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ご訪問ありがとうございます。 「一日一生」を銘にさまざまな人生を読書というツールを通して味わっていきたいと思っています。 響きこし言葉に貼れるさみどりの付箋そよぎて林となりぬ

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カテゴリ: 宮部みゆき

かに3尾

11月に解禁されるのを楽しみに毎年山陰のカニを目指して食べに行くという
我が家の恒例行事もコロナ禍でお預けとなっていた先日、
諦めきれない夫が香住の漁連に電話で頼んだ松葉ガニが届きました。


 親ガニを食べたかったのですが、当地の魚屋でも買うチャンスがなくて
ついに時期を逃してしまいました。

 

ほんとは大きな松葉ガニより二回りも三回りも小さな親ガニであるセコガニが
いちばんおいしいんですよね。

 

身が少なくてカニを食べているという醍醐味がないので人気はいまいちらしいのですけど、
内子と外子やみそがおいしくてやみつきになります。

 

面倒なので汁物に投入したりして食べるようですけど、なんともったいない、と思ってしまう。

 

運がよければこちらの魚屋さんで朝の水揚げを売っていたりすることもありますけど、

一般のカニに比べ種の保存のため親ガニの漁獲期間は短いので、
新鮮なセコガニとの出合いは短期間となってしまいます。

 

今回は松葉ガニ・・・新聞紙を広げて腕まくりして、ハサミ片手にいざ出陣!
夫と無言で格闘すること
1時間半、エネルギーを使い果たしました~。

 

さて、本日は久しぶりの宮部みゆき氏です。

 




昨日がなければ

宮部みゆき氏著『昨日がなければ明日もない』
 

杉村三郎vs.“ちょっと困った”女たち。
自殺未遂をし消息を絶った主婦、訳ありの家庭の訳ありの新婦、自己中なシングルマザー。
『希望荘』以来2年ぶりの杉村シリーズ第5弾!(「BOOK」データベースより)

人気の杉村三郎シリーズももう5弾目になるんですね。

2007年『誰か』→ 2011年『名もなき毒』2016年『ペテロの葬列』2018年『希望荘』→ 本書へと続きます。

わたしは第2弾のみ読んでいますが、
これほどシリーズ化するとは思わなかった作品群。

著者はシリーズ化の動機についてこのように書かれています。

大好きなマイクル・Z・リューインの「アルバート・サムスン」シリーズに倣い、
自分もこういうのんびりした人のいい私立探偵が主人公の物語を
いつか書きたいということで
スタートしました。

まさにのんびりした人間味ゆたかな杉村三郎!

すてきな人物造形です。

あらためて機会があれば第1弾から読んでみたい。

宮部作品でいちばんインパクトがあったのは『火車』、いまも忘れ得ない作品・・・

著者の筆力には早くから注目していましたが、今も健在どころかますます充実というところ。

本書は女性に特化した3話からなる中篇集となっています。

主人公・杉村三郎が紆余曲折を経て個人の探偵事務所を開いてからの事件簿。

 

◆一昨年結婚して幸せに暮らしていると思っていた27歳の娘・優美が自殺未遂で入院、
その夫が依頼者である優美の母親との接触を断絶してしまったので
娘の行方を調べてほしいという案件の
「絶対零度」

 

◆知人から姪の結婚式にボディーガードとして出席してほしいとの依頼を受けた杉本三郎が
遭遇した結婚式会場での思わぬ事態を描いた「華燭」


◆事務所兼自宅の大家である竹中家の関係を通して朽田美姫から依頼された案件から
救いようのない結末へとなだれ込む様子を描いた
「昨日がなければ明日もない」

善良な私立探偵の目を通して描かれた人間の心の闇。


善意があれば悪意もあるというこの社会に対峙せざるを得ない
杉村三郎の心が壊れないでほしいと願うような案件の数々。

 

第一話は実際にマスコミを騒がせていた高学歴の男たちの集団レイプ事件を思い出すような内容。

 

