VINのらんどくダイアリー

ご訪問ありがとうございます。 「一日一生」を銘にさまざまな人生を読書というツールを通して味わっていきたいと思っています。 響きこし言葉に貼れるさみどりの付箋そよぎて林となりぬ

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2019年05月

昨日は3ヵ月に一度の受診日。


朝8時半に着いて検尿、血液検査を受けて・・・その結果を以って11時の診察まで待合室で過ごします。


たいてい総合病院の受診はこんな感じですが、予定通りの時間に診察してもらえるというのはまれで、昨日も呼ばれたのは12時20分。


速読の私は待っている間たいてい薄い文庫本だと読了できてしまいます。


昨日は読みかけのハードカバーを持参していました。


広い待合室はさまざまな科の患者さんで溢れていて入れ代わり立ち代り患者さんやその付き添いの方が来られます。


車椅子の方もおられて、以前は付き添いはほとんどご家族の方と思しき人だったのが、ここ数年ほどヘルパーさんなど介護関係の人かな、と思える人が多くなったような気がします。


独り暮らしの高齢者が多くなったという社会現象のひとつかなと思えます。


それとなく感じるのは・・・家族と介護関係の人の差。


患者さんに対する態度がどことなく違う・・・距離感というか、、、、良くも悪くもご家族は患者さんに対して心配や怒り、うっとうしさをあらわにしている感じがするのですが、仕事で付き添われている人は例えば陶器のような、無感情を感じてしまいます。


昨日もそんな一組の方が横に座られていて、長い待機の間も会話がほとんどなかったので、きっと仕事で付き添ってこられているのだろうなぁと想像していました。


これから誰の身にも起こることとして、いろんな孤独や孤立への耐性を蓄えておかなければ、などと考えてしまいました。





さて本日は本城雅人氏著『友を待つ』です。 


「『親しき仲にもスキャンダル』を信条とし、取材対象者へ独特の感性で切り込み数々のスクープを抜きまくってきた伝説の週刊誌記者が、女性宅への不法侵入と窃盗の容疑で逮捕された。
窃盗容疑は否認するなか、取り調べ中に語った「友を待つ」という一言の真意とはなんなのか?
その言葉の意味と彼の行動の目的を調べ始めた後輩記者たちは、十年前のある官僚との因縁に原因があることに気づく―」


久しぶりに続きが早く読みたい、と夜ベッドに行くのが待ち遠しくなるような作品でした(^.^)


本書の舞台は新聞社ではなく週刊誌。


十年前に懲戒解雇になった週刊タイムズの元敏腕記者・瓦間がある女性の留守宅のアパートに侵入するところから物語がスタート。


結果的に住居侵入容疑と下着盗難容疑で逮捕されますが、取調べに対し「俺は人格を疑われるようなことはしない」と全面否定した挙句「友を待つ」という謎の一言を吐きます。


週刊タイムズでかつて薫陶を受けた後輩記者・新見、コンビを組み同時に解雇されて実家を継ぎ家具職人となっている石橋、取調べを担当した所轄の女性警部補・長谷川涼子。



この三者の目線からのストーリーが交互に展開され、この瓦間の単純な見せ掛けの事件がどんどん深堀されて、思わぬ闇にいきつくというもの。



瓦間の学生時代の片思いだった女性と将来を嘱望された若手政治家との関係、大物政治家のスキャンダル、握りつぶそうとする警察幹部とのもみ合い、週刊誌記者の真実に突き進む情熱、そして男同士の友情。


「友を待つ」


この言葉に込められた思いがラストで一挙に爆発して終結するような熱い物語。



パワハラあり、不倫あり、シングルマザーの仕事と子育ての狭間の苦しみありなど、さまざまな要素がぎっしり詰まった、久しぶりに胸躍る作品でした。



そういえばローリング・ストーンズの歌に「友を待つ」というのがありましたね。

ミック・ジャガーの歌詞、今から30年以上前の歌。

懐かしかったのでググって見つけました。

”Waiting On A Friend”

