VINのらんどくダイアリー

ご訪問ありがとうございます。 「一日一生」を銘にさまざまな人生を読書というツールを通して味わっていきたいと思っています。 響きこし言葉に貼れるさみどりの付箋そよぎて林となりぬ

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カテゴリ: 道尾秀介

今朝起き抜けに夫がすごい勢いでまくし立てたこと。


ずっと我慢に我慢を重ねて読んだ上下の文庫本の内容があまりにも腰砕けで怒り心頭に達したそうです。


「やっぱり女の作家はだめだな!」と聞き捨てならない女性蔑視発言

平塚らいてうだったら許さないところでしょう。


「《史上最大のサイバーテロ…》というキャッチコピーに目が眩んで買ったのはアンタじゃないの?」と言いたいのを内心我慢していると・・・


「何度も夜中に投げつけてやろうかと思うほどだった」と言います。


2人とも寝る前本を読む習慣があるので寝るときはそれぞれの枕元のスタンドを個々に消して寝ています。


そういえば昨夜も私が寝たあとまで本を読んでいたようですが、短気な夫のことだから投げつけた本が私に直撃していたかも。



夫のせいではありませんが阪神大震災のとき枕元の本箱が倒れて中の本がすごい勢いで私に落ちてきたときは天井が落下したような感じだったのを思い出します。


昔からスパイモノが大好きな夫はル・カレやフリーマントル、ラドラムなどほとんどの欧米の作家の作品を網羅していて、ベルリンの壁の崩壊や旧ソの体制の変化によって作家のネタがなくなったと本気で嘆いています。


冷戦時代後のスパイモノは精彩に欠けるそうですが、今回投げつけたくなった女流作家の作品は『ダ・ヴィンチ・コード』顔負けのスケールの大きさが売り物だったようなのに、結果的にスケールというよりただの大風呂敷を広げたままでしかも後始末もせずに広げっぱなしで終わったという感じ・・・とか。


上巻にちょっと現れて突然消えたキーマンらしきものがいつどのような形で再び現れて重要な働きをするのかという期待感が読了する原動力になったようですが、ついに最後まで現れなかったというお粗末さ・・・だそうです。


夫の怒りを聞きながら、多かれ少なかれ私も似たような読書経験があるのを思い出しました。


いやしくも本を世に出すまでにその作家本人のみならず編集者や校正者の目を何度も通していると思うのに、誤字のみならず主人公の名前が突然違っていたりして混乱したこともあります。


長く学習参考書の校正の仕事をしていたので間違った仮名遣いや誤字、表記ミスについ目が行ってしまう習い性に本来の読書が楽しめない長い期間がありましたが、辞めて1年以上たった現在やっと機械的にミスを目で探すということもなくなりました。

学参の場合、3~4回の校正を経て製本されますが、担当した最終校正ですら間違いなどがいくつも見つかるのですから人間のすることにはやはり完全はないのでしょうね。


かくいう私もよく誤字やミスを連ね、お互いのブログを行き来しているトコさんに度々指摘していただいて感謝しています。



さて夫と同じように私自身が最近途中放棄の壁を乗り越えて読んだのが次の作品です。



道尾秀介氏著『光媒の花』


第23回山本周五郎賞受賞作。


「小説すばる」に掲載された6篇の短篇小説を単行本化したものです。



ホラーサスペンス大賞、本格ミステリ大賞、日本推理作家協会賞、大藪晴彦賞と文学賞総なめの道尾氏ですが、私に関しては過去に何度かトライしては中途挫折するというのを繰り返している苦手な作家さんの1人。



今回も最初の2篇あたりで中止したかったのですがあまりの評判に後押しされて読了しました。



「大切な何かを必死に守るためにつく悲しい嘘、絶望の果てに見える光を優しく描き出す、感動作。
もう、駄目だと思った。
それでも世界は、続いていた―
少女は無限の想像力でこの世界を生き延び、少年はたった一つの思い出にしがみつく。
一匹の蝶が見た悲しみの先に広がる光景とは…渾身の連作群像劇」


6篇の物語はそれぞれの主人公の一人称語りで進行しますが、それぞれ独立したかのように見える6篇の登場人物が次の作品でリンクしているという構成。

こういうオムニバス形式は最近いくつか目にします。


余程しっかりした構成力でそれぞれの物語を構築しなければ破綻が生じる危険性を孕んでいますが、本書では「白い蝶」が各々の作品を繋ぐ形で6篇すべてに登場し、登場人物たちの人生の光と影の部分を見届けるという巧妙な形をとっています。


