VINのらんどくダイアリー

ご訪問ありがとうございます。 「一日一生」を銘にさまざまな人生を読書というツールを通して味わっていきたいと思っています。 響きこし言葉に貼れるさみどりの付箋そよぎて林となりぬ

PVアクセスランキング にほんブログ村

カテゴリ: 浅田次郎

今日は3月11日。


あれから8年たったのですね。


もう8年というか、まだ8年というか・・・。


政府主催の追悼式の模様がテレビで流れていました。


安倍首相は「被災地の復興は着実に前進している」と述べ、放射能漏れ事故を起こした東京電力福島第1原発周辺の帰還困難区域でも、避難指示解除への取り組みが進んでいると強調されていましたが、特集で現状を映す映像をみていると、行方不明者2,562人、いまだ1万4000人の避難者がいるなど、到底力強く前進しているようには思えませんでした。


今までずっとテレビを観ながら胸が締めつけられるような悲しみに襲われていました。



亡くなられた方々のご冥福を心からお祈りするとともに、喪失の悲しみにおられる遺族の方々に一日でもはやく、心穏やかな日が訪れるよう願っています。



そして安心できる生活基盤が一刻もはやくできますように。







今回は浅田次郎氏著『帰郷』のご紹介です。 


「第43回大佛次郎賞受賞作。

もう二度と帰れない、遠きふるさと。
学生、商人、エンジニア、それぞれの人生を抱えた男たちの運命は「戦争」によって引き裂かれた――。
戦争小説をライフワークとして書く著者が、「いまこそ読んでほしい」との覚悟を持って書いた反戦小説集。
戦後の闇市で、家を失くした帰還兵と娼婦が出会う「帰郷」、
ニューギニアで高射砲の修理にあたる職工を主人公にした「鉄の沈黙」、
開業直後の後楽園ゆうえんちを舞台に、戦争の後ろ姿を描く「夜の遊園地」、
南方戦線の生き残り兵の戦後の生き方を見つめる「金鵄のもとに」など、全6編」



久しぶりの浅田次郎氏。


「きんぴか」シリーズを代表とする氏の初期のピカレスク小説のファンを自認していますが、氏の作品の幅の広さにはただ感服するばかり。


「小説の大衆食堂」などと氏は自称されていますが、それぞれの分野の充実度がすごい!


本書はライフワークとする氏の戦争小説の一環。


2002年~2016年に「小説すばる」に掲載した6篇の短篇を一冊にまとめたもの。



まず表紙のモノクロ写真にくぎ付け。


古びた生垣の前で背中に毛布と背囊を括りつけゲートル姿のひとりの兵隊が敬礼をしてます。

表紙のうしろには敬礼の相手・・・もんぺ姿の女性と女の子がお辞儀をしている写真。


戦地で生死を共にし戦死した戦友の遺言を託された生き残りの兵士が戦友との約束を果たすべく遺された家族に会いにいった・・・そのような想像をしてしまう写真。


それだけで切なくなってしまいます。


6篇とも戦争小説ではありますが、戦場で戦う兵士の物語ではなく、戦争によって起こったさまざまな出来事に光を当てて、戦争というものの悲惨さに肉薄している作品といえるでしょう。



◆終戦を機に帰還した古越庄一二等兵を待っていた厳しすぎる現実を描いた表題作「帰郷」


◆軍上層部の下した愚かな戦略の末、ニューギニアのニューブリテン島に置き去りにされた清田吾市一等兵の死への覚悟と諦念を描いた「鉄の沈黙」


◆レイテ島で戦死した父の顔を知らず、母の苦労を身に享けながら育った大学生・武内勝男が遊園地でのアルバイトを通して戦後の繁栄の裏にある戦争というものに気づく様子を描いた「夜の遊園地」


◆自衛隊駐屯地の不寝番に立った陸上自衛隊の片山士長が過去に同じ任に就き戦死した陸軍の仙波上等兵と時空を超えて邂逅し、心の交流を描いた「不寝番」


◆殺されるか殺すかの二者選択しかない戦場で飢えに苦しみ、相手の屍を胃に収め祖国に連れ帰るという兵士同士の約束を果たした染井軍曹の復員前後の地獄を描いた「金鵄のもとに」


