VINのらんどくダイアリー

ご訪問ありがとうございます。 「一日一生」を銘にさまざまな人生を読書というツールを通して味わっていきたいと思っています。 響きこし言葉に貼れるさみどりの付箋そよぎて林となりぬ

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2018年03月

関東に名残りの大雪が降った翌日箱根への旅を兼ねて上京しました。


テレビのニュースで突然の大雪に埋もれた箱根・強羅の混乱の様子が流れていましたが、まさに強羅駅のすぐ近くの旅館に2泊。

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雪が降ると関が原辺りで交通が停滞するので、行きの新幹線を危ぶみましたがスムーズに小田原に到着。


小田原で東京から来た娘と合流、強羅の宿で連泊、ポーラ美術館を訪れた以外まったりと過ごしました。

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箱根路の名残りの雪を割きながら夕焼け色の電車が進む



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命あるものの根元は森の奥苔むすところとエミール・ガレは


もうすぐ結婚50年になる私たちのために娘がプレゼントしてくれた旅。


いつもありがとう!!


いつの間にか・・・信じられないほど歳月が流れたのに驚きます。



お互い拙い忖度をしながら何とか夫婦という形態を保って・・・やっとここまで。



その後2つの大切な行事をこなして帰宅しました。


それについては次のブログで。






さて今回は原田マハ氏著『あなたは,誰かの大切な人』をご紹介します。


「勤務先の美術館に宅配便が届く。
差出人はひと月前、孤独の内に他界した父。
つまらない人間と妻には疎まれても、娘の進路を密かに理解していた父の最後のメッセージとは…(「無用の人」)。
歳を重ねて寂しさと不安を感じる独身女性が、かけがえのない人の存在に気が付いた時の温かい気持ちを描く珠玉の六編」





著者が本書の文庫版刊行に寄せて次のように記していらっしゃいます。

「見知らぬ町を歩くとき、心地よい風が吹き、なんともいえない幸福感に包まれることがある。
それはきっと、おだやかな日常がそこにあるからだ。
その日常は、誰かが誰かを大切に思っているからこそ、そこにあるのだ。
あなたがもしも、いま、なんということのない日々を生きているとしたら、それはきっと、あなたが誰かの大切な人であることの証しだ。
それが言いたくて、私は、この物語たちを書いた。
あなたは、きっと、誰かの大切な人。
どうか、それを忘れないで」



◆最後の伝言 Save the Last Dance for Me
母が亡くなった。だが、告別式に父の姿はない。父は色男な以外はまったくの能無し。典型的な「髪結いの亭主」だった……。

◆月夜のアボカド A Gift from Ester´s Kitchen
メキシコ系アメリカ人の友人エスター。彼女は60歳で結婚をして、5年後に夫と死別したのだという。その愛の物語とは……!?

◆無用の人
勤務先の美術館に宅配便が届いた。差出人はひと月前に他界した父。母には疎まれながらも、現代アートを理解してくれて……。

◆緑陰のマナ Manna in the Green Shadow
イスタンブールを訪れた。トルコを紹介する小説を書くために。そこで聞いたトルコの春巻と、母親の味の話は……。

◆波打ち際のふたり A Day on the Spring Beach
大学時代の同級生ナガラとは年に4回くらい旅をしている。今回、近場の赤穂温泉を選んだのには訳があって……。

◆皿の上の孤独 Barragan´s Solitude
メキシコを代表する建築家、ルイス・バラガンの邸までやってきた。かつてのビジネスパートナーの「目」になるために……。


中年といわれる域にいる女性たちの目を通して芸術と旅と愛というテーマが描かれている短編集。


「月夜のアボガド」で語られていた言葉が胸を打ちます。

「人の一番の幸福って、家族でも恋人でも友達でも、自分が好きな人と一緒に過ごすってことなのかもしれない。
大好きな人と食卓で向かい合って美味しい食事をともにする。
笑ってしまうほど単純で、かけがえのないささやかなこと。
それこそが本当は何にも勝る幸福なのかもしれない」


