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ご訪問ありがとうございます。 「一日一生」を銘にさまざまな人生を読書というツールを通して味わっていきたいと思っています。 響きこし言葉に貼れるさみどりの付箋そよぎて林となりぬ

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カテゴリ: 吉田修一

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幼いころから本を読むことが好きだった私は中学生の頃から読む本の量が加速して学校図書館や市の図書館を利用してたくさんの本を読んできました。


ヘッセが大好きだった5歳上の姉が大学生活を京都で送っていたとき、帰省の折々お土産にヘッセやバイロン、ハイネの詩集を買って帰ってくれるのを首を長くして待っていた中高生時代。


ちくま書房の世界の文学、日本の文学を読み漁ったのもこの頃。


そんな山ほど読んだ本の読書記録を残そう、と思い立ってホームページを作ったのがこのブログの始まり。


今から15年ほど前のことです。


その後ブログという簡単なツールが登場したのでブログに移行して11年になります。



今ではエンタメ専門のような読書歴となってしまっていますが、これからはますます気楽に読める本を求めて、ブログに残すこともしなくなりそうな予感がします。



NHK全国短歌大会の歌の続きですが、一首勝負のほかに近藤芳美賞という近代短歌の礎を築かれた歌人の名を戴いた15首連作の賞があります。


連作となると15首を流れるひとつのテーマが必要になります。


時事詠、旅行詠、それとも大切な人の死をテーマのものなど多種多様ですが、自分自身にいちばん合うテーマは、と考えて「本」についてまとめたのが今回入選したものです。


記録としてアップしておきます。


「ふろふきのやうに」

光射す図書館の奥黄ばみゐしわが青春の『三太郎の日記』

そこだけが時が止まりしままのやうちくま全集の小暗き書棚

本棚の奥へ奥へと埋もれゆく『されど われらが日々―』捨てられずゐる

亡き人らの言葉に埋もるる図書館は生者と死者の行き交ふところ

図書館で読みし『水葬物語』新たなわれの旅となりたり

春の宵 中也の詩集を開くとき刹那に灯るわが恋のあり

窓の辺の風鈴の下揺り椅子に埋もれて読みぬ中也の失意

映像化してほしくない幾ひらの本を心に隠してをりぬ

原爆忌巡りくるたび浮かびこしわがまなうらの『五十鈴川の鴨』

八月の卓に並べる『戦中派不戦日記』とチーズ肉トロ

響きこし言葉に貼れるさみどりの付箋そよぎて林となりぬ

大いなる時の隔たりなきごとし陽だまりで読むラ・ロシュフコー

花(はな)布(ぎれ)はヒユウガミズキの淡き色 漱石全集書架にまどろむ

一冊を抜けば漱石寄りかかる時代を超へて羽田圭介に

煮つめられ深み増したるふろふきのやうに生きよと長田弘は








さて本日は吉田修一氏『怒り』のご紹介です。 
「若い夫婦が自宅で惨殺され、現場には「怒」という血文字が残されていた。
犯人は山神一也、二十七歳と判明するが、その行方は杳として知れず捜査は難航していた。
そして事件から一年後の夏―。
房総の港町で働く槇洋平・愛子親子、大手企業に勤めるゲイの藤田優馬、沖縄の離島で母と暮らす小宮山泉の前に、身元不詳の三人の男が現れた。
山神一也は整形手術を受け逃亡している、と警察は発表した。
洋平は一緒に働く田代が偽名だと知り、優馬は同居を始めた直人が女といるところを目撃し、泉は気に掛けていた田中が住む無人島であるものを見てしまう。
日常をともに過ごす相手に対し芽生える疑い。
三人のなかに、山神はいるのか?犯人を追う刑事が見た衝撃の結末とは!」


