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ご訪問ありがとうございます。 「一日一生」を銘にさまざまな人生を読書というツールを通して味わっていきたいと思っています。 響きこし言葉に貼れるさみどりの付箋そよぎて林となりぬ

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カテゴリ: 奥田英朗

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サンシュユにとびきり赤き実が生りて鳥が啄ばむ秋闌けにけり



自己流でピアノを初めてほぼ
一年。


飽きっぽいわたしとしてはよく続きました・・・


なにしろゼロからの出発でト音記号はなんとか読めるものの、ヘ音記号はさっぱりという無知・・・これで幼いころの娘の練習に付き添ってエラソーに叱っていたのだから恥ずかしい
(ーー;)


毎日短時間でも弾いていると音の良し悪しが多少なりともわかって・・・三点セット
11800円の電子ピアノの音があまりにも安っぽく感じられて・・・一年続いたご褒美として自分に少しグレードアップしたコルグの電子ピアノを買いました(^.^)

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コルグを選んだのは、電子ピアノの中でもピアノに近いタッチと音という評判から。


コルグには手が出ないほど高価なものからそれほどでもないものまであり、わたしが買ったのはそれほどでもない価格のもの。

 

前のものよりタッチが重くてよりピアノに近い感じ。


音も満足の域・・・毎日ヘッドホンをつけて自分だけの世界に浸っています。


初心者用の超簡単な曲もいくつかマスターして、密かな趣味の
No1に躍り出ています。

 

 



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さて本日は奥田英朗氏著『罪の轍』のご紹介です。

 


「昭和三十八年。                                         北海道礼文島で暮らす漁師手伝いの青年、宇野寛治は、窃盗事件の捜査から逃れるために身ひとつで東京に向かう。                              東京に行きさえすれば、明るい未来が待っていると信じていたのだ。         
一方、警視庁捜査一課強行班係に所属する刑事・落合昌夫は、南千住で起きた強盗殺人事件の捜査中に、子供たちから「莫迦」と呼ばれていた北国訛りの青年の噂を聞きつける―。                                         オリンピック開催に沸く世間に取り残された孤独な魂の彷徨を、緻密な心理描写と圧倒的なリアリティーで描く傑作ミステリ



UNIさんより回していただいていち早く読めた奥田氏の新刊。


奥田ファンが待ち構えていた作品。


ファンなら誰もご存知であろうと思われますが、出版社への持ち込みで日の目をみた『ウランバーナの森』がデビュー作。


今から約
20年前。


2002年
『邪魔』で4回大藪春彦賞

2004年『空中ブランコ』で131回直木賞

2007年『家日和20回柴田錬三郎賞

2009年『オリンピックの身代金43回吉川英治文学受賞


こうしてみると傾向のまったく異なるシリーズの代表作の受賞歴、やはりすごい!


わたしは『空中ブランコ』を代表する「精神科医・
伊良部シリーズ」や『家日和』の「平成家族シリーズ」の大ファンでもあります。

本書は『無理』『邪魔』『最悪』『オリンピックの身代金』『沈黙の街で』に属する犯罪小説かつ警察小説に分類されます

東京オリンピックの前年の時代風景を描いた『オリンピックの身代金』を彷彿とさせる内容になってます。

1963年の奥田氏といえばまだ生れて4年ほどの幼児。

高度成長期のあの混沌かつ猥雑な日本の表と裏の景色をかくも見事に再現するのにどれくらい下調べしたのか・・・気が遠くなるほどの調査の積み重ねだったことは想像に難くありません。

本書は『オリンピックの身代金』で得た膨大な知識を下敷きにできた新たな一作という位置づけができる作品。

 

舞台は東京。

 

1963年、4歳児が誘拐ののち殺害された日本中の注目を集めた吉展ちゃん事件をモチーフとした物語。

 


元時計商の強盗殺人事件に端を発し、男児誘拐
まで展開した事件を追う刑事たちの執念が描かれています。

 