◆海軍を志願した沢渡中尉と香田中尉が乗り込んだ特殊潜水艇での任務中、操縦不能となり意識が薄れるなかで日本に残してきた恋人との思い出をなぞりながら死にゆく様子を描いた「無言歌」


このように戦争の最中でも、戦後でも、なべてすべての国民を不幸にし、社会を、人々の体を、心を破壊してしまう戦争。


人が人でなくなってしまう戦争。


平成が戦争のない時代で本当によかった・・・次の時代もこの状態が続きますように、と祈らずにはいられません。

友人から先日はたけのこ、昨日はふきのとうをいただきました~(^.^)


なによりの春のプレゼントで嬉しい♪


たけのこ堀りが趣味の名人がいて、ほんの1mmくらいの土の盛り上がりを靴の裏で感じて、そこを掘ったら・・・生まれて間もない小さなたけのこが!

8d52b8d8.jpg


たけのこご飯と土佐煮にしました。


そしてふきのとう・・・このブログを訪問してくださる花オクラさんから。


ブロ友であり、リアルな友でもある花オクラさん、車で30分くらいの倉敷にお住まいです。


近くの山で採集した採れたてを持ってきてくださいました。



さくらえびとふきのとうの天ぷら

ふきのとうのペペロンチーネ

ふきのとうの酢味噌和え


写真を撮り忘れて・・・堪能しました!





さて久しぶりの浅田氏です。


浅田次郎氏著『月のしずく』 


「再生の祈りに満ちた珠玉の短篇集――。
三十年近くコンビナートの荷役をし、酒を飲むだけが楽しみ。
何一つ変わりばえのしない生活をおくる佐藤辰夫のもとに、十五夜の満月の晩、偶然、転がり込んだ美しい女・リエ―ー出会うはずのない二人が出会ったとき、今にも壊れそうに軋みながらも、癒しのドラマが始まる。
表題作ほか、子供のころ、男と逃げた母親との再会を描く「ピエタ」など、全七篇の短篇集(他に「聖夜の肖像」「銀色の雨」「琉璃想(リウリィシァン)」「花や今宵」「ふくちゃんのジャック・ナイフ」)」


1996年~1997年に発表された作品を一冊にまとめたもの。


ベストセラーとなった『鉄道員』を上梓された頃と重なって・・・若書きです。


七篇はどれも若い頃の浅田氏特有の虚構と現実をない交ぜにしてロマンティックなスパイスを加えたような出来上がり。


現在まで引きずる過去の重さに喘ぐ女たちと、そんな女たちに見返りなしに尽くす男たちの純情は胸を打つものがありますが、やはり現実から浮遊した感じ。


どの作品も女のしたたかさに比べ男のピュアな心が切ない。


ありえない展開を著者の筆力で感動的に仕上げてはいるものの・・・


物語を作ることを楽しんでいるような、そんな小品がそれぞれの味を醸し出して並んでいますが、ちょっとあざとさを感じてしまいました。

でも読みやすい短編集です。

ノーベル医学・生理学賞受賞という嬉しいニュースが飛び込んできました。

東京工業大学栄誉教授の大隅良典氏。

細胞が不要になったたんぱく質などを分解する「オートファジー」と呼ばれる仕組みを解明されたそうです。


「オートファジー」は細胞に核のあるすべての生物が持つもので、細胞の中で正しく機能しなくなったたんぱく質などを、異常を起こす前に取り除く役割や、栄養が足りないときにたんぱく質を分解して新しいたんぱく質やエネルギーを作り出す役割を果たしているそう・・・書きながらよくわかりませんが(ーー;)


大隅氏は酵母の細胞を使って「オートファジー」の仕組みの解明に取り組み、平成5年にこの仕組みを制御している遺伝子を世界で初めて発見されたそうです。


オートファジーの遺伝子が正常に機能していないといわれるパーキンソン病などの神経の病気の一部の予防法や治療法の開発につながることが期待されるもの。


医学は私たちの想像をはるかに超えて日々進歩しているのですね。


友人にもパーキンソン病初期の人がいるので、希望の光が見えてきて嬉しいです。



一方、ノーベル生理医学賞候補として最有力視されていた京都大学客員教授の本庶佑氏。


私はずっと以前持病で漢方療法を取り入れていた病院の医師を中心とした勉強会で本庶氏の論理について少し聞きかじっていたので本庶氏に注目していたのですが、今回は残念でした。

来年こそは!


