VINのらんどくダイアリー

ご訪問ありがとうございます。 「一日一生」を銘にさまざまな人生を読書というツールを通して味わっていきたいと思っています。 響きこし言葉に貼れるさみどりの付箋そよぎて林となりぬ

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2017年04月

ここ数年高齢運転者による事故が多発していて他人事とは思えなくなりました。

そうかと思えば認知症の特集に広く紙面を割いたり・・・。

厚労省の試算によれば2025年には700万人に達するだろうという認知症患者の推計値。

65歳以上の5人に1人が罹患するといわれて、これも他人事とは思えない・・・


昭和16年に老健局が「痴呆」に替わる用語として選定した複数の候補例から「認知症」を選んだそうですが、この言葉もなんだかね~。


アメリカでは「認知症」のことを“long goodbye”「長いお別れ」というそうですが、少しずつ少しずつ記憶を失くしてゆっくりゆっくり遠ざかっていくロング・グッドバイ、いい言葉だなあと思います、医学用語は別でしょうけど。


遠ざかっていくのは・・・いま置かれている現実や、人間関係とそれらにまつわる事象、そしてなにより自分自身・・・との決別。


アメリカの小説家レイモンド・チャンドラーの作品に同名のものがありますが、このタイトルで認知症をテーマに作品を上梓された中島京子氏。


認知症の実父と10年目に死別された中島氏の実体験をもとに書かれたそうです。




中島京子氏著『長いお別れ』

「“少しずつ記憶をなくして、ゆっくりゆっくり遠ざかって行く”といわれる認知症。
ある言葉が予想もつかない別の言葉と入れ替わってしまう。
迷子になって遊園地へまよいこむ。
入れ歯の頻繁な紛失と出現。
記憶の混濁--日々起きる不測の事態に右往左往するひとつの家族の姿を通じて、終末のひとつの幸福が描き出される。
著者独特のやわらかなユーモアが光る傑作連作集」


1964年東京生まれ
父はフランス文学者で中央大学名誉教授の中島昭和
母はフランス文学者で明治大学元教授の中島公子
姉はエッセイストの中島さおり
東京女子大学文理学部史学科卒業後出版社勤務を経て渡米、帰国後ライターとなる
2003年『FUTON』で第25回野間文芸新人賞候補
2006年『イトウの恋』で第27回吉川英治文学新人賞候補
2007年『均ちゃんの失踪』で第28回吉川英治文学新人賞候補
2008年『冠・婚・葬・祭』で第29回吉川英治文学新人賞候補
2010年『小さいおうち』で第143回直木三十五賞受賞
2014年『妻が椎茸だったころ』で第42回泉鏡花文学賞受賞
2015年『かたづの!』で第3回河合隼雄物語賞・第4回歴史時代作家クラブ作品賞・第28回柴田錬三郎賞をそれぞれ受賞
2015年『長いお別れ』で第10回中央公論文芸賞・第5回日本医療小説大賞をそれぞれ受賞


映画でも話題になった直木賞受賞作『小さいおうち』のレビューはこのブログでもアップしていますのでよかったら読んでください。 


父・昇平がアルツハイマー型認知症と診断されてからの10年間。

老夫婦と3人の娘とその家族の日常を8篇の連作で描いています。



母・曜子から呼びつけられ東京郊外の実家に姉妹が久々に集うところから物語がスタート。


元中学の国語教師で校長職や図書館長を歴任して今は悠々自適という設定の昇平。


長女・茉莉は夫の赴任先のアメリカ西海岸から、東京都内に住む次女・菜奈は8歳の息子・将太を連れて、フードコーディネーターで気ままな独身の三女・芙美は手料理を持参してそれぞれ駆けつけます。


