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ご訪問ありがとうございます。 「一日一生」を銘にさまざまな人生を読書というツールを通して味わっていきたいと思っています。 響きこし言葉に貼れるさみどりの付箋そよぎて林となりぬ

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カテゴリ: 藤原伊織

昨年9月に宿替えして以来、ほとんど何もなかったベランダに少しずつ緑が増えています。ff4d9a52.jpg



南のベランダに夫がセットしたゴーヤが細々とツルを伸ばしています。


引越しを見越して植えなかった昨年を除いて毎年ゴーヤを育てているので急な成長はまだまだ先と楽しみ♪



今朝カーテンを開けると東のベランダに植えた朝顔が一輪、生まれたての花びらを太陽の方に向けて力いっぱい咲いていました。 0e62d8ec.jpg



まだ葉っぱも満足に増えてなくて何の後ろ盾もないのに精一杯のエネルギーで咲いた様子が何とも健気で愛しい。


「天上の青(へブンリーブルー)」


濃紺でもスカイブルーでもない青がすてきです。


「天上の青」といえば、すぐ思い浮かぶのが曽野綾子氏の唯一の犯罪小説のタイトル。


宗教色の濃い、というより深い内容で忘れられない作品のひとつでした。



『天上の青』のレビューはこちら




さて今回は藤原伊織氏著『遊戯』をご紹介します。


「ネット上に対戦ゲームで出会った男と女。
正体不明の男に監視されながら、二人は奇妙に繋がり合っていく。
著者が闘病中も書き続けた表題作と、遺作となった中編『オルゴール』を収録」



本書は連作短編集となっていますが、5篇を著したところで逝去されたといういわくつきの作品・・・いうまでもなく明確な終章のない尻切れトンボ作品です。



しかし亡くなる直前までの作品としてはそれまでの藤原伊織のカラーそのものを保ったという意味で精度の高い作品となっていますので、伊織ファンにとっては存分に著者を味わえるのではないでしょうか。



のちに死因となる食道がんが2005年に発見されて以後も創作を続け、『シリウスの道』や『ダナウ』を発表、2007年の死亡直前まで雑誌に連載し続けたという著者。


しかもそれらの作品には死の影が見当たらない、全盛期の伊織氏そのものの生活臭の薄い都会的な雰囲気漂う作品となっていることに驚きます。



本書の主人公はオンラインのビリヤードの対戦を通じて知り合った本間透と浅川みのりという男女。


著者は、2人の主人公がビリヤード対戦中のちょっとしたチャットでの会話をきっかけにリアルに出会ってお互いに通じ合うものを感じ、本間が20歳のみのりに30歳の現在まで封印していた父親による虐待という歪な過去を語るという奇想天外な初対面を用意したのち、それぞれの日常をそれそれの視点で描きながら、少しずつ物語を交わらせていくという構成をとっています。


それぞれの人物設定がいかにも藤原伊織氏好みという感じ・・・苛酷な過去から未だに抜け出せず睡眠薬なしでは平穏な夜を迎えられないという内に静かな怒りを秘めた本間と20歳でありながら老成したような早熟な感性を持つ180cmという女性には珍しい長身のみのり。


しかも屈折した本間を丸ごと受け止めるみのりの間でまだ明確な恋愛関係には発展せず。


著者好みの2人の造形を見ただけで「こんなのあり?」という内なる声を発しそうですが、2人の周りに出没する自転車に乗った謎の男と、その男によるものと思われるストーキングやハッキングなどを複線として散りばめながらハードボイルドに発展しそうな伊織風色づけをして読者を誘導しているという感じでしたが、著者の死によってそれらの収束がなされないまま出版社の意向で刊行となったようです。


