VINのらんどくダイアリー

ご訪問ありがとうございます。 「一日一生」を銘にさまざまな人生を読書というツールを通して味わっていきたいと思っています。 響きこし言葉に貼れるさみどりの付箋そよぎて林となりぬ

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2020年01月

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人は生まれてから一つの人生しか歩むことができない

 


こんな当たり前のことにあるとき気づいて呆然としたことが何度かあります。

 

 

あのとき選ばなかったもう一つの人生を歩んでいたら・・・というような想像はたいてい甘い感傷の呼び水的なもので、すぐ現実に引き戻されてthe endとなります。

 

 


19歳で作家としての才能をスタート、母国イギリスで次々作品を発表し「ミステリーの女王」と呼ばれ世界中から注目され始めた矢先、誰にも告げず失踪したアガサ・クリスティ。

 


この失踪事件は当時のマスコミに大々的に取り上げられ当時の大御所コナン・ドイルまでもが自らの推理的コメントを出すという事態に発展。

 


後世にまで語り継がれていますが、夫との不和が原因ということに落着。

 


保養地のホテルに夫の愛人
の名前で宿泊していた彼女を無理やり保護して11日間の失踪の幕を閉じたのでした。


出奔の夢がふくらむ春の宵かのクリスティさへ夢を掴みき



生涯で幾度か、誰にでもこのような願望を抱いた経験はあるのではないでしょうか・・・実行に移すか否かは別として・・・。

 


本日は今まで築いた人生を根こそぎ捨てて新しい自分となったある男の話。

 



 

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平野啓一郎氏著『ある男』
 

 

愛したはずの夫は、まったくの別人であった。                      『マチネの終わりにから2年。平野啓一郎の新たなる代表作!

弁護士の城戸は、かつての依頼者である里枝から、「ある男」についての奇妙な相談を受ける。
宮崎に住んでいる里枝には、2歳の次男を脳腫瘍で失って、夫と別れた過去があった。                                                 長男を引き取って14年ぶりに故郷に戻ったあと、「大祐」と再婚して、新しく生まれた女の子と4人で幸せな家庭を築いていた。                         ある日突然、「大祐」は、事故で命を落とす。                        悲しみにうちひしがれた一家に「大祐」が全くの別人だったという衝撃の事実がもたらされる……。
里枝が頼れるのは、弁護士の城戸だけだった。

人はなぜ人を愛するのか。                                   幼少期に深い傷を背負っても、人は愛にたどりつけるのか。
「大祐」の人生を探るうちに、過去を変えて生きる男たちの姿が浮かびあがる。
人間存在の根源と、この世界の真実に触れる文学作品


人は過去の記憶を切り捨ててまったく新しい人生を送ることができるのか

弁護士・城戸章良のかつての依頼人・里枝の亡くなった夫・大祐が戸籍上の人物とは違っていたという衝撃的なスタートから、その夫は誰だったのかという謎が城戸の手によって次第にらかになるまでが、城戸の私生活を絶妙にシンクロさせながら描かれています。


主人公である城戸の出自が帰化した在日三世であるということが城戸のバックボーンにかなりな翳を落としていて、
極右排外主義の風潮に対する不安感に苛まれているという設定がかなり重要な位置を占めていて繰り返し出てきますが、この設定が果たしてこの物語に必要だったのかというのが読了後のわたしの小さな疑問としては残っています。


しかし、城戸の思考を黒子のように扱いながら進めるという物語の構成力といい卓越した文章力といい、うまい作家さんだなぁとしみじみ思いました。


先ごろ映画化されて話題になった『マチネの終わりに』とはまったく異なったテイストの良品。

 

城戸が決して乗り越えて向こう岸に行くことのできない柵を乗り越えていった男Xの過去をある種の羨望をもって執拗に追いかけていく過程で自分自身に何度も問いかけていく城戸の思索そのものにとても興味が惹かれる作品。

“X”について、城戸にはやはり、どうしてもわからないことが二つあった。

彼は、自分の“X”に対する漠然とした羨望を自覚していた。

しかし、どれほど今の生活に倦んでいても、彼にはそれを完全に捨ててしまうことは、やはり、出来ないのだった・・・

“X”には、そんな風に、継続するに値する人生の喜びは一切なかったのだろうか?

もう一つ、城戸はやはり、“X”が生涯、里枝を騙し続けていたことがわからなかった。

と言うのも、城戸には、“X”と里枝との間の愛が、自分自身は決して経験することのなかった、何か極めて純粋で、美しいもののように感じられていたからだった」


愛にとって過去とは何だろうか?