そこで娘たちは久しぶりに会う父親の異様な言動に直面して驚くのです。


手土産のタルトの中身より包み紙に興味を示し、丁寧に皺を伸ばし泉屋のクッキーの缶に仕舞う、タバコの空箱を捨てずに飾る、町内の将棋大会4位の賞状や遥か昔の大学の卒業証書を飾る・・・過去数十年にわたって二年に一回、同じ場所で行われている高校の同窓会が催されていた場所に昇平が辿り着けなかったことを発端に妻・曜子とともに“ものわすれ外来”を受診して初期のアルツハイマー型認知症と診断された昇平。


「物を溜めこむのは認知症の典型的症状らしいですね。
一昨年亡くなった私の父も煙草の空箱とか喫茶店のお砂糖なんかをやたら集めていて、私たちが捨てようとすると『こんなに大事なものを』って怒るんです・・・
父の思いの真相はわかりませんが、父が記憶や言葉を失っていく過程では結構笑っちゃう話も多くて(笑い)。
私たち家族にとってはそれも日常ですから、そういう面白い出来事もたくさんある長いお別れを、できれば明るく書いてみたかった」

著者はこのようなスタンスで自らの10年にわたる実体験を、オロオロしながらも家族一丸となり、そして時には認知症を俯瞰しながらユーモアを交えて描いています。


ストレートに記せば悲惨になりがちの内容ですが、著者の俯瞰力と筆力とそして資質が相まってとてもいい小説になっています。


読んだ後、しみじみとした温かい、何かに満たされたようなほのぼの感をも感じてしまいました。


何より、母である妻の夫に対する一途な思いが娘たちを揺り動かす原動力となって・・・

そして家族それぞれにそれぞれの事情があり、日常生活がありながら、主人公の昇平を真ん中にして、自分たちの出来うる限りの手を差し伸べようとする昇平に対する気持ちの温かさが伝わってきての読後感のよさであろうと思われました。

優しさ、温かさにはほどよい知性が土台になっていると思わせる物語でした。

先日の日曜日、オリーブで有名な当地の南に位置する牛窓につつじと加山又造の作品展を観に行きました。

加山又造は瀬戸内美術館、つつじは牛窓神社。

どちらも近いところにあります。


まず瀬戸内美術館。



開催されていたのは日本画家・版画家である加山又造の生誕90年を記念して、初期から晩年に至るまでの作品。

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次に牛窓神社。

瀬戸内美術館ではときどき国内外の著名な画家の作品展が開かれるので何度か行ったことがありますが、牛窓神社は初めて。

平安時代に創建されたといわれる牛窓神社。

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木漏れ日の綾なす細き参道を上れば鎮守の牛窓神社


日本の伝説の皇后・神功皇后(じんぐうこうごう)が、夫である天皇を亡くし、男装をして出発した場所だと言われているそうです。

神話の世界のお話。

また日本の伝説の姫と牛鬼と言う怪物の伝説が残る場所でもあるそうです。
知らなかった。

家内安全、開運、厄払い、交通安全などを願い、吉備津神社吉備津彦神社と並んで遠くからも参拝客が訪れる有名な神社だそうです。

拝殿には竹久夢二がこれを見て画業を目指したといわれる数々の絵馬や画縁が奉納されています。

小高い丘の上に本殿があり、そこから363段の石段を下ると眼下に、前島、黄島、青島などの瀬戸内の島々が見えます。

石段の途中に山つつじが咲いている場所があり、毎年つつじ目当ての観光客で賑わうというところ。



神霊の漂ふやうな参道を下れば眼下に瀬戸の島島



瀬戸内のマリンブルーの海と薄紅色のつつじの対比がすてきでした。






さて本日は阿川佐和子氏著『婚約のあとで』のレビューを少し。 


「晴れて婚約したのに結婚をためらい始めた波。
秘密の恋に大胆に身を任せてゆく碧。
男性との関係を仕事のステップアップにつなげる真理。
三世代同居家族の中の専業主婦、優美。
障害があるゆえに自立を求めて結婚に踏み切れない宙……。
姉妹、友人、仕事仲間としてリンクする七人。
恋愛、結婚、仕事、家庭をめぐって揺れる彼女たちの、それぞれの心情と選択をリアルに描き出した連作集」


