VINのらんどくダイアリー

ご訪問ありがとうございます。 「一日一生」を銘にさまざまな人生を読書というツールを通して味わっていきたいと思っています。 響きこし言葉に貼れるさみどりの付箋そよぎて林となりぬ

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2020年07月

長男作成の大量のCDが夫宛てに送られてきました。

 

賢吾 CD

先ごろわたしが頼んで作ってもらった世界の著名なピアニストによる〈ラ・カンパネラ〉のCDをみた夫が羨ましがって、長男に頼んでいたもの。

 

在宅中はずっとCDを流し続けている大の音楽好きの夫。

 

持っているレコードやCDジャケットの数も半端ないのですが、一枚のうちには夫的に★5つのもあれば★1つのもあるという。

 

できれば★5つのものを集めて聴きたいという欲の深さ。

 

ということで事前に夫がピックアップして送ったリストに合わせて長男が作成してくれたのがこれ。

 

80分CDが全部で18枚!@@!

 

クラシックありジャズありラテンありポップスありオペラあり民族音楽あり・・・要するに洋楽なんでもありのてんこ盛り。

 

結婚以来耳たこ状態で聴かされていた曲ばかり。

 

子どもたちも然り。

 

長男は編集しながら、聴きながら成長した折々を思い出して懐かしかったようです。

 

夫が大喜びしたのはいうまでもありません。

 

 

アタラクシア
さて本日は
金原ひとみ氏著『アタラクシア』 のご紹介です。 

擦り切れた愛。暴力の気配。果てのない仕事。そして、新たな恋。ままならない結婚生活に救いを求めてもがく男と女―。芥川賞から15年。危険で圧倒的な金原ひとみの最新長編(「BOOK」データベースより)

著者について・・・

1983年東京生まれ

2003年『蛇にピアス』で第27回すばる文学賞130回芥川賞受賞

2010年『TRIP TRAP』で第27回織田作之助賞受賞

2012年パリへ移住

2012年『マザーズ』で第22回Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞

2018年帰国


2020年『アタラクシア』で第5回渡辺淳一文学賞受賞

 

『蛇にピアス』というセンセーショナルなタイトル及び内容で、綿矢りさの『蹴りたい背中』とともに第130回芥川賞同時受賞されたことでも有名・・・ともに20歳という若さ

ちなみに著者の父親は翻訳家・児童文学研究家・法政大学社会学部教授である金原瑞人氏。


岡山市出身です。


さて本書について・・・


タイトルの「アタラクシア」・・・聞きなれない単語なので調べてみました。


三省堂の大辞林によれば、古代ギリシャの哲学者エピクロスの統べる学派が幸福の必須条件として主張したもので、「幸福は快楽になるが、外的なものにとらわれず欲望を否定した内的な平静こそが最大の快楽である」というもの。


「他のものに乱されない平静な心の状態」だそうです。



本書の主な登場人物は
6名。                                 


由衣・・・元モデルで一時パリに住んでいたとき瑛人と知り合う。


瑛人・・・パリで修行ののち、東京で友人とともにフランス料理店を経営。由衣と不倫中。


英美・・・瑛人の店で働くパティシエ。そりが合わない母親、浮気性の夫、暴力的な息子と暮らし、心に爆弾を抱えている。


桂・・・由衣の夫。盗作疑惑が流れて以来、スランプに陥って書けなくなった作家。由衣に変質的に執着している。


真奈美・・・由衣の友人の編集者。アルコール依存症である作曲家の夫のDVに怯えながらストレスを浮気で晴らしている一児の母親。


枝里・・・由衣の妹で援助交際中。


6人が6人とも内面に歪なものを抱え息苦しくなるような閉塞的な日常を営んでいるという設定。


誰もがアタラクシアを求めて人間関係を構築しようとしていながら、流れは逆行していくというもの。


外見的には平穏を保っているかに見える人々の内面の歪みをこれでもかと炙り出す著者の手法には舌を巻いてしまう。


一歩踏み外せば奈落に落ちそうな危ういほど細い糸の上を微妙なバランスを取りながら生きている様子の描き方が上手い作家さんです。


登場人物のだれの生き方にも共感できない、けれどその危うさから目を離せない・・・そんな作品でした。


ラストに至るまでも危うい不均衡に収まりがつかないという感じを受けるのに、著者はそれでも飽き足らないのか、最終章で更に驚きの展開を用意しています。

 

