VINのらんどくダイアリー

ご訪問ありがとうございます。 「一日一生」を銘にさまざまな人生を読書というツールを通して味わっていきたいと思っています。 響きこし言葉に貼れるさみどりの付箋そよぎて林となりぬ

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カテゴリ: 湊かなえ

播磨灘から大阪湾にかけて春を告げるイカナゴ漁が解禁になってちょうど1ヶ月。

この25日に終了してしまいました。


2双曳漁で日の出から正午にかけて多くの船が出漁する瀬戸内海の風物詩となっています。


3年連続不漁ということで今年も高値でしたが、昨年より少し安価かな。

購入は今年2度目。

1k1800円で購入。


長く住んでいた神戸では毎年春になるとどの家庭でも炊いていました。



播磨灘だけではなくイカナゴは全国的に獲れる魚。


呼び名もさまざま・・・稚魚は西日本では「シンコ(新子)」、東日本で「コウナゴ(小女子)」といわれ、成長したものは北海道で「オオナゴ(大女子)」、東北で「メロウド(女郎人)」、西日本では「フルセ (古背)」、「カマスゴ(加末須古)」、「カナギ(金釘)」などと呼ばれているそう。


我が家では「シンコ」「イカナゴ」という名で呼んでいます。


関東に住んでいたときには稚魚は見かけなかったので炊きませんでしたが、当地に帰ってからは魚屋さんに出るので神戸の続きで毎年炊いています。


今日もさっそく炊いて・・・夕食に間に合いました。
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ついでに買ったハタハタを処理して5%の塩水に20分ほどつけたのをベランダで2時間ほど干して・・・これも夕食用。

ほどよく脂がのっていてとてもおいしかったです。




さて今回は湊かなえ氏著『高校入試』のご紹介です。 

「県内有数の進学校・橘第一高校の入試前日。
新任教師・春山杏子は教室の黒板に「入試をぶっつぶす!」と書かれた貼り紙を見つける。
そして迎えた入試当日。
最終科目の英語の時間に、持ち込み禁止だったはずの携帯電話が教室に鳴り響く。さらに、ネットの掲示板には教師しか知り得ない情報が次々と書き込まれ…。
誰が何の目的で入試を邪魔しようとしているのか?
振り回される学校側と、思惑を抱えた受験生たち。
やがて、すべてを企てた衝撃の犯人が明らかになる―」


本書は元はドラマのシナリオとして執筆したものを小説に起こしたものだというのを後で知って納得。


読みはじめから得体の知れない違和感があり、とても読みにくいなと感じながらどうにか読了したからです。


小さな章ごとに携帯メールのような文章が先導するかたちになっているのですが、誰のメッセージかも理解できず、それが混乱のもととなって何が何だかわかりにくい。


テレビのドラマなら煩雑に視点がかわっても全体の流れが掴めそうですが、本書のように小説としたとき、目まぐるしくかわる視点に読者が置き去りにされる感が拭えませんでした。


登場人物の明確性も薄く、相関関係も掴めないまま、読み進むという難行。


事件としての動機も最後に明かされますが、はて?さて?という感じ。


パンチの効いた湊氏特有のイヤミスワールドも中途半端な作品でした。

先日、中学校からの友と3人で紅葉狩り・・・といっても市内のスポットを選んで。


中高一貫女子高に在籍していたころからの気のおけない友。


中学校は2クラスしかなかったので家庭環境も性格も得意不得意もすべてお見通しという間柄。


友のひとりは高松からなので時折、市内の安価なシティホテルのトリプルを予約してゆっくりと2日間を楽しむのが定例になっています。


植物が大好きな友と今年最後の紅葉狩り。


お互いにネット検索して間に合いそうなところをチェックして。



最初に訪れたのは市内中心部から少し東寄りの「曹源寺」。
 

臨済宗妙心寺派の禅寺。
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岡山藩池田宗家2代藩主綱政が元禄11年(1698年)に高祖父である恒興と父光政の菩提を弔うために創建した寺院だそうです。