著者のエッセイや壇ふみ氏との掛け合い漫才のような往復書簡『ああ言えばこう食う』『けっこん・せんか』のファンだったので、著者の小説はどんなんだろうと興味半分に手に取りました。


結婚適齢期のキャリアウーマンの主人公・波を中心につながりのある20代後半から50代までの女性のキャリアや恋愛模様を描いているオムニバス形式の連作短編集になっています。

7つの短篇それぞれに登場する主人公の名前をタイトルとして、それぞれの結婚や恋愛に関するエピソードで構成されています。

冒頭は全体を通して核になる波の物語。


読み始めてすぐ、なにやら上流階級の人々だけが持つ鼻持ちならならない雰囲気にちょっと拒否感を覚えながらも読み継いでいきました。


そういえば著者ご自身が庶民的な雰囲気を打ち出しているとはいえ、あの阿川弘之氏の令嬢だもの・・・納得という感じ。


言葉の言い回しや文体を意識したような文章にもすっと入り込めない違和感を感じて終わりました。


結婚前の迷いや目移り、生育を通して培ったかもしれない親に対する不信感、夫との齟齬、年の離れた男性への傾きなど、様々な男女の形がそれぞれの心理描写とともに緻密に描かれてはいますが、物語の閉じ方も無理に幸せ感を演出したような・・・ちょっと引きました。

露天風呂が大好きな夫の希望でふらりと山陰の温泉に一泊のドライブの旅。

宿の決め手は夫の場合、見晴らしのよい露天風呂があるかないかの一語に尽きるのですが、今回はやや満足したようです。

露天風呂といっても高額な貸切露天風呂ではなくごく一般的なもの。


いままで行ったなかでは十和田湖畔のホテルの露天風呂で、手を伸ばせば十和田湖に触れられそうなほど間近かに広大な湖が迫った露天風呂が夫のベスト1だそうです。


今回の露天風呂はベスト10のスソくらい??


中国山地を越えたあたりから急に雲行きが怪しくなり、到着と同時に雨が降り始め、翌日も雨という天候。


私が雨女だから、とはいつもの夫の弁。

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夜は雨音を聞きながら、持ち込んだワインを飲みながら久しぶりの花札をしました。

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「楽しみました」と書きたかったのですが、相手がいい手札を持ってその上、捲った札がよく点数がどんどん上がるとお互いにムカついて、楽しむどころではなく終わりました・・・大人げないとは思うけど。

そして夜中の露天風呂で明日が49年目に結婚記念日だということに気づいたのでした(――;)






さて今回は相場英夫氏著『ガラバコス』をご紹介します。

「日本中を震撼させた現代の黙示録・28万部のベストセラー『震える牛』続編!
怒濤の980枚! 上下巻で刊行!
ハイブリッドカーは、本当にエコカーなのか?
日本の家電メーカーは、なぜ凋落したのか?
メモ魔の窓際刑事、再臨場!
警察小説史上、最も最酷で哀しい殺人動機。
ガラパゴス化した日本社会の矛盾を暴露する、危険極まりないミステリー。
著者・相場英雄の作家生活10周年記念作品」


著者の作品の中、最初に読んだ『震える牛』のリアリティに感動して、次に『血の轍』『双子の悪魔』『鋼の綻び』 、『共振』と読み継いで本書で6冊目になります。

元時事通信社の社会部記者という経験を糧にさまざまな社会問題に鋭い切り込みを入れている著者ですが、今回はある殺人事件を軸に非正規労働者問題、自動車部品メーカーの品質管理問題という三様の個々の問題をひとつにまとめるという難しい挑戦に挑んでおられます。