城戸の繊細な思索を通して浮き彫りにされる
“X”に対する共感、あるいは隔たりは、路上の影の伸び縮みのような伸縮を以ってわたしたち読者に人生の途上での事象の軽重を問いかけているようでした。

どんな平凡な暮らしにもそれぞれの歴史があり、大切にするものがそれぞれの環境や年代に応じて変化したり固定したりを繰り返してやがて終末へと進みますが、そういった大多数の人々の暮らしのなかにある日突然芽生えることもあるだろう、“X”への願望はいままで最も大切なものとして温めていたものまで放擲してしまうほどのエネルギーをもってすべてを凌駕することもあるかもしれない、という恐怖。

 

“X”は決して特別な存在ではなく、わたしもあなたも、何かのきっかけでなりうる可能性があるという示唆も読みとれる作品でした。


少し前、鷲田清一氏の「折々のことば」で取り上げられていた一文。

 

「思い出はときどき補修したほうがいい・・・」

 

「記憶は、意識というよりその淵、つまり体に蓄えられることもあれば、あることを思い出すのが苦しくて別の記憶にすり替えられることもある。

さらにくり返し整えられ修正され、やがて見事な悲劇に仕立てられもする。

記憶とはこのように捏造されやすいものだから、つねに点検が必要なのだ」と続きます。

 

わたしもたくさんの楽しかった記憶やいまもなお苦しみに苛まれるような記憶をもっていて、特に後者をふとしたきっかけで思い出すといたたまれなくなることがあります。

 

もっとやわらかな別の記憶にすり替えられたら・・・と思うこともしばしば。

 

後悔がつきもののそんな記憶。

 

いつの間にか真実以上に脚色して無意識のうちに見事な悲劇に仕立てあげているのかもしれませんね・・・

 

 

想ひ出はつねに光を纏いゐる幾多の永劫の別れの場さへ

 

真夜中のふいの目覚めに湧き上がる過去完了とはいかぬ悔恨

 

後悔が気球のやうに膨らんでカレンと唄ふ〈Yesterday Once More〉

 

パソコンのdelete機能のように一瞬で削除できたら・・・それはそれで空洞と化した海馬では拠り所がないかも。

 

悲しくともどんな記憶でもないよりあった方がいい、と言った友人がいました。

 

せめて人生の終わりの一瞬に立ち上がる記憶が楽しいものであるように今からその記憶に補修というか磨きをかけておかなければ。

 

 

 

 

 

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さて本日は
蓮見恭子氏著『襷を、君に』をご紹介します。 

 



圧倒的な才能を持ちながら、周囲の期待に押し潰され、陸上をやめてしまった瑞希。

瑞希の美しい走りに魅せられ、陸上を始めた歩。

ふたりの奇跡的な出会いが、新たな風を紡ぎだす!

疾走する女子高生たちの絆を描いた駅伝小説」

 

 


わたしは駅伝を観るのが大好きです。

 

特にお正月2日間にわたって放映される箱根駅伝の大ファン。

 

そんなことを友人と話していたら・・・意外にファンが多いのにびっくり。

 

わたしの周りのごく親しい友人の中にも3人、極めつけの箱根駅伝ファンがいました。

 

 

そんなこんなで駅伝ファンには有名な三浦しをん氏の『風が強く吹いているや堂場瞬一氏のチーム』『ヒートなどはわたしにとって永遠の名著というべき作品として定着しています。

 

 


本書は高校女子陸上部の駅伝物語。

 


ジュヴナイル小説のような装幀だったので、ちょっと躊躇しながら読み始めましたが、なかなか充実した物語でした。

 

主人公はテレビで中継されていた全国中学校駅伝大会での姫路中学校の庄野瑞希という選手の走りに憧れを抱き、自分もあのように走りたいという夢を持って福岡の港ケ丘高校陸上部に入部願書を出した倉本歩。

 


しかしその陸上部は全国の中学校で名の知れた駅伝の選手が集められたチーム。

 


初心者の歩は入部すら認められないというスタート。



持ち前の粘りでやっと入部が叶いますが、まわりは自分よりはるかに速い選手ばかりという環境に打ちのめされそうになりながらも少しずつタイムを縮めていく過程で、入部のきっかけとなったあこがれの選手・
瑞希と運命の出会いをするのです。