昨年映画化されて話題になった作品。


著者によると、平成19年英国人の英会話講師を殺害遺棄した容疑で指名手配され、2年後逮捕された市橋達也の事件に材を得て執筆されたそうです。


市橋達也の逃亡中、警察に多くの情報が寄せられ、その大半が別人だったという内容にインスピレーションを得たという著者。


本書でも東京、千葉、沖縄と3つの舞台を設定し、それぞれに前歴不詳の3人の男を配置、疑心暗鬼の人間の心の葛藤を描いています。


東京郊外で夫婦二人が惨殺され惨殺現場に「怒」という血文字を残して逃走した殺人事件から1年後の夏。

房総の漁港で暮らす洋平・愛子親子の前に現れた田代。

大手企業に勤めるゲイの優馬の前に現れた直人。

母と沖縄の離島へ引っ越した女子高生・泉の前に現れた田中。


それぞれに公にできない事情を抱えながら、周囲の環境に徐々に溶け込んで生活の基盤を築きつつあった、そんなとき、指名手配されている山神一也の情報をテレビで知った周囲の人々がそれぞれ3人を疑い始めるところから、さまざまな物語が生まれます。


本書はそういった状況の下、身元不明の3人と彼らを取り巻く周囲の人々との間で起こる軋轢を描いています。


山神一也はだれか?という謎解きはラストで解決しますが、本書で著者が描きたかったことはそんなミステリーの常套的な展開ではなく、「人は何をもって他者を信頼信用するのか」ということではないでしょうか。


このテーマについて、自分なりに考えてみると・・・

少なくとも人の言葉によって、というよりその人の行動、それも少なくとも今を遡る過去の行動に信用の重きを置いているような気がします。

そして風通しのいい人。

言動が一致する人。


わたし自身は人を疑わない性格が危険を孕んでいるということをかねがね注意されていますが、やはり人を疑わない、というスタンスはこれからもずっと保っていきたいと思います。


本書にはこのようなテーマを軸として、同性愛者、母子家庭、発達障害など、社会で生きづらい人々の生活が淡々とした筆致で描かれています。


かなりの長編、全編を通してエネルギーがなければ読めないような内容で彩られていますが、読み応えはありました。

よかったらどうぞ。

地デジまであと2年、我が家にある2台のテレビのうち1台は阪神大震災を生き残ったブラウン管のつわものでしたが、さすが寄る年波には勝てずときどき横縞が走るようになっていました。


年末長男の帰省を機に、量販店で選んでもらいブルーレイビデオとともに液晶テレビ32型を購入、そのまま持って帰り長男に設定してもらいやっと地デジの仲間入りができました


ブルーレイはまだ高価なので買う必要はないとの結論に達していたにもかかわらず目玉商品として出ていたのが安価だったのでセットで買ってしまいましたが、テレビと合わせて驚くほどの安さで買えたことに大満足!


だれかれとなく値段を披露して羨ましがられるのを最近の唯一の喜びにしています。


私は夕食時のお笑い番組やクイズ番組以外ほとんどテレビを見ませんが、夫はスポーツと名のつくものはほとんど網羅、大好きな洋画も色鮮やかに見ることができて満足そうです。


で、ニュービデオで初めて録画したのが年末恒例のダウンタウンの「ガキ使罰ゲーム」。

お笑い大好き一家の馬鹿っぷりがわかり軽蔑されそうですが、お正月中繰り返し見ては楽しみました~。



さて本日は吉田修一氏『最後の息子』をご紹介します。


著者吉田氏は大学卒業後、スイミングスクールのインストラクターなどを経て

1997年本書の表題作でもある『最後の息子』でデビュー、同作が第84回文学界新人賞受賞&第117回芥川賞候補ともなっています。


このブログでも過去に別作品『悪人』のレビューと共に吉田氏の簡単な受賞暦を書いていますので見ていただけたらうれしいです。
           http://yaplog.jp/ashy_ashy/archive/267


本書には表題作「最後の息子」のほか、「破片」と「Water」の3つの作品が掲載されています。

このうち「Water」は2007年に著者自身で監督、映画化して話題になりましたね。



さて本書のレビューを少し書いてみたいと思います。


新宿でオカマの閻魔ちゃんのヒモとして同棲、モラトリアムな日々を過ごす主人公「ぼく」の日常を自ら回すビデオカメラを通して冷静な目で客観的に見つめる様子を描いた表題作「最後の息子」

閻魔ちゃんの情をとことん利用しているかに見えるダメ人間の「ぼく」の一見無気力でクール、利己的な性格の下に隠された優しさや繊細さが、敢えてスタンスにしているかにみえる若者特有の偽悪的な人柄の奥から見え隠れする様子を巧みに捉えた筆力がのちの新人賞受賞に結びついたのではないでしょうか。