自己本位の権化のような人物の起こした数々の事象の結果の
救いようのない結末を描いているのは第三話。

 
心に屈折の闇を抱えながら何食わぬ顔で生きている悪人を描くのがつくづくうまい作家さん
と再確認した作品でした。

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輪廻転生を信じている友がふたり。


そのうちのKさんは長い間二人三脚で仲睦まじく歩んでいた歯科医のご主人を亡くして4年。


孤独で切ない日々を経て少しずつ日常が戻ってきたというKさん。


Kさんがあの世に行った暁にはご主人に会えるの?と聞く私に「会うことはできないの」とKさん。

それは寂しいね~と私。


私はといえば死んだら土に還るだけだと思っています。



つい先ごろ輪廻転生を信じているもうひとりの友Sさんと話していたときのこと。


「Kさんは死んでも愛するご主人とは会えないんだって」という私に、Sさんは即座に「もちろん会えないわよ」という。


この世で慈しみあった夫婦は来世ではもう会うことはないという。


なぜなら修行は終わっているから・・・と。


仲が思わしくなかった夫婦は来世でももう一度修行が必要ということで夫婦になる可能性があるという・・・。


ピタゴラスのころからある輪廻転生の思想、さまざまな宗教の核になっているのは知っていますが、イマイチ入り込めない。



「おばさんは来世でも人間になるけどおじさんは豚だと思う・・・」

そういえば、以前、チベット仏教に傾倒している夫の甥が私に向ってさも喜ばしいことを告げるかのように断言した言葉を思い出します。


でも・・・もしも・・・来世があるとしてももう人間にはなりたくない・・・悲しみや苦しみの継続した感情を持ちたくない・・・できたら心ある動物愛好家に飼われる犬か猫になりたい・・・路傍の石でもいいけど・・・と今の時点では思っています。






宮部みゆき氏著『地下鉄の雨』 


「麻子は同じ職場で働いていた男と婚約をした。
しかし挙式二週間前に突如破談になった。
麻子は会社を辞め、ウエイトレスとして再び勤めはじめた。
その店に「あの女」がやって来た…。
この表題作「地下街の雨」はじめ「決して見えない」「ムクロバラ」「さよなら、キリハラさん」など七つの短篇。
どの作品も都会の片隅で夢を信じて生きる人たちを描く、愛と幻想のストーリー」


久しぶりの宮部作品。

7篇の短篇集です。

ホラーテイストの作品群。

ちょっと苦手な分野かな。


1994年が初版ということで内容的に少し古色然とした感じは否めないものの7篇ともそれぞれに独立したテーマを扱った力作です。


ある出来事が起こってもそれぞれ受け取り方によってはその出来事自体がまったくちがったもののように変貌してしまうという恐怖を内包したような作品が多々。


まったくもって心模様というものは恐ろしさを含んでいます。


ある事象に関してそれに関わりがあった人々の言動を追っていくうち、その言葉は徐々に徐々に変容して、結果的に収拾がつかなくなったり、はたまた人々の視点が多ければ多いほど、その事象に各角度から光が当たり、思わぬ真実が浮かび上がってくるなど・・・私たちの日常にも思い当たるふしがあるのではないでしょうか。


そんな小さな心理の綾のようなものを掬い取る技が秀逸。


一作ごとの終結なので細切れ時間にでもどうぞ。

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通販大はやりですね。

カタログやテレビショッピング、インターネットに新聞掲載やチラシなど。


友人たちとおしゃべりしていても「通販で○○を買ったの」というような話題が必ず1つ2つ出てきます。


私はもっぱらインターネット専用で目的のものを価格com.などで検索していちばん安値で送料無料のお店を探します。


いつも購入しているのはアメリカ製のサプリ、フラクトオリゴ糖、本などですが、時には電化製品も保証をつけて買ったり、海外旅行の保険もオンラインで注文したり。


テレビショッピングやカタログなどを漠然と見ていて衝動的にほしくなって注文という人も多いようですね。



先日夫が外出前、「留守中にある品物が届くのでこれで支払って」といって2万円置いていきました。


今まで夫が通販で買い物をしたという記憶はなかったので2万円も出して何を注文したのか興味津々だったところ届いたのは北海道産の紅鮭と2種類の松前漬け、イクラとイカの塩辛。

これで1万8000円!@@!

テレビで某タレントがいかにもおいしそうに宣伝していてどうしてもほしくなったそうですが、貧乏性の私としては持っていかれそうな高さ!


