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ご訪問ありがとうございます。 「一日一生」を銘にさまざまな人生を読書というツールを通して味わっていきたいと思っています。 響きこし言葉に貼れるさみどりの付箋そよぎて林となりぬ

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カテゴリ: さ行ーその他

冬枯れの桜

川土手の冬枯れの道さくらみち眠る花芽を風が撫でゆく


はや2月、如月。

 

もうすぐ春が始まるという〈立春〉や水がぬるみ草木の芽が出始めるとされる〈雨水〉が
暦に並んでいて気持ちが少し前向きになれそうな予感のする月。

 

しかしテレビをつければ新型コロナのことばかり。

 

それでも少し進んだといえるのは新型コロナ対応のワクチンの話題で盛り上がっていること。

 

インフルエンザのような特効薬も見つからない今、やっと一筋の希望の光が見えてきたような・・・

 

先の見えないいらだちにうつ状態になっている人もいると聞きます。

 

先日は罹患が原因での自殺者まで。

 

絶望は死に至る病である

 

キェルケゴールの有名な言葉にあるように、絶望を避けるためにわたしたちは
暗闇の中でも本能的に一条の光を手探りして救いを求める・・・

 

宗教であったり、人であったり、薬であったり・・・

 

このコロナ禍でワクチンは一条の光。

 

3社のワクチンが承認されているようですが、今日本で話題にしているのは
アメリカのファイザー社のもの。

 

副反応や効果のほどがまだまだ未知数のようでわたしたちのように
接種にためらいがある人も多いと思いますが、どうやら順番でいくと
3月~4月あたりに選択を迫られるような・・・

 

現在進められている日本製のワクチンの完成を待ちたいとも思ったりしていますが、
その期間のことを思うとどうしていいか、正直ちょっと揺れます。

 

 

さて本日は7回山田風太郎賞受賞作品、映画化もして話題を呼んだ作品です。

 

 

罪の声

塩田武士氏著『罪の声』
 

京都でテーラーを営む曽根俊也。
自宅で見つけた古いカセットテープを再生すると幼いころの自分の声が。
それは日本を震撼させた脅迫事件に使われた男児の声とまったく同じものだった。
一方、大日新聞の記者、阿久津英士もこの未解決事件を追い始め―。

圧倒的リアリティで衝撃の「真実」を捉えた傑作(「BOOK」データベースより) 

 

著者について

1979年兵庫県生まれ
関西学院大学卒業後、神戸新聞社に勤務
2010年『盤上のアルファ』で第5回小説現代長編新人賞将棋ペンクラブ大賞受賞
2016年『罪の声』で第7回山田風太郎賞受賞「週刊文春ミステリーベスト10」第1位14回本屋大賞第3位
2019年『歪んだ波紋』で第40回吉川英治文学新人賞受賞


今から
36年前の1984年~1885年にかけて阪神間を舞台に食品会社を標的とした
グリコ・森永事件を題材とした作品。


「かい人
21面相」とか「キツネ目の男」、子どもの声を使った脅迫テープとかの
事件の切れ端を覚えていらっしゃる方も多いと思います。


結局時効が成立して完全犯罪となったこの未解決事件。


劇場型といわれた代表格の事件でした。

本書は上記の事件をモチーフとして虚実取り混ぜて物語化したもの。

企業への脅迫テープに自分の子ども時代の声が使われていたことを偶然知った俊也と、
あるきっかけからこの時効が過ぎた未解決事件を追うことになった大日新聞の記者・阿久津。

この2人を主人公にお互いを交差させながら物語が進んでいきます。

著者は丹念に調べた実際のグリコ・森永事件の詳細を縦糸に、
フィクション上の主人公たちの動きや心情を横糸にして
リアリティあるフィクションという壮大な物語を構築しています。

さすが元新聞記者ならではの綿密な取材の上に築いた物語。

読み進むうち、この物語こそが真実ではないか、という錯覚に陥ってしまうほど。

 

フィクションとノンフィクションの壁を乗り越えたような作品。


主人公
2人の交差部分の切り替えが少し読みづらかったり、
真実味を持たせようとするあまりの余剰の多い文が少し目に余るところはありますが、
それらを超える構成力に圧倒されて読了。

 

この実話と作話の狭間の帳尻をどのようにつけるのか・・・
というわたしの独断的な興味も最後まで失わせることなく
ラストを迎えたのには感服しました。

 

しかもラストに感動を用意しているところ・・・圧倒的力作でした。

 

エンタメとしておススメです!!