一方、併走するのは北海道礼文島に住んでいた20歳の宇野寛治の生い立ちから逮捕されるまで。

 

幼少期に義父にやらされていた走行車への体当たりによって後天的に頭に障碍を持ち、世間から莫迦と侮られ、貧しさと道徳心の欠如ゆえに空き巣狙いの常習犯となっていた宇野寛治が追い立てられるように故郷を捨て東京にたどり着いたことから、心ならずも大きな犯罪を犯す過程を描いて秀逸。

 

 

本書の大きな読みどころの一つは宇野寛治というひとりの青年の、生れたときから運命が決められたような幸せから隔てられた生を内包して、それでも生きていかなければならない姿。

 

空き巣や賽銭泥棒などの小さな犯罪、誘拐のあと殺人という大きな犯罪に手を染めながら、犯罪という自覚すら持てない青年の哀れさに胸を衝かれます。

 

そして宇野を取り巻く多彩な人物造形や、東京オリンピック前の高度成長期真っ只中の時代背景の綿密な筆致も大きな読みどころの一つ。

 

 

唯一寛治に優しい手を伸ばしたチンピラの明夫とその姉ミキ子

 

彼らも山谷で暮らす帰化した朝鮮人として登場

 

加えて近くの元芝居小屋に住み着いている全学連の一派・山谷労働連合会の活動や何がなんでも労働者擁護の立場を振りかざす左派弁護士など、その時代ならではの雰囲気を醸し出していて興味深い。


一方大学出の若手刑事・落合を中心とした個性豊かな刑事たちの書き分けも見事。

 

現代の警察モノでも必ず言及される刑事同士の縄張り意識・・・今も綿々と続いている・・・は別として、当時の捜査の様子があまりにもアナログすぎて失笑を買ってしまうほど。

 

電話を逆探知する技術もなく、失態続きの穴だらけの捜査は喜劇かと見紛うほどですが、刑事たちは大真面目なんですよね。

 

この半世紀をかけての通信機器の発達には驚くばかりですが、逆に最近も小学生がスマホを通してSNSでの危険極まりない交流をやってしまった挙句の事件があったばかり。

 

文明の進化は底知れない闇への恐怖も含んでいることをしっかり把握していないと大変なことになる・・・核問題しかり・・・。

 

横道に反れましたが、久しぶりの読み応えのある作品でした。

 

 

最後にひとつ、犯人とされる宇野寛治がなぜ誘拐という大罪に突っ走ってしまったのか・・・そして自失とはいえなぜ吉夫ちゃんを殺害してしまったのか。

 

宇野寛治自身の視点があまりにも少なく、それゆえの唐突感がありその点に物足りなさを感じました。

 

脳に後遺症を持つ寛治がひとりで誘拐という策を企て実行したというのにも少なからず違和感も抱きました。

 

これらこの膨大な物語のなかの小さな瑕疵・・・わたしにとってだけかもしれませんが・・・自体を大きく凌駕した作品ではありました。

3週間ぶりに卓球をしてきました。


インフルエンザ自体はワクチンを接種していたせいか、比較的早くに治まったのですが、週一で服用している免疫抑制剤の副作用の吐き気が今回は長く続いて気力体力が奪われて身動きが取れませんでした。


インフルエンザの治療薬が免疫抑制剤と相まってなんらかの化学変化を起こしたのか・・・無知な頭の中で疑問符がクルクル。


そんなこんな不調からやっと快復して・・・スポーツというには軽すぎるかもしれませんが久しぶりに体を動かせてさわやかでした(^.^)





今日ご紹介する作品もインフルエンザの床で読んだ本、たしかNo.5・・・もうどうでもいいけど。


奥田英朗氏著『向田理髪店』 


「次々起こるから騒ぎ。
過疎の町は、一歩入れば案外にぎやか。
北海道の寂れてしまった炭鉱町。
息子の将来のこと。
年老いた親のこと──。
通りにひと気はないけれど、中ではみんな、侃々諤々。
心配性の理髪店主人の住む北の町で起こる出来事は、他人事ではありません。
可笑しくて身にしみて心がほぐれる物語」