Watching girls go passing by
It ain't the latest thing
I'm just standing in a doorway
I'm just trying to make some sense

女たちが通り過ぎていくのを眺めている
どの娘がいけてるかなんてことじゃない
ただドア越しに立ち尽くし
そこに何の意味があるのか知ろうとしてるんだ

Out of these girls go passing by
The tales they tell of men
I'm not waiting on a lady
I'm just waiting on a friend

通り過ぎていく女たちから聞こえることといったら
イケてる男の話ばかり
オレはそんな女を待ってるんじゃない
ただ友を待っているだけなんだ

A smile relieves a heart that grieves
Remember what I said
I'm not waiting on a lady
I'm just waiting on a friend

笑顔は悲しみにくれる心を和らげてくれるものさ
オレが言ったこと覚えてるといいさ
オレは女を待っているわけじゃない
ただ大切な友を待っているだけなんだ

I'm just waiting on a friend
I'm just waiting on a friend

ただ友を待っている
ただ友を待っている

歌会で「絵画を見て短歌を詠む」という宿題が出されたので・・・


絵画を観るのが大好きな私は10首ほど作ってそのうちの5首をピックアップして提出していたところ・・・12人のメンバーのうち、宿題をやっていたのは私を含め2人だけ。


そのひとりの方もご自分で描かれたふくろうの墨絵を観ながらの歌1首のみであとの方々はまったく関係ない日常詠や情景詠を連ねていらっしゃいました。


これにはびっくり・・・というか、かえって浮いてしまって読み上げるのも恥ずかしくてつい小さな声になってしまいました。

クリムト「ダナエ」
黄金のゼウスの雨に纏はれてほんのり染まるダナエの頬は
                  
                      

ミレー「晩鐘」夕闇にクリスマスローズのうなだれて影絵のごとき農夫の祈り


ゴッホ「タンギー爺さん」モンマルトルに小さなあかり点しけり貧しい絵描きを支へてタンギー

ゴッホ「ゴーギャンの肘掛け椅子」ゴーギャンの椅子に置かれしキャンドルの片方だけに火がともされて





角田光代氏著『福袋』 


「私たちはだれも、中身のわからない福袋を持たされて、この世に生まれてくるのかもしれない…
見知らぬ客から段ボール箱を預ったバイト店員。
はたしてその中身とは?
家を出ていった夫の同窓会に、代理出席した離婚間近の妻。
そこで知った夫の過去とは!?
自分の心や人生の“ブラックボックス”を思わず開けてしまった人々を描く、八つの連作小説集」



表題作「福袋」をはじめ、人生途上で出会う未知なる入れ物を前にした人々を描いた8篇の短編集。


「私たちはだれも福袋を持たされてこの世に出てくるのではないか。
生まれ落ちて以降味わうことになるすべてが入っている。
希望と絶望、喜びと苦悩、笑いと泣き、愛と憎しみ・・・」



希望に満ちた人生でありたいと誰しも思い、未来を担っている子どもたちには光りある人生を歩んでほしいという願いを託していますが、なかなかそうはいかないのが人生・・・



デパートなどで年末年始に限定で売り出される福袋。


見えない中身を想像しながら買う楽しみについ手が出ますが、たいていほしかったというものはなく、あっても必ずほしくなかったものとペアになっていたりして、あ~あ、買わなければよかった、などと思った経験は誰にもあるのではないでしょうか。


そんな喜びや悲哀、後悔がいっしょに入った福袋に託してそれぞれの登場人物の人生をなぞった8話。



開けるなといわれたのに我慢できずに箱を開けたようなパンドラや浦島太郎の心境がわかる・・・


パンドラの箱にはわずかな希望が残されていたし、浦島太郎が失ったものは若さだけ、年相応の命は残されたということを思うと、世の中捨てたものではないな~というほどのほんの少しの灯りもあったりして。