何店

今日1月17日。


26年目の阪神淡路大震災の記念日。

 

連日のコロナ禍のニュースに埋もれて忘れていましたが、崩れた阪神高速の

突先に引っかかって九死に一生を得たトラックの運転助手の方の

インタビュー記事を新聞で読んで当時のことをまざまざと思い出しました。

阪神橋げた

1995年1月17日午前8時、兵庫県西宮市迫和義様の写真をお借りしました。


その阪神高速の切断場所から六甲山の方へ上がったJRと阪急のちょうど

中間地点のマンションが住まいだった我が家は築年数の浅い

マンションだったので建物こそ大丈夫でしたが、

各部屋の電化製品や家具はほとんど壊滅、

玄関ドアも歪んでしまって脱出に苦労しました。

 

当時の状況は過去ログでも書いていますので、よかったら読んでいただければと思います
→  

 

校舎が半壊したため当面通学もなくなって仲間同士喜んでいた
小学校
6年生だった次男もいまでは一児の父親。

 

光陰矢の如し

 

思えばあっという間の半世紀でした。

 

 

さて本日は久しぶりにとても読み応えのあった作品のレビューです。

 

 

革命前夜

須賀しのぶ氏著『革命前夜』
 

バブル期の日本を離れ、東ドイツに音楽留学したピアニストの眞山。
個性溢れる才能たちの中、自分の音を求めてあがく眞山は、ある時、教会で啓示のようなバッハに出会う。
演奏者は美貌のオルガン奏者。
彼女は国家保安省の監視対象だった…。

冷戦下のドイツを舞台に青年音楽家の成長を描く歴史エンターテイメント。
大藪春彦賞受賞作!(「BOOK」データベースより)

 

著者について

 

1972年埼玉生まれ

1994年『惑星童話』でコバルト・ノベル大賞読者大賞受賞

2010年『神の棘』で第13回大藪春彦賞候補

2013年『芙蓉千里』三部作で第12回センスオブジェンダー賞大賞受賞

2016年『革命前夜』で第18回大藪春彦賞受賞&第37回吉川英治文学新人賞候補

2017年『また、桜の国で』で第156回直木賞候補&第4回高校生直木賞受賞

2017年『夏の祈りは』で「本の雑誌が選ぶ2017年度文庫ベストテン」1位&「2017オリジナル文庫大賞」受賞

 

いかに速読乱読のわたしでも読了に思わぬ時間がかかってしまった作品。

 

その間、疲れたら並行して別の本を読み・・・を繰り返してやっと読了。

 

舞台はベルリンの壁が崩れた1989年前後の東ドイツ。

 

1989年というと・・・平成元年。

 

それまで西へ大量出国の事態に晒されていた東ドイツ政府が対策として

旅行&国外移住への規制緩和を発表したことで、その日の夜ベルリンの

壁に市民が殺到、翌日ベルリンの壁の撤去作業がスタートして

東西分断の歴史は終結。

 

第二次大戦の置き土産となっていた分断の歴史は

こうして一滴の血も流さず終わったのでした。

 

この劇的ニュースに躍動するような衝撃を受けたのを覚えています。

 

平成のはじめとおわりに〈壁〉ふたつスクラップアンドビルドというにはあらねど

主人公は昭和から平成に年号が変わったバブル期全盛時に日本から

東ドイツのドレスデンの音楽大学に入学するためにやってきた眞山柊史。

 

敬愛するバッハが今なお息づく国として高校生のころから夢見ていた東ドイツ。

 

想像上輝く新天地だったこの地に一歩足を踏み入れた彼の目に

映ったのはなにもかも灰色の世界。

 