本庶氏の研究成果は免疫にブレーキをかける役割を持つタンパク質「PD1(プログラム細胞死1)」を見つけられたこと。

この働きを制御してがんを治療できることを明らかにし、全く新しいがん免疫療法の道を切り開かれました。

その研究を基に開発された抗がん剤「オプジーボ」は最初はメラノーマなどの皮膚がんの薬として小野薬品から販売されましたが現在は肺ガンにも適用が広がりました。


その「オプジーボ」で肺の腫瘍の著しい縮小を体験していらっしゃるSNSの友人Kさん。

後期高齢者とは思えないお茶目でチャーミングな方。


そのKさんから、「『報道ステーション』に出演するので観てください」という嬉しいお電話をいただきました。

早速その夜、夢の治療薬「オプジーボ」で著しく快復された肺がん患者さんとして大阪成人病センター呼吸器内科医師の今村主任部長とともに出演されているお元気で溌剌とした姿を拝見して感無量でした。

Kさん、ほんとうによかったですね!


3割負担の若い人にとってはとてつもない高価な薬の上、効果のある人とない人との差が著しいという難点もあり、それらは今後の課題と思いますが、裾野が広がり、望む多くの人が使えるようになり、そして快癒に向かわれますように、と祈らずにはいられません。





さて本日は浅田次郎氏著『真夜中の喝采 きんぴか�B』をご紹介します。


「草壁明夫が殺された。
広橋をスケープゴートにした大物政治家・山内龍三の悪行を報道した、あの気鋭のジャーナリストが……。
訃報を耳にした広橋は凍りつき、草壁に伝え忘れたセリフを口にするために立ち上がる。
一方、ピスケンと軍曹は、ヤクザと悪徳政治家が自己弁護と保身に走るなか、正義の暴走を敢行する。
三悪漢の破天荒な物語、ひとまず完結!」


久しぶりの浅田氏のピカレスク系^_^

ここのところ深刻な作品が続いたのでお口直しに。

ご存知「きんぴか」シリーズの最終巻。

『三人の悪党 きんぴか�@』、『血まみれのマリア きんぴか�A』から本書へと続きます。


広橋、ピスケン、軍曹という超個性的&破天荒な三人の悪漢が、本当の悪と戦う胸のすくピカレスク。


「一杯のうどんかけ」「真夜中の喝采」「裏町の聖者」「チェスト!軍曹」「バイバイ・バディ」の5編からなります。


「一杯のかけそば」のパロディとして描かれた「一杯のうどんかけ」は貧困を武器に商売を行う家族の物語。


「真夜中の喝采」は、政界と暴力団との癒着を果敢に暴いたジャーナリスト・草壁明夫の無残な死体を見て三人が犯人と思しき暴力団に落とし前をつけるため奔走する物語。


「裏町の聖者」は、広橋の前妻の現在の夫である医師の現代版赤ひげ物語。


それぞれ現代にマッチしない時代遅れのような一本気の男たちがそれが正義と思ったことへ向かって一直線に進む物語。


著者特有のパロディがあちこちに散りばめられていて、なんとも痛快な軽い人情劇。


興味ある方は3篇続けて読まれることをお勧めします。

da5713f6.jpg
明日で東日本大震災が起こって丸5年。


新聞でも2週間ほど前より震災のその後の特集を組み、犠牲者とそのご家族、被災者の方々の現在、そして被災地の今の様子、原発事故の後処理の進捗状態など日々掲載されていますが、たくさんの問題が未解決のまま、途方に暮れているという感じです。


あのような天災人災事故がなければいまもなお続いていたであろうささやかな日常が絶たれて持って行き場のない怒りを内包したまま気力を失くした人々のことを思うと胸が締めつけられます。