二世メキシコ移民のエスターの温かさがじんわりと心に沁みて彼女が作る料理とともに人生というものの芳香が立ち上がってくるよう。


それぞれに著者の構築の巧みさがひかるすてきな物語でした。

ネットでニュースを見ていたら、朝日新聞3月9日付朝刊の声欄に載った投稿についての記事が出ていました。

新聞ストックの中から探し出して3月9日付の朝刊を見ましたが・・・載っていなかった・・・

たいてい隅から隅まで読むのだけれど記憶にない・・・


ということでネット情報をそのままアップします。

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「妻が願った最期の『七日間』」 (71歳の男性)
■最後の「七日間」でしたかったことを詩に残す

投書によると、1月中旬に亡くなった男性の妻は、最後の「七日間」にしたかったことを1編の詩につづっていた。
詩を書いたノートが、入院した病院のベッドの枕元にあったそうだ。

 妻は、病院から抜け出して最後の元気な時間がほしいと神様に嘆願し、こう願い事を書いた。

  「一日目には台所に立って 料理をいっぱい作りたい あなたが好きな餃子や肉味噌カレーもシチューも冷凍しておくわ」

 二日目から六日目は、愛犬を連れて夫と思い出の箱根にドライブしたり、友達と女子会でカラオケに行ったりしたいと願った。
そして、最後の七日目には、夫との時間を大切にするつもりだと明かす。

  「あなたと二人きり 静かに部屋で過ごしましょ 大塚博堂のCDかけて ふたりの長いお話しましょう」

 夫に手を執られて静かにこの世を去る――詩の最後の部分は、願いがかなった。
それ以外はかなわなかったというが、男性は投書の最後に、「2人の52年、ありがとう」と妻に呼びかけている。


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遠い昔読んだ記憶がある『愛と死を見つめて』の中の一節を彷彿とさせるような記事。


死に向かう床にあって日常の何気ない暮らしの大切さに気づく、、、

わかっていても日々の細事にかまけてついつい生きていること自体の奇跡を忘れがちになってしまう自分・・・深く反省。


もっともっと大切に生きねば、と改めて思わせてもらいました。


私もきっと投稿者の方の奥さまと同じことをしたいと思う・・・


家族や友人たちひとりひとりに感謝の言葉と、傷つけたことがあれば謝りの言葉を伝える手紙も遺したいし、その前に不要な治療は要らないことも伝えなければ・・・


こうして書いてみると死に際もけっこう多忙、でもそんな余裕があるかな?


そろそろエンディングノートに着手しなければ。






さて今回は篠田節子氏著『銀婚式』をご紹介します。 


「壊れてゆく家庭、会社の倒産、倒壊するツイン・タワー、親友の死……

望んでもいなかった<人生の第2幕>

「男の本分は仕事」。
それは幸せな人生ですか? 
歳月を経て、夫婦がたどり着いた場所。
働くとは。
結婚とは。
幸福とは。
直木賞作家が描き出す、激動する時代の「家族」の物語。

野心や出世のためというより、責任感と義務感で仕事をする。
そんな普通のサラリーマンが今の時代は貧乏くじを引く。
やりきれない現実の中で、どのようにして人生を立て直し、切り開いていくのか。
最後に救われるのは――

現代日本人の生き方を問う、著者ひさびさの“直球”ともいえる、傑作長編小説が登場」



毎日新聞「日曜くらぶ」に連載された新聞小説を一冊にまとめたもの。


離婚、会社の倒産、再就職と翻弄される男の人生を描いた小説。


主人公は著者によれば「高度成長期に育ち、一生懸命頑張ってきたのだけれど、人情の機微に疎く、妻も含め女性の扱い方がへたなので、苦しい立場に追い込まれてしまった男性」。


「男の本分は仕事」という高度成長時代の価値観にしがみつき、他者の気持ちや感情を理解する前に、目の前の問題を合理的に処理し突き進んだ結果、証券会社・保険会社・大学という変遷を経た職場でもある程度成功するものの大切な人々の気持ちを汲むことが出来ず、人生の岐路で失敗を繰り返すことになります。


主人公だけでなく、この年代の男性は特に自分の価値観に固執して身近な足元で崩壊が起こるまで大切なサインに気づかず、あるいは気づかないふりをして過ごすというパターンが多いのではないでしょうか。