 

 

走りたくて陸上部に入ったものの記録が伸びない歩と、走ることから逃げているのにからみとられている瑞希

 


そんな2人の出会いによってお互いが切磋琢磨しながら友情と駅伝という2つの幹を太く育てていくという青春小説。

 

 

ただ、前に挙げた駅伝小説の代表作である『風が強く吹いている』にはちょっと距離があるかな、という感想。

 


『風
…』にはランナーの息遣いや汗、向かい風や追い風まで感じさせる場面がいくつもありましたが、本書ではあまりそれらが感じられませんでした。

 


しかし、
県の予選を勝ち抜いて全国大会に出ていく終盤でのone teamとして個性豊かなそれぞれがバトンを繋ぐ場面はお定まりのクライマックスと知りながらも胸が熱くなってしまいました。

 



女子のチームを管理するのは男子チームよりはるかに難しいというのは以前マラソンのある監督のインタビューで聞いた記憶がありますが、本書でもそのことに触れた個所がいくつかありました。

 

それはずっとタブー視されていた生理について・・・短絡的にいえば一流の選手に生理は不要というような・・・。

 

余計な肉をそぎ落としたような選手こそが名選手という誤った認識の指導者のもと、摂食障害に繋がったり、貧血、または骨粗鬆症に繋がるという危うい問題も孕んでいます。

 

 

女子マラソンの世界のまぶしい表舞台の裏の様子も知った作品でした。

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〈スプートニク日本〉より写真をお借りしました

歳月は風と思へりときにきびしくときにやさしくわたしに吹きぬ

さういえばあの日の空にも昼の月シンクロニシティの不思議を思ふ

うたかたの夢のごときかルミナリエ友と語らふあの朝のこと

             地震(なゐ)の朝公衆電話の長き列に並びて母に声を届けぬ




今日で阪神淡路大震災から
25年。


思えば近年の熾烈極まる自然災害の発端だったような気もします。

 

あの朝神戸市東灘区西岡本のマンションで被災。

もうすぐパパになる次男が当時小学校6年生。

その日以来、次男の小学校の校舎は半倒壊のため閉鎖され、授業も再開されないまま卒業式だけが校庭のテントで行われました。

その小学校の校庭には直後からわたしたちを含め数百人の被災者が集まり、その後もかなり長くまで避難場所となっていました。

わたしたちを案じて大津から探しに来てくれた夫の長兄と姪に伴われて長兄の家でしばらくお世話になり、あとに東京の長女の家に避難。

 

当時の天皇ご夫妻が訪れたのがその本山第二小学校・・・メディアに大きく放映されていました。


授業もスポーツ少年団での野球の練習も塾もすべてお休みになった次男・・・仲間たちと集まってけっこう授業のないことを喜んでいたような。


同じく隣接していた中学校入学式もプレハブ校舎、卒業した
4年後に新校舎ができたのでした。

 

電気ガス水道のライフラインの復旧は途方もなく長くかかり、煮炊きは随分長くカセットコンロを利用、お風呂は週に一度くらい隣の人と貸し借りして交代で電気棒なるものをバスタブに入れて6時間ほどかけてぬるま湯にしていたのも懐かしい思い出です。

 

夫は当時、大阪・京橋勤務だったので直後から大阪市内の独身寮の部屋を用意されてそこから通勤していました。

有馬温泉でも被災者のために開放してくださっている旅館がいくつかあってお世話になりました。


思えばガスの復旧がいちばん遅かったのでした。

 

亀裂の入った道路に足を取られて骨折した友人もいたっけ。

 

さまざまな困難を乗り越えて少しずつ少しずつ復興していった神戸。


その後
3年ほどして夫の転勤で神戸を離れて東京に行ったのでした。

 

夫の転勤で今まで様々なところに住みましたが、いちばん長くそしていちばん思い出深い神戸。

 

なんだか辛く苦しいときを共にした同志のような気持ちを今もなお持ち続けています。

まだまだ震災後の災害援護金が53億円も未返済という神戸。

6434人という死者の出た震災。

いまだ悲しみの癒えることのない25年を過ごしていらっしゃるご家族や関係者のことを思うと胸が苦しくなります。

当時の詳しい記録1 →  

記録2 →  

 

よかったら読んでいただければと思います。

 

 

 

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さて本日は
本城雅人氏著『贅沢のススメ』のレビューです。 

 

高級品を扱う店を次々と買収するボス・藤浪と、その下で働く若者・古武士(こぶし)。ラグジュアリーファンドの二人組はまず店に乗り込み、藤浪が帳簿を確認し、古武士がその店で実際に働く。
かつて贅沢だったイタリアンが贅沢でなくなった理由、オーダーメイドの高級シャツ店に隠された女性たちの人間関係、倒産の危機に瀕するアンティークウォッチ店の目利き店主の企み、一脚数十万を超える木製椅子のデザイナーと職人の絆    至高の品には、誰も見たことのないドラマが宿る。                     目から鱗の買収エンタテインメント!
贅沢を見分けるために欠かせないものとは?