ある事情から警視庁の友人への手助けのつもりで身元不明者のリストを捲っていた捜査一課継続捜査担当の田川信一が偶然ピックアップしたリストに殺人事件の痕跡を発見するところから壮大な物語の幕が上がります。


『震える牛』でおなじみになった刑事・田川信一が主人公。


巧妙に自殺に見せかけて東京都竹の塚の団地で殺害されていた男の痕跡を辿っていく過程で、粘り強い捜査を積み重ねる主人公・田川刑事の本領が発揮されます。


犠牲者は沖縄の離島から夢を抱いて故郷を離れたひとりの若者。


故郷の有志の援助を受け、高専に進学して勉学に励み、新卒採用の企業に就職が決まりかけたにもかかわらず、持ち前の優しさからその採用を友人に譲った青年のその後の悲惨さが淡々と描かれています。


非正規労働者の現状を知れば知るほど現代社会の歪がこれでもかと浮き彫りになります。


「普通に働き、普通にメシが食えて、普通に家族と過ごす。こんな当たり前のことが難しくなった世の中って、どこか狂っていないか?」

捜査の過程で田川刑事が同僚の刑事と交わす会話。


新潟県燕三条で小さな町工場を経営していた父親の下に生まれた著者は少年の頃から町工場の経営の苦しさを目の当たりしてきたといいます。

長じて経済記者という立場から社会の表と裏を見てきた著者が、記者時代に書けなかった闇の面を書いてみようと思ったのがこれらの社会派小説を書くきっかけになったそうです。


現在、日本の全就業人口の4割が非正規労働者、いわゆる派遣労働者といわれています。


本書に描かれている派遣労働者の置かれた現実がすべて真実とは思いませんが、まさしく使い捨てという言葉がぴったりの現状に驚くばかりです。


大正時代に刊行された細井和喜蔵氏著のルポルタージュとして有名な『女工哀史』の内容と見紛うような過酷な労働と低賃金、そして一段と低い地位として見下げられる様子に時代錯誤的な驚きを隠せません。


安倍政権が非正規雇用労働者の待遇改善への取り組みを目玉として打ち出していますが、現状の改善に繋がっているとはとてもいえない・・・のが新聞の投書欄の声からも伝わってきます。


本書はこれらの問題を軸に派遣社員の元締めといわれる人材派遣会社とハイブリッドカーを世に出した自動車メーカーの品質管理のモラルの問題に焦点を当てて描いています。

1000ページ近い大作となっていますが、興味ある方はどうぞ!

年年歳歳花相似たり
  歳歳年年人同じからず


毎年毎年ただ咲いて散る・・・日本津々浦々の束の間の騒乱も終わりを告げようとしています。

先日散歩の途中の公園で拾った花びらを水に浮かべてしばらく楽しみました(^.^)

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写真は県下一の巨木と伝えられる醍醐桜。


のどかな山里の原風景の中にあって、ただ1本だけ空に向かってそびえ立つ圧倒的な存在感。

日本名木百選にも選ばれると同時に、昭和47年12月には岡山県の天然記念物に指定されています。

樹齢は700年とも1000年ともいわれる老木。

たくさんの支え棒で支えられ、生のエネルギーすべてをつぎ込んで咲く様子をみると、何だか切なくなります。

さらに咲けよ咲けよと数多の支へ棒千年生きこし醍醐桜に  野上洋子

「さくらさくら」もしも名前がちがつてもこんなに好きになれただらうか   野上洋子






さて本日は一色さゆり氏著『神の値段』をご紹介したいと思います。 

「メディアはおろか関係者の前にも一切姿を見せない現代美術家・川田無名。
彼は、唯一つながりのあるギャラリー経営者の永井唯子経由で、作品を発表し続けている。
ある日唯子は、無名が1959年に描いたという作品を手の内から出してくる。
来歴などは完全に伏せられ、類似作が約六億円で落札されたほどの価値をもつ幻の作品だ。
しかし唯子は突然、何者かに殺されてしまう。
アシスタントの佐和子は、唯子を殺した犯人、無名の居場所、そして今になって作品が運びだされた理由を探るべく、動き出す。幻の作品に記された番号から無名の意図に気づき、やがて無名が徹底して姿を現さない理由を知る―」


