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ご訪問ありがとうございます。 「一日一生」を銘にさまざまな人生を読書というツールを通して味わっていきたいと思っています。 響きこし言葉に貼れるさみどりの付箋そよぎて林となりぬ

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カテゴリ: 有川浩

大型台風で日本列島が大変ですね。


天気図を見ていると当地は台風の通り道ど真ん中のようですが、結果的にいつも大きな被害を免れる幸せな県。


今夜半に直撃するということで今はそんなに激しくない雨風ですがどうなるか。



実家は築60年以上の古屋なので母が存命中は台風や地震が起こるたびに寝たきりの母が心配で生きた心地がしませんでしたが、今は崩れても気持ちが楽です。



それにしても台風が起こるたびに、雨風をついて見回りに出たり屋根が心配で登ったり所有の船の様子を見に行ったりなどの結果命を落とす人が何人も出るのは毎回のことですが、たいてい見回りに行く人は男性、それも高齢者が多いのには驚きます。



今回も早くも90歳の男性が船の様子を見に行って行方不明となっています。


正確な天気予報が発信される昨今、台風が来るのがわかっていてサーフィンをしていた男性が命を落としたりするのは自業自得だとしても毎年の死亡のニュースが戒めにならないのでしょうか?




我が家はマンション暮らしなので見回りは不要ですが、それでも雷や豪雨などになると意味もなく張り切って幾度となくベランダに出る夫を見ていると有事における男性と女性との違いがわかる気がします。



夫が亡くなられた人々のような境遇だったら間違いなく反対を押し切って自分の船をしっかり固定しに行ったり風雨をもろともせず屋根に上がって点検したりしていると想像できるので悲しい事故が他人事とは思えません。



最小限の被害で台風が通り抜けますように!






さて今回は有川浩氏著『ストーリー・セラー』です。


2011年度本屋大賞第10位


「物語に愛された人から、物語を愛する人へ。
心を込めて、この小説を贈ります」


「このままずっと小説を書き続けるか、あるいは……。
小説家と、彼女を支える夫を突然襲った、あまりにも過酷な運命。
極限の選択を求められた彼女は、今まで最高の読者でいてくれた夫のために、物語を紡ぎ続けた――。
『Story Seller』に発表された一篇に、単行本のために書き下ろされた新たな一篇を加えて贈る完全版!」



sideAでは女性作家が愛する夫を残してあの世へと旅立つ物語、一方sideBでは夫に先立たれる女性作家の物語が収録されています。



ライトノベルでデビューされた著者らしい作品といえるでしょうか。




『図書館戦争』を初めとする自衛隊シリーズはたいへん目新しく物語の中に「ベタ甘」の恋愛が組み込まれていてもそれを超える大きな構成のおもしろさで惹きつけられるものがありましたが、本書はその「ベタ甘」を抽出したような内容で若い人にとっては惹きつけられる要因でしょうけど私にはあまり共感できない作品でした。




不治の病で死が目前に迫っている愛する妻が正義感は強いのだけどちょっとエキセントリックな性格という設定の上、その病も思考をするだけで残された命の灯が徐々に消えていくという今まで世界でも症例のない病気という設定には絵物語のようで何とも違和感がありました。



『レインツリーの国』でも感じたのですが、あまりにも正統派のまっすぐな男性のこれでもかというくらいくどいセリフにエキセントリックな女性の対応という構図を純粋に受け取ることができませんでした。



それやこれやで世の中の見方は?と久しぶりにレビューをググったら絶賛レビューが出るわ出るわ!



