VINのらんどくダイアリー

ご訪問ありがとうございます。 「一日一生」を銘にさまざまな人生を読書というツールを通して味わっていきたいと思っています。 響きこし言葉に貼れるさみどりの付箋そよぎて林となりぬ

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2017年07月

梅雨がやっと終わったと思ったら突然の猛暑。

エアコンなしでは過ごせない暑さです。


このところ持病の薬の効き目が薄れてあちこちが痛く、次回は投薬の見直しを、と言われていた次回が先日でした。


担当医との面談で免疫抑制剤をもう一錠追加してしばらく様子をみることになりました。


すでにかなりの量を服用していて、服薬後のムカムカがかなりあるので敬遠したいけどできない・・・そんな感じです。


ずっと家に篭っていても解決しないので、努めて予定通りの日常を送っています。


ということで先週は幼馴染3人、久しぶりのおしゃべり目的で近くのホテルに宿泊、夜は居酒屋で取りとめないおしゃべりとビールや焼き鳥を楽しんだり・・・


卓球に行き、絵を描き、歌を詠み・・・そしておかずを作る・・・


写真は少し前次男が贈ってくれた山形のさくらんぼとそのいたずら描き。



   

なんということのない日常が貴重です。


しかし、こうしてみると世の中の役に立つこと、な~んにもしてないな、と思えて自省します。



せめて本くらい建設的なものを、と思いながら、今回もエンタメに走りました。




奥田英朗氏著『variety』のご紹介です。  


「『奥田英朗はぜんぶ読んでる』という人にも、じつはまだ読んでいない作品がある!かも。
単行本初収録の短篇をはじめ、現在入手困難となっているアンソロジーの短篇、唯一のショートショート、数少ない貴重な対談などを収録。コアなファンからちょっと気になった人まで、レアな奥田英朗を楽しめるスペシャル作品集!

迷惑、顰蹙、無理難題。人生、困ってからがおもしろい。
脱サラで会社を興した38歳の社長、渋滞中の車にどんどん知らない人を乗せる妻、住み込みで働く職場の謎めいた同僚…。
著者お気に入りの短編から、唯一のショートショート、敬愛するイッセー尾形氏、山田太一氏との対談まで、あれこれ楽しい贅沢な一冊!!蔵出し短編集!」


著者の「あとがき」によると・・・

本書はお蔵入りになりかけていた作品をまとめたものだそうです。


短篇あり、ショートショートあり、対談あり、という寄せ鍋風。


2006年の初出という作品もあって、プラス思考にいえば、さまざまな奥田ワールドが楽しめます。


収録作品を挙げてみます。

「おれは社長だ!」
「毎度おおきに」
「奥田英朗×イッセー尾形 対談」
「ドライブ・イン・サマー」
「クロアチアvs日本~ショートショート」
「住み込み可」
「奥田英朗×山田太一 対談」
「セブンティーン」
「夏のアルバム」


最初の2篇「おれは社長だ!」と「毎度おおきに」は大手の広告会社を退職、独立した主人公が仲間の助けを借りて、零細企業の社長の悲哀を乗り越えていく連作物語。

なんとなく著者ご本人を彷彿とさせる主人公の軽さ(失礼!)につられてさくさく読める内容になっています。


特にいいな、と思ったのは「セブンティーン」。

17歳の娘を持つ母親の葛藤が細やかなタッチで書かれていて、独身かつ家族なしの奥田氏がここまで女心がわかるとは!とただ敬服しながら読みました~(^.^)


山田太一氏との対談もとてもよかった。


諦めるという選択の大切さが心に沁みました。


奥田ファンの方どうぞ。

高梁の成羽美術館にティラノサウルスの全身骨格化石標本が来ているというので連休に帰省した娘と3人ではるばる観に行きました。

高さ4.6m、全長12mにもおよぶ大型恐竜ティラノサウルスを始め、翼竜プテラノドン、怪魚ダンクルオステウス、さらには直径2mもあるアンモナイトや世界最大の鳥類の卵エピオルニスなど約100点が展示されているそうです。