結果、妻側から熟年離婚を突きつけられたり。


本書の主人公もそのような変遷を経て、ついに孤独な自分と対峙することになりますが、著者はラストに幸せな老後を示唆する救済的なギフトを残して作品を閉じています。


仕事人間であった主人公の生き様が中心に描かれていますが、それに付随する夫婦の物語、息子の大学受験、元妻の両親の介護問題などなど、さまざまな問題が提起されていて、読者にとっても他人事とは思えない話の展開が盛られています。

自分的には★★★。

3月2日の朝日新聞のすっぱ抜きで森友問題がたいへんなことになっていますね。


近畿財務局員のノンキャリアの自殺に続いて佐川宣寿前国税長官の辞任という国を揺るがす騒動に発展しています。


朝日新聞の「森友学園」への国有地売却の決裁文書に関する「書き換え疑惑」報道から10日。


ついに財務省が決裁文書の書き換えや削除を認めました。


書き換えの時期は昨年2月下旬から4月。



その前に何があったか、誰の指示系統かなどなど、架空のスパイ小説や警察小説より現実のほうがよほど国民の関心を引く事象として一日中報道されています。


日ごろあまりテレビを観ない私も目が離せない状態です。



そんな折、友人の誘いである講演会に行ってきました。


演者は東京新聞社会部記者・望月衣塑子さん。



ご存知の方も多いと思いますが、2017年3月より森友問題・加計学園問題の取材チームの参加、菅官房長官の会見での半端ない食い下がりで一躍時の人となった東京新聞記者。


当地の岡山市勤労者福祉センター5Fという小さな会場でしたが、かなりの人で埋まっていて関心の高さを感じさせられました。


その会場で花オクラさんご夫妻の姿を発見!

倉敷九条の会に関わっていらっしゃる方。


講演会後、花オクラさんがSNSの日記に講演会の模様をアップしていらっしゃいますので、こちらにペーストさせていただきました。


見ていただければと思います。

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3月10日 「3.8国際女性デー岡山県集会」に菅官房長官にしつこく質問をして名をはせた東京新聞の女性記者”望月衣塑子さんが来るというので行ってきました。

あの小難しい顔をした菅官房長官にしつこく質問を繰り返す女性記者はどんな逞しい人だろうと思っていたら小柄で知的な美人。

望月さんは東京新聞の社会部にいたのだが、二人目の出産、産休で休んでいる間に政治部に興味を持ち、政治部長の許可終えて記者会見へ。緊張はしたけれど、意外に聞けた!

最近の記者会見は記者の突込みが甘くてつまらないと思っていたら、政府に都合の悪い質問をする記者は指名しない、25回も手を上げているのに指名してくれない〜という記者がいるのに手もあげていないNHKの記者を指名したり〜〜。

華奢な姿から機関銃のように言葉が出てきて、想像できないようなエネルギッシュな2時間!

森友加計疑惑、武器輸出、安倍さんのお友達による伊藤詩織さんのレイプ事件などなどはなしだしたら怒りが止まらない・・。そんな感じの2時間でした。

『私に出来ることはおおきなこえで、わかるまで質問しつづけること』と望月さん。

嫌がらせや脅しもいっぱいあるのに勇気のある人だな〜としみじみ思いました。

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ぜひこれからも新聞記者として果敢に闇に切り込んでほしいと期待しています。






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さて本日は高殿円氏著『政・略・結・婚』をご紹介します。 


「江戸末期・明治大正・昭和、百二十年の間に女性の生き方はこう変わった!

金沢城で生まれた私の結婚相手はわずか生後半年で決まった・・・早すぎると思うかも知れないが、当時ではごくごく当たり前のことで、大名の子の結婚はすべて政略結婚、祝言の日まで互いに顔を合わせず、文も交わさぬのが慣習である。
私の生まれた文化の世とはそういう時代であった。――第一章「てんさいの君」より

不思議な縁(えにし)でつながる、三つの時代を生き抜いた三人の女性たち。
聡明さとしなやかさを兼ね備え、自然体で激動の時代を生き抜く彼女らを三部構成でドラマチックに描き出した壮大な大河ロマン!」


著者について

1976年兵庫県生まれ
2000年『マグダミリア三つの星』で第4回角川学園小説大賞奨励賞受賞
2013年『カミングアウト』で第1回エキナカ書店大賞受賞
主な著作に「トッカン」シリーズ、「上流階級 富久丸百貨店外商部」シリーズ、『剣と紅 戦国の女領主・井伊直虎』など