表紙絵を見れば、なんだか喜びに充ちているような内容を連想しますが、どの話も主人公が期待していたことがいろんな形で裏切られるような展開・・・著者のひねりに絡めとられたような読後感の短編集でした。

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ブラシノキ
トランプ大統領がメラニア夫人とエアフォースワンで来日。


令和初の国賓・・・


どうやったらトランプ氏のご機嫌がよくなるか安倍首相の腐心の甲斐あって3泊4日も。


初夏の陽気を思わせる今日は朝からゴルフ、そして夕方は千秋楽の相撲観戦。



ネットニュースを見ると警備関係で上へ下への大騒動・・・らしいですね。



イージス・アショアや長距離巡航ミサイルの導入、戦闘機F35Aやグローバルホーク、オスプレイなど米国製の高額な兵器を言うがままに購入・・・いやはや太っ腹な、そしてとても素直でかわいらしい弟分です(ーー;)


そのかわいらしさが会談に反映するかどうか疑問ですけど。



あまりにも高額な防衛費。


巨額の費用に見合う効果があるのかどうか、一主婦のわたしにはわかりませんが、アメリカへの著しい配慮、というか阿りとしか思えません。


武器も買ったときの価格の上に納入完了のあと必ずといっていいほど跳ね上がる・・・これだけのお金があれば、と思わずにはいられません。



先日も友人と電話でお互いにため息。


まず完全にコントロールされていると断言したフクシマのもろもろを何とかしてほしい!!




さて本日は村山由佳氏著『嘘 Love Lies』をご紹介したいと思います。


「どんな地獄だろうと構わない。
でも、この秘密だけは、絶対に守り通す。
刀根秀俊、美月、亮介、陽菜乃は仲のいい友達グループだった。
中学2年の夏にあの事件が起こるまでは――
恐怖、怒り、後悔、そして絶望。
生涯拭えぬ過ちとトラウマを抱えたまま、各々の人生を歩んでいた4人。
求め合う体と秘めたる想いが、さらなる苦悩を呼び、暴力の行き着く果てに究極の愛が生まれる。
著者渾身の恋愛長編!」


白の村山、黒の村山に分けられるといわれている著者の作品群。


どちらの作品も読まれている方々には通じると思いますが、本書はそのどちらの要素も微妙な配合でミックスされたような小説。


最初、表紙を一瞥したときには黒の分野だと思ったのですが、混合された色合いの充実した力作でした。


とはいえ読んでも読んでも終らない・・・


「過ちとトラウマを共にする男女4人の20年間の軌跡を描いた本作では自身初となる『ノワール』に挑戦・・・
出会いについても、死についても、今回のような形の物語を書くのは初めてで、今まで自分の中でやり切れていなかった部分を、一所懸命に石ころを拾うみたいに、集めながら進んできた気がします」
と著者。


著者の指すノワール・・・かなりを占めている裏社会を牛耳るヤクザを描いた部分は得意のナナメ読みで乗り切りました(ーー;)