「私も結婚して15年くらい。一緒にいればいるほどわかりあえなさが見えてくる。わからないのだとあきらめてしまえば、スムーズにまわっていく。

かといって、すごく共鳴する人との関係は互いに背負いすぎてつぶれがち・・・

最近はぶつかり合いや摩擦が随分減ったなあと感じます」

 

朝日新聞2019年6月12日版に上記の一文を掲載した著者。

 

自らの結婚生活に言及していらっしゃいます。

 

余談ですが、わたしの平平凡凡な結婚生活はこんな感じ。

あまたなる妥協・諦念・忖度を積みて共棲む歳月のあり

 

興味ある方はどうぞ。

ゆうがお

雨雲が陽を遮りて暗き午後ゆふがほ三輪迷ひて咲けり


吉備高原のzensan宅を2組の夫婦で訪れました。

 

車で40分ほどの距離、途中の並木道にはまだ合歓の木がちらほら。

 

県北に位置する高原都市なので市中より気温がかなり低く夏は過ごしやすいところです。

 

 

先日卒寿を迎えられたzensanさん

 

重篤な腎臓疾患を抱えておられて心配していましたが、在宅での血液透析のやり方を会得されてお元気を取り戻していらっしゃって嬉しい再会。

 

ブログが縁で親しくさせていただいているおひとり。

 

かれこれ十数年のお付き合いになります。

 

同県内ということで度々ご自宅にお邪魔させていただいています。

 

人間でいえば百歳近くのピピにも会えて銭ママとおしゃべりも出来、楽しい一日になりました。

ピピ
 

 

 

 

1風神雷神
さて今回は
原田マハ氏著『風神雷神』のご紹介です。 

 

20××年秋、京都国立博物館研究員の望月彩のもとに、マカオ博物館の学芸員、レイモンド・ウォンと名乗る男が現れた。

彼に導かれ、マカオを訪れた彩が目にしたものは、「風神雷神」が描かれた西洋絵画、天正遣欧使節団の一員・原マルティノの署名が残る古文書、そしてその中に書かれた「俵…屋…宗…達」の四文字だった―。

織田信長への謁見、狩野永徳との出会い、宣教師ヴァリニャーノとの旅路…。天才少年絵師・俵屋宗達が、イタリア・ルネサンスを体験する!?アートに満ちた壮大な冒険物語(「BOOK」データベースより)

 

 

「京都を舞台にしたアート小説を」という京都新聞の依頼でスタートした新聞連載小説を上下二巻のハードカバーとして刊行したものが本書。


読書友の
UNIさんより回していただきました~(^^)

有名な国宝「風神雷神図屏風」でおなじみの俵屋宗達が主人公の物語。


原田マハ氏には珍しい日本の画壇をモチーフにしたアート小説。


「もしも」少年・宗達が
天正遣欧使節に加わっていたら・・・という仮定の下、著者のイメージを膨らませて描いた壮大なファンタジー。

著者の得意とする史実を散りばめて架空の物語に真実味を持たせるという手法。

導入部分も著者の他作品で見られるように、俵屋宗達を研究テーマにしている学芸員・望月彩のもとにマカオ博物館の学芸員が訪れて宗達に関係した資料が見つかったことを伝えるところから。

 

「風神雷神」が描かれた西洋画と、天正遣欧使節団の一員・マルティのの署名のある古文書、その中に記された「俵…屋…宗…達」の四文字

 

この謎解きを中心に、舞台は京都をスタートに長崎、マカオ、インド、ポルトガル、スペイン、ローマに向かうというスケールの大きな物語となっています

 


時代も現代から一気に安土桃山時代に遡って・・・。

 

幼少からその才能を世に知らしめていた宗達の織田信長への謁見、高名な絵師・狩野永徳との出会い、一員として加わった天正遣欧使節団での宣教師・ヴァリニャーノとの出会い、西洋のルネサンスを身を以って体験していくという壮大な物語。