これも年齢のせいかと自分の感性に自信が持てなくなりました。


全国の有川ファンの方には申し訳ないような失礼なレビューとなりましたが、これもそれぞれの感覚と受け取ってくださればありがたいです。

毎年少しずつクリスマスローズを増やしている友人が少し前ドライフラワー用にと切花を持ってきてくれました。


風通しがよく湿気が少ない場所を選んで吊るしておいたら10日ほどでかわいいドライフラワーの花束が完成しました。



ここ数年ブームのように園芸店でもさまざまな種類のクリスマスローズが出回っています。


冬から3月頃まで楽しませてくれるバラのような花という意味でつけられたのでしょうか。


ティアドロップのようにうつむきかげんに咲く様子はバラとちがってはにかんだ奥ゆかしさが感じられるせいか最近うなぎのぼりに人気が出ているようですね。


強い毒性を持つキンポウゲ科の仲間、クリスマスローズも毒草だそうです。 


以前ブログでの交流で親しくしていただいているクリスチャンの方が名前の由来を書いていらっしゃいました。


クリスマスローズには、クリスマスの頃に咲くノイガーと、2~3月頃に咲くレンテンローズがあり日本ではまとめてクリスマスローズと呼ばれているそうですが、市場に出回っているのはほとんど後者のレンテンローズで、キリスト教の四旬節(レント)の頃に咲くところからこの名前がついたのだそうです。


花言葉は「追憶」、「私を忘れないで」、「私の不安を取り除いてください」、「慰め」。


と、ここまではロマンティックな雰囲気のクリスマスローズですが、和名を知ってびっくり。

「ヤツデハナガサ(八手花笠)」


「ヤツデハナガサ」というより「クリスマスローズ」の語感の方が断然すてきですよね。




さて本日は有川浩氏著『フリーター、家を買う。のレビューです。


著者のあとがきによると、本書は2007年7月から12月にかけて日経ネット丸の内オフィスでweb連載したものにアフターストーリーを加筆して単行本化したものだそうです。


依頼側からのテーマ「新しい一日」「オフィスと仕事」からはかなりかけ離れた内容になっていますが、著者自身の就職活動経験が大いに反映されているようです。


「『母さん死ぬな――』へなちょこ25歳がいざ一念発起!?
崩壊しかかった家族の再生と「カッコ悪すぎな俺」の成長を描く、勇気と希望の結晶」


主人公は忍耐とは無縁のいまどきの青年・武誠治。


数十社受けた中でやっとこ唯一内定をもらった会社を肌に合わないという理由で3ヶ月で辞めフリーター人生まっしぐらの誠治に突然降りかかった母・寿美子のうつ病をきっかけに初めて家族のこと、自分の立ち位置に思い至り一念発起するという主人公の成長と家族の再生の物語。


重度の全般性不安障害を発症した母親の、20年の間近隣の人々から阻害され続けたという発病原因には少々こじつけ感がありましたが、主人公・誠治を取り囲む家族 ― 嫁いだ姉・亜矢子や父親・誠一のそれぞれの人物が個性豊かに描かれていて魅力的な作品となっています。


名古屋の医者の家に嫁いだ姉・亜矢子の強力なリーダーシップの下、精神障害の患者に対する家族としての姿勢を半強制的に学ばされた父親と主人公が初めは戸惑いながらも徐々に本気で取り組むようになるあたり、どこの家庭でも繰り広げられる過程であろうと思われます。


本書は主人公を中心の、非常に暗く救いのない導入部分から次第に行く手が広がっていくというサクセスストーリーとなっているところ、著者の作品特有のハッピーな着地に安心して読めます。


導入部分での主人公像と終章部分での主人公像のあまりの落差に、現実感のない作品ともいえますが、ほんの少し視点を変えるだけで前向きの生き様への方向転換が可能だということを知ることのできる希望の書でもあります。


出発から着地までの物語の間にはフリーターの現状や第二新卒の就活の難しさ、うつ病の実態と家族のあり方、加えて誠治の就活における履歴書の書き方、面接の受け方、弱小の建築業界の様子など私たちの参考になるさまざまな問題がてんこ盛り。


現実に置き換えてみても、へなちょこ25歳の青年にしてはできすぎの成長を遂げて物語の幕が閉じますが、なかなかに鋭い人間観察眼を感じさせる作品でした。


♪この木なんの木 気になる木
名前も知らない 木ですから
名前も知らない木になるでしょう♪


日本で最も有名なCMソングの1つ・日立グループの歌「日立の樹」。


ハワイのオアフ島のモアナルア・ガーデンパークにある樹齢約130年、高さ約25m、幅約40mの巨大な木:アメリカネムノキ、ハワイではモンキーポッドと呼ばれているそうです。


