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ご訪問ありがとうございます。 「一日一生」を銘にさまざまな人生を読書というツールを通して味わっていきたいと思っています。 響きこし言葉に貼れるさみどりの付箋そよぎて林となりぬ

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カテゴリ: 伊集院静

岡山県の南に位置する人口4万人弱の瀬戸内市が所有する元塩田跡地で世界最大規模の大規模太陽光発電所(メガソーラー)計画がスタートしました。


総発電能力25万キロワットの発電設備を設置し、2016年4月から稼動するという計画だそうです。



異色の経歴を持つ43歳武久顕也・瀬戸内市長と44歳桑原真琴副市長の若き2人のリーダーの熱心な誘致に日本IBMやNTT西日本、東洋エンジニアリングなど7社が名乗りを上げました。



総事業費650億円以上という莫大な費用は、発電事業を証券化して市民を優先とした投資家などに売却するなどで調達することを検討しているそうです。



今年7月1日から太陽光や風力など再生可能エネルギーで作った電気を固定価格で全量買い取る制度が始まり、メガソーラー事業で収益を確保しやすくなったことで安定収入を得やすいことがこの事業の強力な後押しとなったということです。



東京ディズニーランドの10個分という約500ヘクタールの広大な跡地に太陽電池パネル100万枚が敷き詰められたのを想像すると夢が広がりますね。



ちなみにこれは原子力発電所1基分の数割の発電容量に当たり、市内全世帯の電力を賄って余りある規模だそうです。



電気の固定価格買取制度のスタートで京都市、群馬県、新潟県、福岡県など日本全国でメガソーラーが始動を始めていますが、動機はすばらしいものの買取価格が1時間・1KWあたり42円(現在の電力会社のコストは約10円)という高額の魅力に押されての短兵急な始動とも見られることに電気料金の値上げなど将来的な不安がなければ日本の電気事情の希望の光として大いに応援したいと思っています。





さて本日は伊集院静氏著『大人の流儀』です。



「苦難に立ち向かわなければならないとき。
人に優しくありたいと思ったとき。
どうしようもない力に押し潰されたとき。
自分のふがいなさが嫌になったとき。
大切な人を失ってしまったとき。
とてつもない悲しみに包まれたとき。

こんなとき、大人ならどう考え、どう振る舞うのだろう。
『本物の大人』になりたいあなたに捧げる、この一冊」



初出は2009年~2011年にかけて、「週刊現代」に連載されたエッセイを1冊にしたものです。


春夏秋冬という4つの季節毎にまとめるという構成。



手持ち無沙汰の合間に読み流すには適当という程度のエッセイ集というのが正直な感想。



著者の意図か、売らんとする出版社の作為か、「大人の流儀」というタイトルがあまりに大上段な感あり^_^;



好き嫌いは別として確かに才能豊かな魅力ある方であるというのはその通りでしょうが、2番目の奥様である夏目雅子さんの幻影を求めて手に取った方も多いのではないでしょうか。



「大人…」と銘打っているからにはという一般常識を問う話題も少なからずありますが、著者を語るとき切っても切れないギャンブルと酒の日々が語られているなか、唯一の出色は最後の「愛する人との別れ~妻・夏目雅子と暮らした日々」、ここに書かれている夏目雅子さんがあまりにもひたむきで胸を打ちました。


以前このブログでご紹介した『なぎさホテル』でも夏目雅子さんと結ばれる過程が簡素に書かれていましたが、本書では厳しい闘病生活のあとの別れまでが描かれていて切なさが身に沁みる内容でした。

先日風邪予防のあれこれについて書きましたが、2,3日前介護関係に携わっている知人が身に着けているだけで約1m以内の空間にいる「ウィルス」「菌」「花粉」を不活化することができるという商品を紹介してくれました。



職業柄高齢者と接する機会が多い彼女は咳など明らかに風邪症状があるときは訪問を遠慮しますが、例えば風邪などに罹患していても症状が出ないエアスポットの数日間に人と接することでウィルスをばら撒く可能性があることを常々苦慮していたのでこの時期はネームホルダーに入れて首からぶら下げているとのこと。


早速ネットで検索して…買ってみました~。d35a58fc.jpg



病院などで殺菌や除菌用に使用される二酸化塩素剤を固定化したもので、1パックで約1ヶ月効果が持続するそうです。


「財団法人北里化学センター」や「財団法人日本食品分析センター」の調査で不活性効果が認められているそうなので人込みなどに持参しようと思っています。





さて本日は伊集院静氏著『なぎさホテル』をご紹介します。



1981年短編小説『皐月』でデビュー
1991年『乳房』で第十二回吉川英治文学新人賞
1992年『受け月』で第107回直木賞
1994年『機関車先生』で第7回柴田錬三郎賞
2002年『ごろごろ』で第36回吉川英治文学賞をそれぞれ受賞。