そこからヘア・マヤマこと眞山柊史の視点を通して東ドイツの実情が

さまざまな人間模様とともに語られています。

 

密かに西ドイツへの移住を渇望する人々。

 

それに比すように存在する密告者たち、そこここに張り巡らせた監視の目。

 

東ドイツを愛する人々は祖国をDDRと誇り高く言うという。

 

DDR・・・すなわちドイツ民主共和国。

 

対して西ドイツはBDR・・・ドイツ連邦共和国。

 

そのDDRで出会ったマヤマと同世代の音楽家の卵たち・・・

ハンガリー出身のヴァイオリニスト・ヴェンツェル、東ドイツ出身のイェンツ、
ピアノ科の北朝鮮出身の李とヴェトナムからのスレイニェット、

そしてこの物語の核になる美しいオルガニスト・クリスタ。

 

練習や独奏、ヴァイオリンとの協奏を通して描かれる音の世界。

 

現実にピアノを弾いた経験もないという著者から紡ぎ出された音の表現の
すばらしさにただ驚くばかり。

 

音楽小説としてまず思い浮かぶのは恩田陸氏の『蜜蜂と遠雷』ですが、

音楽的要素は甲乙つけがたいほど。

 

しかしその音楽を通してとてつもない大きな主題を構築しているところ、

すごい小説だったという他、レビューの言葉が見つからない。。

 

本書を前半と後半に大きく分けると、

前半部分は音楽大学で学ぶ音楽家の卵たちの持つ音楽に対する

それぞれのプライドや感性、

後半部分はDDRの暗部での密告、裏切り、逃亡などが

描かれていてミステリー的要素もかなり。

 

 

ナチスのゲシュタボを連想させるようなシュタージという存在を通して、

いままで構築してきた家族関係や夫婦関係、友情などが

いとも簡単に崩れていく様が描かれていてまるでスパイ小説のようでした。

 

そして最後に圧巻のラストが用意されていて・・・感服の作品でした。

 

ぜひどうぞ!!!

夜空数年前長野で撮ったフォト


今の時期、午後4時半ごろ東の地平より顔を出し午後10時半ごろ南中
午前
5時ごろ西の地平に沈むというオリオン座。



双眼鏡を持ち出してはトライしています。

ひと月ごとに時間と位置もずれるという。

東から昇って西に沈むというオーソドックスな動き。

オリオン座のなかで右肩にあるひときわ明るい星ベテルギウスが昨秋から暗くなっているという。

1000万年の寿命のうち9割ほど過ぎたそうで、いつ寿命が尽きてもおかしくないらしい。

命が尽きるときは超新星爆発を起こし、聖書の「ベツレヘムの星」のように
昼間でも見えるほど明るくなったのち、見えなくなるという。

宇宙137億歳

太陽47億歳

地球46億歳

ベテルギウス800万歳

地球からベテルギウスまでの距離が約640光年

いま私たちがみている光は平安~室町時代に発せられたものだという。

宇宙のことを想像すると人間というもののあまりの小ささにたじろいでしまう。

1998年にスペースシャトルのディスカバリー号で宇宙飛行の最年長記録を打ち立てた当時77歳のジョン・グレン・ジュニアの見た宇宙。

宇宙はいまだ恐れは憎しみや貪欲や偏見で汚されていない

対比するようなオッペンハイムの「戦争と笑い」の中の名言。

人間はこの宇宙の不良少年である

須臾の間に終わってしまう人生。

不良少年少女なりに明日を過剰に思い煩わず、今日を大切に過ごさねば。

 

 

広島高女

関千枝子氏著『広島第二県女二年西組』
 

勤労動員にかり出された級友たちは全滅した。
当日、下痢のため欠席して死をまぬがれた著者が、40年の後、一人一人の遺族や関係者を訪ねあるき、クラス全員の姿を確かめていった貴重な記録(「BOOK」データベースより)

 