現在の修行僧は原田正道住職を除いて全て海外より来日した人々という異国情緒ゆたかな禅寺。

当地市街地で時折、雲水姿の外国の托鉢僧を見かけますが彼らはすべて曹源寺の修行僧。

青い目の修行僧が厳しい修行に耐えていることを想像すると愛しくなります。


そして翌日・・・

後楽園へ。

木戸口にボランティアの方が2人たっておられたので、30分間限定でお願いできますか?と聞いたところ、快諾してくださいました。


普通は事前に予約が必要ですが、たまたまフリーの方がいらっしゃったという幸運。


おまけに偶然が重なって、お1人の方のネームプレートに聞き覚えのある名前が!


夫の囲碁仲間の方が後楽園でボランティアガイドをされているというのは夫を通して度々聞いたことがあって・・・。


「失礼ですけど・・・囲碁をされているTさんでしょうか?」

ということでTさんにガイドをお願いすることになりました(^.^)
 遠景に岡山城

後楽園のあらゆるアルアルを年号を交えながらガイドしてくださったTさん、本当にありがとうございました。
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30分が1時間20分の延長になりましたが、とても有意義な時間でした。


幼少の折より後楽園には度々足を運んでいる3人ですが、ガイド付きは初めての経験。


いろんな知識に感心しきり・・・直後忘れてしまったことも多かったけど。





さて今回は湊かなえ氏著『ユートピア』のご紹介です。


「太平洋を望む美しい景観の港町・鼻崎町。
先祖代々からの住人と新たな入居者が混在するその町で生まれ育った久美香は、幼稚園の頃に交通事故に遭い、小学生になっても車椅子生活を送っている。
一方、陶芸家のすみれは、久美香を広告塔に車椅子利用者を支援するブランドの立ち上げを思いつく。
出だしは上々だったが、ある噂がネット上で流れ、徐々に歯車が狂い始め―。
緊迫の心理ミステリー」


第29回山本周五郎賞受賞作。


本書は人口約7000人の地方都市・鼻崎町を舞台に、根っからの地元民と転勤によって大手の水産工場の社宅に住む人たち、景色に憧れて移住した自称芸術家たちが繰り広げるミステリー仕立ての物語。



交通事故により車椅子生活を送る小学1年の娘・久美香を持つ地元民である堂場菜々子。


賢く美しい小学4年の娘・彩也子を持つ転勤族の相葉光稀。


陶芸家として芸術家たちの集いの場に参加した星川すみれ。


この3人の女性に加えて物語の核になるのが小学生の久美香と彩也子。



堂場菜々子と相葉光稀、星川すみれの3人が商店街の祭の実行委員として出会い、お互いを知る過程で、「クララの翼」という車椅子を支援するボランティア活動を始めるところから子どもたちを巻き込んだ物語が始まります。


善意から始まった活動も回を重ねるうちに地元民と、都会からの移住者と転勤族との間に生れる溝がどんどん深くなり捩れていく過程が執拗に描かれていて著者特有のイヤミスの態をなしてきます。


みんなユートピアを求めて努力していたのに心の奥に芽生えた負の感情がどんどん膨れ上がり、負のスパイラルに押し流されていく・・・。


人間の奥処に潜む嫉妬や悪意、過剰な自意識を描くことにかけての著者の筆力に圧倒されっぱなしで読了。


2人の子どもの誘拐劇や殺人などを絡めたミステリー仕立てではありますが、これは余分だったのではないか。


女3人の心の絡み合いだけで十分成り立つ物語・・・


そんな感想を抱きました。

日本の上空に数年に一度のレベルの寒気が流れ込んできているというニュース。

このところ各地で雪の被害で大変そうですね。


その上、群馬県の草津本白根山が予期せぬ噴火で死者や怪我人が出たという報道に驚いています。


死者は自衛隊員で訓練中だったそう・・・


なんと不運な・・・言葉がありません。


予期せぬ、というか予測不能なことがこの世に満ちていること、しみじみ感じます。


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雪の兼六園

アスカの雪だるま

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娘の雪だるま

当地は粉雪がパラパラと降った程度・・・上の写真は関東方面の子どもたちから送られたものです。

私の好きな雪の短歌をひとつ。

地に降りて水へと戻る束の間の白きひかりを「雪」と呼び合う 
本川克幸(「羅針盤」より)