夫も私も紅鮭が大好物でその昔義母の生存中、北海道の親戚から毎年送られてくる紅鮭のおすそ分けがあまりにおいしかった記憶があり、今にいたるまでその幻を求めてさまざまな紅鮭を買って食べてみましたが、匹敵する味に巡り合えないまま今に至っています。


で、問題の紅鮭はというと・・・

「これ本当に紅? 何だか時鮭のような味がするね」という我が家ではちょっとがっかりの代物。


松前漬けはとてもおいしく毎食の楽しみが増えましたが、肝心の鮭は期待感が大きかっただけに残念でした。


通販って難しいですね。




さて本日は宮部みゆき氏著『淋しい狩人』をご紹介します。


10年近く前の作品、6篇からなる連作短編集です。


「本を愛する作家が贈る、本好きなあなたのための、本が主役の連作ミステリ。
東京下町にある、小さな古本屋『田辺書店』。
店主のイワさんと孫の稔が二人で切り盛りする平凡な古本屋を舞台に、大小様々な事件が持ち上がる。
本をテーマに描く、連作ミステリ」


上記の出版社のキャッチコピーに惹かれて手に取りましたが、取り上げられている犯罪はけっして上述の文言がかもし出すほのぼのとした内容のものではなかったのが予想外でした。



東京下町、荒川土手下にある小さな共同ビルの一階に店を構える田辺書店。


親友の遺した「田辺書店」の経営を任されたイワさんこと岩永幸吉と高校生の孫・稔の微笑ましい雰囲気を楽しむには扱う犯罪がけっこうハードなものもありそのアンバランスに慣れることなく読了しました。


古書店を舞台に店主が事件解決に一役を買うという設定は、先年惜しくも亡くなられた北森鴻氏のビアバー香菜理屋の店主が事件解決の推理を働かせるというシリーズ作品を思い出させるものでしたが、事件の内容には格段の差がある感じ。


扱っている犯罪は犯罪と呼ぶには躊躇するようなものから、殺人事件あり、児童虐待あり、サイコホラーありと盛りだくさんですが、これら6つの犯罪がすべて本にまつわるもので推理していくうちに背景に哀しい人間模様が浮かび上がるという仕掛けには著者の力量が感じられます。


それにしても事件そのものにひねりを用意した結構癖のある作品、好みが分かれるところでしょう。





今古典新訳ブームだそうです。

岩波文庫や新潮文庫などの定番とされていた古典文学を現在の言葉でリメイクして出版した光文社古典新訳文庫シリーズが思わぬヒットを続けているそうです。

なるほど、書店でも目につく場所にシリーズが置かれていますね。

スタンダールやラディゲ、O・ヘンリー、シェイクスピアなど学生時代に読んだ懐かしい作家がずらり!


シリーズ最高のヒット作はドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』亀山郁夫氏訳で全5冊72万5千部を売り上げたそうです。

登場人物が多い上に人名が何通りにも変化する古典『カラマーゾフの兄弟』を新訳では人称を統一し、人名の使い分けも最小限にする工夫が現在のヒットを生んだ要因のようです。


名訳といわれる外国古典文学はいろいろありますが、現代にはなじみにくい堅苦しい日本語訳が古典離れを生んでいることは否めませんね。


「いま、息をしている言葉で、もういちど古典を」というキャッチコピーを作った光文社の狙いは見事な広がりをみせています。


学生時代から何度も読み始めては挫折している『悪霊』がリメイクされたら再チャレンジしてみようかなと思っています。


というわけで、本日もエンタメ街道まっしぐら(-_-;)  


先日来『火車』、『模倣犯』と宮部作品を立て続けにアップしているので第120回直木賞受賞作『理由』で締めることにします。


『火車』ではカードローンによる自己破産について、『模倣犯』では理由なき快楽殺人という時代を反映する闇の部分をクローズアップしていますが、本書でも競売にかけられた高級マンションを舞台に、住宅事情の闇を詳細に描いています。


東京荒川の高層マンションで発生した一家4人殺害事件の発生から解決までを事件関係者への筆者のインタビュー形式で,事件の全容を浮かび上がらせるという珍しい試みがなされています。

まるでお昼のワイドショーを見ているような錯覚に陥らせる、限りなくドキュメンタリーに近づけた手法。


裁判所による不動産の競売を軸にローン破綻者である元所有者と競売によって正規に不動産を手に入れた現在の所有者の間で暗躍する悪徳不動産業者の三つ巴のそれぞれの思惑が交差して事件へと突き進んでいきます。


「不動産競売」とは債権者が債務者の負債を回収するため債務者が所有する不動産や担保物件の売却を裁判所に申し立てる制度です。


地方裁判所で公示され、市価より相当お買い得になっているようですが、素人が手を出すのは勇気がいるというのが一般に広まった風評ではないでしょうか。

手離すのを余儀なくされた元所有者の心情をうまく利用して、占有屋を差し向け、法の目を潜り抜けて新しい所有者を罠に嵌めるという悪質業者の手口がその風評の中身ですが、本書が出版されて以後、占有屋を規制する法律が厳しく改正になったそうです。


