
政府が発表した「科学的特性マップ」によれば適性として当地も候補地に挙がっているようですが、公募によって進んで名乗り出るところは今のところ皆無のようです。
もんじゅ・常陽も含めると全国で原発は59基だそうですが、現在日本で稼動しているのは川内原発1号機2号機と高浜原発3、4号機の4基。
10月に定期検査に入っていた伊方原発3号機の運転差し止めを広島、愛媛両県の住民が求めていた仮処分申請の即時抗告審で、広島高裁の野々上友之裁判長が、3月に申し立てを却下していた広島地裁の判断を取り消し、四電に運転差し止めを命じる決定を出したとニュースは日本全国駆け巡ったので覚えていらっしゃる方も多いでしょう。
野々上裁判長は「阿蘇山の噴火で火砕流が原発敷地に到達する可能性が十分小さいと評価できない」などとし、火山災害による重大事故のリスクを指摘されました。
今ある核のゴミの処理だけでもこれほど難航しているのに、稼動に積極的な政策を打ち立てて遂行するとどうなるのか。
伊方原発再稼動差止の歌をインターネットの短歌会に提出したところ主宰者の師から貴重なコメントをいただいたので共有したいと思います。
以下が師のコメントです。
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火山国かつ地震国の日本には、原子炉(原子力発電)は向かないですね。
もちろんどの国でも、原子炉の安全性がほぼ100%ではない限り、また原子炉からの高放射能廃棄物の処理方法や安全な廃炉技術が確立していない現状では、原子炉はやめるべきと思われます。
今でも新たに原子炉建設を進めている、また進めようとしている国が複数ありますが・・・。
インドなどには日本も技術協力をしようとしている。
罪なきにしもあらず、です。
日本は全原子炉が停止しても電力は十分賄えていますね。
ただ、主力の火力発電用燃料がほぼ全面的に外国頼みであることが気懸かりではあります。
従来からの水力のほか、風力や太陽光発電、地熱発電、バイオマス発電、潮力発電をさらに普及させることが必須ですが、そのほか地熱を一層広範に活用する発電技術の開発が待たれます(温泉(熱水)利用はもとより、地中深くの岩盤熱の積極的利用)。
岩盤熱発電技術が完成すれば、熱源は(人間スケールでは)無限となり、人類はエネルギー問題から解放されるでしょう。
遠い将来には、核融合発電用燃料が無尽蔵にあるとされる月面に核融合炉を建設して発電し、その電気をマイクロ波で地上に送る、という夢もあります。
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読んでいると工夫次第で夢が広がります。
全世界が力を合わせて原発以外のエネルギーの道を模索できたらいいなと強く思います。

さて今回は小保方晴子氏著『あの日』をご紹介します。
「STAP騒動の真相、生命科学界の内幕、業火に焼かれる人間の内面を綴った衝撃の手記。
1研究者への夢 2ボストンのポプラ並木 3スフェア細胞 4アニマル カルス 5思いとかけ離れていく研究 6論文著者間の衝突 7想像をはるかに超える反響8ハシゴは外された 9私の心は正しくなかったのか 10メディアスクラム 11論文撤回 12仕組まれたES細胞混入ストーリー 13業火etc
真実を歪めたのは誰だ?
STAP騒動の真相、生命科学界の内幕、業火に焼かれる人間の内面を綴った衝撃の手記」
本書の刊行は噂で知っていましたが、図書館の棚にあったので興味本位で借りました。
以前このブログで毎日新聞科学部記者・須田桃子氏によるSTAP細胞に関する一連の騒動の考察を主題に書かれた『捏造の科学者』をアップした経緯があるので、当事者サイドから書かれた『捏造・・・』への反論を読んでみたいな、と単純に思ったのでした。
2014年1月28日に行われたSTAP細胞の会見からちょうど2年後の出版。
新進気鋭の科学者という地位を剥奪され、学位も返上、尊敬やまないメンターだった笹井芳樹氏の自殺という大きな事態を招いた張本人として世の中から抹殺されたようにフェイドアウトした小保方氏でしたが、ここまでのエネルギーがあったのか、と驚嘆するほどの筆力でご自分の来し方を綴っていらっしゃったのには驚きました。
小保方氏が再生医療研究を志すきっかけを綴った第一章「研究者への夢」から論文発表後に研究不正を指摘され、混乱を巻き起こした当時を描いた第八章「ハシゴは外された」など十五章の章立てとなっています。
前半を割いて書かれた学位を取得して理研に招聘されるまでのとんとん拍子ともいえるほどの輝かしい道のりについてはすらりと流せたのですが、中ほどより専門用語を散りばめた実験内容には門外漢の私にはまったくついていけませんでした(当たり前(――;))
日本のみならず国際的にも関心を集めたSTAP細胞論文問題について、簡単に要約するとご自身以外のひとりの科学者を糾弾することに終始する内容になっています。
キメラマウスの作製に成功した頃、「私にもキメラマウス作製の胚操作を教えて下さい」と若山先生に申し出ると、「小保方さんが自分でできるようになっちゃったら、もう僕のことを必要としてくれなくなって、どこかに行っちゃうかもしれないから、ヤダ」といたずらっぽくおっしゃった
若山研では私以外の全員が、「胚操作」と呼ばれる顕微鏡下でマウスの卵を使った実験を行える技術を持っており、顕微授精を行ったり、キメラマウスを作製したり、クローンマウスを作製したりする実験を行うことができた。若山先生のところに来た研究員は皆、胚操作を若山先生から直接指導を受け技術を習得していた。しかし、私だけは胚操作を教えてもらうことはできなかった
ネイチャーに修正論文を再投稿しようとしていた頃、笹井先生から「若山さんにレター論文の責任著者に加わってほしいと言われた」と連絡を受けた・・・
あんなに熱心であったにもかかわらず、若山先生が笹井先生に論文化の主導権をある程度渡してしまう意向を示したことは、若山先生が論文への責任を途中で放棄したようにも感じられた
一方小保方氏が発見した未知の現象(緑色にひかる)は間違いがないものとしてSTAP細胞の存在を主張STAP現象を否定されたことへの不満を明らかにされています。
彼女自身が参加した検証実験についても、世間の怒涛のような風当たりの中での実験で「ただただ朦朧とした意識の中で、毎日同じ作業の繰り返ししかできなかった」として、正確な実験結果を出せる状態ではなかったと。
騒動のあとの理研の外部における検証実験でSTAP現象が確認されなかったことに対しては本書では言及はありません。
加えてマスコミの追求のすさまじさについて繰り返し言及、ことに先に挙げた『捏造の科学者』を上梓された毎日新聞社の須田桃子記者に関してはその強引な取材手法について名指しで疑問を投げかけていらっしゃいました。
本書を通してどうしても言いたかったのは共同研究者の若山照彦教授とお互いに蜜月の期間を経たにもかかわらず、ある時点で若山氏の心変わりによって嵌められたということに尽きると思います。
いずれにしてもどの主張が嘘でどの主張が真実か、STAP細胞があるのか、あるとすれば実用化される可能性はあるのか?
一応ES細胞の混入だったという理研の検証でこの騒動に対する決着がついたかにみえますが・・・
ならばES細胞の混入は故意だったのか、偶然か、どちらにしてもどのルートで?という疑問は残ったままの読了でした。
科学的な知識のない者の薄っぺらのレビューをお許しください。