危うい綱渡り的な閻魔ちゃんとの生活は「ぼく」の最後のもくろみを閻魔ちゃんが拒否することで唐突に終わりを告げますが、閻魔ちゃんというオカマの心意気というものを描いてとても心打つラストになっています。


著者の故郷長崎を舞台の高校水泳部員たちの爽やかな青春を描いた「Water」

これぞ「青春小説」といえる汗と涙と恋と笑いの物語、個人的には本書の中ではピカイチでした。

水泳という著者の得意分野を扱っているだけに、著者にしては珍しいストレート勝負に出た作品という感、久しぶりに清々しい躍動感溢れる作品に触れることができました。

登場人物の使う長崎弁が物語のテーマである素朴さやひたむきさを後押しする強力な助っ人となっていて、方言大好きな私の胸を掴みました。

今年5月26日75歳で2度目のエベレスト登頂を果たしたプロスキーヤーの三浦雄一郎さんと次男の豪太さん親子が今朝のテレビに出演していらっしゃいました。


親子でともにエベレスト登頂を目指したものの、8,200�bの地点で豪太さんの肺水腫が限界に達して命の危険を感じたため下山、その後雄一郎さんが単独で無事登頂を果たした経過を語っていらっしゃいました。


結果としては1日ちがいで最高齢者としてのギネスには載れなかったそうですが、75歳の果敢な挑戦にいたる厳しいトレーニングの道のりや不整脈を克服するための2度の手術など、限界を超えた準備には驚くばかりでした。


登頂後の言葉「涙が出るほど辛く、厳しく、うれしい」に胸を打たれました。


三浦さんの限界への挑戦はこれからも続くそうです。


簡単な日常のウォーキングですら続かない私は穴があったら入りたい心境です。




本日は新聞その他の書評で評判の吉田修一氏著『悪人』をご紹介したいと思います。


吉田修一氏の著書は初めてですが、調べてみるとすごい受賞歴の作家です。

1997年『最後の息子』で第84回文学界新人賞、第117回芥川賞候
1998年『破片』で第118回芥川賞候補
2000年『突風』で第122回芥川賞候補
2001年『熱帯魚』で第124回芥川賞候補、第23回野間文芸新人賞候補
2002年『パレード』で第15回山本周五郎賞受賞
2002年『パーク・ライフ』で第127回芥川賞受賞
2007年『悪人』で大佛次郎賞&毎日出版文化賞受賞&2008年度本屋大賞第4位


本書は福岡県と佐賀県の県境にある三瀬峠が現場の殺人事件を実際のドキュメンタリーと見紛うばかりの克明さで描いた長編小説です。


事件に至るまでの経過、被害者と加害者の成育歴や関係者から見た両人物像を全体に散りばめ、被害者である女性や加害者である青年自身にも語らせるという手法や、出会い系サイトに絡む事件を題材にしたところなど、多くの若者たちを代表する読者を惹きつけているのがうなずけます。


また、物語全体を通して使われている九州弁の会話体がドキュメンタリー的な風合いをより醸し出すという効果的な技法で使われています。


物語の詳細には触れませんが、タイトルの『悪人』は多くの示唆を含んでいて、この物語で著者が書きたかったことの断片を読者に掴んでほしい、そんな願いがタイトルに込められているように感じました。


殺人を犯した犯人こそ「悪人」であるという世間一般の常識から外れるとはわかっていますが、一体誰が悪人なのか、運命の不条理を見せつけられたような物語でした。


知らず知らずのうちに運命の歯車が狂うのか、その狂った歯車も本当は密かに運命として組み込まれていたのか、水が川下へ流れるように自然に救いのない方向に流される犯人と、そんな犯人との束の間の逃亡の旅を共有することになった女性光代の切なさが心に沁みます。


逃避行の最後に犯人祐一が光代にとった行動が私にはそのとき相手の気持ちを楽にできうる最大のやさしさと受け取れて胸がいっぱいになりました。


悪人の定義とは?

深く考えさせる物語でした。

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