2016年・第14回『このミステリーがすごい!大賞』大賞受賞


2012年東京芸術大学美術学部芸術学科卒業後東京での3年間のギャラリー勤務
2015年香港中文大学大学院美術研究科修士課程に在籍
2015年『神の値段』で第14回「このミステリーがすごい!」大賞受賞
2016年4月から美術館に勤務


学芸員という著者ならではの経歴が存分に生かされたアートミステリー。

アートを主題に描く作家としてすぐ思い浮かぶのは原田マハ氏ですが、原田氏が画家に光を当てて物語を構築しているのに対し、本書は美術界の内幕を仔細に描いている、という点において一味も二味も違ったテイストになっています。

「このミス」大賞受賞作品ではありますが、ミステリー要素はかなり薄く、あちこちに破綻のある内容となっています。

しかし、一つの作品が世に出る過程というか美術界のカラクリを描いて充実した作品となっていて・・・読後感の満足度は★3.5


国内外から圧倒的な人気を誇る現代美術家・川田無名。

彼と直接話が出来るのは彼のプライマリーギャラリーを経営する永井唯子のみという状況のなか、1959年に無名が描いた大作がギャラリーへと運ばれてきた直後、唯子が何者かに殺害されるところから物語が動きます。

唯子に憧れ、アシスタントとしてギャラリーに勤務する佐和子を軸に犯人に迫っていくというもの。

犯人自体は早い段階から目星がつくような流れで、それにからむ刑事たちのお粗末な造型といい、無理やりミステリーに近づけようとしたのがわかるような内容でしたが、それらに付随する美術業界の仕組みや、オークションの臨場感などが、その業界に詳しい人でなければ描けないほどの精度で描かれていて秀逸でした。


絵画も売れなければ価値が認められず紙くず同様、いかに巨大マーケットに載せるかの手腕は画家と画廊主が一体となって徐々に日の目をみるというカラクリ。

一旦売れ出すと投資の対象となって芸術からどんどんかけ離れる矛盾。

サザビーなどのオークションでの駆け引きによってどんどん価格が吊り上げられるアートを扱うマーケットのカラクリの怖さを見せつけられた作品でした。

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わたしのすきなひとが
しあわせであるといい

わたしをすきなひとが
しあわせであるといい

わたしのきらいなひとが
しあわせであるといい

わたしをきらいなひとが
しあわせであるといい

きれいごとのはんぶんくらいが

そっくりそのまま
しんじつであるといい


きれいごとといわれそうですけど、ほんとうに真実であれと思えます。

この美しい詩を書いた人は笹井宏之さん。

15歳の頃から身体表現性障害という難病で寝たきりになり日常生活もままならず、高校を中退。

2004年、インターネット上の短歌サイトや地元紙に作歌・投稿を始め、地元の佐賀新聞読者文芸で注目されるようになります。

2005年に「数えてゆけば会えます」で第4回歌葉新人賞を受賞。

2007年、未来短歌会入会、加藤治郎に師事、同年、未来賞受賞。

2008年第一歌集『ひとさらい』

馬場あき子氏に「出色の才能」、高野公彦氏に「詩的な飛躍があって透明度が高い」と高い評価を受け、インターネット短歌界から生まれたほとんど最初の歌人として将来を嘱望されていましたが心臓麻痺により26歳で夭折されました。

2011年第二歌集『てんとろり』

2013年第三歌集『八月のフルート奏者』




本日はそれらを集めた作品集『えーえんとくちから』から好きな歌をピックアップしたいと思います。



笹井宏之氏著『えーえんとくちから』



「こんなにも透明で、永遠かと思えるほどの停滞を軽々と飛び越えてしまうあざやかな言葉に生まれ変わって、それを体験したことがない他人をどうしてこんな気持ちにさせることができるのだろう」(作家・川上未映子)