 

スポーツ紙の記者だった本城氏。


いままで多くの野球関係や記者関係の作品を上梓していらっしゃいますが、そういった経験を踏まえた分野以外でも興味深い作品がいくつかあります。

 

本書もそのひとつ・・・きっと記者時代にならした取材力の賜物なのでしょう。

ちょっと変わり種の内容です。

 

銀行や投資会社から債券を安く買いその会社を売却して利ざやを稼ぐというのを生業にしている〈ラグジュアリーファンド〉。

 

社長藤浪亮介以下たった古武士哲也を含め3名の会社

 

タイトルにある「贅沢」とは何か?

 

社長の藤浪が言うには・・・「贅沢とは人生を豊かにするもの」

 

「買う理由が値段ならやめておけ、だけども買わない理由が値段なら買え」

 


運営資金に苦慮しながらもお客様に満足できるものを生み出すことに努力している企業やお店が舞台。

 

レストランやシャツ、時計、椅子、ワインを扱う店、ホテルなど。

 

〈贅沢〉とはただ名の知れたブランド品といったものではなく、実際に使い込んでいく過程でそのすばらしさを実感できるものというのがここでの定義。

 

 

これら贅沢を極めるさまざまな舞台に藤浪が乗り込んで、古武士が一定期間そこの社員となって働きながら内実を探り、〈贅沢〉の本質を見極めて、買収の足掛かりにするという、ちょっと変わった趣きの作品。

 

読みどころはそれぞれの舞台でホンモノの〈贅沢〉を支えて悪戦苦闘している人々によってそれぞれの生き方を含めた人生が語られる場面。

 

興味ある方はどうぞ。

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さざ波のひかる河口に憩ふらしゆりかもめらの朱きくちばし


くれなゐの脚を並べてゆりかもめ白き羽毛が冬陽にひかる

 

お正月にみんなでウノをしていると・・・

仲間になりたいのかコハルがテーブルの下に潜り込んできました。

12020年1月4日の小春
甘えん坊で繊細なコハル・・・今年の春で満5歳になります。


次男がペットショップでひとめぼれして飼い始めたときはガラクタだらけの独身の部屋、掃除も行き届かない部屋でいつも留守番をしていたコハル。

その後次男が結婚して住まいももう少し広いところに移り、いまではケージも取り払って家中を自由に跳ね回って次男とお嫁ちゃんの愛情を一身にうけています。

そしてもうすぐbabyが誕生。

コハルの驚きが目に見えるよう。

babyに寄り添ってくれるやさしいコハルに期待しているのだけどどうなるか???

 

 

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原田マハ氏著『フーテンのマハ』 

 

とにかく旅が好き!                         食、陶器、絵画、鉄道など目的はさまざま。                 敬愛する寅さんにちなんで“フーテン”を自認し、日本のみならず世界中を飛び回る。                                気心の知れた友・御八屋千鈴氏や担当編集者を相棒に、ネタを探して西へ東へ。『旅屋おかえり』や『ジヴェルニーの食卓』が生まれた秘密は旅にあった!   笑いあり、感動ありの取材旅行エッセイ。                 さあ、マハさんと一緒に旅に出かけよう

 

絵画鑑賞が大好きで美術館に心ひかれる展示があれば当地はもちろん大阪や京都あたりにはよく足を運びます。

今年も3月から神戸市立博物館でロンドンのコートールド美術館の印象派のコレクションが展示されるそうです。


マネの絶筆とされている「フォリー=ベルジェールのバー」がお目見えするというので今から楽しみ

 