成羽は2億年以上前の植物や貝の化石が多く見つかることで知られる化石産地だそうです。

初めて知りました~。


ときどき著名な画家の作品展を観に訪れている成羽美術館。


安藤忠雄氏設計によるコンクリート打ちっぱなしの現代的な美術館です。


ところが、駐車場に着くと車が一台も見当たらず深閑としている様子にちょっといやな予感。

それにもめげず階段を上がってみると・・・休館日(ーー;)


今まで美術館などを訪れるときは必ず事前にチェックしていくのに・・・残念。


せっかく高梁まで来たので・・・ということで鮎料理専門店を調べて行ってみました。










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さて今回は池井戸潤氏著『陸王』のレビューです。 

「勝利を、信じろ。
足袋作り百年の老舗が、ランニングシューズに挑む。
このシューズは、私たちの魂そのものだ!埼玉県行田市にある老舗足袋業者『こはぜ屋』。
日々、資金操りに頭を抱える四代目社長の宮沢紘一は、会社存続のためにある新規事業を思い立つ。
これまで培った足袋製造の技術を生かして、『裸足感覚』を追求したランニングシューズの開発はできないだろうか?
世界的スポーツブランドとの熾烈な競争、資金難、素材探し、開発力不足―。
従業員20名の地方零細企業が、伝統と情熱、そして仲間との強い結びつきで一世一代の大勝負に打って出る!」


舞台は埼玉県行田市という足袋の生産では日本一の町にある四代続く老舗の足袋メーカーの「こはぜ屋」。


日本人の着物離れで足袋の需要は年々右肩下がりの中、「こはぜ屋」の四代目宮沢社長も先細りの将来を突破しようと足袋の製造ノウハウを活かしてランニングシューズの新規開発に取り組みます。


資金も人材もない、というないない尽くしの中での悪戦苦闘の過程での思わぬ人々との出会いによって活路が拓けていく様はまさに池井戸ワールド。


ハラハラドキドキながらも結果オーライの着地が用意されているという著者への信頼感から安心して読み進めることができました。


作品の主役である「こはぜ屋」にはきっと実在のモデルが・・・

調べてみると同じ行田市にある「きねや足袋」。

本書ではタイトルになっている「陸王」が「こはぜ屋」が開発したランニングシューズですが、「きねや足袋」の商品はランニング足袋「MUTEKI」。

著者は執筆にあたって「きねや足袋」を取材されたそうですが、完全なモデルというわけでもなさそうです。


町の小さな足袋屋が生き残りをかけて巨大なランニングシューズ業界に参入するという無謀な試みにはいくつもの険しい壁に立ちはだかれますが、危機一髪というときにいくつかの救いの手が差し伸べられるのは小説ならでは。


そのうちの1人がシューフィッターのカリスマといわれている村野尊彦。


彼のモデルが瀬古利彦、谷口浩美、高橋尚子、有森裕子、野口みずき、イチロー、など多くの一流アスリート、ランナーのシューズを手掛けてきたこの道40年以上のトップシューフィッター三村仁司さんといわれています。


アシックスに入社し定年退職後「M.Lab(ミムラボ)」を設立し、2010年1月には、アディダスジャパン株式会社と専属アドバイザー契約締結を発表し、ミムラボで制作されるすべての競技シューズをアディダス製品として開発中であるそうです。


本書の村野とは重なることが多々あり、この人なくしては成功には導けなかったという役どころ。


余談ですが、箱根駅伝連覇の青学の選手たちは三村さんが作ったシューズで走っているそうです。



本書はこれら登場人物の個性をあますところなく描いて充実した物語になっていますが、最後に興味を惹かれたところを2,3ご紹介したいと思います。


私の周りにはマラソンに参加している人もいないのでシューズに関してはまったく無知ですが、私が時々通っているスポーツ鍼灸のインストラクターの方からは踵から着地してつま先で蹴るというヒール着地を指導してもらったことがあります。


