志村けんさんが亡くなられましたね。
改めて新型コロナウイルスの恐ろしさを感じています。
ドリフターズ大好きだった世代。
また原田マハ氏原作の『キネマの神様』で菅田将暉さんとダブル主演が決まった矢先だったそう。
さぞかし味のあるゴウが見られるのではないかと楽しみにしていました。
ほんとうに残念です。
心からご冥福をお祈りいたします。
40億年前の生命の誕生の頃に出現したといわれるウイルス。
人間が素手で戦う喧嘩から始まり、どんどん武器を進化させてきたように、文明の発達とともに人間が強力な薬やワクチンを作るにしたがってその薬に耐性を持ったウイスルスが生まれ・・・という追いかけっこを繰り返してきた人類とウィルスの闘い。
人類の歴史はまさに感染症との闘いの歴史。
天然痘や狂犬病から始まって中世ヨーロッパで5000万人におよぶ死者を出したペスト、近年では西アフリカで発見されたエボラウイルス、中国が発生源のSARS、サウジアラビアで発見されたMERS。
今回の新型コロナウイルスを抑え込むことができる新薬やワクチンができて一応の収束を見せても、またそれを上回る強力なウイルスが出現する可能性があります。
地球の様々な地域で戦争をしている場合ではないと思うのですけど。
「平穏は有難い仮象」この世へのまなざし鋭き古井由吉
先日のブログで、今回の新型コロナに関連して過去のペスト渦を描いたカミュの作品をご紹介しましたが、今回も日本のある地域を襲った未知のウイルスとの未曾有の闘いを描いた作品のご紹介です。
2013年第11回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作。
安生正氏著『生存者ゼロ』
「北海道根室半島沖の北太平洋に浮かぶ石油掘削基地で、職員全員が無残な死体となって発見された。救助に向かった陸上自衛官三等陸佐の廻田と、感染症学者の富樫博士らは、政府から被害拡大を阻止するよう命じられた。北海道本島でも同様の事件が起こり、彼らはある法則を見出すが…。未曾有の危機に立ち向かう!壮大なスケールで「未知の恐怖」との闘いを描くパニック・スリラー」
著者について
1958年京都市出身、東京都在住
京都大学大学院工学研究科卒。現在、建設会社勤務 (「BOOK著者紹介情報」より)
2013年刊行の作品ということですが、パニックの源こそ違っているもののまさに現在の日本の現状と酷似していてびっくり。
根室沖洋上プラットフォームに原因不明の感染症が発生、その場にいた全員が無残な死を遂げた衝撃的な場面から始まり、道東の小さな町から爆発的な勢いで広がっていく謎の劇症感染症。
そのプラットフォームに上官からの命令で最初に派遣された陸上自衛官三等陸佐・廻田が、天才細菌学者でありながら妻子を失った喪失感から麻薬中毒患者になった富樫とともに、未知のウイルスの謎に挑むというもの。
この未曾有のパニックの中、一貫して及び腰の時の首相・大河原との最初にパニックが発生した北海道知事・田代との駆け引きが一つの見どころ。
あくまでも田代に主導させてこのパニックを収めようとする首相。
「原因不明の感染症によって八万人が一晩で犠牲になったという事態の深刻さをご認識ください。
WHOや米国だけではない、韓国、ロシア、中国も事態を注視しています。
TR102の際はまだしも、川北のあと、事態を終息できなかった我が国に対して厳しい視線が注がれているはずです・・・
ここで新感染症の拡大を食い止めなければ日本は孤立し、見捨てられる。
そのために必要なのは田代知事ではなく、政府の判断と政府主導による対策の実行です」
「それはまずい。
事態への対処は自治体を主体とし、政府は支援する側に立つ。
これが私の意見だ。
どうかね田代知事」
「首相、お言葉ですが、我々には今回の事態に対処できる組織もノウハウもありません」
「田代知事、突発的な事態で充分な準備が整っていない事情は承知するが、知事を中心に、警察、自衛隊、医師会、保健所らが協力した災害対策、つまり地方自治体自らの責務で弾力的に実践できるシステムを早急に構築してもらいたい」
「僭越ですが、首相。
この問題への対処はぜひ、政府主導でお願いします」 (※青字が首相)
責任を逃れることに終始して終わった駆け引き・・・つい最近も目にしたようなデジャヴを感じてしまいました。
それからはジェットコースターのような展開で廻田と富樫が突き詰めていく謎の正体・・・途中からは美人の昆虫学者も加わって・・・ラストへとなだれ込んでいく。
人物造形に特異性を付加しすぎの感が否めないうえ、複雑な人間関係を盛り込みすぎという難がありましたが、ハリウッド映画さながらの疾走感は見事、感服しました。