――「家族」に始まり「家族」に終わる ――

著者は現代に混迷する様々な家族を描くのが大変上手な作家です。


本来救いのあるべき「家族」というものから派生する様々な問題点をひとつひとつ丹念に拾い上げ、「家族」を形成する個人個人の生育歴や取り巻く環境、考え方などを縦横斜めから検証して、問題の核心に徐々に迫るのが著者の好む手法のようですが、時として物語の展開上必要とは思われない枝への脱線追い込みが目にあまる箇所が多く見られたのは『模倣犯』ほどひどくないものの、本書の泣き所とはいえないでしょうか。


著者の性格を表す緻密さはすばらしい要素ですが、一方物語自体が冗長になるのを余儀なくされているのは否めないような気がしました。


大変興味深い物語であるだけに、登場人物の中の1人の前の世代の家族の問題点などの延々と続く詳細に疑問を持たれた読者も多かったのではないでしょうか。

日本人の活字離れに歯止めをかけるため昨年発足した財団法人文字・活字文化推進機構で会長をされている資生堂名誉会長・福原義春氏がご自身の読書スタイルについて述べておられました。

記事によると、何冊もの本を同時並行で、仕事の合間の小刻みな時間を利用して読書されるそうです。

まずあとがきから読み始め、次にまえがきを読み、それから本文を少し読んだ時点で自分が思っていた印象と食い違う場合は読むのをやめるというのが氏の長く続いた読書スタイルだそうです。

氏にとって本を読むことは朝起きたら顔を洗うのと同じ、日常生活の一部、人類の英知の集積である本を読まないなんてもったいない、と締めくくっていらっしゃいます。


主婦である私の読書内容と第一線で活躍されている氏のそれでは大きな違いがあると思いますが、数冊並行(といっても2冊程度ですが)、あとがきからまえがき、本文へと移行する変則的な読み方はまさに福原氏と同じだ、と意を強くしました。

私の場合日中読書のために時間とることもできますが、中学時代から変わらぬ読書タイムは就寝前の1、2時間のみ。

例外は外出時の待ち時間や乗り物の移動時間、必ずバッグに用意した文庫本を読みますが、家ではどんなに暇でも日中の読書は落ち着かないという理由でしません。


従って読書は必然的に横になって、という行儀の悪いスタイルでの乱読斜読です。

ブログをアップし始めてからは片手にポストイットが定番となり、今までの気楽な読みっぱなしスタイルから少々変化しましたが、基本的にはベッドでの読書タイムが私にとってその日のいちばんの至福のときです。

ということで横になって手で支えるには文庫本が最適、太い単行本は本当に疲れます。



前フリが長くなりましたが、上下巻合わせて1400頁、1頁を2段に分けぎっしり詰めた活字の本 - これが本日ご紹介する宮部みゆき氏『模倣犯』です。


いやはや重くて長かった

これが正直な感想です(-_-;)


宮部氏に関しては先日アップした『火車』のところで簡単な経歴を述べていますので、よかったら読んでください。
                    http://yaplog.jp/ashy_ashy/archive/235

本書は
2001年文春ミステリーベスト10 1位
2001年芸術選奨文部科学大臣賞
2002年度版このミス10 1位
第55回毎日出版文化賞特別賞
第5回司馬遼太郎賞受賞

『火車』『理由』と並ぶ著者の代表作といわれています。


過去に殺人事件で家族を失いひとりだけ生き残ったという過去を持つ高校生真一が公園のゴミ箱から女性の右腕を発見することからこの壮大な物語が始まります。


3章からなる本書の2章部分ではきっかけとなった右腕の女性を含む連続女性殺害事件の犯人からの視点で描かれているという斬新な試みがされています。

1章、3章ではその時点で行方不明女性の祖父有馬義男、右腕発見者塚田真一、事件を追うルポライター前畑滋子を主人公とし、警察、別の被害者などを取り巻く家族を背景にそれぞれ放射線状にどんどん果てしない広がりを見せていきます。


これほどまでに饒舌に物語を構築する著者の文才に驚嘆するばかりですが、それぞれが別方向に広がりを見せながらも時に密接に交わりあい、最後にはかけらがパズルのように収まるべきところに収まってラストを迎える手法には舌を巻きます。