えーえんとくちからえーえんとくちから永遠解く力を下さい

ねむらないただ一本の樹となってあなたのワンピースに実を落とす

手のひらのはんぶんほどを貝にしてあなたの胸へあてる。潮騒

ひまわりの死んでいるのを抱きおこす 季節をひとつ弔うように

晩年のあなたに窓をとりつけて日が暮れるまで磨いていたい

葉桜を愛でゆく母がほんのりと少女を生きるひとときがある

切れやすい糸でむすんでおきましょう いつかくるさようならのために

鞄からこぼれては咲いてゆくものに枯れないおまじないを今日も

雪であることをわすれているようなゆきだるまからもらうてぶくろ

たっぷりと春を含んだ日溜りであなたの夢と少し繋がる

生きてゆく 返しきれないたくさんの恩をかばんにつめて きちんと

風。そしてあなたがねむる数万の夜へわたしはシーツをかける






先日テレビを観ていたら、毎年お正月に特番として放映される「芸能人格付けチェック」特別編というのをやっていました。

今回は「芸能人格付けチェック~一流芸能人に『和』の常識はあるのか!?スペシャル~」と題し、日本で活躍する一流芸能人なら当然知っているはずの“和の常識力”を試していくというもの。

今回は一流芸能人10人全員が1つのチームとしてチェックに挑むというルール。

「5人中3人以上が合格すればクリア」といった“常識クリアライン”が設定され、それ以下だと芸能人全員のランクが下がってしまいます。

橋本大二郎さん、草笛光子さん、泉ピン子さん、市川猿之助さんなど9人にGACKTさんが参戦。


観たことのある人ならご存知と思いますが、48連勝中のGACKTさんがどうなるかが見どころのひとつ。


私は「格付け…」を観るまでGACKTさんをまったく知りませんでしたが、音楽の聴き分け、ワインの味比べ、牛肉などの味比べ、絵画の鑑賞比べなどなど、すべての分野を網羅して本物を当てるGACKTさんの感性のすごさにびっくり。

で、今回も3つ出された課題をすべてクリア。

「小鼓の鳴らし方」「おいしい日本茶の淹れ方」「鶴の折り紙」


「一列に並んだピアスが気にいらん」と夫。

「悔しかったら鶴折ってみて」と私。


日本中の男性を敵に回すほどすべての礼儀を弁えたGACKTさんでした。






乃南アサ氏著『それは秘密の』 

「恋すれど。
恋なくば。
恋ゆえに。
恋という厄介きわまる心情が綾なす男と女の“化学反応”を名手が描破する!
〈恋ごころ〉という厄介きわまるものを抱えた男たち女たちのミステリアスな心情と希望を描く、作者会心の珠玉短篇集」

9編が収められた短編集。

1「ハズバンズ」 、2「 ピンポン 」、3「僕が受験に成功したわけ」 、4 「内緒」、5「アンバランス」 、6 「早朝の散歩」
7「キープ」 、8 「三年目」 、9「それは秘密の」


乃南アサというだけで無意識に手が伸びて借りてしまいましたが、最近は琴線に触れるものが少なくなっています。


本書も読了後ほとんど鮮明に記憶に留めないという予感がある作品。


2、3ページを割いただけのショートショートのような小品もあれば、中篇と呼べるような作品もあり・・・。


唯一心に残ったのはタイトルにもなっている「それは秘密の」。


台風の影響で土砂崩れに巻き込まれたまったく知らない同士の男女が不安の中、明かした一夜の物語。

着地を意識した物語の構築に予定調和的なものを感じましたがちょっといい話。


短編集という性格上読みやすさはあるものの★★・・・かな。


直木賞を受賞した『凍える牙』を筆頭の女刑事・音道貴子シリーズの復活を望んでいるのですけど。

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