かつて炭鉱で栄えた町・北海道苫沢町を舞台の6話からなる連作短篇集。

以前財政破綻したという北海道中央部にある架空の苫沢町。

きっと夕張市がモデル。


かつては町に10軒あった理髪店もいまでは2軒のみ、そのうちの1軒の店主が本書の主人公・向田康彦53歳。


28歳の時札幌からUターンして父の跡を継いで以来四半世紀を寂れゆく町とともに生活しています。


冬ともなれば豪雪のため日常の生活はストップしてしまうという過疎化に悩む小さな苫沢町を巡る6話のドタバタ劇が何とも温かい。



主人公が形容する「沈んでいく船」にも船なりの暮らしがあり、喜びも悲しみもある。



そんな小さな田舎町ならではの密度の濃い人間関係がいい味を醸し出していて、今見失いつつある古きよき時代の風景を彷彿とさせます。



跡継ぎ問題、嫁問題、地域おこし問題など現代の日本の地方都市が持っている悩める現状を著者お得意のコミカルなユーモアで包んだ秀作。


あったか奥田ワールド、ぜひどうぞ!

梅雨がやっと終わったと思ったら突然の猛暑。

エアコンなしでは過ごせない暑さです。


このところ持病の薬の効き目が薄れてあちこちが痛く、次回は投薬の見直しを、と言われていた次回が先日でした。


担当医との面談で免疫抑制剤をもう一錠追加してしばらく様子をみることになりました。


すでにかなりの量を服用していて、服薬後のムカムカがかなりあるので敬遠したいけどできない・・・そんな感じです。


ずっと家に篭っていても解決しないので、努めて予定通りの日常を送っています。


ということで先週は幼馴染3人、久しぶりのおしゃべり目的で近くのホテルに宿泊、夜は居酒屋で取りとめないおしゃべりとビールや焼き鳥を楽しんだり・・・


卓球に行き、絵を描き、歌を詠み・・・そしておかずを作る・・・


写真は少し前次男が贈ってくれた山形のさくらんぼとそのいたずら描き。



   

なんということのない日常が貴重です。


しかし、こうしてみると世の中の役に立つこと、な~んにもしてないな、と思えて自省します。



せめて本くらい建設的なものを、と思いながら、今回もエンタメに走りました。




奥田英朗氏著『variety』のご紹介です。  


「『奥田英朗はぜんぶ読んでる』という人にも、じつはまだ読んでいない作品がある!かも。
単行本初収録の短篇をはじめ、現在入手困難となっているアンソロジーの短篇、唯一のショートショート、数少ない貴重な対談などを収録。コアなファンからちょっと気になった人まで、レアな奥田英朗を楽しめるスペシャル作品集!

迷惑、顰蹙、無理難題。人生、困ってからがおもしろい。
脱サラで会社を興した38歳の社長、渋滞中の車にどんどん知らない人を乗せる妻、住み込みで働く職場の謎めいた同僚…。
著者お気に入りの短編から、唯一のショートショート、敬愛するイッセー尾形氏、山田太一氏との対談まで、あれこれ楽しい贅沢な一冊!!蔵出し短編集!」


著者の「あとがき」によると・・・

本書はお蔵入りになりかけていた作品をまとめたものだそうです。


短篇あり、ショートショートあり、対談あり、という寄せ鍋風。


2006年の初出という作品もあって、プラス思考にいえば、さまざまな奥田ワールドが楽しめます。


収録作品を挙げてみます。

「おれは社長だ!」
「毎度おおきに」
「奥田英朗×イッセー尾形 対談」
「ドライブ・イン・サマー」
「クロアチアvs日本~ショートショート」
「住み込み可」
「奥田英朗×山田太一 対談」
「セブンティーン」
「夏のアルバム」