著者のあとがき・・・

・・・その後の40年間の苦しみも含めて、全員のことを書き残したかった。
また同じ組で机を並べていた私が書く以上、単なる被爆記録でなく、一人一人を人間として書きたかった



広島県立第二女学校二年西組の被爆記録。

 

原爆投下の日、体調が悪く作業動員に欠席し、ひとり生き残ってしまった

著者の渾身のノンフィクション。

 

わずか13~15歳で突然命を奪われなければならなかった級友たちの

短いなりに楽しかった学校生活での少女らしい姿が

等身大で描かれていてより切なくなってしまう。

 

当たり前だけれど、一人一人には家族があり、過去があり、そして

これから歩むべく未来もあった・・・。

 

この受け入れ難い死を受け入れざるを得なかった遺族の葛藤や悲しみ、

怒りもしっかりと描かれている。

 

ある遺族の言葉にいたたまれなさを感じてしまう。

 

犬死で結構ですよ。犬以下の惨めさで死んだんですもの」

未だにこの地球上に核兵器はなくならないどころかという状態だし、
これほどの凄惨な体験をした国が核兵器禁止条約に批准しないという現実。

核兵器禁止条約交渉の日本の空席に折鶴の(もだ)

上述のように悠久の宇宙からみると、人間が生きているのはほんの一瞬、
こんな争いをしてお互いを滅ぼしてどうしたいのか??

今からでも心を入れ替えるのは遅くない・・・

 

特に政治家の方々には絶対に読んでほしい一冊です。

2週間ほど前のこと。

 

何か月ぶりかに歌友3人で県外に出かけました。

 

今年開館した〈四国水族館〉に行ってみたいね、ということでその場にいた3人で急遽決定。

 

せっかくならその近くの〈香川県立東山魁夷せとうち美術館〉と〈丸亀城〉も入れようということになり、香川県出身の友人が計画を立ててくれました。

東山魁夷美術館からの瀬戸内海
 
讃岐富士

絶好の行楽日和

 

まず坂出に降り立ち、〈東山魁夷せとうち美術館〉に行くためタクシーに乗り込んだときのこと。

わたしが前の助手席に乗り、ドアを閉めたとき思わぬ出来事が!

後ろでKさんの小さな悲鳴・・・わたしも運転手さんも何が起こったかわからず数秒の間。

Kさんと並んでいたTさんの言葉で慌ててドアを開けました。

前のドアの柱を掴んでいたらしい・・・Tさんの渾身のマッサージを受けながら薬局かコンビニを探すも見つからず。

美術館に着いて・・・祈るような気持ちでエントランスに駆け寄って事情を話すと救急箱からシップを探しだしてくれました。

地獄に仏・・・詰めた3本の指にシップを巻いて何とか応急処置。

旅の間中ずっと気が気ではありませんでしたが、当日は目立った変化もなく痛みもやわらぎ無事に計画通りに最後の水族館を終え帰路に着きました。

帰ってから何度か指の様子を聞きましたが、奇跡的に骨折もせず腫れもなかったようでやっと一安心したのでした。

美術館やお城、水族館より強烈な思い出となった秋の一日でした。

 

 

誘拐児

さて本日は
翔田寛氏著『誘拐児』のレビューを少し。 

 

終戦翌年の誘拐事件。
身代金受け渡し場所、闇市。
犯人確保に失敗。
そして十五年後、事件がふたたび動き出す―。
人間の非情と情愛を見つめる魂の物語。第54回江戸川乱歩賞受賞作(「BOOK」データベースより) 

著者について

1958年東京都生まれ
2000年影踏み鬼で第22回小説推理新人賞受賞
2001年『奈落闇恋乃道行』で第54回日本推理作家協会賞候補
2008年『誘拐児』で第54回江戸川乱歩賞受賞
2014年『墓石の呼ぶ声』で第67回日本推理作家協会賞候補
2016年『真犯人』で第19回大藪春彦賞候補

 

戦後混乱期の昭和21に起きた未解決幼児誘拐事件。

 

その15年後に起きたある殺人事件。

 