そんな中、原発再稼動第一号川内原発に続いてスタートしていた高浜原発3,4号機に大津地裁により運転差し止めの仮処分が出されました。

4号機の原子炉補助建屋で放射性物質を含む水漏れがみつかったり、送電を始めた直後に変圧器周辺でトラブルが起き原子炉が自動で止まったりという危険極まりない不安材料いっぱいの再稼動でした。


運転を差し止めた大津地裁の山本善彦裁判長は、東京電力福島第一原発事故の後も突き進む「国策」に疑問を突きつけ、福島の事故の原因究明は「道半ば」だと指摘したうえで、関西電力だけでなく、原子力規制委員会の姿勢にまで言及しておられます。


これに対し菅長官は原子力規制委員会の新規制基準を見直す可能性については今のところはないとの見解ですが、今後どうなるか。 


でも勇気ある仮処分決定に感謝と大きな拍手を送りたいと思います。



さて21年前神戸の東灘区で阪神淡路大震災を経験している私たち。


熟睡中の明け方住まいの天井が落ちてくるのかと思うほどの衝撃を受け、このまま死ぬのかと思いましたが、家具や電気製品すべてが壊れ「半壊」認定をもらったこと以外夫と私、次男は無事で今日を迎えています。


テレビや新聞など、これから起こるかもしれない地震など災害に向けて、事前の備えの必要性を度々呼びかけられている昨今、能天気家族なりに一応、防災グッズをと思い、夫と百円ショップでそれぞれ枕元に置いていざ持ち出せるボックスを購入したのが2年ほど前。

それがこれ → 9ebd3a1e.jpg



購入直後はいざというときのための携帯電話、キャッシュカード、印鑑など必要最小限のものを入れては枕元に置いていましたが、いかんせん2人とも揃って長続きしない性格、いつの間にか忘れられて・・・昨日発見して開けてみると・・・

なぜか夫のboxには歯間ブラシと櫛と使用済みの伸びたゴム、私のにはクリップ1つ。
e20dd4c2.jpg


お互い突っ込みを入れたくなるようなバカバカしいものが鎮座していました。


災害は油断したころにやってくる






さて本日は浅田次郎氏著『アイム・ファイン!』のご紹介です。


「超多忙作家が目にした国内外の出来事は、筆を通してたちまち秀逸なショートストーリーへと姿を変えていく。
NHKドラマ『蒼穹の昴』の北京ロケに足を運んでみると…(「西太后の遺産」)、都内を愛車で走るうち警官に止められて…(「やさしいおまわりさん」)アメリカのレストランで目撃した驚くべき親子…(「デブの壁」)ほか、爆笑と感動の四十編を収録」


JAL機内誌「SKYWARD」に月�Tで掲載された原稿用紙7枚分のエッセイをまとめたもので、『つばさよ、つばさ』に続く第2巻の位置づけが本書。


「飛行機の座席を選ぶにあたって、私は必ず窓側を指定する。
旅慣れた人は通路側を好むものだが、どうも外の景色がみえないと損をしたような気がするのである」

1年の3分の1は旅の途にあるといわれる超多忙売れっ子作家の浅田次郎氏の好奇心のかたまりというべきご自身の目を通した国内外の出来事を氏独特の筆さばきで縦横無尽に書かれたエッセイ40篇が詰まっています。


私にとっては久方ぶりの浅田作品。


浅田氏といえば、陸上自衛隊に入隊、2年を経て除隊後はアパレル業界など様々な職につきながら投稿生活を続け、1991年『とられてたまるか!』でデビュー。


『地下鉄に乗って』で吉川英治文学新人賞、『鉄道員』で直木賞、その後『蒼穹の昴』や『中原の虹』などの清朝末期の壮大な歴史小説を手がけるなど、現在は日本ペンクラブ会長という座に就かれ、昨年は紫綬褒章を授与されるなど押しも押されもしない文壇界の重鎮となっていらっしゃいます。


