信号を待つ束の間をストレッチ台風一過秋天高し
ペペことムヒカ元ウルグアイ大統領が政界引退を発表されましたね。
85歳。
若いころ都市型極左武装ゲリラの創設メンバーだったペペ。
逮捕や拷問、13年間の獄中生活も経験されたが、大統領になってからの言動一致の自然と共存した清貧の暮らしぶりやその温かい人柄が全世界の人々の心を掴んでいました。
憎しみは愛のような炎だ。
愛は創造的だが、憎しみは我々を滅ぼす。
私の庭では、もう何十年も憎しみは育てていない。
貧乏な人とは、少ししか物を持っていない人ではなく、
無限の欲があり、いくらあっても満足しない人のことだ。
若者たちに伝えたい。
人生の勝利とは、金を稼ぐことではない。
倒れても、何度も立ち上がりやり直すことだ。
ペペ、ありがとう、とつい語りかけたくなるような大きな愛を感じさせる包容力豊かな笑顔。
ご夫妻、そして愛犬のマヌエラとともにお元気で末永くお幸せでいてほしい。
田辺聖子氏著『オムライスはお好き?』
「窓際族とさげすまれ、女房、子供にいびられる中年男は卵料理に生きがいを見いだした。
シブチンでええ格好しいの妻、親爺を煙たがる子供らに囲まれて、孤独で寡黙なお父さんの胸の中の呟きが、おかしくて哀しい表題作。
やっと建てたマイホームを女房一族に占領され、挙句の果てに転勤命令。
愛家家の悲哀を描く「かたつむり」他、男権弱化の世の中で夕暮れを迎えた男女の甘くも苦い極めつきの7編」
こんなコロナ禍の閉そく感のただ中で読むにはもってこいの作品。
四十代の少々くたびれた中年男のちょっとしたため息まじりの心の内を描いた7篇の物語。
何度読んでも、あるある悲哀の中にほのぼのも感じさせて一服のほうじ茶のような雰囲気。
駆け引き巧みなOLを描いても、はたまたちょっと生活と仕事に疲れた中年男を描いてもおせいさん色が冴えています。
現実にOL時代が長かったというその貴重な経験を通しての観察眼の鋭さには舌を巻いてしまう。
男たちの悲哀はもちろん現代にも通用する内容ですが、やはり今に置き換えると十年ほどプラスして読むといいかもしれません。
四十代が主のサラリーマンが主人公ですが、長寿年齢が伸びた今、プラスして五十代と考えるとぴったりくるような。
家族や仕事などたくさんの重荷を背負った男たちの丸まった背中にただよう哀愁、そしてそのため息の中にあるユーモア。
登場人物の間で交わされる大阪弁の間合いも絶妙。
古い作品ですが癒しにどうぞ。