惜しむらくは、スタート部分の俵屋宗達の物語のはずが、途中から天正遣欧使節団中心の物語のようになってしまっていることでしょうか。

謎に満ちた宗達の生涯だからこその色付け部分だったとは思いますが、膨大な資料を深堀りする途上で知り得た情報を導入したいために焦点が少しずれてしまった感がぬぐえませんでした。

京の扇屋〈俵屋〉に生まれた宗達。

桃山時代~江戸初期の絵師というだけで生没年も定かではない謎に包まれた絵師。

扇絵が上手かったというわずかな逸話以外、ほとんど謎の絵師だった宗達と同時代の天正遣欧使節団を結びつけるという発想が閃いて以来、この壮大な物語の骨組みができたとは著者の弁。

彼が生きた安土桃山時代は、美術界ではよく日本におけるルネサンスに擬えられる。

つまり西洋でルネサンスが花開いたのと同じ頃、日本でも絵画や文化の革命が興り、その只中に宗達も天正使節団の面々もいたわけです。
 そのことがとにかく私の中では発見であり、彼らをいっそ結び付けてみようという、誰も考えないことにあえて挑んでみたのです。

宗達とマルティノとカラヴァッジョが、ほぼ同じ時代を生きたのは紛れもない事実なので」


共に
14歳という若さ


成長途上の
8年という歳月は宗達をもマルティのをも様々な異文化や考え方、ものの見方を受け容れ、咀嚼するに十分な歳月だったことは想像に難くないと思えますが、いかんせん現代の若者と比較してあまりにもかけ離れているのにも物語に入り込めない要因でした。


そして自分の感想としては、著者が主人公である宗達を唯一無二の才能溢れる絵師と持ち上げれば持ち上げるほど、さほどに魅力を感じなかったのがのめり込めなかった要因かも。

しかし荒唐無稽とはいえ、遊び心満載の冒険小説として読めばワクワクドキドキの著者渾身の作品でありました。

このコロナ禍、どのくらい広がれば収束するのだろうか、というような勢い。

 

世界中でワクチン開発を競っていて、第相試験がもうすぐ、というところもあるようですが、一方罹患して免疫を獲得しても長くて3ヵ月ほどしか持たないという検証結果も出ているようです。

 

そして陰性になったのちもずっと体調不良が続くというのもこの新型ウイルスの特徴とか。

 

一筋縄ではいかない新型コロナウイルス。


死亡率が低いとはいえ、免疫系が弱まっている高齢者などは死と隣り合わせの流行病。 


昨日の新聞に免疫学専門の宮坂昌之氏が免疫の仕組みについてわかりやすく記していらっしゃいました。

 

わたしたちは単純に「抗体イコール免疫」というふうに考えてしまいますが、新型コロナウイルスの抗体は免疫の中であまり大きな役割を担っていないという。

 

快復した人の3分の1は抗体をほとんど持ってないという研究結果もあるそうです。

 

ということは罹患して快復しても場合によっては何度でも罹患するということ?

 

宮坂氏曰く、人体の免疫機構は考えているより重層的・・・「自然免疫」「獲得免疫」の二段構えになっているそうです。

 

まず皮膚や粘膜のバリアーが病原体の侵入を防ぎます。

 

そこを突破しても白血球の一種の〈マクロファージ〉が病原体を食べてくれるという・・・ここまでが「自然免疫」

 

この自然免疫が強い人はそれだけでウイルスを撃退できるといいます。

 

以前秋本治氏の『こち亀』を読んでいて、たしか両さんがそうだったような(笑)

 

次にこの自然免疫で排除できない場合は、「獲得免疫」の出番。

 

発動までに時間がかかるものの、司令塔である〈ヘルパーTリンパ球〉Bリンパ球〉に指令を出すと、Bリンパ球〉は抗体を作ってウイルスを殺し、〈ヘルパーTリンパ球〉〈キラーTリンパ球〉に指示すれば〈キラーTリンパ球〉はウイルスに感染した細胞を殺すという・・・わたしたちの体には幾重にもバリアーが張り巡らされているというわけです。

 

また抗体には「善玉抗体」「悪玉抗体」「役なし抗体」の3種の抗体があり、罹患者の体の中で善玉抗体がたくさんできていればウイルスを撃退する機能が強く軽症ですむという。

 