が、しかし、私は何を隠そう、浅田氏がデビューのきっかけになった『とられてたまるか!』など一連のピカレスク小説の大ファンでした。


『勇気凛凛ルリの色』シリーズや『きんぴか』シリーズ、『プリズンホテル』シリーズの熱心な読者。


もちろん感動物、歴史物も一応読みはしましたが、浅田氏に初めて触れたのがピカレスク系だったので、その後の感動シリーズが妙にそぐわなくて今に到っています。



前置きが長くなりましたが、本書はそのピカレスク時代を彷彿とさせる筆致のエッセイ集。


久しぶりに面白く読了しました。


が、しかし、浅田氏、あまりにも富と名声に慣れっこになって文章の端々にちょっと鼻持ちならない雰囲気が読み取れて(もちろん路傍の石の僻みであるのは重々承知ですけど)ちょっと曳いてしまったのも事実です。


編集者を巻き込んでの海外取材旅行・・・私の敬愛する作家・吉村昭氏はとことん自費とご自分の目と耳と脚だけを信じて取材したのになぁ・・・などと言われもない比較をしたり・・・ごめんなさい


でも自虐ネタをコミカルに流すという文章力は健在、久しぶりに大笑いさせていただきました。

ブログが結ぶ縁で親しくしていただいているトコさんの日記に文部省唱歌「鎌倉」の歌詞が出ていました。

鎌倉行きの江ノ電に乗ったときご一緒した友人の方が口ずさんだもので懐かしかったそうです。


♪七里ヶ浜のいそ伝い 稲村ヶ崎名将の 剣投ぜし古戦場
♪極楽寺坂越え行けば 長谷観音の堂近く 露坐に大仏おわします
♪由比の浜べを右に見て 雪の下村過ぎゆけば 八幡宮の御社
♪上るや石のきざはしの 左に高き大銀杏 問わばや 遠き世々の跡
♪若宮堂の舞の袖 しずのおだまきくりかえし かえせし人をしのびつつ
♪鎌倉宮にもうでては 尽きせぬ親王のみうらみに 悲憤の涙わきぬべし
♪歴史に長き七百年 興亡すべてゆめに似て 英雄墓はこけ蒸しぬ
♪建長円覚古寺の 山門高き松風に 昔の音やこもるらん


私自身特別に歌に詳しいとも記憶がすぐれているとも思いませんが、「鎌倉」のように昔小学校で習ったり、聴いたりした日本の童謡や世界各国の歌が流れてくるといっしょに唱和できるのに驚くことがよくあります。



4月、醍醐桜を見るため県北を訪れた際、途中通った院庄を見て思い出したのが「忠義桜」。 


鎌倉時代末期元弘の変に際し倒幕に失敗し囚われの身となり隠岐に流される途中の後醍醐天皇を奪回しようと跡を追った備前の武将・児島高徳が厳重な警備のため目的を果たすことができず、せめて志だけでも伝えようと、天皇の宿所の忍び込み、庭の桜樹の幹を削って中国越王勾践の故事に因んだ十字の詩を書いたという言い伝えに材をとっています。


♪桜ほろ散る院の庄 
遠き昔を偲ぶれば 
幹を削りて高徳が 
書いた至誠の詩がたみ 
(詩吟)天莫空勾践時非無氾范蠡
(天句践を空しゅうするなかれ ときに范蠡なきにもあらず)

 
この話は院庄の忠臣・児島高徳の故事として知られ、すでに江戸時代には、津山森藩の家老で「作陽誌」を編纂した長尾勝明がこれを顕彰して「院庄胎文」を著しているそうです。


特に習った覚えがないのに、哀愁を帯びたメロディーとともに歌詞が口をついて出て我ながらびっくりしてしまいました。


「天莫空勾践時非無氾范蠡」という漢詩の部分は意味がわからなかったので調べてみました。


2500年ほど前の中国、越の国が戦争に負け、捕らえられた国王の勾践(こうせん)を苦労の末助け出し国の再興に尽くした范蠡(はんれい)という家来を高徳が自分に見立て、後醍醐天皇を励ましたという言い伝えだそうです。