さて今日は湊かなえ氏著『山女日記』のレビューです。

「私の選択は、間違っていたのですか。
真面目に、正直に、懸命に生きてきたのに…。
誰にも言えない苦い思いを抱いて、女たちは、一歩一歩、頂きを目指す。
新しい景色が、小さな答えをくれる。
感動の連作長篇」


◆このまま結婚していいのだろうかーーその答えを出すため、「妙高山」で初めての登山をする百貨店勤めの律子。
一緒に登る同僚の由美は仲人である部長と不倫中だ。由美の言動が何もかも気に入らない律子は、つい彼女に厳しく当たってしまう・・・

◆医者の妻である姉から「利尻山」に誘われた希美。
翻訳家の仕事がうまくいかず、親の脛をかじる希美は、雨の登山中、ずっと姉から見下されているという思いが拭えない・・・

◆「トンガリロ」トレッキングツアーに参加した帽子デザイナーの柚月。
前にきたときは、吉田くんとの自由旅行だった。
彼と結婚するつもりだったのに、どうして、今、私は一人なんだろうか・・・


北は利尻山から南はニュージーランド北島のトンガリロまで、30代~40代の女性を主人公とする山ガールたちがそれぞれの屈託を心に抱えながら登る7篇の連作短篇集。


妙高山・火打山・槍ヶ岳・利尻岳・白馬岳・金時山・トンガリロ


恋愛や結婚生活、家族関係や仕事などについてのそれぞれの悩みや苛立ちを抱えて山に向かう主人公たちの前に無言で立ちはだかる山々。


『告白』で衝撃的なデビューをした著者の作品とは思えないようなイヤミスの要素のない作品。


著者の作品はいままで何作も読んできましたが、本書がいちばん好きです。


7篇はそれぞれ脈絡がないようで、登場人物が微妙に交差しているところも著者の構成力を感じさせます。


文章力、構成力ともさすがベストセラー作家さんだなぁと。


登山途中に主人公たちの目を通して楽しませてくれる高山植物や雪渓、遠い山並み・・・どれもが主人公たちの心象と重なってそのコントラストの描写がすてきでした。


山が好きな方だけでなく、興味のない方にもお勧めの作品、ぜひどうぞ!

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友人からぎんなんをもらいました。

処理法は一般的なので皆さん実践していらっしゃると思いますが私がいつもやっていることを記してみますね(^.^)

◆すぐ食べたり夕食に用いるとき

必要な数だけ茶封筒などの適当な封筒に入れ、500Wのレンジで40~50秒チンします。

爆発音が苦手という場合はぎんなん割りやペンチで少し割って封筒に入れるとよいと思います。

ぎんなん割りがなくてペンチの場合は水に濡らして絞って小さく畳んだふきんをペンチの支点に挟み、ぎんなんの筋があるほうを上にしてペンチにセットして両手で力の加減をしながら割ると中身が崩れません。


◆保存したいとき

上述のようにぎんなん割りやペンチで割って外側の殻を外し、水に少し漬けたあと薄皮を取ります。

そのあとお湯でゆがき、ざるにあげてキッチンペーパーで水分を取ったものをステンレスなどのバットに平らに並べ急速冷凍したのち冷凍用保存袋に入れて冷凍保存します。
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このようにしておけばおいしいままで保存できます。

茶碗蒸しに入れたり、ぎんなんご飯をしたり、お酒の肴に素揚げしたり、ほしいときにすぐ取り出せます。

ほかにお勧めの食べ方があれば教えてくださいね。






さて本日は湊かなえ氏著『望郷』のレビューです。  


「暗い海に青く輝いた星のような光。
母と二人で暮らす幼い私の前に現れて世話を焼いてくれた“おっさん”が海に出現させた不思議な光。
そして今、私は彼の心の中にあった秘密を知る…
日本推理作家協会賞受賞作『海の星』他、島に生まれた人たちの島への愛と憎しみが生む謎を、自らも瀬戸内の“島”に生まれたミステリの名手が、万感の思いを込めて描く。
心に刺さる連作短編集」