従って本書に納得のラストはなく著者特有の雰囲気のみが頼みの綱という作品。


それでも藤原伊織に浸りたいという方はどうぞ。

今年も夫の所属する油彩画教室主催の作品展が開催されました。  

油彩歴4年目になる夫ですが、教室ではまだ新参者の1人。


私自身は描けませんが私の数少ない趣味の1つが絵画鑑賞です。


教室の先輩方は年数も長くそれぞれに個性的ですばらしい絵を描かれていて、毎年作品展でそれらを観賞するのがとても楽しみです。


お気に入りの作品はすべてデジカメに収め、折に触れ眺めるほど私好みの作品がたくさんあります。


残念ながら夫の絵は数点を除いて私の好みから外れています。


絵を描いてくるたび夫から感想を聞かれる私は最初のうちは思ったことをそのまま伝えていましたが、どんな批判も歓迎しない様子に軽い争いになったこともあります。


このまま行くと膨大に増え続ける作品の処置に頭を悩ましています。


「遺された絵を見るたびに悲しさが募るからお棺にびっしり敷き詰めてあげるね」と私。


「ホンネはじゃまなんだろ。
ゴッホみたいに死んだあと価値が急上昇してもアフター・フェスティバルだからな」と脅かす夫。


ばかな夫婦の会話です。



さて今回は「天」と「地」の差ですが絵画つながりで。


藤原伊織氏著『ダナエ』

本書には「ダナエ」、「まぼろしの虹」、「水母(くらげ)」の3篇が収録されています。


藤原氏は絵画に造詣が深かったのだろうと想像しますが、『ひまわりの祝祭』に続いて絵画を扱っているのが表題作「ダナエ」です。


このブログのカテゴリ「藤原伊織」の項でも触れていますが、2007年5月に食道ガンで他界された著者最後の作品とされているのがこの「ダナエ」です。


「まぼろしの虹」はガンが発見されて最初の治療が功を奏して束の間の安息時期2006年11月発表の作品、最後の「水母」は病の翳りの一切ない2002年の作品。


このように病歴から辿って読むとそのときどきの藤原氏の命の息吹が感じられるようなそれぞれの作品です。



今回巻末を担当された小池真理子氏の解説に晩年の藤原氏の様子が詳しく書かれていますが、それを抜きにしても小池氏の解説は秀逸でした。


「荒ぶる諦観」

著者の作品を読んでいていつも感じる「ロマンティシズム」や「リリシズム」を小池氏は見事にこの5文字で表現しています。


そして作中に出てくる萩原朔太郎の詩「乃木坂倶楽部」の一節を引いて伊織氏そのものを言い当てています。

わが思惟するものは何ぞや
すでに人生の虚妄に疲れて
今も尚家畜の如くに飢ゑたるかな。
我れは何者をも喪失せず
また一切を失ひ尽せり。


「何も失ってはいないが、同時に、すべてを初めから失っている男。
酒場の椅子に腰をおろし、昼日中から酒を飲み、情緒すら消し去った顔をしながら、その実、あふれ出てこぼれ落ちていく情緒を手で掬いあげ、どうしようもない切実な悲しみを怒りに震えながら、じっと眺めている男」


これは小池氏の伊織評ですが、鮮烈デビューの作『テロリストのパラソル』の主人公であるアル中バーテンダーの島村を彷彿とさせて切なくなります。


前置きが長くなりましたが、3篇から代表して表題作「ダナエ」を簡単に取り上げてみたいと思います。


長い下積みの末、世界的な評価を得た中年の画家・宇佐美が個展に出展した現在の妻の父親である財界の大物・古川宗三郎の肖像画が切り裂かれ硫酸をかけられるという事件を通して徐々に浮き彫りになる宇佐美のやるせなくも切ない過去を静謐な筆致で描いています。


1985年にエルミタージュ美術館で実際に起きたレンブラントの名画「ダナエ」事件に着想を得たといわれる作品。


ソ連時代の事件なので謎多き事件として闇から闇に語り継がれている部分もあるそうですが、レンブラント作「ダナエ」がナイフで切り裂かれた上硫酸をかけられ、犯人として逮捕されたのは精神状態がおかしいリトアニア人、裁判の末責任能力なしで無罪となったそうです。   


念入りな修復を重ねたにもかかわらず、裸婦の頭部や両手、両脚に致命的な損傷を受け、残念ながら元の姿を観ることはできないそうです。


アルゴス王アクリシオスの娘ダナエと、ダナエに恋をし黄金の雨に姿を変えダナエの下へ降り立ったゼウスの来訪を喜びを持って迎えたダナエの姿を描いたレンブラント。


ちなみにダナエとゼウスの間に生まれたのがギリシャ神話の英雄ペルセウスで、祖父殺しで知られています。
この「ダナエ」事件とギリシャ神話「ダナエ」とを微妙にリンクさせ、作品に取り入れるという着想の豊かさには目を瞠るものがあります。


