漁連から直送している評判の魚屋さんを覗いたら、トロ箱に小鮎がいっぱい。
数年前、同じお店で見かけて甘露煮にして以来何年も見かけなかったので心が躍った。
小鮎にしては少しばかり大きいけどまあいいや。
500gで880円という安さ。
冷凍庫で常備している山椒を入れて甘露煮を作りました。
いかなごのくぎ煮と同様、煮ているときには絶対に動かしてはならないのでガマン。
煮崩れてないほどほどの甘露煮ができました~。
さて本日は21歳の若者が書いたイマドキの内容の作品です。
毎月お取り寄せしているという銭ママから月遅れで送ってもらった「文藝春秋三月特別号」
・・・最新の芥川賞受賞作を読みたくて。
「推しが炎上した。ままならない人生を引きずり、祈るように推しを推す。そんなある日、推しがファンを殴った」(「BOOK」データベースより)
著者について
1999年静岡県生まれ、神奈川県育ち。現在大学生、21歳。
2019年『かか』で第56回文藝賞、史上最年少で第33回三島由紀夫賞受賞2021年『推し、燃ゆ』で第164回芥川賞受賞
今まで何となく聞いたことがある気もする「推し」。
実用日本語表現辞典によると・・・
人やモノを薦めること、最も評価したい・応援したい対象として挙げること、または、そうした評価の対象となる人やモノなどを意味する表現。
近年の美少女アイドルグループのファンの中では自分の一番のお気に入りを指す表現として「推し」と表現する言い方が定着している・・・
なるほど、大好きなタレントや選手などのファンクラブに入って応援する対象のことね。
わたし自身はファンクラブに入ったこともないし、そこまで著名な人にお熱を上げたこともないけれど、中村哲氏に共感してペシャワール会を応援するようなものと置き換えたらわかりやすい・・・かな・・・ちょっと違うような気もするけど( ;∀;)
と思いながら読んでみたところ・・・
そこは似ても似つかないとてつもない深い闇が広がっている世界でした。
推しのアイドル真幸にお金や時間など持てるエネルギーすべてを捧げる女子高生あかり。
その捧げ方がこれまたすごい!
その行動たるや実生活とどんどん乖離して・・・というか元々実生活を営むという概念も能力も持たず生きてきて、親や姉たちから理解してもらえず、アルバイトもままならず高校も中退。
ある対象に憧れる、ハマる、推すといった行為で満足感を得るという段階を突き抜けて「推し」はあかりの生きるすべてだったのではないか。
あかりのいのちに等しい「推し」がある日突然メディアから引退する・・その後のすさまじい喪失感を描いた描写が卓越でした。
文中では明らかになっていないけれど、発達障害とか適応障害というワードを当て嵌めれば
なるほどと頷けるあかりの諸々。
世間一般の常識とか普通についていけない疎外感を「推し」とともに生きることで
やっと生きながらえていたと思えるあかりが切ない。
しかし別の視点からみれば、ここまで全霊で捧げる対象があるというのは幸せかもしれない。
かといって親の眼差しであかりのすべてを包み込むことができるか、といえば難しい・・・
人間の体でいえば背骨を失った娘をどこまで支えて立ち上がらせて
自立歩行させることができるだろうか。
そういう問いを自分に投げても自信がない。
そんなことを思いながら読了した作品。
以前読んだ『コンビニ人間』とリンクするところが見えたような作品でしたが、
共通するところは、辛うじてそんな自分を受け入れて、これがわたしなんだと開き直ることで生きていく道を見つける、ということでしょうか。
見つけてくれればいいけれど。
別世界を垣間見たわたしにはこれくらいのレビューで精一杯でした。