最初の2篇「おれは社長だ!」と「毎度おおきに」は大手の広告会社を退職、独立した主人公が仲間の助けを借りて、零細企業の社長の悲哀を乗り越えていく連作物語。

なんとなく著者ご本人を彷彿とさせる主人公の軽さ(失礼!)につられてさくさく読める内容になっています。


特にいいな、と思ったのは「セブンティーン」。

17歳の娘を持つ母親の葛藤が細やかなタッチで書かれていて、独身かつ家族なしの奥田氏がここまで女心がわかるとは!とただ敬服しながら読みました~(^.^)


山田太一氏との対談もとてもよかった。


諦めるという選択の大切さが心に沁みました。


奥田ファンの方どうぞ。

先日、映画「聖の青春」を観にいきました。

原作・大崎善生氏著『聖の青春』と出合ったのは2008年。

そのときの感動は今でも覚えています。


怪童・村山聖棋士と著者・大崎善生氏との出会いは「将棋世界」の編集長時代だそうです。


村山が1998年に29歳という若さで夭折したあと2年後に、『聖の青春』を上梓、第13回新潮学芸賞、将棋ペンクラブ大賞を受賞しました。


その後大崎氏は小説家として数々の作品を上梓、今日に至ります。


その原作に深い感銘を受けた読者としては・・・

映画自体を独立させたものとして鑑賞すれば、すばらしい出来だったと思います。


特に村山役の松山ケンイチはこの役に徹するために体重を20kg以上増やしたといいます。

村山役に松山ケンイチが決まったというのを何かで読んだときは、とんだミスマッチとがっかりしていましたが、ネフローゼで浮腫んだ村山の体型といい髪形といい、役者ってすごいなぁと驚嘆するほどの役作りに感服しました。


「この役ほどスタート地点に立つまでに時間のかかった役はありませんでした」とは松山ケンイチの弁。


それに加え、羽生善治役の東出昌大がこれまたすごい!

羽生氏から実際使用されていたメガネを譲り受けたということですが、いつも寝癖のある髪型といい、対局中の扇子を使う無意識動作といい、これにも深く感服しました。

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そして最後に村山の大阪時代の師匠・森信雄役のリリー・フランキーが自然体を貫いた演技でこれまたすばらしかったです!


原作で村山と師・森の交流を描いた感動のシーンはほとんど省かれていて、映画は村山と羽生の交流を主に立たせて仕上げていましたが、それはそれで感動を呼ぶ主題となったことでしょう。


村山は亡くなり、羽生は46歳になった現在まで将棋界の各称号をほしいままに、タイトル獲得数歴代一位に燦然と輝いています。


人間の寿命は神のみが決めるといわれていますが、せめてもう少し存分に対局させてあげたかったと思います。






さて本日は奥田英朗氏著『我が家のヒミツ』
のご紹介です。

「どうやら自分たち夫婦には子どもが出来そうにない(『虫歯とピアニスト』)。
同期との昇進レースに敗れ、53歳にして気分は隠居である(『正雄の秋』)。
16歳になったのを機に、初めて実の父親に会いにいく(『アンナの十二月』)。
母が急逝。憔悴した父のため実家暮らしを再開するが(『手紙に乗せて』)。
産休中なのに、隣の謎めいた夫婦が気になって仕方がない(『妊婦と隣人』)。
妻が今度は市議会議員選挙に立候補すると言い出して(『妻と選挙』)。
どこにでもいる普通の家族の、ささやかで愛おしい物語6編」


2002年第4回大藪春彦賞(『邪魔』)
2004年第131回直木三十五賞(『空中ブランコ』)
2007年第20回柴田錬三郎賞(『家日和』)
2009年第43回吉川英治文学賞(『オリンピックの身代金』)


いったい魔法のポケットをいくつ持っておられるのか、と思われるような著者はミステリーからユーモア小説、スポーツ小説など驚くほどの守備範囲の広さで私たち読者を楽しませてくれています。