昨今世間を賑わしている理由なき犯罪 ― 快楽殺人 ― をテーマに犯人である病んだ社会の申し子たちとともに事件に関係する人たちのバックグラウンドを丹念に描いていますが、ここまで詳細に広げて描く必然性があるのか、というのが正直な感想です。


上述した主人公たちを含む登場人物があまりにも多く、筋書きに没頭するというより、終わりを求めて惰性で読み進めた、という表現がぴったりの小説でした。


ともあれ、以前このブログでも取り上げた雫井脩介氏『犯人に告ぐ』のような「劇場型犯罪」を描いた金字塔であると思いますが、タイトルの意味するものを示唆する最後の犯人の行動自体はあまりにもあっけなく短絡的で、たいへんな違和感が残ってしまったことは残念でした

2007年にアメリカのヘッジファンドが低所得者向けのサブプライムローンに関連した運用に失敗したことが明るみに出たことに端を発したサブプライムローン問題はその後も全世界の金融市場を巻き込んでいまだ広がりを見せています。

アメリカがくしゃみすればまちがいなく風邪を引く日本の市場も一時は2万円台に乗るかとまでいわれていましたが、急転直下現在は1万4000円前後を低迷しています。


優良顧客をプライム層というらしいですが、その上にサブをつけて表している信用度の低い層の住宅取得熱を煽り、結果予想できた返済の停滞が私たちの生活に直結するほどの打撃を与えている責任をアメリカはどう考えているのでしょうか。


最低一生に一度、持ち家を持つことは庶民の夢ですが、無責任な貸付は夢を無残に打ち壊します。


ちなみに我が家もまだ完済していない住宅ローンを抱えていますが、ほとんどの庶民は持ち家を取得するとき、何らかの長期ローンを利用していらっしゃることと思いますが、計画性のある返済を念頭に何年もにわたって返済しているのが大方の実情だと思います。



今回ご紹介するのは少し古いベストセラーで気が引けるのですが、ローン地獄に巻き込まれた1人の女性の物語です。


宮部みゆき氏著『火車』、1993年に上梓した山本周五郎賞受賞作品です。

ベストセラー作家として著名な宮部氏は

1987年『我らが隣人の犯罪』でオール讀物推理小説新人賞

1989年『魔術はささやく』で日本推理サスペンス大賞

1992年『龍は眠る』で日本推理作家協会賞、『本所深川ふしぎ草紙』で吉川英治文学新人賞1993年本書で山本周五郎賞

1997年『蒲生邸事件』で日本SF大賞

1999年には『理由』で直木賞をそれぞれ受賞という輝かしい経歴の持ち主です。


本書を上梓されてから約15年、ますますローン社会、クレジットカード社会は広がりを見せています。

車で一走りすれば、気軽にキャッシングできる消費者金融の看板がいたるところに見られます。

昔は「闇金」などとおどろおどろしい名称で近よりがたかった消費者金融も若者向けにスマートな横文字の社名を用いてテレビでCMを出して気軽なイメージを植えつけています。


『火車』はこのようなローン社会の落とし穴をするどく抉った社会派ミステリーになっています。


怪我で休職中の本庁の刑事本間俊介に死んだ妻の甥から婚約者の失踪に関して行方を捜してほしいという依頼が来たことから物語が思わぬ闇にと展開していきます。


捜査をするにつれ、甥の婚約者の失踪の背後にあるローン地獄の底なしの沼地からどんなにかして這い上がろうともがく1人の天涯孤独な若い女性の姿が浮き彫りになります。


本間は姿の見えないその女性に語りかけます。

「もう、よそうや。
心の中で本間は小さく呼びかけた。君も疲れただろう。俺も疲れた。へとへとだ。もう追いかけっこはやめよう。君だって永遠に逃げ続けることはできないぞ。」


自分の責任ではないのに執拗に追い回す取り立て屋によって幸せな生活基盤を無残に壊される女性が自分の過去を清算しようともがいてだんだん犯罪の深みに嵌っていく様が描かれていて切なく胸に迫ります。


ただ作中で人権派の弁護士の口を借りて自己破産者を擁護している点が少し気にかかった点でした。

この本を通して、安易に多重債務を被った若者の間で「いざとなったら自己破産がある」という気楽な考えが定着しないことを祈るばかりです。

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