土井晩翠作詞の「荒城の月」などとともに昔の歌詞には曲なしでもすばらしく味わい深いものがたくさんありますね。




さて本日は浅田次郎氏の最新作『ハッピー・リタイアメント』をご紹介します。


久々のお笑い系エンターテインメント炸裂の作品です。


本書執筆のきっかけについて浅田氏はインタビューで次のように語っていらっしゃいます。

「小説の『プロローグ』に書きましたが、自宅に三十数年前の借金取りがやってきたんです。あれはほぼ実話で、税理士に裏を取らせたんだけれども、ちゃんとした機関の人間だった。法的には時効の借金でしたが、引っ込みが着かなくなって、払ってしまった。それが悔しくて、小説で何とか取り返してやろうと思ったんです」


若き日の浅田氏の借金踏み倒しの肩代わりをした債権保証機関JAMSが時効になった借用書の書類上の手続きをするための来訪でしたが、時効とはいえ道義的責任を感じた浅田氏が現金で支払ったことから小説の構想が浮かんだといいます。



主人公は定年を4年後に控えたノンキャリアの財務官僚・樋口慎太郎と愚直だけが取り柄の自衛官・大友勉の「慎ちゃん&ベンさん」。

2人が元財務官僚理事・矢島が君臨する業務実体のない債権保証機関JAMS(全国中小企業振興会)に斡旋され天下りするところから物語がスタートします。


仕事派書類の保管のみ、ノルマなし、昼寝&自由時間&法外な給与と退職金ありのこの世のパラダイスに馴染めない2人の教育係となった矢島の秘書兼庶務係・立花葵から提案された秘密のミッションが巻き起こす騒動をコミカルに描いています。


浅田氏がインタビューで述べていたプロローグで浅田氏のもとに30年前の借金の問い合わせに来訪したJAMSの社員が登場しこの物語の幕開けを示唆、虚実ないまぜにして臨場感を盛り上げています。


葵から提案されたミッションとは「時効を過ぎた債権回収」。


浅田氏同様、紆余曲折を経て現在は成功者として社会生活を営み若い時代の苦い経験を一刻も早く忘れたいと思っている小説家や外食チェーンのオーナー、カリスマ・ガーデナーから回収成功。


そんな社会の成功者とは真反対の人間として登場するのが6畳ひと間に暮らすその日暮らしの契約社員の話に得意の競馬の話題を盛り込み、どんでん返し風人生の奇跡を描いていますが、やや浅田氏のサービスしすぎの感あり。


現代日本の天下りをテーマに、その天下り先・JAMSの設立を指導したのがGHQであり、マッカーサーがJAMSを訪れ、陰の主役級の女性と交流したというエピソードを織り交ぜたりのストーリーテラーとしての浅田氏の腕には感服しますが、途中からエンディングにかけては「それはないだろう」という奇抜すぎの違和感が拭えませんでした。

先日気の置けない知人たちの集まりに寄せていただいて市内のはずれにあるお店に行きました。


一見したところ普段友人たちとよく行くランチのお店よりかなりランク上と思われる野趣溢れるたたずまいとお値段の店のような雰囲気。


周囲が緑に囲まれた小高いところにあり、風雅な手作り石段を上がったところにある懐石のお店。


お子様は不可(ここで第1の声なき声・・・それはないんじゃない?)、予約のみ(第2声・・・ちょっと高ピー!?)、1時間半で入れ替え(第3声・・・おしゃべりには短い!)のお店だそうです。


玄関先で出迎えてくださった店主と思しき男性が「携帯の電源はお切りください」と第一声。

「えっ、バイブじゃいけない理由は何?」と心の中で声なき第4声。


通された部屋はイスとテーブルで総勢8名が着席、自然と挙措振る舞いを上品にという感じになる雰囲気。


同じ部屋にはテーブル大小3つとカウンター、隅の少し離れた小さなテーブルには先客が2名。


広く採光を採った窓から外を眺めれば、鳥たちのために残した柿の木の数個の朱の実に名前がわからない珍しい鳥が数羽来て熱心に啄ばんでいて私たちの目を楽しませてくれます。



そして先付け、椀物・・・と適度な間合いで出てくるお料理の美しく手が込んでいること。


盛り付けのあまりの美しさにデジカメ持参のTさんが先付けをパチリ、そのあとテーブルに置いていたところ、店主の方がそっとすり足で近寄られてデジカメに向かって手を×に。


私は高級料亭には行ったことがありませんが、写真にNGを出されたのは初めての経験。


ブログにでも掲載され公開されたら企業秘密を盗まれるから???