日本の合歓の木と同じような美しいピンクの花が咲くそうです。  

雨が降る前になると葉が閉じてしまうことからレインツリーという別名があります。

花言葉は「歓喜:胸のときめき」。





今回はこのレインツリーをタイトルにした物語をご紹介します。

有川浩氏著『レインツリーの国』


あるコミュニティで親しくしていただいているWさんご推薦の作品。


有川氏の「図書館戦争シリーズ」の第2作目『図書館内乱』を読まれた方ならすぐ思い当たるのではないでしょうか。

登場人物である小牧幹久二等図書士が幼馴染の中途難聴者・中澤毬江に薦めた本として登場します。

『図書館内乱』登場時には架空の本でしたが、エピソードとして扱った中途失聴と難聴を抱えた人を主軸にして真っ向勝負で飛び道具なしの恋愛物を書きたいという著者の熱い思いが2つの出版社 ― メディアワークス&新潮社 ― を動かし、前例のないコラボレーション企画作品となって生まれた本書。


あとがきで著者は次のように語っていらっしゃいます。

「私が書きたかったのは『障害者の話』ではなく、『恋の話』です。
ただヒロインが聴覚のハンデを持っているだけの」



「きっかけは『忘れられない本』。
そこから始まったメールの交換。
俺はあっという間に、どうしても彼女に会いたいと思うようになっていた。
だが、意を決して出したメールの返事はつれないもの。
かたくなに会うのを拒む彼女には、そう主張せざるを得ない、ある理由があった――」


メールから始まった交際で同質の感受性や価値観を共有した伸行とひとみはやがてネットという垣根を越えて初めてデートをします。


その時点からひとみの中途失聴という障害をはさんで向き合うことを余儀なくされる2人。


著者はただ「恋の話」を描きたかったと記していらっしゃいますが、文字通りひとみの「障害」と対峙して言葉や文字の嵐で格闘しながら自分の気持ちをひとみの心に届けようともがく伸行の描き方を見ていると「まず障害ありき」の物語という印象を受けました。



偶然私のまわりには障害者はいませんが、突然死は別として人間として生を受けた人はだれでも障害者になる可能性があるという認識はいつも持っている自分があり、自分とは無関係の出来事とは到底思っていないつもりでしたが、この物語を読むとやはり障害者とは相当の意識のへだたりがあることを認めないわけにはいきませんでした。


というのも障害という動かしがたい事実に激しく囚われているかに見えるひとみに共感しがたい部分を感じてしまうのです。


この物語に登場する若い2人の人物設定、伸行に関してはたまたま障害という個性を持っている女性としてひとみに接するスタンスを持つ意味で容量の広さにおいて理想に近い男性として描かれている反面、ひとみは障害という殻の中に閉じこもっている自我の強いセンシティブな女性という設定。


物語の中で相手の言葉をとらえ、健聴者の偏見と決めつけ、「ほら、伸さんはそっち側の壁を越えられない」と糾弾するなど、歩み寄りを一方的に求めて得られないと心を閉じるというスタンスは障害のなせるわざというよりむしろひとみの個人的性格から来るものではないでしょうか。


あくまでも作話なのにこんなことを考えてしまうということは・・・かなり物語に取り込まれて読了。


「逆差別」「不幸比べ」という言葉は世間でもよく言われることですが、障害による様々な現在進行形のトラウマを抱えたひとみとのぶつかり合いの中で伸行自身の口から語らせているこれらのこと、障害についての著者の取り組みの深さや人間の心理状態の描き方の絶妙さには感服しました。


ひとみの障害を意識するあまりの彼に対する攻撃的態度や周囲の無理解に対する投げやりとも思える心の閉ざし方などの屈折した感情などを持つ弱さ丸ごとの人物描写の巧みさはさすが筆力のある著者ならではです。


