

「凡庸にして心優しい頼音(ライト)。
ある能力を備えた男勝りの希(アキラ)。
ふたりの新任巡査の配属先は駅の東と西にある交番だった。
毎秒成長し続けなければ、警察官としてやっていけない――。
元キャリアの著者にしか描きえない圧倒的ディテイル。
深淵を知る者だからこそつける嘘。
最前線をぶっちぎりでかけぬける、まったく新しい警察小説、誕生!」


著者は東京大学法学部卒業後リヨン第三大学法学部修士課程修了
警察庁I種警察官として交番、警察署、警察本部、海外、警察庁等で勤務の後、警察大学校主任教授にて退官
2007年『天帝のはしたなき果実』で第35回メフィスト賞を受賞しデビュー
他の著書に『新任巡査』、『復活』、『おんみょう紅茶屋らぷさん』、『臨床真実士ユイカの論理 文渡家の一族』などがある


著者の作品は初読みですが、600ページを超える大作に途中何度も挫けそうになりました(――;)

というのも、ベッドで横になった状態でしか読まない怠惰な本読み人なので、あまりの重さ厚さに支える手に力が入らない、その上、能書きの長いこと!!


新任巡査のガイドブックというか、こうやって少しずつ階段を上っていくのだよ的なお仕事のハウツー紹介本のような様相の前半部分が異常に長いのです。


新人警察官を育成する警察学校を題材に描いたものといえば長岡弘樹氏の『教場』がすぐ思い浮かびますが、本書はそれを千倍掛け詳しくしたような内容。

  
それもそのはず、著者は元警察官僚であり、最後は警察大学校主任教授にて退官というスーパーキャリアの主。


本書の冒頭で、「リアリズムに基づくディテール」と「あえて吐いた大きなウソ」とに基づくフィクションである、と述べていらっしゃいます。


ということで舞台は大きなウソの代表格・愛予市。

前半部分はそのウソの舞台の上で繰り広げられる「リアリズムに基づくディテール」を駆使しての警察組織に関するガイドブック。

そして読者がそのディテールにうんざりしながら、途中放棄しようか、と思い始めた矢先の後半でやっとやっと警察小説のらしき匂いが^^;

そもそもライトとアキラという対照的な2人の新任巡査を主人公に配置したことに大いなる伏線があるのが徐々に明らかになります。

このあたりまで我慢して読むと、あとは思わぬ展開に一気読みへと導かれます。


今までの警察小説とは一味も二味も違った構成とそれに続く物語の構築、ミステリとしては現実からかなり離れていて共感性に乏しいような気もしますが、よかったらどうぞ。

今テレビで「校閲ガール」というドラマが放映されているようですね。

観たことはありませんが、話題になっているような。


「校正」という言葉はなじみがあると思いますが、「校閲」との違いをご存知でしょうか。

どちらも文章などの誤りを直し正すことという基本は同じなのですが、「校正」は誤字や脱字など文字の誤りを正したり、印刷物の仮刷りと原稿を比べ合わせて誤植や体裁の誤りを正すことをいいます。

一方「校閲」は文書や原稿などを読み、内容の正誤や適否を確認する作業。

著者の書かれた文章の内容の矛盾点や表現の誤り、事実関係の誤りなど、原稿の内容に間違いがないか確かめるものです。


「校正」は表面的ですが、「校閲」は著者の文章の意図するところまで踏み込むので、その領域に大きな違いがあります。


私は英語の学習参考書というちょっと特殊な校正の内職を30年ほどやっていて、著者の文章の内容の矛盾などを正すという領域には踏み込めませんでしたが、時には踏み込みたい誘惑に駆られることもありました。

そういった意味で「校閲」の醍醐味を味わってみたかったです。


重箱の隅をつつくような細かな作業が要求される「校正」の仕事を辞めて5年ほどですが、きっかけは辞書を引きまくるという作業に疲れ果てたからです。


すべてを確かめるというのが校正の仕事、日本語の辞書、英語の辞書を傍らに、正しいと思っても辞書を引いて引いて確認しながら文章全体に目を光らせる、というのはとても疲れます。


締め切りに追われて、朝から夜中まで資料を広げて、ページの通し番号の間違いやフォントの揃いなどを確認する作業が終われば、次は本丸の内容チェック・・・英語だけでなく日本語など数百枚を通して表記を統一するというのは根気が要ります。

校正の合間に料理を作り、家人と会話する・・・そんな余裕のなさ^^;


そんなこんなで辞めた直後は小説を読んでいても誤字脱字表記ミスにばかり意識が入って楽しめませんでしたが、辞めて5年にもなるとすっかりゆるゆるに(^.^)


そんな中、1年ほど前から所属する歌会で定期的に発行している短歌冊子の校正をすることになって・・・なんだかとても懐かしくてふるさとに帰ったような気持ちでやらせていただいています。