先に記したギリシャ神話と「ダナエ」の主人公・宇佐美の身辺とをリンクさせ深読みすることができますが、そんな読みテクなしで読むことが本道であるといえる主人公・宇佐美に著者自身を投入したような諦念のバイオレンスと究極のロマンが見られる藤原王道作品でした。

4年前食道に異形細胞が発見され、そのままがんに移行した夫はいくつかの治療法のうち、千葉の国立がんセンターでの治療法を選択して2ヶ月間入院加療をしました。

その後3ヶ月毎の検査に通い続けましたが、今年3月にやっと検査期間を1年間延ばすことができるようになりました

ご存知のように食道がんはがんの横綱といわれるほど手術が困難で、術後肺炎などで亡くなる方も多く、また治癒率も低いといわれていますが、最近では完治する患者さんが徐々に増えていることはとても心強いことです。


本日ご紹介する『ひまわりの祝祭』の著者である藤原伊織氏はそんな幸運に恵まれず、今年5月に食道がんで亡くなられました。

2005年に食道がんの告知を受けられたことを公表されていましたが、2年を経過して享年59歳でした。


大学卒業後、電通に入社、サラリーマン生活を送る傍ら

1977年『踊りつかれて』で第4回野生時代新人文学賞佳作

1985年『ダックスフントのワープ』ですばる文学賞

1995年『テロリストのパラソル』で第41回江戸川乱歩賞、第114回直木賞をそれぞれ受賞されています。


他に1999年に上梓された短編『雪が降る』はこのブログでもご紹介していますので、よかったら読んでください。       http://yaplog.jp/ashy_ashy/archive/76


本書は『テロリストのパラソル』でのダブル受賞後のファン待望の第1作として2年を経過した1997年に講談社から出版されました。


「名作『テロリストのパラソル』をしのぐ、ハードボイルド・ミステリーの傑作長編!
ロマネスクな面白さという点では、前作をしのいでいたといっても過言ではない・・・
正確で美しい日本語、時代性を刻印した軽妙な会話、魅力的で彫りの深い登場人物群、奇想天外でしかも臨場感に満ちた物語展開」

解説を受け持たれた文芸評論家郷原宏氏をしてこれほどの賞賛を受けたこの作品は郷原氏によって1997年度国内ベストミステリー第一位に選ばれています。


本書はファン・ゴッホの8枚目の幻のひまわりの魔力に取りつかれた人間たちの様々な思惑や欲望が錯綜する物語です。


バブル景気に湧く1997年ファン・ゴッホ作の「ひまわり」を巨大な価格で当時の安田火災が落札したことはいまだ記憶に新しいのではないでしょうか。


本書でも絵の魔力に羽交い締めにされたというより、付随するお金の魔力に取りつかれたと表現するほうが正しい人間模様が早いテンポで展開されます。


本書の主人公秋山は『テロリストのパラソル』の主人公島村を彷彿とさせるようなアウトサイダーとして登場します。

島村は全共闘の時代を経験したアル中のバーテンダー、秋山は妻の自殺によって自ら世間と断絶した元才能あるグラフィックデザイナーです。


両書に共通しているのは、主人公が自ら社会の落伍者となる原因ともいえるひとりの女性に対する一途な愛から過去を探っていくうちに思わぬ事件の深みに嵌っていくという設定です。

著者の一貫した女性観がこれらの著書から浮き彫りになります。


藤原伊織氏はロマンティストです


本書に戻って、ロマンティストゆえの意外な展開で物語は終結しますが、それは読んでのお楽しみです。


極上のロマンに独りよがりな感覚を抱いたのは私だけでしょうか。

OECD加盟国を中心に3年に1度15歳児を対象に実施している学習到達度調査の読解力調査部門で、2000年に31カ国中8位だった日本が2003年には40カ国中14位となり、参加国の平均近くに落ちた、との記事が出ていましたね。

提示された問題に対する2つの意見を読み、どちらに賛成かを自分の言葉で説明する、という問題が日本の子どもたちにとって苦手なようです。

音声言語が中心を占めている今の若者文化を否定するのではなく、英語だけでなく国語の授業でもヒアリングの授業や試験が必要ではないか、と国語教育の専門家でいらっしゃる国立国語研究所所長の甲斐睦朗先生はおっしゃっています。