中学校でたまたま席が隣り合わせになったという偶然のきっかけで繋がりあった秀俊、美月、陽菜乃、亮介という男女4人の仲良しグループ。


ある事件がきっかけでとてつもない地獄を見ることになった4人のその後の20年。


育児放棄、養父のDV、ヤクザとの絡み、純愛、その他諸々の複雑な人間模様をからみあわせて物語が進行していきます。


すさまじい暴力シーンもあり、変態的な性交シーンもあり、そしてときどき挟まれる純愛・・・



それぞれの荒波に翻弄されながら、やっとたどり着いた平穏な未来を暗示させるようなラスト。



中学2年の夏から34歳の「いま」までを4人それぞれの環境とそれに追従するような心模様を合わせて書ききった作品。


4人のうちの秀俊を中心に描いていますが、その分、他の3人の未描写の部分に心が残りました。


読みきるエネルギーのある方、ぜひどうぞ。

文科省が発表していた「問題行動・不登校等調査」によると、年間30日以上欠席した不登校の子どもは年々増加傾向にあるそうですね。


「不登校」という言葉は1968年に日本児童精神医学会で精神医学者の清水将之氏が初めて使った言葉だそう。


もう半世紀になるんですね。


新聞やテレビなどの媒体でちらほら見かけるようになってあっという間に広り、今ではほとんどの人に認知されていますが、私の学校時代にはそんな言葉はありませんでした。



幼稚園から大学までの17年をどうにかクリアはしましたが、ずっと学校嫌いだった私。


自分の意思で行ったのは大学のみ。



幼稚園、小中高時代には弾むような気持ちで登校した記憶はほとんどありませんでした。



母はそれほど教育熱心ではなく、信用されていたので、朝眠くて登校がいやだなあと思えば、頭痛などを訴えてはよくさぼっていました。


小学生高学年の頃より本を読むのが大好きだったので、夜中じゅう本を読んで、必然的に朝は眠い・・・を繰り返してはよく学校をエスケープ。


先生や友人と交わるのが楽しくない・・・団体生活が苦手の子どもでした。



外見はまじめな生徒だったので、先生に注目されて誉められたりすると、ますます登校がいやになって次の日は休んだり。



目立ったり注目されるのがとてつもなくいやで、それは今でも続いています。



現在のように不登校が認知されていたら、きっと不登校になっていたはず。



そんな子ども時代を過ごしたので、わが子が抵抗もなく毎日通学しているのがとても不思議でした。


加えて保護者として学校に行かなければならないのも苦痛・・・次男の高校卒業式で保護者としての役目も終わりと思うと最高に嬉しかったのを思い出します。



なのでさまざまな理由はあるでしょうが、なんとなく不登校の生徒の気持ちがわかる・・・。



そんなわけで突如短歌を始めたときも、地元の結社に入るという選択肢はなく、ネットで学びの師を見つけたときはなんという僥倖とこころが弾みました。


リアルに人と会わなくていいから。


その後、しばらくして友人の勧めで大決心をして小さな歌会のメンバーとなりましたが、いつでも逃げる態勢でいるつもりが、ちょっと深みにはまってしまっている現在、戸惑い感があります。



先ごろ始めたピアノも独り勉強。


周囲は習いに行くよう勧めますが、私の中では選択肢はなし。


横に先生の圧がないので、自由に自ら練習できる気楽さ・・・誰にも注意されないので、伸び率はゼロに近いでしょうけど、この年齢で伸びる必要性があると思えない・・・。


ときどきわからないところはピアノをやっている友人や娘に教えてもらったり。



いきなりハードルの高い「エリーゼのために」も4ヶ月ほどかかってやっと暗譜で弾けだしたところで、今は「ゴッドファーザー 愛のテーマ」のやさしいバージョンを練習しています。


「エリーゼのために」が経験ゼロの私にはかなりの難しさだったので、こちらはやさしく感じながら、愉しんでいます。



誰にも誉められず、日の目も見ないけれど、毎日ひとりで愉しんでいて・・・最高の遊びです (^.^)







さて今回は薬丸岳氏著『刑事の約束』をご紹介します。 


「昏睡状態の娘を持つ東池袋署の刑事・夏目信人。
独自のまなざしで手がかりを見つめ、数々の事件を鮮やかに解いていく。
夏目が対するのは5つの謎。
抜き差しならない状況に追い込まれた犯人たちの心を見つめる夏目が、最後にした“約束”とは。
日本推理作家協会賞短編部門候補作「不惑」収録!
いまも近くで起きているかもしれない、しかし誰も書いたことのない事件を取り上げ、圧巻の筆致で畳み掛ける、乱歩賞作家のミステリー!」


著者の夏目刑事シリーズ第二弾。


時系列であらわすと『刑事のまなざし』 → 『刑事の約束』 → 『刑事の怒り』 となります。


 