新参者の立場として、先生のインタビュー記事や先輩の方々の書かれた原稿の内容など、踏み込むのは失礼と思いながらついつい赤を入れてしまったり。

今回ももうすぐ校正の時期がやって来ます。


仕事としてやっていたころは苦しかったけど、今は楽しい・・・この違いに驚くばかり。


さてそんな話題にちなんで・・・


本日は中田永一&宮下奈都&原田マハ&小手鞠るい&朱野帰子&沢木まひろ&小路幸也&宮木あや子氏著『本をめぐる物語 一冊の扉』のご紹介です。 

「古書店と同じにおいの高校の部室、好きなキャラの二次創作小説に没頭しているときだけ、私は自由だった。
けれど先輩からある耳慣れない指摘を受けて、自分の作品の弱さを知る。
小説をうまくなりたい、そのためには…(「メアリー・スーを殺して」)。
ほか、遺作の装幀を託された“あなた”、出版社の校閲部で働く女性などを描く、人気作家たちが紡ぐ様々な『本をめぐる物語』」


「校正」の話にちなんで、というのは、本書に収録されている8篇のうちの最後の短篇がまさに『校閲ガール』。


石原さとみ主演のドラマを観ていたらもっとおもしろく読めたかもしれませんが、興味深い内容でした。


8篇はそれぞれ本にまつわるアンソロジー。

中田永一氏の「メアリー・スーを殺して」
宮下奈都氏の「旅たちの日に」宮下奈都
原田マハ氏の「砂に埋もれたル・コルビュジエ」
小手鞠るい氏の「ページの角の折れた本」
朱野帰子氏の「初めて本を作るあなたがすべきこと」
沢木まひろ氏の「時田風音の受難」
小路幸也氏の「ラバーズブック」
宮木あや子氏の「校閲ガール」


どれもほんの短篇で気軽に読めますが、面白かったのは朱野帰子氏の「初めて本を作るあなたがすべきこと」。

外面はくだけた体を装いながら内面はプライドが歩いているような夫との日常を妻の視線を通して描いた傑作な小品。

「褒めて」ちゃん、「察して」ちゃんの甘ちゃんの夫の操縦法ならこの作品にお任せ、という内容。


最後の「校閲ガール」はある出版社刊行のファッション誌のファンだった女の子がその出版社のファッション部を目指して入社したものの河野悦子という本名ゆえに「校閲部」に配属されてからの不本意な日々を描いたもの。

どうも主人公の言葉遣いといい、行動といいかなりの違和感がありましたが、「校閲」という仕事への興味本位で読了。

連作として続編が刊行されているようです。

NHKの受信料、払っておられないご家庭もあるということが度々話題になっています。

ちなみに我が家ではBS受信料とともに年間契約で引き落としをしていますが、かなりの金額。


会長になられた籾井氏の政府寄りの暴言が度々俎上に上げられていることなども含め、権威にアレルギーのある夫も私も本音は払いたくない受信料。

でもけっこうBS観るんですよね、夫は特に。


そんな籾井氏が月額50円の受信料値下げ提案をしておられるというニュース。

値下げ自体はウエルカムですが、どうもそれが二期続投への意欲の表れと見るむきが多いとか。


就任以来権力を駆使して粛清人事と称する降格人事を乱発しておられるというのも耳にしています。


続投はしてほしくない、トランプ氏には勝利してほしくない、などなどの昨今の私の願いは悉く叶わないので、これからどうなることか。


なんだか心細い秋の夕暮れです。





さて本日は高杉良氏著『人事の嵐』のレビューです。 


「入院中の社長の阿部は、後任を江口と定めたが、江口は固辞して一期下の大谷を推した。「後任人事決定前に阿部は没した。
江口は社長の遺志だと大谷を口説くのだが(「社長の遺志」)。
会社更生法の申請をした商事会社で四十五歳の取締役が誕生した。
人事部長兼務である。
しかし、使命は減員計画の推進であった(「人事部長の進退」)。
リアルな筆致で人事という心理戦を描いた傑作八編」


本書は今からほぼ30年ほど前の日本のトップ企業内の人事の物語。


女性の姿がほぼ見えないことも含め全体的に古さは否めませんが、大筋ではこんなものかな、と思えるリアリティのある内容です。


押しも押されもしない主婦代表ですが、けっこう企業系の作品に惹かれます。


自分の知らない世界を垣間見ることができる小説の世界。


そういった意味で池井戸潤氏の一連の銀行系の作品も大好き。


四十数年にわたってサラリーマン生活を送った夫の、企業内の人事に翻弄されて浮き上がったり、沈みそうになったりの日常をそばで見てきたこともあり、本書はとても興味深かったです。


本書には8編の短篇が収録されていますが、トップになることの切磋琢磨ぶりを男らしいとみるか、女々しいとみるかで評価は分かれるとは思います。


しかし一度権力の味を知ると、人間はこうまで執着するのか・・・驚くばかりの主人公がいたり、反して潔い退却のトップがいたり。


ちなみに夫の引き際は私の目から見てあまりにも唐突だったので、そのときは鬱々としましたが、今では唯一と言っていいくらい夫の潔さを利点と見直しています。

ただ単に働くのがいやだったという説もありますけど。


でも大半が往生際の悪い、と思われる人ばかり。

籾井氏もオリンピックの森氏も、東京都議の内田氏も・・・。


権力と富を手に入れたらこうなるのか・・・私も一度手にしていたら考え方が変わったかも。

以前、ブロ友いちさんのブログでご自身の過去の忘れ物についておもしろく振り返っていらっしゃったのを拝見して、そういえば・・・忘れ物に関しては超級のエピソードを持っている我が家、というか夫の忘れ物事件を思い出して・・・記録のために記しておきます(何のための記録??)