「私が作家として何らかの仕事を続けられて来たのは、あのホテルで過ごした時間のお陰ではなかったか、と思うことがある」



伊集院氏が作家になる前暮らした「逗子なぎさホテル」での7年間の日々やホテルに住むことになったいきさつ、そしてホテルを離れるきっかけになった夏目雅子さんのことなどが写真家・宮澤正明氏のレトロな感じを醸し出すモノクロームなホテルの写真とともに綴られていてノスタルジックな作品となっています。



舞台となった逗子なぎさホテルは1926年に湘南で初めて建てられた洋館式ホテル、当時皇族の御用達ホテルでもあった当ホテルは伊集院氏がホテルから去ったのちの平成元年に廃業し、今は跡形もなく取り壊されたそうです。



大学卒業後勤めた広告制作会社を辞め最初の妻と2人の子どもとの別離の際の高額な離婚慰謝料に苦しみ先の見通しも立たず心も生活も荒れていた28歳のとき、故郷に帰る途中でふらりと立ち寄った逗子の海岸で偶然であった「逗子なぎさホテル」の支配人から「出世払いでいいですよ」と言われて、7年あまりもこの湘南伝説の名門クラシックホテルで暮らすことになったという著者。




古今の画家や音楽家の陰にいたパトロンという存在などはよく知られていますし、作家・川端康成氏も伊豆の旅館に女将の好意でほぼ無銭で長年逗留していたというエピソードをどこかで読んだことがありますが、現在のような確かな作詞家&作家になる前の若き伊集院氏の場合もご自身の内に秘めた才能や魅力的な人柄がホテル支配人を初め周囲の関係者を魅了したのでしょうか。




「人を遠ざけてきた当時の私にみんながよくしてくれたのも、全てはあの人のおかげ。
ホテルの床が抜けるほどの本を買い込んで読書に明け暮れる男のために本棚まで作らせ、旅に出るといえば宿代もまだなのに金庫から幾らか包み、いいから持ってけってね。
その大丈夫の根拠が『野良犬が私とあなたにしか尾を振らなかったから』なんて、ホンモノの大人にしかいえませんよ」




お金も住居もまっとうな仕事もなく、時々「荒っぽい仕事」にも手を染めていたと繰り返し記されていますが、最初の結婚の破綻のきっかけとなった夏目雅子さんと愛を育み、ホテル暮らしの3、4年目にはベンツなどの中古車を2台持って乗り回していたという記述もあり、演出などのご自身の仕事を過小評価しているとしか思えない箇所が多く見られたのが本書の内容への違和感となって最後まで残りました。




そんな違和感はさておき、当時話題になった夏目雅子さんの結婚会見の映像とその後に続く闘病生活は今でも生々しく思い出しますが、本書の最後に彼女との恋愛と結婚、そして闘病について長く守っておられた沈黙を破ってさらりと書いていらっしゃるのが印象的でした。



2度目の妻は夏目雅子さん、そして現在の妻は篠ひろ子さんという歴代の美人女優さんということを見てもやはりとても魅力的な男性だったんでしょうね。




著者の作品は『受け月』や『冬の花びら』など何篇かの短編を読んでいますが、全体を流れる男性的な情緒というかさらりと描いた文章に人間観察の深さが感じられて好感を持っていますが、本書は小説ではなく自伝的エッセイという分野のせいか、書き流したといウ感じで稚拙な表現箇所が多々目についたのは残念でしたが、ゴシップの対象として読めば興味深い作品でした。


旅行会社が主催するバスツアーに参加して近場の湯郷温泉に行ってきました。

SNSで親しくしている方々の日記を拝見していると上手なツアー選びで値段をはるかに超えた充実の旅行をしていらっしゃる様子を羨ましく思っていました。


私の旅行といえば家族とでも友人とでもいつも航空券などの交通チケットや宿泊施設を個々にネットで予約するというやり方。


セット旅行だとかなり安価でラクだというので今回夫を誘って2人で参加してきました。


自分たちも年齢に不足はないものの、バスの中は私たちの年齢をゆうに超えた70代80代、さらに90代とも見まがう人たちばかり!

そしてエネルギッシュな様子とおしゃべりには驚くばかり!