自己免疫系疾患があるわたしは日ごろから暴走する免疫を抑える免疫抑制剤を服用していてBリンパ球〉などの働きを抑えているので外部から入ってくる細菌やウイルスを撃退する力が弱く、ウイルスが侵入すればすぐに白旗を揚げそう( ;∀;)

 

現在抗がん剤治療をしている人、糖尿病の人、腎臓病の人などにも同じことがいえます。

 

一定以上の高齢者に死亡率が高いのは持病を持った人が多く、高齢者ほど免疫系の指示系統も戦士も弱小軍団という摂理のせいでもあります。

 

こうしてみると免疫学は掘り下げれば掘り下げるほど奥が深く興味深い分野。

 

本日ご紹介するわたしたちの体の中で日夜働いてくれているこの免疫のシステムについて素人のわたしたちにもわかりやすく解説してくれている本です。


免疫の意味論
多田富雄氏著『免疫の意味論』

「非自己」から「自己」を区別して、個体のアイデンティティを決定する免疫。臓器移植、アレルギー、エイズなどの社会的問題との関わりのなかで、「自己」の成立、崩壊のあとをたどり、個体の生命を問う(「BOOK」データベースより)

 



このコロナ禍の中で〈免疫〉という言葉がクローズアップされている昨今、再び本書が読み返されているようです。

 




文化人類学者の青木保氏は本書を再読して次のように語っていらっしゃいます。

 

「多田さんには、生命体の原理が、世界で起きている難題の解決のヒントになるという考えがあった。

例えば、排除ばかりだと、自己が崩壊するという現象。

免疫も民族紛争も生命現象に変わりなく、単なる比喩ではない。

新型コロナの問題もそうですが、いまや生命体としての人類が、差別や排除でなく、寛容と抑制の思想で対応すべきだと再読して改めて思いました」



さて1993年に刊行され、第20回大佛次郎賞受賞作である本書は「現代思想」で12回連載されたものを1冊にまとめたものです。

自己と非自己の識別という重要な免疫系の役割なしには私たちの健康が保てないことを通して知るすばらしい自然のメカニズムには驚異を感じるほどです。

2001年に脳梗塞で半身不随となったあとの多田氏は失った声や半身の機能回復のため持ち前の不屈の精神でリハビリを続けながら、鶴見和子氏や柳澤桂子氏との往復書簡を刊行したり、能舞台の作家としても活躍されました。


2006年には厚労省が打ち出したリハビリの短期打ち切り制度に反対して度々新聞紙上などに登場していらっしゃいますが、この度も後遺症と闘いながら左手だけで打ったパソコンで次のような文を書いていらっしゃいました。

「このごろ、私はこの国の行方を深く憂えています。
ひと言で言えば、私には国自身が病んでいるように思えます・・・
最近は、暮らしの原理ともいえる憲法を改正する国民投票法が強行採決されても、文句も出ないし、デモらしいデモも起こらない・・・
一昨年4月から施行されたリハビリの日数制限、そして今年始まった後期高齢者医療制度など、市場原理主義にもとづく残酷な「棄民法」としかいいようがありません。
日本はいつからこんな冷たい国になってしまったのでしょう。
病にかかっているとしか見えません」


第一級の障害者となられた多田氏の言葉の重み。

 

今ご存命ならこの状況を多田氏はどのように発信されるでしょうか?


本書を開くと門外漢には何だかとっつきにくいイメージのフレーズが並んでいますが、人類の普遍的な問いである「自分とは何か」への細胞学的なアプローチ、古代ギリシャの哲人たちの自己への哲学的考察と両輪をなすといっても過言ではないでしょう。