だから・・・というわけでもないのですが、キュレーターから転身されて作家となられた原田マハ氏の美術関係の作品が大好きでほとんど網羅しています。

25回山本周五郎賞受賞作楽園のカンヴァス149回直木賞候補ジヴェルニーの食卓155回直木賞候補暗幕のゲルニカ』、モダン、『たゆたえども沈まずetc。

美術作品のみならず多くの分野の作品を手掛けて大忙しのマハ氏。

そんなマハ氏の日常が垣間見えるエッセイが本書。

デビュー作となった話題作『カフーを待ちながら』の構想も南の島への旅で芽生えたそうです。

 

旅の話はもちろん、食べ物の話、大学時代からの親友との旅での失敗エピソードなどさまざまな話題がてんこ盛り。

 

それにしても旅で出合って魅かれたというだけの大小の品々を後先も考えずよく買うこと"(-""-)"


作品ではうかがい知ることのできないマハ氏の憎めないそそっかしさやユーモアのあるエピソードがあふれていて、気楽に読める短篇集となっています。

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冬空に透けつつメタセコイア佇つ秘密保護法嘲るごとく


HPからブログを始めて20年近く・・・多くの方が訪れてくださり、交友が深まった思い出深い方もたくさんいらっしゃいます。

その中でもスタートして間もないころ、お知り合いになったトコさん。

お互いのブログを行ったり来たり、温かいコメントを数知れず入れてくださったり・・・トコさんのご紹介で知ったzensanさん。

当時のzensanさんのブログは世界中から訪れるファンも多く、わたしもそのひとりとして大先輩から多くを学ばせていただいていましたが、思うところがあられてSNSの世界から退かれて久しくなります。

zensanさんがブログを発信されていたころがわたしにとってもSNS全盛期でした。

その後一人去り、二人去り・・・だんだんに親しい方が去っていかれて寂しさもひとしお。

zensanさんとは岡山在住というご縁で、その後吉備高原のお宅に何度もお邪魔したり、我が家にも来ていただいたり・・・奥様や娘ちゃんとも親しく交友させていただけるきっかけになったこと、そしてそのつながりで大切な方となった花オクラさん、SNSに感謝というほかありません。

もの静かなzensanさんを支えて、わたしが銭ママと呼ばせていただいている奥様は生まれも育ちも生粋の大阪人、まさに大阪のおばちゃんというおおらかで溌剌としたかわいらしい方、お会いした瞬間からたちまちファンとなってしまいました。

その銭ママの米寿を記念しての書道展が昨年12月に開催されました。

会場は吉備高原にある岡崎喜平太記念館。

ご存じと思いますが、岡崎喜平太氏は日本銀行入社後、全日空の前身となる会社の設立に携わり、日本の航空事業の発展などに尽くした当地出身の有名な実業家です。

岡崎
記念館の前にはブロンズ像が建立されていて、その館内では様々な催しが開催されています。

遊舟

「銭本遊舟書道展」

④銭書
〈遊舟〉・・・銭ママらしいすてきな雅号!

2月銭書

1銭書

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かな文字を中心の作品もふくよかでそしてなかなかに男前、といったら語弊があるかもしれませんが、わたしの好きな魅力的な字体・・・といってもいかんせん学の貧しさですべてを解読できない悲しさ"(-""-)"でした。

 

 

 

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さて本日は江川晴氏著『麻酔科医』のレビューです。

「患者の命の代弁者」麻酔科医の世界を描く

2年間の卒後臨床研修を終えた神山慧太は、安易な動機で麻酔科を志し、南関東医療センターに就職する。                                    しかしそこで、何日も連続で泊まり込んで寮にも帰れない、予想もしなかった勤務の厳しさに直面する。                                        やがて一通りの作業をこなせるようになり、先輩指導医にも誉められるようになった矢先、4歳の子どもの挿管に失敗し、患者は死亡してしまう。              自分は医師に向いていないのではないか――                       挫折感に打ちのめされた彼が向かった先は、熊本で老人介護施設を運営している祖母のところだった……。                                    患者の側に立つ医療とは何か?                               麻酔科医の本分とは?                                     脚光を浴びることの少ない麻酔科医にスポットを当てた異色の医療小説


ずっと昔
TVドラマに『いのちの現場から』というのがあったのを記憶しています。

主役の看護師長役は中村玉緒さん。

たしかこのドラマの原作を書かれていたのが本書の著者・江川晴氏。

長く慶応大学病院の看護師として勤務され、1980年『小児病棟』で医療小説作家としてデビュー。

『小児病棟』は第一回読売「女性ヒューマン・ドキュメンタリー大賞」優秀賞を受賞されています。

その後数多くの医療小説を上梓されていますが、本書もその一冊。

1924年生まれということから現在96歳になられるんですね。

本書は2011年の作。


主人公は
2年間の臨床研修を終えた神山慧太

安易な動機から麻酔科を志望したことから始まる怒涛の日々。

予想をはるかに上回る常に死との隣り合わせの現場でさまざまな臨床を通して挫折しながらも少しずつ一人前の麻酔科医へと成長していく物語。

 