本書を読むまでそれが正しい走法と思っていましたが、このヒール着地走法は、一般にランナー膝と呼ばれる腸脛靭帯炎になる率が非常に高い走法である、というのを知りました。


ここからが人類の歴史・・・

猿と人が分岐したのは700万年前、それからアウストラロビテクスのような猿人が出現し、さらに240万年前になると、原人であるホモ・ハビリスが誕生。

この時代から百万年くらい前まで、同時期に何種類もの猿人と原人が共存。

エチオピクス、ロブストス、ボイセイと呼ばれる三種類のアウストラロピテクス、そしてホモ・ハビリス、ホモ・ルドルフエンシス、ホモ・エレクトス、ホモ・エルガスターという四種類の原人。

ところが共存していたこれらの猿人は滅び、五十万年前にホモ・エルガスター、三十万年前にホモ・エレクトスが絶滅してしまいます。

そしてまた新しいヒトが誕生し、ついに二十万年前私たちの直接の祖先ホモ・サピエンスがこの世に生まれます。

他にも十五万年前から三万年前までのホモ・ネアンデルターレンシス、そして三万八千年前から一万四千年前まで栄えてホモ・フロレシエンシスの二種類のヒトは、私たちと同じ空気を吸ってこの地球上に併存していたそうです。

ところがいま生き残っているのは、私たちホモ・サピエンスただ一種類のみ。

自由な呼吸法で長距離を走れるホモ・サピエンスだけが最終的に狙った獲物を追い詰め食料にありつくことができるという理由だそうです。

そのホモ・サピエンスの走法が足の中央付近で着地するミッドフット着地、あるいはもっと足の先で着地するフォアフット着地という走法だったそうです。


この走法はヒール着地走法と違って怪我や故障しにくいということで今ではほとんどの走者がフォアフットやミッドフット走法で走っているそうです。


原始にもっとも近い環境のケニア選手は自然にフォアフットやミッドフット走法だそう。


そしてそれを可能にするのが本書の核になる「陸王」というつながり。



なお今年10月期のTBS日曜劇場枠でドラマ化が決定されたそうです。

「こはぜ屋」の4代目社長・宮沢紘一を演じるのは役所広司さんだそうです。


皆さんはもう読まれたと思いますが、未読の方はドラマとともにぜひどうぞ!

夕食の一部の写真を珍しく撮りました。

揚げナスとキュウリとミョウガをめんつゆ+酢に漬けたもの

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ニンジンシリシリ

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山椒の葉の佃煮


メインは撮り忘れましたがヒレカツに白ネギ添えとアジの干物でした。




湊かなえ氏著『ポイズンドーター・ホーリーマザー』 


「湊かなえ原点回帰!
人の心の裏の裏まで描き出す極上のイヤミス6編!!
私はあなたの奴隷じゃない!
母と娘。
姉と妹。
男と女—
ままならない関係、鮮やかな反転、そしてまさかの結末。
あなたのまわりにもきっといる、愛しい愚か者たちが織りなすミステリー。
さまざまに感情を揺さぶられる圧巻の傑作集!!」


最近「毒親」という言葉をときどき目にするようになりました。


ちょっとどぎつい言葉の印象なので、ずっと虐待を受けて育った子どもたちが使っているのかと思っていましたが、娘の視点で書かれたそれらの作品を読んでみると、あまりにも独りよがりだなぁという印象を受けることもしばしば。