その中でも特に私のお気に入りは「家」シリーズ。


第20回柴田錬三郎賞を受賞された第一弾『家日和』に続き、第二弾は2011年刊行の『我が家の問題』、そして本書『我が家のヒミツ』が2015年の刊行です。


第一弾『家日和』のキャッチコピーは「それぞれの家庭内の『明るい隙間』を名手が描く短編集」。

第二弾『我が家の問題』は「「ささやかでも悩ましい、それでも家族が一番」。

この2行を見ただけでさまざまな家庭内の小さな隙間に生まれた明暗を巧みに描いてほろりとさせられるとわかる内容。


本書も然り。


本書には6篇の短篇が収められています。


「虫歯とピアニスト」「正雄の秋」「アンナの十二月」「手紙に乗せて」「妊婦と隣人」「妻と選挙」


どれもさまざまな家族のかたちを描いて秀逸。


平易な文体に家族間の温くみを織り込んで、ちょっぴりのユーモアとペーソスを滲ませた物語の数々。


夫婦間での出来事あり、家族間での出来事あり、、どれも家族間の微妙な機微が会話を通して描かれていて・・・・・はてさて著者はずっと独身のままと記憶していますが、どうしてこのように女、男、親、子どもの立場で心を寄せることができるのか??


いつも著者の作品を通して感じる疑問です。


特に好きなのは「虫歯とピアニスト」と「手紙に乗せて」ですが、前者は結婚して5年ほど、どうやら子供が授からないかもとモヤモヤしたものを抱えながら歯科医院の受付で働いている31歳の敦美が主人公。

その歯科医院に歯の治療のため著名なピアニストが訪れるところから物語がスタート。

そのピアニストのファンだった敦美とピアニストとの会話を通して、自分の生き方をもう一度再確認する敦美とその夫の関係がとてもすてきに描かれていて、ピアニストの心の変遷も含めてほのぼのとした読後感。


「手紙に乗せて」は50代で妻を亡くした父親を持つ息子が、同じ経験を持つ上司から父親への手紙を託され、その手紙によって父親が徐々に生きる気力を取り戻していく過程が息子の目を通して描かれていて、なんだかほっとします。


最後の「妻と選挙」の登場人物は前作でもおなじみの大塚一家。

幼かった双子の息子たちも本書では大学生となり、いっぱしの口を利くまでに成長。

本書では奥田氏を連想させるN木賞受賞作家の大塚氏も小説家として少々翳りが出てきて、N木賞受賞直後は銀座のクラブだった出版社の接待が、ここのところ居酒屋となり、大塚氏が提案する次回作にも担当編集者が難色を示すという微妙な変化に落ち込む様子が自虐的に描かれていて、読者としては作家と出版社の駆け引きの内幕を覗いたという感じ。

この短篇の中で、主人公を通して、この「家」シリーズも第三弾で打ち止め的な会話があり、これが著者の本意なら、ファンとしてがっかりだなぁと思っているところです。

「・・・金の延べ棒をいただくより嬉しくありがたくお礼の言葉が見当たらないの・・・
サンキューメルシーダンケ、世界中のお礼の言葉を並べてみました・・・」

こんなお便りをいただいて・・・私こそ嬉しくてお礼の言葉がないくらいです。

お便りの主は96歳の方、私が小さい頃から家族ぐるみでお付き合いし、母存命中もずっと気遣いをいただいていた方。

お便りの内容から、、すごいプレゼントをしたのだろう、と思われたかもしれませんが、ただの数種類のおかずです^_^


中学生のひとり息子さんを、その何十年かあとにご主人を亡くされ、以後独り暮らし。


広い住居の隅にプレハブの住まいを作り、母屋の方は甥御さんご夫婦に住んでもらっていますが、迷惑はかけられないと、炊事洗濯買い物、そして料理とすべて自らやっていらっしゃる96歳。

そればかりか朝5時に起きて杖をつきながらすぐ近くの公園の清掃も!