このブログでも次の作品をアップしているのでよかったら読んでください。

『トッカンVS勤労商工会』『マル合の下僕』『上流階級 富久丸百貨店外商部』『トッカン the 3rd: おばけなんてないさ』

 
『トッカンVS勤労商工会』 がおもしろかったので、図書館で見かけたら借りては読み、気がついたら5冊。


本書は前4冊とは趣がまったく異なり、著者にとっては異色の作品。


幕末から明治・大正、そして昭和と、激動の時代を生きた3人の女性たちの生き様を通して結婚という頚木への抗いや戸惑い、運命への受容などを描いています。


フィクションとノンフィクションをない交ぜにした壮大な物語になっています。



◆生後半年で加賀大聖寺藩主前田利之の次男・利極のもとに嫁ぐことが運命づけられていた加賀藩主前田斉広の三女・勇の物語。
生まれ育った金沢を離れ江戸へと嫁いだ勇は生来の前向きな性格で複雑な人間関係に順応し大聖寺藩になくてはならない女性になっていく過程を描いた「てんさいの君」


◆子爵である父親の仕事の関係でパリで生まれ、ロンドンで育った加賀藩の分家・小松藩の子孫である万里子。
長い外国生活を経て帰国し、実家の凋落をきっかけに九谷焼をアメリカで売る輸出業に携わることとなり、徐々に職業夫人としての手腕を発揮する様子を描いた「プリンセス・クタニ」


◆貴族院議員・深草也親を祖父に持つ花音子の物語。
何不自由ない暮らしが昭和恐慌によって激変、すべての財産を失った花音子と母・衣子が新宿の劇場・ラヴィアンローズ武蔵野座に辿り着いてスターとなるまでを描いた「第三章 華族女優」
タイトルの「政略結婚」には相応しくない作品もありましたが、3人三様の逞しさでそれぞれの激動の時代を生き抜く強靭さに眩しさを感じました。


私にはそんな強さはないなあ。

友人から先日はたけのこ、昨日はふきのとうをいただきました~(^.^)


なによりの春のプレゼントで嬉しい♪


たけのこ堀りが趣味の名人がいて、ほんの1mmくらいの土の盛り上がりを靴の裏で感じて、そこを掘ったら・・・生まれて間もない小さなたけのこが!

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たけのこご飯と土佐煮にしました。


そしてふきのとう・・・このブログを訪問してくださる花オクラさんから。


ブロ友であり、リアルな友でもある花オクラさん、車で30分くらいの倉敷にお住まいです。


近くの山で採集した採れたてを持ってきてくださいました。



さくらえびとふきのとうの天ぷら

ふきのとうのペペロンチーネ

ふきのとうの酢味噌和え


写真を撮り忘れて・・・堪能しました!





さて久しぶりの浅田氏です。


浅田次郎氏著『月のしずく』 


「再生の祈りに満ちた珠玉の短篇集――。
三十年近くコンビナートの荷役をし、酒を飲むだけが楽しみ。
何一つ変わりばえのしない生活をおくる佐藤辰夫のもとに、十五夜の満月の晩、偶然、転がり込んだ美しい女・リエ―ー出会うはずのない二人が出会ったとき、今にも壊れそうに軋みながらも、癒しのドラマが始まる。
表題作ほか、子供のころ、男と逃げた母親との再会を描く「ピエタ」など、全七篇の短篇集(他に「聖夜の肖像」「銀色の雨」「琉璃想(リウリィシァン)」「花や今宵」「ふくちゃんのジャック・ナイフ」)」