「なんとまあ狭量!」とここでも声なき第5声。


でも絶妙なタイミング(私たちの一挙手一投足をいつも見つめられているような視線を感じてはいましたが)で次々出されるお料理のすばらしい味を前に数々の疑問や声なき声もひとまず引き出しにしまって・・・・・・そしてここで書いています^^;


小さなX’masツリーを模した抹茶あんの和菓子にお抹茶でフィニッシュ、おいしかったです。


その間お料理をいただきながらしゃべること、しゃべること。


想像するに店主の方も私たちのおしゃべりに対して内心の声なき声で罵倒されていたかも・・・
片隅のテーブル席のお2人も閉口されていたかと反省させられます。


これから予約されるお客様に対して「声高、品のないおしゃべり&笑い声を立てるお客様×」と禁止事項が増えていたらそれは私たちのせいです、お許しを!



さて本日は著者の一部の作品に品格的な問題が少々ありそうな浅田次郎氏著『絶対幸福主義』をご紹介します。


けっして浅田氏ご自身が品格に問題があるのではありません、誤解なきよう!


浅田氏といえば日本の帽子ではサイズが合わないほど大きな頭の中に驚くほど豊かな小説やエッセイのネタがぎっしり詰まっている作家さん。


『鉄道員』で日本中を感涙に巻き込んだかと思えば、『蒼穹の昴』『仲原の虹』などの長編中国歴史小説、日本の歴史に材を求めた『壬生義士伝』などその幅広さには驚きを隠せないほどですが、なかでも私のお気に入りは本日ご紹介するエッセイ集にリンクする「極道シリーズ」、大いに品格に問題ありの内容です。


浅田氏の著書のレビューは5編ブログで書いていますのでよろしければ見てください。

http://yaplog.jp/ashy_ashy/category_56/



さて本書ですが、のっけのプロローグにちょっと変わった試行である旨述べられています。


著者ご自身がまわりの友人や編集者に話された内容をそれらの人々が原稿に起こし本書が生まれたという経緯ですが真実やいかに?・・・語り口は著者そのままの特徴で綴られています。


「競馬ではしゃぎ、ラスベガスで生まれ変わって、勝っても負けても至福の時。
あなたは人生、楽しんでいますか? 
誰のものでもない『自分の人生』を歩くあなたは、絶対『幸福』です 。
幸せになりたい全ての人に贈る、愛と笑いの新・幸福論」



じっくりした読後感を期待する人にはイマイチですが、競馬ファンには必見の書、競馬で始まり、競馬で終わるようなエッセイが中心、私は競馬には全く不案内なので大いに飛ばし読みしましたが、時々宝石のようなキラリと光る言葉を見つけては取り込みました。


「どう考えてもいかんともしがたい不幸は、この世に二つしかない。
ひとつは食えない苦労、もうひとつは生命の危機である。
とりあえずその二つの心配さえなければ、気の持ちようで誰でも『私は幸せな人間です』ということができる」


探せばそこら中に転がっているはずの幸せ探しが得意という著者の言葉には見習うヒントがたくさんあります。


「幸福に関するキーワードは『知足』、すなわち『足るを知る』ということであります。
まず、今の自分の能力、今の自分が持っているものを知る」


長年に亘って余暇の大半を競馬、カジノに投入する充実人生を送っていらっしゃる著者のギャンブラーに対しての言及。

「博才の第一は、セコイと陰口を叩かれるほどの金銭管理能力です。
ただし、ギャンブルで失った金をずるずる引きずらないことが大事・・・
私は、負けは終わった瞬間に忘れ、勝ちは永遠に覚えています」


著者の言葉の一部を真に受けてますます深みに嵌る破滅型ギャンブラーの方には読まないでほしい作品ではありました。

↑このページのトップヘ