ひとみの口から語られる「聞く」と「聴く」、「中途失聴者」「難聴」「聾唖」、「伝音性難聴」と「感音性難聴」の違い、聴覚障害者にとって「手話は第一言語で日本語は第二言語」という事実など一般的な常識止まりの自分の知識のなさを補ってあまりある内容でした。


初めての待ち合わせの場でヘッドフォンをつけていたひとみに対し伸行が言います。

「俺を騙すために最初に音楽聴いているフリまでした、そこまでせなあかんくらい、俺はひとみさんにとって信用できへん『悪意ある他人』やったんかって」

これに対し「伸さんの前では私は普通の女の子でいたかったんです・・・耳のことで同情されて優しくしてもらうんじゃなくて、同情で楽しい一日をもらうんじゃなくて、メールで楽しかったみたいに、普通に会いたかったんです」というひとみ。


障害に囚われすぎというのは簡単ですが、自分の身にそれが起きたとき、それでもなおひとみに共感できないと言い切れる自分であるかどうか。


「理想の人なんかおれへんよ。
単に条件が違う人間がいっぱいおるだけや。
その中には人間できてる人もできてない人もおんなじようにいっぱいおるよ。
ていうか、できてる部分とできてへん部分とそれぞれ持ってるんちゃうかな」


どんな場合でも相手の立場に立って「完全に」理解することは不可能ですが、2人のようにとことんぶつかり合い、そしてその結果歩み寄ることができたら・・・その先には希望が見えてくる・・・そんな示唆を与えてくれる前向きなラストで終わっています。


いくつもの箇所で2人の口を借りて語られる言葉に反発心がわきあがったり、逆に共感したり、反省したり、もう1度相手の身になるという基本行為のスタートラインに立つことを余儀なくされたり・・・私にとってたくさんの問題意識が立ち上がってきた作品でした。

以前読んだ生命科学者・柳澤桂子氏の本の中に次のような文章がありました。

「明治の最後の年に生まれた母は、私を男に仕える嫁となるべく、厳しくしつけた・・・
私の人生は男と家族のために捧げるものであるということを子供の頃から教えられた」


若い頃より数十年、原因不明の病気に苦しめられ、夫の介助なしでは生きられない寝たきりの生活を余儀なくされたとき、氏はこの母の教えが呪縛となってご主人が家事や介護をする姿を見るたび申し訳なさに死にたいと思うほどの精神的な二重の苦しみを味わう日々だったそうです。


知らず知らずに植えつけられて覆すことが難しいこのような考えを日本語では「固定観念」、英語ではステレオタイプといいますが、自分の心を覗いてみてもあまり根拠のない固定観念から抜け出せないことがよくあります。


戦後生まれで男女同権の恩恵にたっぷり浸かって過ごしてきたように思ってはいますが、やはり家回りの雑事はすべて女の仕事という固定観念が夫だけならいざしらず私自身にもかなりあり、それを覆すのが生半にはできないという壁によく突き当たる毎日。



30代40代の既婚女性を対象のアンケートで、夫に言われてむかつく言葉No.1に輝いたのが「(家事・育児を)手伝ってやろうか」だそうです。


夫もご多分に漏れず、特別な善行を施すような口ぶりで「手伝ってやろうか」と言います。


義母が存命中お盆とお正月には定期的に帰省していたとき、終日兄たちと囲碁を打ち続ける夫を横目に見ながら食事を作り続けていたことが思い出されます。


ゲームにしても「囲碁」「将棋」は世の中に広く受け入れられるもの、「マージャン」「パチンコ」「花札」などはアウトロー的なものという固定観念が一般に人々の心に定着しています。


そんな固定観念を打ち砕くために、今度囲碁をする夫たちの横で終日兄嫁と花札に興じ続けていたらどんな反応が返ってくるか・・・1度実験してみたいものです。



さて、小説などの世界でも「戦争もの」は男性作家が好む題材、「ロマンス系」は女性作家の領分と相場が決まっていますが、その固定観念を大きく崩したのがこのブログにも再三登場する女性作家・有川浩氏。