免疫学上のすばらしいバランスによって存在する「自己」を免疫学者である著者が哲学的洞察も含めてわかりやすく解説してくれているお勧めの書です。


「免疫」という言葉から連想されるものといえば、天然痘などのように人間や家畜が1度伝染病にかかれば、2度とかからなくなる現象を思い浮かべるでしょう。

いわゆる「二度なし現象」といわれるもので、これをヒントに種々のワクチンが作られ、人類の生存率アップに貢献しています。

それから時を経て、「免疫」はウイルスや細菌以外の異物に対しても反応し、「自己」と「非自己」を認識することが明らかになりました。

その後更に、異物を「非自己」と認識して排除するだけではなく、「非自己」の姿をした「自己」に対しても攻撃するという複雑なシステムが解明されました。

このように秩序だったシステムのバランスが崩れ、「自己」に向かって攻撃することによってわたしの持病でもある膠原病を代表する一連の自己免疫疾患となります。

また現代病といわれるアレルギー疾患は本来なら私たちにとって無害であるはずの花粉などのアレルゲンに対して免疫細胞が過剰な反応を起こすことから発症するものですね。


12章からなる本書の中ほどでこれら疾病と免疫の関係が詳しく述べられていますが、興味を引くのは「『自己』とは何か」という問いかけに対するアプローチに言及した第一章「脳の『自己』と身体の『自己』」と第二章「免疫の『自己』中心性 胸腺と免疫の内部世界」です。

第一章では、「『自己』と『非自己』を識別するのは脳ではなく免疫系である」という主幹を例を挙げて説明しています。

ニワトリにウズラの脳を移植する実験で、ニワトリの免疫系がウズラ由来の神経細胞を「非自己」の異物と判断し、排除するためしばらくたつとニワトリは死に至るそうです。

これによって、精神的な「自己」を支配する脳がもう1つの「自己」を支配する免疫系により排除されてしまうことが証明できるそうです。


また第二章に登場する「胸腺」の働きはとても興味深いものです。

胸腺はその働きが10歳代をトップとして徐々にダウンし、70~80歳ではほとんど老化によりゼロになるといわれていますが、約2兆個のリンパ球系細胞の70%を占めるT細胞が骨髄から未熟な状態で出てきて「胸腺」にたどり着き、そこで成熟した一人前のT細胞になるという重要な場所だそうです。

再び横道に逸れますが、虐待を受け続けていた幼児の胸腺が縮みきっていたという解剖後の所見を見たとき、その痛々しさに胸を衝かれたのを覚えています。


まさにこころと体は一体である、ということの証。

一昔前までは働きが定かではなかった胸腺ですが、老化の鍵を握る大切な臓器、大量にたどり着いた未熟な
T細胞のわずか3%が「非自己」と反応しうる選ばれた成熟T細胞となって胸腺から旅立ちます。


厳しい選別の末、一人前のエリートが誕生する瞬間です。

でもこのようなエリートT細胞が直接「非自己」を発見するわけではないようです。

血液中に異物が見つかるとまずマクロファージが取り込み、その断片をヘルパーT細胞にささげるように提示しますが、それをヘルパーT細胞が「非自己」と認めたときのみサイトカインという化学物質を出して、キラーT細胞マクロファージなどを元気づけ、非自己の異物を捕獲するための攻撃へと発展していくそうです。

なんとメカニックかつ神秘的な連携プレーでしょう!

まさにスーパーシステムというフレーズがぴったりですね。

免疫の不思議の極めつけは「妊娠」におけるものです。

半分は母親、後の半分は父親に由来する胎児は母親にとっては半分が「非自己」となり、原理から考えると母親の免疫細胞によって攻撃される対象となります。

でもほとんどの胎児は母親の子宮の中で無事に育ちます。

それは胎児が自分の目印であるクラスTMHCというタンパク質をまるごと隠したり、母親の免疫細胞を邪魔する物質を放出することによって母親のキラーT細胞の攻撃を免れるというシステムがあるからだそうです。

数え上げればきりがないほどの精巧なメカニズムの恩恵で「私」が「私」でいられることに気づかせてくれた貴重な本だといえます。

 

コロナ禍の報道に登場するキーワード〈免疫〉について興味ある方、また自分探しの迷路の中で悩んでいる方々にもぜひおすすめの一冊です。

 

5つ。

ペンダス

初蝉の声が!

 

もうすぐ梅雨明けの予感。

 

湿度は敵と言いながら、夏の暑さにも弱いわたくしめ( ;∀;)

 

心地よい春秋の期間がだんだん狭まってきている気がします、というか歳のせい?