到着した宿ははるか昔宿泊したことのあるホテルでしたが、記憶の頃からかなり年数を経ているせいか建物全体がお疲れという感じが否めませんでした。



旅館やホテルに泊まる機会が重なると宿の経営状態ややる気が何となくわかるようになります。


まずお茶などの無料の飲み物の種類と電気ポットかどうか、アメニティグッズが豊かかどうか、冷蔵庫に無料のミネラルドリンクがあるかどうか、畳がイグサかビニール製か、お風呂用のタオルを別に置いてあるかどうか、お風呂のシャワーが自動的に止まるものかどうか、シャワートイレか否かなどなど。


独断と偏見に満ちた想像ですが、今回の宿は少しかげりがあるよう、不況の折全国どこも大変なのでしょうね。


それはさておきしっかりモトをとらねばと短い滞在の間に計4回も入浴して湯あたりのせいか少々疲れ気味で帰宅しました。




さて本日は伊集院静氏著『受け月』をアップしたいと思います。


先日読んだ著者の短編『冬のはなびら』の読後感が思いのほかよかったので再度短篇にトライ、といっても本箱の隅から見つけ出して今回のバス旅行の行き帰りのお供にしたものです。


第107回直木賞受賞作である表題作「受け月」を含む連作短編集ですが、作品すべてのキーに野球が登場します。


山口県立防府高校時代あと一歩で甲子園を逃した野球少年だった著者は、進学に際して巨人の選手だった義兄高橋明選手の紹介で長嶋茂雄氏に会い、立教大学進学を勧められ進学とともに野球部に入部したという経緯ですが、在学中ひじの故障で退部を余儀なくされたそうです。


著者の野球に対する思い入れの深い眼差しがうなずける経歴です。


その長嶋氏が語られる感想は素朴で核心をついています。

「伊集院さんの作品が語る『野球』の魅力に私は感動しています。
プレーする人も、それを観る人も、ともにその喜びや感動を共有できる『野球』のすばらしさを、伊集院さんが作品を通して後々まで伝える伝道師となってください」


また野球が題材の作品には本書『受け月』のほか、『ぼくのボールが君に届けば』『坂の上のμ』『ヒデキ君に教わったこと 野球で学んだこと』などがあり、そのどれもが単なるスポーツやゲームの枠を超えた野球の姿を描いて見事です。



さて本書には7つの作品が収録されています。


★少年野球を始めた10歳の息子に亡き夫を重ねる由美が息子の監督を通して知った夫の野球に対する深い思いを描いた「夕空晴れて」

「野球ってスポーツはいいだろう。
俺は野球というゲームを考え出したのは人間じゃなくて、人間の中にいる神様のような気がするんだ」


★自分たち親子を捨てて無頼に生きる道を貫く父の都市対抗野球のエースとしての輝かしい過去を知って憎しみと憧憬の入り混じった複雑な思いを抱く息子と、人生の無残な敗北者となりながら過去の栄光を捨てきれない父の明暗を切子皿という触媒を使って描いた「切子皿」


★社会人野球で活躍し、請われて出身高校の監督になったにもかかわらず甲子園への道に届く指導ができない苦悩を抱えた美知男と、親が監督をする高校を拒否して他の有力校へ野球進学した息子との葛藤を描いた「ナイス・キャッチ」


★長い間監督をしていた社会人野球の名門チームからの引退を自ら育てた後輩に告げられた谷川とかつて自分の野球上の教え子だった専務との葛藤を描いた「受け月」

送別会の夜、願い事をすると願い事がこぼれないで叶うという言い伝えがある盃のような受け月を仰ぎながら、人生の大半を野球一筋に歩んできた主人公が家族の健康や野球部の将来を不器用に祈る姿を描くことで読者にしっとりとした余韻を残してくれている作品。