女性でありながら自衛隊に並々ならぬ関心を持ち、自衛隊に材を求めた多くの作品を生み出しています。


陸・海・空取り混ぜて自衛隊員たちの日々の健闘ぶりを描いた作品を数多く出していらっしゃいますが、そこに様々な形の恋愛模様を織り込んでいるところ、著者の女性らしさを垣間見ることができます。



というわけで今日ご紹介するのは有川浩氏著『クジラの彼』です。


雑誌「野生時代」に掲載されたものが2007年に単行本として刊行されました。

ずばり、自衛隊員の恋愛を描いた6編からなる短編小説。


★人数合わせの合コンで出会った聡子好みのルックスのよい彼・冬原が潜水艦員だったことから派生する待つ身の苦しさを抱えながらの恋愛模様を描いた表題作「クジラの彼」


★航空設計士・宮田絵里と航空自衛隊員・高科二尉の次世代軍用機のトイレを巡っての男女の感覚の落差から展開する闘いにも似た論争から次第に恋に発展していく様子を描いた「ロールアウト」


★陸上自衛官・三池舞子が失恋するたび愚痴の聞き手である同期でパシリの伸下雅史のじっくり温めていた本物の恋心に気づいていく過程を描いた「国防レンアイ」


★容姿端麗で有能な彼女に接するとつい萎縮して自信が持てない夏木が紆余曲折の末プロポーズをするまでを描いた「有能な彼女」


★恋人と会うために自衛隊の基地から脱走しようとしていた若い隊員に自分の若き頃の脱柵経験を話して脱柵を未遂に終わらせる過程を描いた「脱柵エレジー」


★可愛くてそして男勝りで強い女性パイロット・光稀とそんな彼女にまぶしい気持ちを持っていた高巳が築いた家庭の様子を描いた「ファイターパイロットの君」



どの作品も過程は切なくも最後はハッピーに終わるという結び、安心感をもって気軽に読めることにプラスして身近ではない自衛官の日常を垣間見ることができるという極め付きのエンタメ小説です。

ぜひどうぞ。

今月22日付けの朝日新聞に有川浩氏のインタビュー記事が載っていました。


有川氏といえばいま旬のベストセラー作家。


その有川氏の新刊『フリーター、家を買う』に関してのインタビュー記事。


新卒で就職した会社から滑り落ちた主人公の青年がバイトを点々とした末、あるきっかけで一念発起して正社員の道を切り開き念願の一軒家を手にするまでの顛末を描いた作品という紹介でしたが、その内容が現在の雇用不安の時代の若者たちの心をとらえ、共感を広げているそうです。


有川氏自身も就活に失敗した経験を持ち、それらが作品に投影されたと語ります。


「滑り落ちた人の中にはいろんな人が埋もれている。
立ち直ろうとしたとき、受け入れ先のある社会であってほしい」と結んでいます。


昔は青春時代にドロップアウトしても受け入れてくれる大人社会の広い懐があり、りっぱに立ち直って社会に貢献している人々がいましたが、自分自身が平均的生活を保つのに一生懸命な現代、若気の至りの若者たちの可能性をもっと信じて受け入れる余裕のある大人の社会が必要とされているような気がします。



さて本日はちょうど読み終わったばかりの有川氏の有名なベストセラー「図書館シリーズ」第1巻です。


有川浩氏著『図書館戦争』


2006年『図書館戦争』が「『本の雑誌』が選ぶ2006年上半期エンターテインメント」で第1位、 「2007年度『本屋大賞』第5位
2006年『図書館内乱』
2007年『図書館危機』
2007年『図書館革命』
2008年『別冊 図書館戦争�T』
2008年『別冊 図書館戦争�U』
    シリーズとして第39回星雲賞日本長編作品部門賞受賞


著者の夫君がある図書館に提示してあった「図書館の自由に関する宣言」を見たことが本書執筆の発端となったそうです。


改めて「図書館の自由に関する宣言」なるものをググってみてその物々しさに驚きました。



図書館の自由に関する宣言
図書館は、基本的人権のひとつとして知る自由をもつ国民に、資料と施設を提供することを、もっとも重要な任務とする。
この任務を果たすため、図書館は次のことを確認し実践する。