 

新聞やテレビをみるとbad newsばかり。

 

その中でひときわ光る藤井聡太棋聖誕生のニュース(^^)/

 

囲碁も将棋もまったく不案内ですが、大崎善生氏の『聖の青春』や『将棋の子』、そして柚月裕子氏の『盤上の向日葵』など将棋が題材の小説を通して将棋の世界でプロになることの難しさ、しかもトップ棋士になるということが超至難の業であるというのはよく理解できているつもり。

 

17歳最後の日に棋聖となった藤井聡太くん!!

 

八重歯のかわいい普通の高校生。

 

頭の中を見てみたい・・・見てもなにもわからないだろうけど。

 

名人に敗者の言葉を言はしめて藤井聡太ははにかみ笑まふ


どれほどの未来を描いて
るのだらう長考深き棋士の脳(なづき)は

 

 

 

さて本日は大好きな警察小説。

 


刑事の骨
永瀬隼介氏著『刑事の骨』
 

連続幼児殺人事件の捜査本部を指揮する不破は、同期の落ちこぼれ警察官・田村の失敗で真犯人を取り逃す。17年後、田村が新宿歌舞伎町のビルの屋上から転落死する。田村は定年後も単身、連続幼児殺人事件の捜査を続け、真犯人に迫っていた。当時、犯人の顔を見たのは田村一人と思われていたが、じつはもう一人目撃者がいた。そして4人目の被害者の母親も強靱な意志で不破の捜査に協力する。果たして闇に消えた真犯人は誰なのか(「BOOK」データベースより)

 

高卒ノンキャリアで44歳の警視・不破孝作

 

連続幼児殺人事件の犯人逮捕の際の管理官としての失態を機に出世コースから見放された不破

 

偶然にも現場で犯人と直接対峙し千載一隅のチャンスを取り逃がしたのは不破と警察学校同期の出世とは無縁の万年お巡りさん・田村保一。

 

この2人の警察官のその後の人生を通して未解決になっていた連続幼児殺人事件の犯人に迫る物語。

 

 

2人の失態により犯人が逃走して2週間後に第4の事件が発生

 

警察内部もさることながら世間の風当たりの厳しさが2人の警察官人生に致命的な影を落としたままその事件は未解決として時効過ぎます。

 

そして定年を迎えた2人。

 

定年後も事件を追い続けていた田村が久しぶりに不破を訪れた直後死亡したことをきっかけに不破も弔い合戦のように事件解決へとのめり込んでいくという構成。

 

 

著者の作品は何冊か読んできましたが、延べての特徴は起承転結の「起」の部分の立ち上げがとても上手い作家さんという印象。

 

本書も前半部分でわたしたち読み手の心を鷲づかみして・・・中盤で盛り上げて・・・終盤にかけて思わぬ展開を仕掛ける・・・といった構成。

 

思わぬ展開も本書のように現実味が薄ければせっかくの設定も何だかなあという残念感が否めませんでした。

 

読者の納得を得るためには辻褄合わせをきちんとね、とお願いしたいというのが今回の感想といえば感想でした。

5月の母の日に娘から送られた鉢植えの藤。

 

育て方の取説を丁寧に読んでベランダで育てているのですが・・・。

 

取説によると見事な花を楽しめるようでしたが、実際に咲いたのは一枝ぶんの数ひら。

藤花房

それっきりで、あとは葉が繁るに繁ってあさがおの蔓もどきのようになっています。

藤さみどり

早い段階で蔓を這わせるために支柱を立てた夫の作業を心の中でなんておおげさな、と思っていましたが、どんどん蔓が伸びてベランダ天井を這うくらいになりました。

 

花が咲かなかったら遠慮なく言ってください、と販売元の花屋さんの取説に加筆されていましたが、数ひらでも咲いたのでクレームは言えない・・・花屋さんの見本写真ではそれは見事なほど幾筋もの花が開花していたのだけど。

我が家の藤があまりに寂しいので2年前に行った和気の藤棚の写真を添えておきます。

藤棚の和気

藤棚を抜けてゆく風 振りむけば気遠きまでの還らぬ時間

 

悲しみの色はさまざま藤房の淡きむらさき深きむらさき

 

 