何か手助けしたいと思っても東京と岡山では具体的な手助けはできず、独り暮らしでいちばん必要なものは、と考えては定期的におかずを送っています。


冬は手作りおかず、梅雨から夏場にはネットで口に合うものをサーフィンしては1食分を冷凍したものを10種類ほど、というのが毎回のパターン。


脳腫瘍の手術をされてから年賀状を廃止されたので、お礼状を書くのは負担だろうと思い、くれぐれも返礼の心配はしないように、とお願いしていても・・・5回に1回ほどこうしてお便りをくださいます。


たいしたものを送っているわけでもないのに、こんな喜びの手紙をいただけるなんて私こそこの手紙を宝物にしたい!


ボランティアからも身を引いて、人の役に立つことをしていない身としてはお礼の言葉もないくらいでした。






さて本日は奥田英朗氏著『ナオミとカナコ』のご紹介です。

「二人は運命を共にし、男を一人殺すことにした。
『わたしたちは親友で、共犯者』
復讐か、サバイバルか、自己実現か——。
前代未聞の殺人劇が、今、動き始める。
望まない職場で憂鬱な日々を送るOLの直美。
夫の酷い暴力に耐える専業主婦の加奈子。
三十歳を目前にして、受け入れがたい現実に追いつめられた二人が下した究極の選択……。
『いっそ、二人で殺そうか。あんたの旦那』
すべては、泥沼の日常を抜け出して、人生を取り戻すため。
わたしたちは、絶対に捕まらない——。
ナオミとカナコの祈りにも似た決断に、やがて読者も二人の〈共犯者〉になる。
比類なき“奥田ワールド"全開! 待望の犯罪サスペンス長篇!!」


大好きな奥田氏・・・「伊良部シリーズ」から始まって『最悪』『邪魔』『オリンピックの身代金』といった犯罪モノの他、『マドンナ』や『ガール』、『家日和』、『我が家の問題』、新聞連載の『沈黙の町で』・・・羅列するだけでシリーズ別に分類できないほど広い分野を網羅していますが、私が特に好きなのは『家日和』と『我が家の問題』、そして最新作の『我が家のヒミツ』といった短篇系でしょうか。


ほんわかとした奥田氏らしさがよく出ていて、氏が未だ家庭人ではないというのが信じられないほど、夫婦子どもたちの機微に通じた内容の作品です。


さて私の好みは別として・・・
上述のシリーズが表の部分を描いているとすれば、今回ご紹介する本書は人間の裏の部分を描いて圧巻です。


TVでも広末涼子さんと内田有紀さんのダブル主演で放映されたようですが、私は観ていません。


大学時代の親友という設定の2人。

夫からの激しいDVに苦しめられているカナコに同情してその夫の排除を示唆したナオミ。

いくつかの偶然が味方して完璧に近い殺人計画ができあがったかに見えますが、理性的に見ると実は穴だらけ。

こんなことでは逃げ切れることは不可能と、読み手の私も終始ハラハラドキドキが止まりません。


著者はきっと巧妙に穴だらけを用意して読者に共犯の醍醐味を味わわせたかったにちがいない!


そんなことを思わせる筋立てですが、ラストまで手に汗を握っていました。


ラストはご想像にお任せしますが、以前読んだ角田光代氏の『紙の月』を思わせる締めくくりでした。


最後にちょっと辛口コメント・・・

2人は親友という設定ですが、自分の将来を投げ打っても相手に人生を捧げる・・・

これほどの一途な感情が2人の間に通っているという関係性がイマイチ書きこめていなかったゆえ、少し違和感が残ったのが小さな残念でした。

恐ろしい事件が後を絶ちませんね。

当地で起きた女子児童監禁事件に続いて長崎・佐世保の殺人事件。

佐世保の事件は今から17年前に起きた神戸・須磨の酒鬼薔薇事件を彷彿とさせるような類似性のある事件のようですね。

酒鬼薔薇事件の犯人であった当時14歳の少年と同年の次男がいた我が家ではあまりのセンセーショナルな内容に震撼としたのを覚えています。

当時私たち一家は神戸・東灘区に住んでいて、前年まで次男が所属していた野球のスポ少のコーチをされていた方が少年のお父さんと同じ会社で机を並べていた同僚だったために、マスコミなどで知らされる情報以上のことをいろいろ聞き及んでいたものです。