全部で5話の短篇集。


夏目シリーズの初弾はかなり以前に読んだので、大まかな記憶しかありませんが、主人公の夏目信人というキャラクターははっきり覚えています。



第一弾では卓越した捜査感覚を持ち、人間的な魅力にあふれる夏目刑事が持ち前の粘り強さで事件を解決していたのに反して、本書では抜け殻状態の刑事として登場します。



燃え尽き症候群といっても過言ではない夏目。



そんななかでも事件に真摯に向き合うスタンスは失ってはおらず、事件を起こしてしまった人間のその背景に深く思いを馳せ、寄り添うという姿勢に救いがあります。


5篇それぞれに加害者側の苦しさや哀しさが胸に迫ってきます。



犯罪は憎むべきものという当たり前の倫理観がややもすれば、傾いてしまいそうな物語を描くことにかけてはすばらしい能力を発揮する著者。


愉快犯や人を殺すことに快感を得る人などは例外として、護らなければならない人、愛する人のためなど、世の倫理観では間違っていることでも、自分の中では止むにやまれぬ必然の正義である、ということが理解できるような流れ。


5話の中で明るい兆しのものといえば、ずっとこん睡状態だった夏目の娘・絵美の奇跡的な回復。


物語とはいえ、絵美ちゃんにも犯罪の被害者、加害者にも光が射しますように、と祈りたくなるような作品でした。

どうしてもほしかったフライパンを買いました。


キッチンには大小のフライパンが6個あって、決して数が少ないわけではないのですが、宣伝されている文言が自分の理想のフライパンのように思えて、断捨離を心がけている現状でさんざん迷ったあげく、思い切って購入。


ネットでの買い物は安易で便利な反面、失敗もたくさんあるのですが。


着いて早速、持ってみたところ、宣伝よりかなり重い(^.^)


これが第一の「ん?」


手始めにほうれん草とブロッコリーを茹でてみました。


ほうれん草は水なしで、正確に強火から弱火へ。


茹で上がったほうれん草を水に放ったところ、あまりにも柔らかすぎる^^;

これが第二の「ん?」


そしてブロッコリー、半カップの水で。

出来上がの時間を正確に計って取り出そうとしたら、既に焦げている。


第三の「ん?」


特殊なテフロン加工が売りのフライパン、焦げを洗ってもなかなか取れない・・・買ったばかりでもう剥げそう(ーー;)



早々に挫かれてしまいました、気持ちが。





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さて今日は錦見映理子氏著『めくるめく短歌たち』から。


「何度も目にしたはずの歌たちが、特別に輝いている。
全開の愛を浴びて・・・穂村弘

『リトルガールズ』で第34回太宰治賞を受賞した歌人・錦見映理子の「NHK短歌」好評連載エッセイ「えりこ日記」、ついに書籍化!
短歌結社のこと、歌会のこと、好きなひとのこと……たくさんの短歌たちとの交遊録。穂村弘との特別対談「あの頃と今。この18年」も収録。

歌集って不思議なものだなあと改めて思う。
全く縁のない見知らぬ人の、非常に個人的で心の深い場所にあることが書かれているほど、自分が誰にも見せず、自分自身にさえ蓋をしていた気持ちのすぐそばまできて、友だちになってくれたりする」


著者・錦見映理子氏は短歌結社「未来」に属する歌人。


たしか私の娘より少し年長かな、というお年頃・・・次世代短歌の旗手といっていいかな。


私が彼女の名前をはじめて知ったのは以前少しの間購読していた「NHK短歌」冊子で時々目にした短歌日記「えり子日記」。


著者ご自身の日常から入って、知己の歌人との交わりの中からその歌人の歌を掬い上げるという独特のゆるやかな切り込みのとば口がなんとも楽しく、ド素人のしかも年配の私でも興味深く読んでいたのでした。



私のようなみずしらずの通りがかりにも親しさを感じさせる文章を通して、この人は文章にさまざまな花を咲かせることのできる人だなぁと思っていたところ・・・


何と、初の短篇小説『リトルガールズ』で第34回太宰治賞を受賞されたとありました。


やはり、私の目に狂いはなかった・・・と的外れなうなずき(ーー;)