野球というスポーツの魅力は女性の筆ではとうてい描けないほど男の人生と直結した何かがあるように思えます。

ロマンとも哀愁ともいえるそれを描いた物語や映画はたくさんありますが、特に私が好きなひとつを挙げるとすれば高橋三千綱氏による連作短篇集『カムバック』です。


ずっと以前このブログでも簡単なレビューを書いたことがありますのでよかったら読んでください。

      http://yaplog.jp/ashy_ashy/archive/49



昨夕ゴルフから帰ってくる夫を待って夕食の支度をしながら、キッチンの窓に目を上げると西の空が真っ赤に染まっていました。

急いで濡れた手を拭きながらデジカメでパチリ。

家族の帰りを待ちながらあれこれ作る小さな幸せの一瞬。


3年前ご主人を突然の病気で亡くした友は1日のうちで夕暮れ時がいちばんきらいだと言います。

映画「おくりびと」を観ることもいやがる彼女は独りの夕暮れを回避するためにその時間になると買い物に出かけているそうです。


人生の盛りを過ぎた年代を喩えて使われることもある「夕暮れ」や「黄昏」をひとりで味わう思わぬ寂しさを想像して胸が詰まります。

悲喜を分かち合う人と眺めればすてきな夕暮れも、待ち人が自分の元に永遠に帰ってこないと知っている人には哀しみを誘う景色。

心を添わせたいといつも思いながら、3年が経過したのだからと安易に思っていた友の心を垣間見て、想像の域を出ない中途半端な思いやりしか持てない自分を知ります。


「君いなば月待つとてもながめやらむ東のかたの夕暮の空」西行法師

「恨みわび待たじいまはの身なれども思ひ馴れにし夕暮の空」寂蓮法師

さて今日は伊集院静氏著『冬のはなびら』をご紹介したいと思います。

著者はご紹介するまでもなくマスコミでも有名な方ですね。

故夏目雅子さんの夫であり、その後篠ひろ子さんと再々婚、現在は夫人の故郷である仙台に生活基盤を置いて作家活動をされています。

1991年『乳房』で第12回吉川英治文学新人賞
1992年『受け月』で第107回直木賞
1994年『機関車先生』で第7回柴田錬三郎賞
2001年『ごろごろ』で第36回吉川英治文学賞をそれぞれ受賞していらっしゃいます。

傍ら伊達歩のペンネームで作詞家としても活躍、近藤真彦の「ギンギラギンにさりげなく」や「愚か者」など手がけた楽曲の作詞は多数。


本書『冬のはなびら』に収録されている6つの短篇はすべて「オール讀物」に2000年から2002年にかけて掲載されたものです。

著者の作品は何篇か読んでいますが、特に短篇が好き。

本書もとても味わい深い仕上がりになっています。


「逆境でもひたむきに生きる人々を静謐な筆致で綴る六つの短篇集」


戦後の高度成長期を経てバブル期の中で抜け目のない商才と器用な生き方をする人間が成功と栄光を手にしていた狂乱の時代にひっそりと置かれたレジスタンスのような短篇集、と書いていらっしゃるのは解説を担当された文芸評論家・清水良典さんです。

「この短篇集には、喧騒と変動の社会に抗して、静謐な美しい時間が一貫して流れている。
それを読者の心に植えつけて、そっと祈るように託してくる」


どの作品も受けるにあまりあるような劇的な展開はありませんが、静かな水面に小石を滑らせて立たせた小さな波のようなほんの小さな思いをずっと心に持ち続けながら社会の片隅にひっそりと生きる人たちの物語です。


幼い頃の事故で不自由になった足と吃音癖を持った不器用な若い経師職人廣作の実直な日常を描いた「雨あがり」

時期を同じくして職人に入った手先の器用な如才ない龍也との対比に著者の筆が際立ちます。

「自分を不器用だと思え。
無器用な分だけ人の倍も丁寧に仕事をやれ・・・
目に見えぬところの丁寧さが、最後には表へ出て来るからな」
劣等感に苛まれる廣作の真摯な不器用さの真価を見つめる親方の言葉の真実がずっしりと重く伝わります。


心に踏み込めない陰を持つ15歳も年長の消防士邦夫の仕事に対するひたむきさを愛し、結婚を申し込む倫子の真摯な思いを描いた「遅い春」

エリート官僚であった父親と官僚出身の政治家の次女に生まれた母親を持ち、世間体に縛られた家庭にひとり背を向けて愛する自然の草木を相手の造園会社に就職した倫子の「私が、あの人を守らなくてはいけない」という一途で静謐な情熱が読者である私の心を深く揺り動かす作品、個人的にはいちばん好きな小品です。


大銀行の重役の娘と結婚し、将来を嘱望された月丘修がすべてを犠牲にして事故で死んだ親友の遺志を継いで長崎の小島の台風で壊れた教会を自力で建て直すまでの軌跡を描いた表題作「冬のはなびら」


どの作品も一時的な情熱におぼれることなく、人間として大切なものを失わないようにそっと包み込んで密やかに、そしてコツコツとあたためながら歩み続ける人生の一部分を切り取って描いています。


疲れたときの心に届く一滴の清涼剤、ぜひ手にとってほしい作品です。

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