銀河食堂の夜
さて本日は
さだまさし氏著『銀河食堂の夜』のご紹介です。


ひとり静かに亡くなっていた老女は、昭和の大スター・安斉美千代だった。愛した人を待ち続けた彼女の死の1週間前に届いた手紙に書かれていたのは…「ヲトメのヘロシ始末『初恋心中』」  2000枚のSPレコードから探し当てた「兄が最後に聴いた曲」に込められていたのは、あの戦争で飛び立った青年と妹と猫の、真っ青な空の下の切ない別れの物語。「むふふの和夫始末『ぴい』」ほか、全6篇(「BOOK」データベースより)

葛飾区京成四ツ木駅近くの四つ木銀座の小さなバー「銀河食堂」に集う常連たちの会話から付随する6話の連作短篇集。

 


路地裏の小さなバーといえば、わたしが大好きだった
北森氏の「香菜里屋」シリーズの舞台となった三軒茶屋のビアバー「香菜里屋」。

ここもマスターひとりでやっていたお店。

 

ミステリテイストの内容もさることながらここで供されるマスター自らの手による酒肴の数々がとても魅力的で、現実にあるなら常連になりたいと切望したほど。

 

残念ながら今から10年前48歳の若さで亡くなられた北森氏。

 

もう2度と「香菜里屋」シリーズにお目にかかることは叶わなくなりました。

 


話があらぬ方向に逸れてしまったので本書に戻ると・・・

 

ここ「銀河食堂」のお惣菜も食欲をそそります。

 

「香菜里屋」とちがってここは純和風なおばんざいというところ。

 

バーを切り盛りするマスターとおばんざい担当のおかみさん・・・マスターの母親にしては少し若く、連れ合いにしてはかなりの年配の女性・・・2人の関係性も憶測を呼びます。

 

開店とともにどこからか現れてカウンターにおいしいものが盛られた大鉢をどんどん並べて・・・そして消えるというのも謎。

 


そんな設定の「銀河食堂」を舞台に、黒子の語りを通してさまざまな物語が展開していきます。

 

東京の下町だけあって、さながら著名な噺家の人情噺のような小気味いい語り口。

 

この語り口を通してさまざまな人の人生が浮き上がってくる様は昭和の古き時代の映画を観ているよう。

 

 

著者の作品はほとんど読んできましたが、物語の回し方が本職の作家さん顔負けのうまさ。

 

まさに歌手にしておくにはもったいないほど(笑)

 

ここで6篇の内容は述べませんが、興味ある方はどうぞ下町の哀切あふれる人情噺をたっぷりとお楽しみくださればと思います。

ラストでマスターとおかみさんの身元が判明するという心憎い演出もあり、「銀河食堂」というネーミングの由来にもどうやら繋がります。

おススメです!!

歌人の岡井隆氏が亡くなられましたね。

92歳。

1946年短歌結社「アララギ」に入り土屋文明氏の選歌を受け慶応大医学部在学中の1951年に近藤芳美氏らと歌誌「未来」を創刊。


内科医として病院に勤務する傍ら、塚本邦雄
氏や寺山修司氏らと思想性や社会性を反映する前衛短歌運動の先駆者となっていましたが、1970年に突如20歳ほど年下の女性と九州に駆け落ち、あらゆる社会生活からリタイアされました。


その
5年後に突如以下の歌を掲げて歌壇に復帰、以後の活躍はご存じの通り。


歳月はさぶしき乳を頒(わか)てども復(ま)た春は来ぬ花をかかげて


1993年から歌会始選者、2007年から宮内庁御用掛となられ現上皇ご夫妻の歌のご相談役をしていらっしゃったという経歴。


女性関係も華々しく
1957年最初の結婚、翌年別の女性と同棲、その12年後に九州に駆け落ちした別の女性と結婚。

それぞれに計5人の子どもを持ちながら、1989年、32歳年下の現夫人と出会い3度目の結婚、現在に至ります。

肺尖にひとつ昼顔の花燃ゆと告げんとしつつたわむ言葉は

灰黄の枝をひろぐる林みゆ亡びんとする愛恋ひとつ

母の内に暗くひろがる原野ありてそこ行くちきのわれ鉛の兵


海こえてかなしき婚をあせりたる権力のやはらかき部分見ゆ


薔薇抱いて湯に沈むときあふれたるかなしき音を人知るなゆめ


育てつつ子を捨て続けつつ棲むはやがてしづかに捨てられむため


私事ですが、初めて
NHK全国短歌大会で特選に選んでくださった選者が岡井氏。


当時、
NHK大会では特選に選ばれた人と選者の方がひとかたまりで舞台に並ぶという形式だったところ、ちょうどその年から体調を崩されて舞台を欠席、岡井選の特選者は急遽穂村弘氏付きということになり、お会いは叶いませんでした。