母が臨終の直前に発した言葉から自分の出自に疑念を持った谷口良雄が自らの出生を辿っていく過程と、後者の殺人事件を追う刑事たちの辿っていく過程とが並行して描かれた物語。

 

このそれぞれのアプローチが最後に一つの結びとなって終わるというミステリの定石が丁寧に描かれています。



殺人事件を追う刑事が
2組4人登場させることで少し物語を複雑にしている上、誘拐児である疑いを持った谷口良雄に恋心を抱く看護師の杉村幸子を登場させることでますます真相追及の道筋が入り組んできた感あり。

しっかりした構成でありながらわたしにとってとても読みにくい作品でした。

日の出

新型コロナ席巻したるこの星に祈りのごときいのち生れたり


次男の息子ジンジンももうすぐ7か月。

 

成長のはやさには驚くばかり。

ジンジン

赤ちゃん専門のアルバム「みてね!」を介して日々の成長ぶりを見ている身としては会っていない寂しさは少し紛れていますが、やはり実物を抱っこしてみたいなと思うこの頃。

 

長男の娘アスカのときにはコロナ禍など思いもよらず、行ったり来たりを繰り返して存分楽しめたのに・・・。

 

長く生きていると予期せぬ出来事は次々やってくるね、と夫と話しています。

 

 

 

 

そしてバトン
瀬尾まいこ氏著『そして、バトンは渡された』

 

森宮優子、十七歳。

継父継母が変われば名字も変わる。

だけどいつでも両親を愛し、愛されていた。

この著者にしか描けない優しい物語。

「私には父親が三人、母親が二人いる。 家族の形態は、十七年間で七回も変わった。 でも、全然不幸ではないのだ。」

身近な人が愛おしくなる、著者会心の感動作(「BOOK」データベースより)

 

2019年本屋大賞大賞受賞作。

 

著者について

1974年大阪府生れ
2001年卵の緒で坊っちゃん文学賞大賞
2005年『幸福な食卓』で吉川英治文学新人賞

2009年『戸村飯店 青春100連発』で坪田譲治文学賞受賞

 

ずっと読みたかった作品。

 

運よく図書館で発見。

 

世の中には血筋というものに拘る人々がことのほか多い。

 

最近の若い世代はともかく戦後をかなり過ぎて大家族という形態が徐々に減少していったわたしたちの世代でも家の跡取りとして男の子が生まれることに拘る人がかなりいた気がします。

 

養母にこれ以上ないほどの愛情をもって育てられたという経験からかわたしは血脈というものにほとんど拘りをもっていませんが、周りの大人たちのちょっとした言動などから公にしてはいけないこと・・みたいなものを感じたこともあります。

 

不妊治療がクローズアップされている現代では、様々な段階の不妊治療の末、子どもを得られなかった人が第三者の子宮を借りたり、また養子を迎えたりということを公にすることでかなり風通しのよい社会になったなぁという感慨もあります。

 

自分自身は3人の子どもに恵まれましたが、もしそうでなくて養子を迎えるという選択をした場合のことを想像してもすんなり迎えられると思う自分がいますが、子どもがいないと家族の形態ではないと否定する気持ちには強く異議を唱えたいとも思っています。

 

大家族でも3人家族でも、また夫婦2人でも1人でも人生を豊かに幸せに過ごすということはその人の考え方次第だとこの歳になって強く思うからです。

 

話がどんどん横道に逸れてしまいましたが、本書を通してそんなことを思いました。

 

この物語の主人公の女の子も次々バトンのように大人から大人へと渡され親権を変えられるにしたがって苗字や環境が変化することで周りに同情の目で見られることを繰り返しながら、ちっとも不幸ではない自分と周囲が勝手に想像するティピカル像との乖離に戸惑う様子が描かれていて興味深い物語になっています。

 

 

ここに登場する義母義父はそれぞれ包容力のある、というか考え方の自由かつ愛情豊かな人たちで本当によかった!