成長過程において親の意見を重圧的と思っても抵抗できないでそれに従う・・・こんな図式の積み重ねの末に、独立して力をもった子どもがトラウマのように使う言葉。


こんなのが毒親だったら、私も・・・と子育てに多くの反省のある私はつい思ってしまいます。


子どもたちはどう思っているのだろう・・・怖いので一生聞かないでおこう。



さて本書に移ります。


ミステリー専門誌「宝石 ザミステリー」に掲載された6篇の短篇を一冊にまとめたものが本書です。


どれもこれも読後感の甚だよくないイヤミスの小品。


タイトルになっている「ポイズンドーター・ホーリーマザー」は最後の2篇として連作になっています。


これが直木賞候補になった作品というからちょっと驚き。


親から受ける抑圧と差別に心が毀れてゆく娘や、脚本家を目指す女の競争相手に対して複雑な気持ちをある形であらわにする女、母親の表面的にはやわらかい抑圧から逃げ出そうともがいた結果思わぬ形で復讐を果たす娘など・・・。


文章力、構成力はすごいのですけど、あまりに後味が悪い。


しかし、同じ行為、同じ言葉を浴びても受ける相手によっては捉え方がまったく間逆だったりする、好意から出た言葉でも相手を嫌っていれば悪意に取る。


そういう示唆を最後に用意して抜かりない作品ではありました。

いつもSNSを通して交流していただいている花オクラさんご夫妻に招かれてガーデンパーティに行ってきました。

何度かこのブログでもご紹介したzensanさんご夫妻とともに3組の熟年夫婦の集まり。


計6人のうち、当地出身は私だけ。

あとは京都、大阪、宮崎、東京出身の方々。


そんな私たちが奇しくも当地で集った経緯は運命的です。


お互いのブログを通じてzensanさんと繋がり、zensanさんの元職場の花オクラさんご夫妻と繋がり・・・という具合に糸が繋がって・・・お陰で楽しい交友が広がりました。


熟年になっての嬉しい連鎖(^.^)


縁は異なもの・・・です。



倉敷にお住まいの花オクラさん邸は所狭しと野菜や花で囲まれていて、とても楽しいお庭。


今は夏野菜の実りの真っ只中。


中でも見ごたえがあったのは二畝ほどのトマト畑。

太陽を浴びて力強いトマトがびっしりと実って、久しぶりに充実したトマトを味わいました。


私はトマトが大好きで、いろんな料理に使いますが、いちばんの好みはトマトの丸かじり。

シンクに向けて飛び散るのも構わず丸かじりするのが最高です!


ガーデンパーティでは、花オクラさんのご夫君の得意料理・鮭のパスタをメインに、ふかしじゃが、じゃがいものビシソワーズ、トマトのドレッシング和え、砂糖和えトマトなどなど。





すべて畑のものを使っての献立に感動!


それに鮭のパスタのおいしかったこと!

お土産にもいただいて帰って、夕食でも夫と堪能しました~。


まず野菜やきのこ、ほぐし鮭をマヨネーズで炒めるそうです。

今度やってみよう!

それにzensanママのひき肉のパイ包み、おいしかったです!







さて本日は今野敏氏著『隠蔽捜査6 去就』をご紹介します。 


「竜崎伸也、再び降格か。
ストーカー事件の捜査をめぐり上役と衝突。
娘にも危機が訪れる中、下した勇断の結末は。
激震走る待望の長篇!」


多作の著者の作品の中では突出して大好きなシリーズ。


おなじみの「隠蔽捜査」シリーズの最新版、スピンオフを入れると第8弾となります。


なんといっても主人公・竜崎信也の造形がいちばん成功している、といっても過言ではないでしょう。


時系列的に並べると『隠蔽捜査』→『果断―隠蔽捜査2』『疑心―隠蔽捜査3』→ 『初陣―隠蔽捜査3.5』『転迷―隠蔽捜査4』『宰領―隠蔽捜査5』→  『自覚―隠蔽捜査就5.5』→『去就―隠蔽捜査6』となっています。

 

どんな時でも、どんなに自分の立場が悪くなろうが、例え相手が自分よりはるかに高い地位の人に対してでも、己が正しいと思っている「原理原則」を貫く。


たとえ変人と言われようが、一貫したぶれない姿勢。


竜崎伸也の人となりをあらわせばこのようです。



犯人を追い込み逮捕するという過程を描くのがほとんどの警察モノといわれる小説ですが、このシリーズは竜崎というひとりのキャリアが周囲の軋轢に屈せずに自身の主義を曲げずに事件を解決に導くかが主題の小説、一味も二味も他の警察モノとは違います。