その後欠席のお詫びということで最新の歌集を送っていただき、お礼状を出したら思わぬお返事がいただけたり、ということがありました。

岡井歌集岡井サイン


その翌々年、馬場あき子氏&岡井隆氏&篠弘氏というお三方が選者の近藤芳美賞を受賞した際も馬場氏、岡井氏ともにご欠席の中、篠氏のみのご出席でしたが、篠氏は脚がお悪くて立ち上がりにくく舞台上でのトロフィー授与はお預けとなって・・・。


閉幕後催された近藤芳美賞受賞記念の立食パーティの席で代理の永田和宏氏からトロフィーを授与されたといういきさつ。

nagata

結局チャンスがありながら岡井氏とはお目にかかれずじまいになってしまったのでした。


謹んでご冥福をお祈りいたします。



 


うちの子が結婚
さて本日は
垣谷美雨氏著『うちの子が結婚しないので』のレビューです。 

老後の準備を考え始めた千賀子は、ふと一人娘の将来が心配になる。28歳独身、彼氏の気配なし。自分たち親の死後、娘こそ孤独な老後を送るんじゃ…?不安を抱えた千賀子は、親同士が子供の代わりに見合いをする「親婚活」を知り参加することに。しかし嫁を家政婦扱いする年配の親、家の格の差で見下すセレブ親など、現実は厳しい。果たして娘の良縁は見つかるか。親婚活サバイバル小説!(「BOOK」データベースより)

 


少子化、大家族制度の崩壊、家族の孤立化、親世代の高齢化などさまざまな問題を生み出す要因のある社会となっている昨今。

 


建物構造も戸建ての一軒家からマンションへと移行、密なる町内会での交流も薄まってゆくなか、ひと昔前に存在していた仲人という人々も高齢化とともに存在そのものが消えつつあるようで、その代わりのようにネットで見受けられるのはさまざまな形の婚活の団体。

 


こんなに自由な恋愛し放題の社会でなぜに?と思わるほどに独身の男女の多いこと!

 

わたしの周りでも独身の子どもたちを持つ親が山ほど。


本書のテーマは「親婚活」。

 

 

我が家の事情をいえば、長男次男も30代半ば前の遅い(わたしから見れば・・・ですが)結婚。

 

親としては放ったらかしでしたが、それぞれにやっと相手を見つけて結婚。

 

長女はいちばん早く、社会人になって1年目に社内結婚しましたが、10数年ののち離婚、現在に至ってただいま独身中。

 

誰かいい人はいないかな、と心の内では思っていますが、当の本人はどこ吹く風のごとく飼いはじめた愛犬の毛づくろいに余念がない日々です( ;∀;)

 

 

 

本書に戻ると・・・

 

主人公は57歳の福田千賀子。

 

ひとり娘友美は28歳の会社員。

 

親の目から見ても目を惹く美貌も才能もない平凡を絵に描いたような友美の将来を案じ出したが最後、居てもたってもいられなくなり、夫と協力し合い、友美を説得、誘導して親婚活へのスタートを切ります。

 

「親婚活」

 

あらかじめ念入りに作成した娘のデータを持参して、相手のデータを照合、結婚相手にふさわしいかを比較と品定めをする・・・。

 

当人不在のなか、親同士も品定め・・・それぞれ脈ありの親とデータを交換。

 

相手親にデータすら受け取ってもらえないケースもあり、厳しい現実を突きつけられる親婚活の詳細が描かれていて、これから始動しようと思っていらっしゃる親御さんには必見の書。

 

親がここまでする??という批判心も読み進むうち、うまくいけばいいな、とつい没入。

 

最後は予定調和のごとく結果オーライとなってちょっとバタバタ閉じた感ありでしたが、けっこう愉しめました。

 

なにより著者の作品は昨今の世情を反映していて気楽に読めます。

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