長く看護師として携わっておられた経験を積まれた著者ならではの作品。

医療現場では日常的に医療的なミスも起こるし救われる命もあれば死にゆく命もあるなか、医療従事者たちの日々の格闘がつぶさに描かれていて臨場感のある作品となっています。

主人公の慧太のみならず、慧太の同期で出世頭の外科医緒方や人間性あふれる上司柳田、新人看護師高峰悠子、九州で介護施設を運営する慧太の祖母、そして彗太が関与するさまざまな患者たち

ここで焦点となっているのは麻酔科医の領分。

 

手術前に麻酔についての説明のために一度は必ず麻酔科医と対面するのは大小にかかわらず手術の経験のある方にはご存じの通りだと思います。

 

麻酔薬の匙加減の難しさは聞き及んでいて、特に大きな手術においては知識や経験の深い麻酔科医の存在が必至というくらいの知識しか持ち合わせていなかったわたしは本書で麻酔科医の役割の大きさに目を見開かされました。


術前はおろか長時間に及ぶ手術中も
常に患者のコンディションを確認し、執刀医に患者の生命力低下などの注意を促し、そして術後のバイタルチェックも疎かにできないというのも麻酔科医の重要な任務。

 

緊急であろうが日常であろうが手術あれば必ず麻酔科医の役割があるというのはすなわち年中、しかも真夜中でもいつでも待機が必要という激務なんですね。

 

悩む慧太への祖母の言葉は麻酔科医の本質を表しています。

「患者のために最善を尽くす、患者の立場になって考え行動する、という医師の本分を、これほど、具体的に表現し実践しなければならない診療科はほかに無いのでは・・・」

 

救急病院に指定されている総合病院での麻酔科医の想像を絶する多忙ぶりは想像に難くありません。

私事ですが、次男のお嫁ちゃんのお父さんが現役の麻酔科医であり総合病院の救急部の部長をされていて休みもほとんど取れないというその多忙ぶりはときどき耳にしていましたが本書を通して余計身につまされてしまいました。

どうぞ体に気をつけてと願うばかりです。

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2020年が皆様にとりまして明るく幸せな年でありますように



昨年は「VINのらんどくダイアリー」を訪れてくださり、また心温まるコメントをいただき本当にありがとうございました。

相も変わらず偏見に満ちた冗長な文に辛抱強くお付き合いくださった皆様のご好意に深謝いたします。


さて
2019年にご紹介した作品は101冊、実際に読んだ本は短歌関係も含めて150冊ほどになります。



長く親しんでいたyaplog終了のため昨年半ばでlivedoorに引っ越して、いまだに慣れず四苦八苦しています。

 

この機会に読書録を閉じようかなとも考えましたが、いま少しという気持ちで続けています。


そんな翳りの見えている「VINのらんどくダイアリー」、101冊の中から自分なりのベスト10を挙げてみたいと思います。


ちなみにここに挙げているのは読書歴の古い順でベスト順ではありません。



アーサー・ビナード氏著『日々の非常口』 


アントニオ・G・イトゥルベ氏著アウシュビッツの図書係


メイ・サートン氏著
『独り居の日記』 


鳥越碧氏著『漱石の妻』 


★本城雅人氏著『友を待つ』 


梯久美子氏著『原民喜ー死と愛と孤独の肖像』

  
桂望実氏著『嫌な女』

 
★島田潤一郎氏ほか著本を贈る


ヘザー・モリス氏著アウシュビッツのタトゥー係Tattooist of Auschwitz


★奥田英朗氏著罪の轍

 

 

他にも藤原新也氏著『メメントモリ、森絵都氏著『みかづき』、森沢明夫氏著『たまちゃんのおつかい便ユン・チアン氏著『ワイルド・スワン 島本理生氏著『ファースト・ラヴなど捨てがたい作品が少なからずありました。

 


今年も昨年の作品を超える感動作に巡り合えたらいいな~と願って・・・。


皆様も出合えてよかったと思われる本、ぜひご紹介ください。

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