「判断をし、責任を取る。俺たちにできるのはそれだけなんだ」

という竜崎の言葉。


そして言葉どおりに必ず責任を取り、降格も辞さない竜崎のかっこよさったら。



今回はストーカー犯の立てこもりの最中、伊丹刑事部長の率いるSITの突入か、弓削方面部長の率いる銃器対策レンジャー、機動隊の突入か、という主導権争いに巻き込まれる竜崎署長。


本来は弓削方面部長の権限である撤退命令を自分の責任で出してしまったことから特別監察を受ける結果となる竜崎。


本書のタイトルの「去就」は、特別監察の結果の竜崎の進退に由来しています。


さて竜崎の去就は吉と出るか凶と出るか?


ぜひどうぞ!!

「晴れの国」といわれている当地もさすが梅雨前線に覆われて梅雨真っ只中。


でも降ってもすぐ止んだり、時には雲から太陽が覗いたり。


合間に散歩していると水張田が雲を映して光っていました。


その畦の縁に青鷺が一羽、身じろぎもせず毅然とした姿でいました。


写真には撮り損ないましたが、絵になる風景。



連日九州北部を襲った記録的な豪雨の詳細がテレビに映し出されています。


北部といえば大切なブログ友の住まいの近く、と地図を出して固唾を飲んで情報に見入りながら、マンションの高層部にお住まいというのが唯一の拠り所で大丈夫と言い聞かせていましたが、当の彼女からコメントをいただけて少し安堵しました。


今日現在で亡くなった方は福岡・大分両県で18人にのぼっていて、行方不明の方も1人。


まだまだ最高レベルの警戒が必要だそうですが、一刻も早く日常が戻りますように!!





さて先日に引き続き福岡伸一氏関連の作品。


福岡伸一氏『動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか』 


「『生命とは何か』という永遠の命題に迫る!
●年を取ると一年が早く過ぎるのは、「体内時計の遅れ」のため。
●見ている「事実」は脳によって「加工済み」。
●記憶が存在するのは「細胞と細胞の間」。
●人間は考える「管」である。
●ガン細胞とES細胞には共通の「問題点」がある
…など、さまざまなテーマから、『生命とは何か』という永遠の謎に迫っていく。
発表当時、各界から絶賛され、12万部を突破した話題作をついに新書化。
最新の知見に基づいて大幅な加筆を行い、さらに画期的な論考を新章として書き下ろし、『命の不思議』の新たな深みに読者を誘う。
哲学する分子生物学者・福岡ハカセの生命理論、決定版!」


著者は2007年に刊行されたベストセラー『生物と無生物のあいだ』を始めとする一般向けの科学書等の著者・翻訳家であり分子生物学者。


1959年生まれ
京都大学農学部卒&同大学大学院農学研究科博士後期課程修了
ロックフェラー大学研究員、ハーバード大学医学部研究員などを経て、現在、青山学院大学教授
専攻は分子生物学



著者ご自身が「私自身のキーワード」という「動的平衡」を簡単に表すと・・・

「秩序あるものは必ず、秩序が乱れる方向に動く。
宇宙の大原則、エントロピー増大の法則である。
この世界において、もっとも秩序あるものは生命体だ。
生命体にもエントロピー増大の法則が容赦なく襲いかかり、常に、酸化、変性、老廃物が発生する。
これを絶え間なく排除しなければ、新しい秩序を作り出すことができない。
そのために絶えず、自らを分解しつつ、同時に再構築するという危ういバランスと流れが必要なのだ。
これが生きていること、つまり動的平衡である」