第1 図書館は資料収集の自由を有する。
第2 図書館は資料提供の自由を有する。
第3 図書館は利用者の秘密を守る。
第4 図書館はすべての検閲に反対する。

図書館の自由が侵されるとき、われわれは団結して、あくまで自由を守る。




戦前における思想善導機関として機能した図書館の歴史を反省して1954年に制定された宣言で現在の改訂版ができたのは1979年だそうです。


このような宣言によって治外法権的に図書館が守られていたとは有川氏ならずも驚きを禁じえませんが、秦の始皇帝が行った焚書坑儒に始まって表現の弾圧は世界各国のみならず日本でも珍しいことではないのでこのような宣言は必要不可欠であるともいえるのでしょう。



さて本書に戻します。


時代設定は西暦2019年、公序良俗を乱し人権を侵害する表現を取り締まる法律「メディア良化法」が成立、施行された近未来。


言論弾圧のためには武力行使も辞さない国家機関である「メディア良化委員会」の実行組織「良化特務機関」の検閲から表現の自由を守る任務を唯一与えられた広域地方行政機関である図書館防衛部の図書隊の主要メンバー6名の日夜の奮闘や恋愛模様を描いています。


主人公は笠原郁22歳、女にして運動能力抜群で熱い正義感に燃える熱血バカでいながら心は純真な乙女という設定。


このブログでも著者の2作品をアップしていますが、特有のコミカル&迷いのない筋立てが本書でもしっかり組み込まれていてスピーディーに展開する小気味よい構成や私好みの落語もどきの会話が読者を飽きさせないところ、すばらしい才能です。


ちなみに過去ブログでは

『阪急電車』http://yaplog.jp/ashy_ashy/archive/277

『ラブコメ今昔』
http://yaplog.jp/ashy_ashy/archive/360

をアップしていますのでよかったらナビしてください。



「図書館の自由に関する宣言」からこのような物語構成を思いつくとは、さすが自衛隊オタクといわれる著者ならではの発想、その上での緻密な環境固め、その中で繰り広げられる軍事演習や詳細な図書館業務の描写の確かさ、主人公を取り囲む個性豊かな人々の設定、そしてもうひとつ、おなじみの中心核に持ってきているラブコメなど、幾重にも張られた複線の単純明快な面白さに脱帽です。


37歳・有川氏、引き出しの中に異色&バラエティ豊かな題材を数多く所有されている作家さんです。

連日豚インフルエンザの話題でもちきりです。

最近のsmall talk はもっぱらこの話題。


あっという間に広がった阪神の様子を見ると、岡山ももうすぐという感じです。

ウィルス自体は弱毒性ということなので、従来のインフルエンザとあまり変わらないようですが、マスクや食料備蓄品の買出しの様子がテレビで映されたりすると、何だかじっとしてはいられないような心境になってしまいます。


一億総付和雷同!


1970年代に起きた第一次と二次のオイルショックでは日本人のヒステリー体質が露呈、町中の店頭からトイレットペーパーが一瞬にして消えたのは有名な話です。


今回もマスクで同じような現象が起こっているようです。



何でも流行に何歩も遅れる私は、流行の事件、トレンディファッションなどすべて下火になった頃やっと「そういえば・・・」と人に聞いては呆れられるので、今回は・・とネットでマスクだけは注文したのがもう1ヶ月以上も前の話。


そのときはメキシコ、カナダで騒がれていただけなのに、もうすでに生産が追いつかないとかで待たされて待たされてやっと先日届きました。


要介護5の母の元に通っているので、普段でもマイクが必需品です。


私だけではなく多くのヘルパーさんや看護師さん、先生が出入りするので、以前母に箱入りマスクを持参して人と接するときだけ着けるよう頼んだのですが、「こんなもの着けたら息ができないからいや」とのワガママな一言で却下されてしまいました。