転勤が多かった我が家。

神戸から東京への転勤時。

引越し業者のトラックを見送って家中を点検、印鑑とか通帳、株券など業者さんに任せられない大切なものをバッグに詰め、最寄の摂津本山駅からJR神戸線に乗って、途中もらいもののお仕立券つきカッターシャツのオーダーをするため大阪で下車、阪急デパートに寄ったところまでは予定通り。

その後、新幹線で新横浜まで行き、新横浜のホテルに一泊、翌日トラックを迎えるという予定。


ところがデパートの紳士服売り場で仕立て券つきカッターシャツを出そうとした夫が・・・。

手ぶらなのに気づいて驚愕!


電車に乗れば、どんな荷物も網棚に置くという夫の習性で何度も失敗しているのでしばしば注意していたのですが、今回もやらかしたのでした(――;)


しかも今回の中身は我が家の全財産、さすがの夫もオーダーメイドどころではなく、2人で大阪駅へ走り、駅員さんにしどろもどろになりながら説明して、神戸線の車内の乗務員さんと連絡を取ってもらいました。

あった!

無事ありました!という報告(^.^)


その電車が折り返すのを待って京都で受け取ってください、とのこと。


ほっとして力が抜けてその場にしゃがみ込みそうでした~。


早速その夜宿泊予定の新横浜のホテルをキャンセルして、新幹線の乗車券を変更、そして京都に泊まりました。


そのとき私が思ったこと・・・バッグを持っていたのが私でなくてよかった!!



その他にも夫の忘れ物には枚挙の暇がないほど。


いつも用意周到を自認して、私の不備を責める人なんですけどね(――;)





さて今回は森沢明夫氏著『大事なことほど小声でささやく』をご紹介します。


「身長2メートル超のマッチョなオカマ・ゴンママ。
昼はジムで体を鍛え、夜はジム仲間が通うスナックを営む。
名物は悩みに合わせた特別なカクテル。
励ましの言葉を添えることも忘れない。
いつもは明るいゴンママだが、突如独りで生きる不安に襲われる。
その時、ゴンママを救ったのは、過去に人を励ました際の自分の言葉だった。
笑って泣ける人情小説」


以前高倉健最後の主演映画で話題になった『あなたへ』の原作を読んで以来の著者の作品。


筋立てに人生の哀しみを盛り込んだ甘さがあったので、ちょっと敬遠気味でしたが、図書館の新刊本棚にあったので。

タイトルのつけ方も何だか人生訓的^_^;


本書にも甘さは漂っていましたが、意外にその甘さに惹きつけられて読了。


というのも著者が主人公に据えたユニークな人物が醸し出す味がなんともいえずよかったから。



2m超マッチョな巨漢、スキンヘッドで口ひげのおネェ、権田鉄雄ことゴンママが主人公!


マツコデラックスを男版にしたような外見がチラホラ。


彼(といっていいのか彼女といっていいのか)を中心に、彼が通っているスポーツクラブSABのジム仲間6人の連作短編。


ゴンママが経営する場末の「スナックひばり」に集まるジム仲間たち。


それぞれの人生に問題を抱えながら、毎週金曜日の「筋曜日の会」に集まってはぐだぐだ。


「人生に大切なのは何が起こったかではなくて起こった事に対して自分が何を出来るかよ。
ピンチはチャンスよ」

「あなたが生きられるのは今この瞬間だけなのよ。
過去と未来を思い煩っても、それは無駄なだけ」

「辛い過去に囚われないで、未来の不安も全部忘れて、今この瞬間だけをしっかり味わって生きるのが、禅の幸せに生きる極意なのよ」

「阿吽の阿は、五十音のはじまりの『あ』で、吽は終わりの『ん』のことで、つまり阿吽はこの世のすべてを表す禅の言葉なんだって。
転じて、この世のすべては、阿と吽のあいだの一瞬のいまにしか存在しなくて、あなたが生きられるのも、いまこの瞬間だけなのよ」



ほんとうにそうなんだ・・・過去のある時点での選択に対する後悔、見えない未来への不安。

そういうもやもやに捉われている自分を振りかえりました。


大切なのはいまを全力で生きることだけなのに、どうしても拘泥や憂鬱、後悔といった心の暗雲を振り切れないで、結果今の幸せを半減させているような・・・。


ゴンママの何気ない言葉のひとつひとつが心に沁みる、そんな作品でした。

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