少年の素顔はいたって一般の少年と変わらず、むしろ寡黙なおとなしい子どもだったといいます。


精神鑑定の結果持続的で強固なサディズム以外は精神疾患はなく意識は清明であり、年齢相応の知的能力ありとのことだったと記憶しています。

その後医療少年院に送られ、さまざまな矯正が行われたことは草薙厚子氏著 『少年A矯正2500日全記録』で詳しく記されていますが、この内容にも賛否両論が渦巻きました。

果たして性的サディズムは矯正されるのか?

この答えは明確にされていませんが、今回の佐世保事件でも同様のことが重要なポイントとなるのではないでしょうか。

佐世保事件では少女の家庭環境の激変に言及、それにフォーカスして父親の責任の重さ云々が攻撃の対象となっているようですが、そういった取り巻く環境を超えたところで殺人衝動が渦巻いていたのではないかと想像します。

サディズムは生まれながらにして備わっているものか、それとも後の環境で培われたものか、というのがクローズアップされると思いますが、前者だとすれば矯正することの困難さに至ります。

優秀なカウンセラーや精神科医をもってしても治すことの難しい疾患を持つ人々にはどのような対処方法があるのか、と思うと暗澹としてしまいます。


何が何だかわからないまま突然命を奪われた被害者とそのご肉親の方々の心情を思うと胸が締め付けられるほどの怒りと悲しみを感じますが、どのようにしてこの重い罪を償うのかという道の困難さを思うと何とも絶望的な事件だと思います。



さて本日は先日に続いてまたまた奥田氏。

奥田英朗氏著『噂の女』

「美幸って、知っとる?
この町のどこか夜ごと語られるは彼女にまつわる黒い噂──。
町で評判のちょっと艶っぽいイイ女。
雀荘のバイトでオヤジをコロがし、年の差婚をしたかと思えば、料理教室で姐御肌。
ダンナの保険金を手に入れたら、あっという間に高級クラブの売れっ子ママに。
キナ臭い話は数知れず、泣いた男も星の数――。
美幸って、いったい何者?
愛と悲哀と欲望渦巻く人々を描く、奥田節爆裂の長編小説」

奥田氏の既作の中でどの分野に分類できるか・・・異色の作品です。

ある地方都市・・・著者の故郷の岐阜・・・を舞台に描かれた10篇の連作短篇。

閉塞感のある何とも田舎田舎した地方都市で1人の女を中心に繰り広げられる事象を追っていく物語。


著者によると「ある有名な連続殺人事件の容疑者」として炙り出された「噂の女」をモチーフに、彼女に振り回される男女の醜い本質を描いて興味深い作品となっています。

主人公となる「噂の女」糸井美幸の21歳から27歳までが段階的に描かれています。

中古車販売店の事務員をスタートに雀荘の店員、不動産会社社長の未亡人、高級クラブのママと変幻自在に変わる女の周辺で起こる不可解な死。

高校時代からの友人たちの噂を通して彼女の足跡が辿られます。

主人公・美幸の見事なまでの変身はさておいて、圧巻なのは彼女を取り巻く人々の卑小さをこれでもかと描いていて読みどころ満載です。

利権あり天下りありコネあり権力の癒着あり。

どこにでもある社会の裏側を描いて見事です。

清清しい人は1人として登場しない作品が何とも悲哀に満ちて現実的で。


主人公の短大時代の同級生のセリフ

「平凡な結婚をして、子供を二人産んで、小さな建売住宅を買って、家事と育児とローンに追われて、田舎の女はそういう人生の船にしか乗れんやん。
でも糸井さんは、女の細腕で自分の船を漕ぎ出し、大海原を航行しとるんやもん。
金持ちの愛人を一人殺すぐらい、女には正当防衛やと思う」

恐い話なのになぜか主人公を憎めない・・そんな余韻を見事に描いています。

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