若者の読書離れに危機を感じている昨今、ゆっくり読んで、ゆっくり味わい、ゆっくり自分が感じたことを反芻してみる、ということが大切なのではないでしょうか。

私の読書も速読なので、反省を込めて秋の夜長をじっくりした読書に当てたいと思います。


今日は「テロリストのパラソル」で鮮烈デビューされた藤原伊織氏の短編集をご紹介したいと思います。

初めての短編集「ダックスフントのワープ」とはまた趣きが異なる「雪が降る」です。

おさめられている6編の小品の中にはハードボイルドの妙手といわれている氏の肩書きを払拭するような男のロマンただよう作品がいくつかあります。

表題作である『雪が降る』では、ある少年から送られた「母を殺したのは、志村さん、あなたですね・・・」という意表をついたメールによって、これから始まる物語の入り口へと読者を力強く惹きつける効果を十分に計算し尽くしている、と感じたのは私だけでしょうか。

中年の主人公の元に送信されてきた上記のメールによって、主人公の心は現在から苦い悔恨の過去へと移り、そしてそんな過去から逃げずに向き合うことによって苦しみを昇華する、という内容です。

少年の今は亡き母と一時の過去を共有した主人公に残された未送信の一通のメール

「・・・きょう、もし会えれば最高のセックスをしたい。 してみたい。 したかった。 してください。 これから私は横浜にいきます」  

そして主人公の元へ走る途中の交通事故で、少年の母は亡くなります。

『台風』では主人公の目の前で起こった傷害事件がきっかけで、中学生の頃に初めて遭遇した殺人事件にワープしていく、という物語です。

長い人生のうちのほんの些細な出来事から簡単に闇に落ちる人間をすくいとり、現実の手のひらでじっと観察する、といった手法には驚嘆します。

作品の底に流れる著者のヒューマニティーが垣間見える作品群です。

もう1つつけ加えるなら、他の男性作家同様、氏の女性感に実態を越えた甘さを感じてもいます。

大阪の病院に受診のため、西梅田のリッツ・カールトンに宿泊しました。

岡山から大阪までは1時間以内で行けるのでいつもは日帰りですが、リッツのすばらしいservice ぶりを体験したいということと、リッツがホテル紹介サイトに参加したことで私のような庶民でも泊まれる宿泊料金を提供していただけるようになったということで、堪能してきました(#^.^#)

噂に違わず、細部にいたるまでの心憎い気配り、それでいてさりげなく、サーヴィスを押しつけないhospitality に満足しました

世界のリッツが東京ではなく、大阪それも西梅田の地を選んだ理由はわかりませんが、大阪に近い私としてはラッキーです。

来年には日本上陸10周年を迎えるリッツは2フロアずつの改装を進めていて、来年3月には全室改装終了となります。
また改装後の宿泊を楽しみにしています。

今日は、史上初江戸川乱歩賞、直木賞ダブル受賞作「テロリストのパラソル Terrorist’s Parasol」をご紹介します。  
ご存知日本のハードボイルドの久々の傑作の書き手として鮮烈デビューした藤原伊織氏の2冊目の作品です。

ハードボイルドの詳しい定義を知らない私ですが、この作品はハードボイルドとミステリーの中間に位置するのではないでしょうか。

新宿中央公園での爆発事故に意図せず居合わせたアル中のバーテン島村を主人公に、過去全共闘時代の主人公を含む友人たちの挫折感をうまくリンクさせながら、現在から過去へ、過去から現在へと読者をどんどん物語の深みに追い込むテクニックのすごさは、乱歩賞選考委員の絶賛を浴びました。

例えば、ハードボイルドの大先輩作家北方謙三氏曰く―前編に漂う暗く沈んだモノトーンは、並の力量で出せるものではないと思った―

冗長な説明文的な文章を極力省き、洗練された会話を通して登場人物の背景を読者に伝える、そんな成熟したテクニックが魅力的です。
 
反面、全共闘生き残りの悲哀が主人公を取り巻く周辺の登場人物に色濃く投影されすぎていて、現実感に乏しい内容になっているように思うのは私だけでしょうか。

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