余談ですが、著者の写真を拝見してびっくり・・・娘の親友にそっくり・・・よけいに親近感がわきました。



さてさて本書について 

短歌鑑賞の浅い私にとって次世代と呼ばれる若い歌人の方々の歌は想像や経験の域を大きく超えたところに存在するものが多くて、鑑賞の歯がたたないと常々思っていますが、著者のやさしい手に添えられるとピックアップされた難解な歌もほんのちょっぴり共感できるような感覚になるのが不思議・・・


書き添えられた、というより文章に短歌が添えられているような構成ですが、それらを読めば、短歌の魅力がすんなり入ってくるような・・・そんな作品になっています。


著者の短歌への修行途上で出会った数々の思い出と短歌の結びつきが楽しくてもっと取り上げられた歌人を知りたくなるような。


「短歌をどのように読むと面白いかは様々な切り口がありますが、本書では、私が歌人たちと交流する中で見つけた具体的なエピソードを通して、それぞれがなぜこのような歌を作るのかを解説しています・・・
今ではもう手に入りにくい歌集も少し取り上げています。
二十年ほど前に話題になった飯田有子『林檎貫通式』や本田瑞穂『すばらしい日々』などです。
これらは文体やテーマの新しさに時代がついていけず、正当な評価をされないまま今に至っている歌集です。
歌集は誰にどのように読まれるかによってその評価が決まるところがありますが、私は本書で、これまでの評価を修正して今こそ再読すべき歌集も、何冊か示したかったのでした。
巻末につけた対談の相手は、穂村弘さんにお願いしました。
近年の短歌の世界を担ってきた一人である穂村さんに、私の読み方をどう思われるかお聞きしてみたかったからです。
そういう意味では本書は、気軽な読み物でありつつ、ゼロ年代に登場した女性歌人たちの現在の位置づけを修正しようとした書物でもあると思っています」


具体的なエピソードの一例として取り上げられた内山晶太氏。

蚊に食われし皮膚もりあがりたるゆうべ蚊の力量にこころしずけし
(『窓、その他』より)

この歌の紹介として・・・

「この歌の紹介には、文鳥が放し飼いにされているカフェに歌人七名で遊びに行ったときのことを書きました。
七名の中で、内山さんだけがなぜか異常に鳥たちに好かれてしまったのです。
頭にとまったり、口の中に入ったりする文鳥の雛たちに翻弄されながら、内山さんは楽しそうでした。
一体なぜ彼一人だけが、そんなに小鳥たちに好かれたのでしょう。

「元気な雛たちに顔をつつかれそうになっても何をされても、驚く様子は全くなかった。
さすがに目元をつつかれそうになったら普通は防御すると思うのだが、内山さんはしない。されるがままなのだ」。
それと前出の歌がどのように関係があるのかを、本書ではこのように解説しています。
蚊に食われた不快より、皮膚の盛り上がり方に力を感じて心が満たされる・・・
内山さんは全身で感じようとする歌人だと思う。
文鳥に触れてその体の感触を味わうことの幸福が強すぎて、異様なほどつつかれても身の危険を感じないのだ。
そうした心のありようが、たくさんの秀歌を生み出すのだと思う」


著者の通り過ぎていったさまざまな場面に出てくる歌。

それは同年代の歌人の歌だったり、大先輩のものだったり、そして著者のものだったり。


「未来」の同人の少し年上の小川佳世子氏・・・病気を抱えながら自愛に溺れない彼女の強さを讃えて・・・

あたらしい傷をふやしてしまってもわたしのからだ 秋の王国
(『ゆきふる』より)


寺山修司賞の授賞式で出会った高島裕氏の歌、初めて読んだけどかっこいい!