 

方や社会の片隅に目を向けてみると、虐待されて死に至ったり死に至るまでもなく苦しんでいる連れ子の事件が後を絶ちません。

 

虐待する側の人間性に問題があることは確かですが、その社会的な境遇にも一端があることは否めない社会。

 

ラストに主人公の結婚式でバージンロードを歩く3番目の父親・森宮の造形があまりにステキで思わず胸が温かくなりました。

 

久しぶりのハートウォーミングストーリー、未読の方、ぜひどうぞ。

吾亦紅

店先の花あしらひは吾亦紅小さき穂先を撫づる秋風


家中にマンガがあふれていたのはいつ頃までだったか・・・何度かの引っ越しの折、独立していた子どもたちに送りつけたりしながら、最後にこの住まいに越したとき子どもたちにいるかいらないか聞いて送ったり処分したりしたのが最後。

今あるのは土田よしこ氏の『つる姫じゃ~つ』全巻のみ。

今ちょっと検索してみてびっくり!

ヤフオクで全11巻で即決16000円!

でも我が家のは何度も回し読んでカバーもないし・・・。

以前は『キャプテン翼』、古くは『プロゴルファー猿』、手塚治虫氏のほとんどのマンガが全巻揃っていたし、『こち亀』も次々買い足していっていた・・・

手塚氏の『ブラックジャック』の行先は長男のところかな?

いまあれば再読してみたい気もする名著。

 

小説ブラックジャック
本日は
瀬名秀明氏著『小説ブラックジャック』 のご紹介です。 

 

医療ロボット技術は日進月歩。

遂に自律型AIを搭載した医療ロボットが完成。

その開発チームの医師の言葉は、あたかもB・Jへの挑戦状だった(『B・J vs.AI』)。

フライト前のB・Jに、青年は「弟は、いまも一四歳のままです」と言った。

iPS細胞の新たな可能性を信じ、時が止まった命と対峙するB・J(『命の贈りもの』)。

ある夏届いた手紙に誘われ、中東の街を訪れたB・J。

同時期、遠く離れた診療所の中、留守番するピノコの目前で小さな命の灯が消えかけていた!(『ピノコ手術する』)。

B・Jの友人で医師の手塚は、中学生の息子を持つ行きつけの呑み屋の女将が心配だ。

わが身を顧みず働く母を思い、息子から手塚に驚愕の提案が(『女将と少年』)。

母の仇かつ身体と心に消えない傷を残した男の居所を掴んだB・J。

たどり着いたその場所で、「死神の化身」と呼ばれる男、ドクター・キリコと遭遇(『三人目の幸福』)。

医学界に一石を投じるヒューマンドラマ!(「BOOK」データベースより)

 

著者について

1968年静岡県生まれ 

1995年『パラサイト・イヴ』で第2回日本ホラー小説大賞

1998年『BRAIN VALLEY』で第19回日本SF大賞

2011年『小説版ドラえもん のび太と鉄人兵団』刊行

 

医療マンガの金字塔といわれた『ブラック・ジャック』。

手塚氏のドクターとしての豊富な知識と未来への想像力が結実した作品でした。

本書はその『ブラック・ジャック』のノベライズ。

大胆な試みといえますが、著者は以前にも『ドラえもん のび太と鉄人兵団』を上梓しているので、2度目のノベライズ。

世に知れ渡っているマンガのノベライズはさぞたいへんだろうな、と推測しますが、想像を超えた出来栄え。

五話からなる原作のオマージュ。

偉大な原作に対するリスペクトがそこここに見られる作品となっています。

それに加えて・・・

日進月歩の医療現場でスタートしたAIによる手術やIPS細胞などの現代医療を取り入れながら近未来的なものも含め、現代の医療の問題点にもきちんと立ち向かっているところ、著者ならではの膨大な知識の賜物といえるでしょう。

自ら「奥たん」と名乗るピノコも親友手塚医師も宿敵Dr.キリコも健在。

それぞれの物語になくてはならない人物として登場。

 

手塚の根底を流れるヒューマニズムが本書にもあふれていて読み応えのある作品でした。

もう一度原作をじっくり味わってみたい・・・そんな本書、ぜひどうぞ。

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