1996年~1997年に発表された作品を一冊にまとめたもの。


ベストセラーとなった『鉄道員』を上梓された頃と重なって・・・若書きです。


七篇はどれも若い頃の浅田氏特有の虚構と現実をない交ぜにしてロマンティックなスパイスを加えたような出来上がり。


現在まで引きずる過去の重さに喘ぐ女たちと、そんな女たちに見返りなしに尽くす男たちの純情は胸を打つものがありますが、やはり現実から浮遊した感じ。


どの作品も女のしたたかさに比べ男のピュアな心が切ない。


ありえない展開を著者の筆力で感動的に仕上げてはいるものの・・・


物語を作ることを楽しんでいるような、そんな小品がそれぞれの味を醸し出して並んでいますが、ちょっとあざとさを感じてしまいました。

でも読みやすい短編集です。

友人にせとかをもらったのでそのうち3つほどをマーマレードにしてみました。


クックパッドで検索してみると、皮は甘くて薄いので皮のゆでこぼしは不要とありましたが、けっこう苦味があるので念を入れて3度ゆでこぼしの処理。


薄皮をとった実も入れて、すべての重量の約3分の1のきび糖。


弱火でアクをとりながら煮詰めて直前にレモン汁を絞って・・・出来上がりました。



並行して、塩&砂糖を摺りこんで一晩寝かせていた鶏むね肉でとりむねハムを作って朝のトーストに乗せて食べました(^.^)







さて今回は再読のもの。


インフルエンザでこもっていたとき読み物が枯渇したので、本棚からスー・グラフトンのABCシリーズを手当たり次第出してきてずっと没頭していました。

大大大好きなスー・グラフトンのABCシリーズ。


どれから読んでもすぐ主人公・キンジーの世界にすうっと入り込めます。


アルファベットのAから始めてZまで完結する、というのが著者の強い目標だったのがYを冠した作品が最後となったそうです。


娘さんの話では、2019年に『ゼロのZ』の出版を計画しておられたそうで、ご本人はさぞ無念だったことでしょう。


2017年12月28日永眠 享年77歳。


生前、アメリカミステリ界で権威ある団体・アメリカ探偵作家クラブ(MWA賞の選考を行う団体)の会長をされていた著者。


ミステリ界での受賞歴も華々しいものがあります。

1986年『泥棒のB』でアンソニー賞長編賞受賞、シェイマス賞長編賞受賞
1987年『死体のC』でアンソニー賞
1987年『パーカー・ショットガン』でアンソニー賞短編賞受賞
1989年『証拠のE』でアンソニー賞長編賞ノミネート
1991年『探偵のG』でアンソニー賞長編賞受賞、シェイマス賞長編賞受賞
1991年『逃亡者のF』でファルコン賞受賞
1995年『殺害者のK』でアンソニー賞長編賞ノミネート、シェイマス賞長編賞受賞
2004年ロス・マクドナルド文学賞受賞
2008年英国推理作家協会カルティエ・ダガー賞(功労賞)受賞
2009年アメリカ探偵作家クラブ功労賞受賞
2011年アガサ賞功労賞受賞


今回は7冊ほど再読しましたが、代表として『アリバイのA』を一応ポストしておきます。

レビューは7冊の中から思いつくところをピックアップして。



スー・グラフトン氏著『アリバイのA』




事件によって登場人物は様変わりしますが、いつも変わず登場して読者を楽しませてくれるのが主人公の女探偵キンジー・ミルホーン・・・主人公なので当たり前!?


カリフォルニア州でのライセンスを持ちサンタテレサという海辺の小さな町で私立探偵をしている32歳(『アリバイのA』時)。

2度の離婚歴を持つ独身、身長5フィート6インチ、体重118ポンド、髪はダークでストレート。

美容院代がもったいないのでいつも6週間おきに爪切りバサミで自分で切る、化粧はほぼしたことがなく、ほとんどタートルネックセーターとジーンズで過ごすおしゃれとはかけ離れた女性。


ついでにいうと料理には無頓着、ピクルスとゆで卵のサンドイッチを作る以外もっぱらマクドナルドなどのコレステロールの多いジャンクフードを好物としていて、その埋め合わせのように早朝のマラソンを習慣化しています。



そして登場人物の中で絶対欠かせないのが彼女の家主のヘンリー・ピッツ81歳(『アリバイのA』時)。


かつてパン屋を営んでいて引退後はクロスワードパズル製作を趣味とし、前職の腕を生かして食パンや菓子パンを焼いては近くのレストランに持っていき代わりに食事をただにしてもらったりの充実生活をしているヘンリー。


キンジーが店子として2年間暮らしたアパートが爆弾で木っ端微塵に吹き飛ばされたのでヘンリーの設計の下、キンジーのために建てられた新しいアパートができあがったのが『探偵のG』。


このアパートの様子を書くためにこのレビューを書いている、というほどのステキな内装に唸ってしまいました。


こんな家に住みたい!