雨の夜の首都高速へことごとく枝差し伸ぶる花こそ祈
(『嬬問ひ』より)


失恋のあと放ったらかしにしてマニキュアの剥げた爪を見ながら取り上げたのは山中千瀬氏の一首。

はげかけたマニキュアはそのままに見る映画にわかれゆく少女たち


ストレス性皮膚炎で長野の鄙びた温泉での逗留で出会ったおばあさんとの思い出を語る章では河野美砂子氏の『ゼクエンツ』の中から

泣けてくる春まだ浅い洗ひ場に茶漉しのやうにわたしはまじめで


きまぐれに開いたページからランダムに取り出してみました(^.^)

「歌を通して知り合った人を思い出す時は歌とセット。
気がつくと、歌人自身の人生も歌と一体化していた。
それは楽しくも過酷だ。
過ぎ去った日々が三十一文字となって目前に留まり続け、いまの自分をせっついてくるのだから」


著者の歌も、他の歌人たちの歌も、どれもどれも感性がきらきらしていて、自分の喪った歳月の重さを感じずにはいられませんでした。

まだ磨ける余地が残っているのかどうかはあくまでも自分自身にかかっていると思いますが、とりあえずは好きな本や映画、音楽を通して磨いていこうかな、と思います。

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40種近くあるというハラスメント。

・パワハラ(パワーハラスメント)
・モラハラ(モラルハラスメント)
・セクハラ(セクシャルハラスメント)
・マタハラ(マタニティハラスメント)


これくらいしか思い浮かびませんが・・・


・エイハラ(エイジハラスメント)・・・年齢を理由に不当な嫌がらせを行うことだそう。


・アルハラ(アルコールハラスメント)・・・何となくわかる・・・

飲み会などで職場の関係を引きずり、上司が部下に飲酒を強要する嫌がらせ。


・マリハラ(マリッジハラスメント)

独身の従業員に対して、結婚の意思も進展状況も確認せずに「まだ結婚しないの?」「いい人紹介するからさ」と、プライベートに余計な干渉をしてくるハラスメント。



いまどきの社会を反映しているハラスメントも多々。


・ケアハラ(ケアハラスメント)

家族を介護している人に対して介護休暇の取得を妨害したり嫌がらせをするハラスメント。



・パタハラ(パタニティハラスメント)

マタハラの男性版・・・なんでも短くすれば流行語、でもパタって??(ーー;)



・ジェンハラ(ジェンダーハラスメント)

「男らしい」や「女らしい」などの社会通念的な性差別を通してのハラスメント。



最後にこれは双方に反省の余地あり。

・ドクハラ(ドクターハラスメント)

医師が権威を振りかざし、患者に嫌がらせを行うこと。


・ペイハラ(ペイジェントハラスメント)

患者が医療関係者の説明を聞かず、クレームを入れて医療の妨害をすること。



こうして挙げてみると昔からあったよね、というようなハラスメントがずらり。


しかし「いじめ」と書くと陰湿感満載ですが、「ハラスメント」と書くとなんだかちょっと軽い感じ。



横文字の効果の妙?



これだけさまざまな媒体で取り上げられたり、当人が声を上げられるようになったのはとてもいい傾向だと思いますが、まだまだ声を出せず深い闇で苦しんでいる人たちにこそ陽が射し込むようになってほしいと思います。







さて本日は池井戸ファンにとってはいささか時代遅れ的なレビューアップ。


池井戸潤氏著『下町ロケット ヤタガラス』


「「宇宙から大地」編、ついに激突!!

『下町ロケット ゴースト』に連なる、「宇宙から大地」編、クライマックスへ――!