わかったようなわからないような・・・


でも私たち生命体が日々バランスをとりながら動いていて常に平衡を保ち続けようと努力しているというのが身体的になんとなくわかります。


人体が60兆個の細胞の集まりであるといわれていて、日々食事や呼吸から生命維持に必要なたんぱく質を体内で合成している・・・というのは以前ある医師の勉強会で知りました。


常に新しく入れ替わっている細胞。


胃や腸は約5日で入れ替わり、皮膚は約30日、白血球の顆粒球は約3日・・・


日々入れ替わるという動的なアクションを起こしながら常に平衡を保とうとする・・・

精巧な、そして神秘的な生きるということの摂理にうっとりしてしまいます。


文章が平易でしかも思索的で哲学的です。


一読をお勧めします。

当たり前のことに気がつくのに時間がかかる・・・
年を取ることのいいことのひとつです。   福岡伸一



遺伝子の一つを削除してもマウスに何の異変も観られない・・・。
若き日のこの気づきが、欠損が生じても新たな均衡を立ち上げるか逝く浮力や可塑性こそ生命を生命たらしめているものだという「動的平衡」の研究につながったと、福岡氏は言われます。


朝日新聞で4人の筆者の方々と交代で連載していらっしゃる福岡伸一氏。

「動的平衡」というタイトルですが、科学者の域をはるかに超えた内容・・・科学的な説明では計れない神秘的な自然や人間の深層を切り取って考察している・・・というような内容に惹かれて楽しみに読んでいます。


福岡氏と言えば、一昨年肺がんで亡くなった友人が氏の大ファン、というか傾倒していたことを思い出します。


彼女が旅立ったという知らせをご夫君から受けて、旅立つ前後の様子など話されるのに耳を傾けていたとき、ご夫君が言われたことが今でも心に残っています。


理知的で頭脳明晰だった彼女はかねがねご夫君のことを「私がいなければ彼は生活できないほど世の中の仕組みも何もわからないの」と言われていて、自分よりも下に見ているような印象をいつも感じていました。


彼女が旅立つ前の晩、「私は福岡伸一に敬服するあまり、あなたの言動すべてを軽んじていたけど、バカだった・・・あなたの言動は単純だけど真実だとやっとわかった」と言われたそうです。


ご夫君はその彼女の最期の言葉を単純にしみじみ喜ばれていました。


そんな素朴なご夫君の貴重な資質を死ぬ瞬間に理解された彼女にご夫君は感謝されていたのでした。

間に合ってよかった!

と思えるご夫婦の物語。






さて三浦しをん氏著『政と源』をご紹介します。 


「簪職人の源二郎と元銀行員の国政は、ふたり合わせて146歳の幼なじみ。
弟子の徹平と賑やかな生活をおくる源二郎と、男やもめの国政を中心にまき起こる、人情味豊かで心温まる事件の数々。
下町を舞台に繰り広げられる人情物語。三浦しをん、新境地!」


舞台は東京都墨田区Y町。


つまみ簪職人・堀源二郎と幼馴染の元銀行員・有田国政が巻き起こす人情譚。


弟子の徹平と賑やかに暮らす源二郎と、妻子と別居してひとりで暮らす国政。

どちらも73歳。


元銀行員だけあって堅実で面白みがない政と、豪快で大雑把な職人気質の源・・・どこを比べても姿も経歴も性格も正反対の2人。


この2人と源二郎の弟子の徹平が中心になって物語が進みます。


ゆるゆる進むストーリーの中で、妻と別居して孤独をかこつ政の老齢の悲哀や、病死した妻への思いに捉われる源の心情などが徐々に語られて、じ~んと胸に響きます。



源が作っている「つまみ簪」とは布製の簪のことで、祇園の舞妓さんや七五三で着物を着飾った子が挿したりしているものだそうです。


この正反対な2人の主人公の年甲斐のない喧嘩が傍からみるととてもかわいい。


東京下町の人情を描いて秀逸の作品。


ゆる~いお話を書かせるとさすがしをんさん!

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