6篇を分ければ、私が途中放棄したいと思った前半3篇が人間の「影」の部分を扱っていて徹底的に救いのない内容なのに対し、後半3篇は湿った暗い闇の部分に徐々に日が射して希望が芽生えるような「光」を描いています。


タイトルの「光触の花」とは「風媒花」や「虫媒花」からの著者の造語だそうです。

暗闇にいる人と人とが「光」の仲立ちでお互い希望の実を結ぶという思いを込めているのではないでしょうか。


前半があまりにも救いようのない内容ゆえに後半に見え隠れするあえかな光明が何とも温かなぬくもりをもって心に沁みます。


「この全六章を書けただけでも、僕は作家になってよかったと思います」

著者・道尾秀介氏の言葉です。


人の心に潜む光と影を巧みに描いて秀作でした。



オバマ大統領のノーベル平和賞授賞式のスピーチが新聞に載っていましたね。


「暴力は決して恒久的な平和をもたらさない」というマーティン・ルーサー・キングの言葉やガンジーの非暴力の信条を引用して

「しかし、私は、自国を守るために就任した国家元首として、彼らの先例だけに従うわけにはいかない」

「世界に邪悪は存在する。
非暴力の運動では、ヒトラーの軍隊をとめることはできなかっただろう・・・戦争という手段には平和を維持する役割がある」と交渉だけではアルカイダに武器を置かせることができないと言葉をついでいます。


オバマ大統領を陰ながら応援している私ですが、このような演説をしなければならない大統領の苦しい立場を理解しつつも何だか割り切れない詭弁的なものを感じてしまいました。


朝日新聞・声の欄の朝日川柳に掲載された読者の声にも私と同じような戸惑いがあふれていました。


★アメリカの戦争だけは正義なり :多摩市 橘かほるさん 

★戦争と平和言い訳聞かされる  :春日井市 田中絢子さん



以前新聞に掲載されていたアメリカの小さな女の子の平和に関する意見が思い出されました。

「国々の国境をなくして地球全体を1つのユニオンにしてみんなで地球を守る・・・大統領はじゃんけんで決める」というもの。


私もそうなったらいいなと夢見ています。


木枯らしが吹く年末になるとますます世の中の不幸が思いやられます。




さて本日は「2009年度このミステリーがすごい!:作家別投票第1位」の作品です。


道尾秀介氏著『向日葵の咲かない夏』


2004年『背の眼』で第5回ホラーサスペンス大賞特別賞
2006年『向日葵の咲かない夏』で第6回本格ミステリ大賞候補
2006年『流れ星のつくり方』で第59回日本推理作家協会賞短編部門候補
2007年『シャドウ』で第7回本格ミステリ大賞受賞
2009年『カラスの親指』で第140回直木賞候補&第30回吉川英治文学新人賞候補&第62回日本推理作家協会賞受賞
2009年『鬼の跫音』で第141回直木賞候補



終業式の日、欠席したS君にプリントを届けるように担任の先生に頼まれた同級生のミチオが目にしたS君の首を吊った姿に仰天して学校に戻った間に死体が消えていた・・・という導入で始まる単純ミステリー・・・と思いきや・・・ホラー色のたいへん濃いどんでん返し連続の作品でした。


物語は小学4年のミチオという少年の独白で始まり、途中から古瀬泰三という老人が出現して進行、そして少年と老人が事件の真相を追う過程で交差し、徐々に真実が解き明かされるという設定になっていますが、 全体に多くの謎に対するヒントの数々が散りばめられていて、それを注意深く拾い集める読者だけが到達できる終焉の謎がまた驚愕的で救いどころのない結末。


人間の生まれ変わりとして蜘蛛やトカゲを登場させるなど独特の登場人物設定が奇抜でファンタジーとして読めば納得できる部分も、内容的にあまりにもドロドロしていて人間の心の澱んだ部分をデフォルメされたような居心地の悪い読後感でした。


「2009年度このミステリーがすごい!:作家別投票第1位」という帯のキャッチフレーズに魅せられてつい手に取りましたが、残念ながら久しぶりに最後まで読むのがとても苦痛な作品となりました。

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