社長・佃航平の閃きにより、トランスミッションの開発に乗り出した佃製作所。
果たしてその挑戦はうまくいくのか――。
ベンチャー企業「ギアゴースト」や、ライバル企業「ダイダロス」との“戦い”の行方は――。
帝国重工の財前道生が立ち上げた新たなプロジェクトとは一体――。
そして、実家の危機に直面した番頭・殿村直弘のその後は――。

大きな挫折を経験した者たちの熱き思いとプライドが大激突!
準天頂衛星「ヤタガラス」が導く、壮大な物語の結末や如何に!?
待望の国民的人気シリーズ第4弾!!」


先日、TVを観ていたら当地の北の広い耕作地で自動制御つきのトラクタが耕している映像が流れていました。

人は乗っていたけどあくまでも補助的な役割ということでした。

後継者不足や重労働に喘ぐ農業がロボットの手に代わろうとしている転換期。


本書はそんな厳しい現実に直面している農業の未来に焦点をあてて力を尽くす技術者たちや実用化しようと商業ベースに乗せる人たちの物語。


前作『下町ロケット ガウディ計画』で活躍した登場人物たちのその後が描かれている本書ですが、前作を読んでいない読者の方々にも興味深く読める内容となっています。


タイトルとなっている「ヤタガラス」とは漢字で書くと「八咫烏」、神話の世界で、東征を決意したものの、険しく道を阻む熊野越えに難渋していた神日本磐余彦尊(かむやまといわれびこのみこと)を助けるため、天照大神が差し向けたとされる「神の遣い」の名前。

日本サッカー協会のシンボルマークといえばわかる人も多いのではないでしょうか。


「下町ロケット」シリーズでは、帝国重工の大型ロケットによって宇宙に運ばれた準天頂衛星の名称をいいます。



本書は帝国重工がロケット計画を棚上げしたため、農業用トラクター向けの小型トランスミッションに活路を求める佃製作所の社長・佃航平と、それを支援する帝国重工・宇宙航空部・部長の財前道生の悪戦苦闘の物語。


帝国重工の次期社長候補とされる的場俊一やギアゴースト社長の伊丹大、その伊丹と袂を分かった天災技術者・島津裕、ダイダロスの社長・重田登志行、北海道農業大学で無人農業ロボットのベースとなる技術の研究家・野木博文教授など前作の登場人物に加えて新たな登場人物を配置し、無人農業ロボットの製作の実現化に向けてしのぎをけずる苦闘が展開されます。


いつもは巨大企業vs零細企業というお定まりの展開の池井戸ワールドですが、本書では少し勝手が違ってはいますが、相変わらず勧善懲悪の世界は健在。


ラストは佃製作所が開発した農業トラクター用のトランスミッションを内臓した最新の無人農業トラクター「ランドクロウ」を立ち上げる事に成功してめでたしめでたしとなる展開。



本書に登場した野木博文教授ですが、その等身大のモデルとなったのが北海道大学の無人農業ロボット研究の世界的な第一人者である野口教授。


彼はトラクター、田植機、コンバインなど農機をロボット化する研究に加え、空から農地を観測するドローン、水田で薬剤散布するロボットボートなどの開発を行っていらっしゃるそうです。


野口教授が農業ロボット第一号を開発したのは1991年。


その後研究を重ね、現在では単純な作業もできるようになり、日本版GPSである準天頂衛星「みちびき」の活用によって、数キロ走行しても誤差は5センチ以下になったそうです。


研究室から歩いてすぐのところに、約35haの広さをもつ「第一農場」があり、日々実地でプログラム動作を確認できるところも、北海道大学大学院 農学研究院の強みといわれます。


そしてついに昨年無人運転トラクターが各農機メーカーから続々商品化され、パソコンで作業内容やルートを設定し、手元のタブレット型端末で操作するという小説の世界が現実のものとなったそうです。


2018年は「農業ロボット元年」・・・野口教授らと企業の努力が実りつつある2018年をそう呼んでいるそうです。


老齢化、人手不足、若者の離農、重労働のわりに収入が確保できない、など問題山積の農業にも光明がみえてきています。


あとは高価な農業ロボットを購入する資金面についての政府や銀行、農協団体などの協力が必須となりますが、なにはともあれ一歩一歩問題解決へと進んでいるのは頼もしいかぎりですね。

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