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アパート全体は船の内部を思わせた。

壁はつやのあるチークとオークの板が張られ、どの壁にも棚と引き出しが作られていた。

キチネットは以前と同じに右手にあったが、小型のレンジと冷蔵庫がついたギャレー・スタイルになっていた。

あらたに電子レンジとトラッシュ・コンパクターも備えられていた。

キッチンのわきには上に乾燥機がついた洗濯機が置かれていて、その隣が小さなバスルームになっていた。

リヴィング・ルームとなるスペースには、出窓の内側にソファーが作りつけられ、二脚のロイヤル・ブルーのカンヴァス地のディレクターズ・チェアが向かい合わせに配置されて、「団欒の場」を作っていた。

ヘンリーはソファーが客用のベッドに変わることをすばやく実演してみせた。

要するに、収納できる補助ベッドだった。

中央の部屋の大きさは、依然として一辺が15フィートほどの四角形ではあったが、こんどはかつての収納スペースだったところに小さな螺旋階段がついて、その上に寝るためのロフトが作られていた。

前のアパートのときは、わたしはたいてい裸でキルトにくるまってカウチの上に寝ていた。

これで、わたしも自分のベッドルームというものを持つことになる。

階段を上がると、驚いたことに下に引き出しがついたダブルサイズのベッドが床に固定されていた。

ベッドの上の天井には、丸いシャフトが屋根まで伸びていて、透明なプレクシグラスの天窓から、朝の日の光がブルーと白のパッチワークのベッドカヴァーの上に降り注いでいた。

ロフトの窓は一方は海に、もう一方は山々に面していた。

奥の壁には、シーダー材で内張りされた広いクロゼット・スペースがあって、服を掛けるための長いパイプにいくつかの小物掛け、靴棚、それに床から天井まで続いている引き出しがついていた。

ロフトのすぐわきには、小さなバスルームがあった。

作り付けのシャワーがついたバスタブは埋め込み式で、窓はタブとちょうど同じ高さにあり、木の下枠には鉢植えが並べられていた。

緑の葉に囲まれて、雲が泡のように盛り上がっていく海を眺めながら、バスタブの湯に浸かれるというわけだった。
タオルはコットンのシャグ・カーペットと同じロイヤル・ブルーだった。

練り仕上げの卵形をした石鹸までがブルーで、丸い真鍮の洗面台のはしに置かれた、白い陶磁器の小皿に入れられていた。

・・・わたしがふりかえって彼を言葉もなく見つめているのを見て、ヘンリーは声をあげて笑い、彼の計画が見事に成功したことに大喜びした。

こみ上げてくる涙をこらえて、わたしが額を彼の胸に押し付けると、彼はぎこちなくわたしの背中をたたいた。

彼ほど素晴らしい友人は世界じゅうを探してもいなかった。

― ◆ ―― ◆ ―― ◆ ―― ◆ ―― ◆ ―― ◆ ―― ◆ ―― ◆ ―


81歳のヘンリーにほとんど恋をしているような天涯孤独のキンジー32歳。


まるで年の離れた父親のようにキンジーの身を案じ、包み込むヘンリー。

2人の交流はほのぼのとしていて作品に深い陰影を与えています。


この他、所の居酒屋の女主人・ロージーや、一時期恋愛関係に陥っていたロブ刑事などが周囲を固めていて、それに多彩な依頼人からの案件を、時には危険を冒して、時には混ぜ合わせた嘘で証言を引き出したりしながら八面六臂の活躍するのも楽しい。


奇しくも同じ時期に華々しく登場したサラ・パレツキーの描くシカゴの女探偵V・I・ウォーショースキーと比較されることも多々ありますが、V・I・ウォーショースキーが元弁護士で格闘技にもすぐれた戦闘的性格に比して、高卒の元警官で容姿も目を惹かないキンジーとの差は大きく、私は断然キンジーの方により親近感を抱いています。


日本語訳はスタート時から嵯峨静江氏が担当されていてとても読みやすい訳となっています。


ただ『ロマンスのR』で邦訳が止まっているのがとても残念、ハヤカワ・ノヴェルズさん、どうかYまで上梓してくださることを切に願っています。

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