出入りする方の中にはかぜを引かれている方もいらっしゃるだろうにと気が揉めますが、なすすべもなくせめて私だけでもとマスク着用で母に接している毎日です。




さて今回は有川浩氏著『ラブコメ今昔』です。


2003年『塩の街』で第10回電撃小説大賞
2004年『空の中』
2004年『海の底』
2006年『図書館戦争』で2007年度本屋大賞第5位
2007年『クジラの彼』
2008年『図書館戦争』シリーズで第39回星雲賞日本長編作品部門賞
2008年『阪急電車』
2008年『ラブコメ今昔』


デビュー作『塩の街』と『空の中』、『海の底』は自衛隊三部作と呼ばれ、陸・海・空自衛隊を舞台にしていますが、次にブレイクした『図書館戦争』シリーズでも「図書隊」と呼ばれる架空軍事組織の活躍を描いて好評を博しています。


このブログでも過去に『阪急電車』を取り上げましたが、これは自衛隊とは無関係の阪急電車に乗り合わせた人々を巧みに描いた連作でした。

         http://yaplog.jp/ashy_ashy/archive/277



さて本書ですが、これも著者お得意の自衛隊を舞台の恋愛ストーリー6編が収録されています。


著者の作品は『阪急電車』に続いて本書で2作目ですが、物語の構成といい、展開といい、うまい作家さんという印象を特に今回感じました。


一話毎に終結するラブストーリーなので若い女性の読者に特に人気があるようですが、筋立てもさることながら、女性作家らしからぬ落語的要素を含んだ男性的な文に私の感性がかなりくすぐられました。



ググってみると「ベタ甘ラブストーリー」との評がほとんど、幸福度合い満点の着地で終わるのでそういう見方ができるのでしょうが、そういうことより自衛隊員のシリアスな日常をとりまぜて描いていて妙といえるエピソードのピックアップの仕方など、かなりの余裕の力量を感じました。



★隊内紙で「自衛官の恋愛と結婚について」というテーマを立ち上げて第一空挺団の今村二佐にインタビューを迫る突っ走り系広報自衛官千尋と逃げ回る今村二佐との顛末を描いた「ラブコメ今昔」

★主張帰りの新幹線車中で知り合った年下クンの自衛官との遠距離恋愛模様を描いた「軍事とオタクと彼」

★「開かれた自衛隊」をアピールするため提供した某テレビ局制作の自衛隊モノドラマ撮影の現場・横須賀基地護衛艦での会場幕僚広報室スタッフ政屋一尉とテレビ側AD鹿野汐里の恋を描いた「広報官、走る!」

★航空自衛隊の花形・ブルーインパルスの、その中でもルーキーとして女性の間でいちばん人気を誇る相田絋二の妻公恵を悩ます女性ファンとの顛末を描く「青い衝撃」

★ひょんなことから上官水田三佐の愛娘・有季と恋に落ちた手島二尉の上官に告白するまでのじたばたを描いた「秘め事」

★ある駐屯地の自衛隊広報センターで開かれていた写真展で偶然目にして心を奪われた写真の作者とあるカメラ雑誌のグランプリ写真の作者が同一人物だと知り、得意の行動力でその作者・吉敷一馬に猛アタックを開始する千尋を描いた「ダンディ・ライオン~またはラブコメ今昔イマドキ編」


本書は『阪急電車』のような登場人物がどこかで絶妙なつながりを見せる作品ではありませんが、この「ダンディ・・・」の後日談が最初の表題作「ラブコメ今昔」になるという粋な筋立てになっています。



全体を通してかわいい恋物語を中心に展開していますが、ところどころで描かれる自衛官のちょっとした会話や有事に対する考え方などを通して現実の仕事の厳しさが読者にも伝わってきます。



「特にパイロット職の方に伺うと必ず出てくるお話が、『訓練中の事故死は多い。自分の同期はもう半分残っていない』というようなものでした。
それが私と大して年も変わらない(どころか年下だったりする)方から出てくることも再三で。
そうなると、そうしたエピソードも書かなきゃなるまいな、と」


上述のあとがきにあるように、この作品でもエンジントラブルによる事故により一瞬にして命を落としたパイロットの話が巧みに挿入されていて現実の厳しさをさりげなく著しています。


有川氏はすばらしい自衛隊広報官です!

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