瀬戸内海に浮かぶ「白綱島」という地方の小都市を舞台にして「みかんの花」「海の星」「夢の国」「雲の糸」「石の十字架」「光の航路」の6篇が収録されています。


瀬戸内海といえば大小を含め多くの島が点在していることでも有名です。

有人、無人、そして岩だけの島も含めると3000ほどもあるといわれています。


本書の舞台となった「白綱島」は広島県の「因島」・・・現在は淡路島在住でいらっしゃる著者が生まれ育ったところだそうです。


今年9月に映画化されたという本書、ロケ地となったのは因島や生口島だったそうです。

「映像化は普段本を読まない方が本を読んでくださる、その大きな入り口を作っていただくことだと思っています。
自分が生まれ育った場所でのロケなので、その映像を観た島の子たちが、本を読むだけでなく自分も作る仕事をしてみたいなど、夢を膨らませてくれるんじゃないかと思いますし、住んでいるところがどんなに良いところか、気づいてもらえるきっかけになると思うので嬉しいです」
と著者。


かつては造船の街で賑わったものの今や寂れて人口も減ってしまった白綱島。


その島に鬱屈した思いを抱いたまま今もずっと住み続けている人、そこから逃げるように出て行った人など、それぞれの心の中にある故郷への屈折したわだかまりを描いて秀作です。


自分にとっても故郷は決して晴れやかで明るいだけの場所ではないということが珍しいことではない、ということを改めて確認できる作品になっています。



記憶の中では決して晴れやかでないのに切なくも懐かしい・・・遠く離れていればいるだけ愛しい場所。


それぞれの登場人物はそれぞれに哀しい幼少期の記憶を抱えて成長し、内に秘めた問題を解決できないまま現在に至っているという設定。


その胸に巣食ったものが、長い年月を経て氷解していく過程は胸に迫ります。


★ずっと島を出たかった妹と何ものにも束縛されず島を出て音信不通だった姉の物語。

姉の逃避行に思わぬ意味があったことを知った妹を描いた「みかんの花」


★突然行方不明になった父を求めて懸命に生きる母と息子の前に現れた「おっさん」との思い出を通して長年抱えていたおっさんの悪しきイメージがラストで反転する手法が鮮やかな「海の星」

この作品は日本推理作家協会賞を受賞しました。


あとの4作もそれぞれ行き場のない閉ざされた故郷に対して複雑な思いを抱いている人々が登場、暗く淀んだなかにも一条のひかりを感じさせる作品となっています。


「故郷に残した想い出は、取るに足らないものばかり。
なのに、何故、故郷の名を耳にすると、我が胸は、張り裂けそうな思いに支配され、涙が込み上げてくるのだろう」


作中の言葉が身に沁みます。


原発も基地もなき地に夕茜 生まれしここがわが終ひの土地



三十数年ぶりに故郷に帰って十数年、もう父母も兄弟もいない故郷。


やはり父母とともにあった時代の故郷が私のほんとうの故郷です。

夕食の一部の写真を珍しく撮りました。

揚げナスとキュウリとミョウガをめんつゆ+酢に漬けたもの

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ニンジンシリシリ

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山椒の葉の佃煮


メインは撮り忘れましたがヒレカツに白ネギ添えとアジの干物でした。




湊かなえ氏著『ポイズンドーター・ホーリーマザー』 


「湊かなえ原点回帰!
人の心の裏の裏まで描き出す極上のイヤミス6編!!
私はあなたの奴隷じゃない!
母と娘。
姉と妹。
男と女—
ままならない関係、鮮やかな反転、そしてまさかの結末。
あなたのまわりにもきっといる、愛しい愚か者たちが織りなすミステリー。
さまざまに感情を揺さぶられる圧巻の傑作集!!」


最近「毒親」という言葉をときどき目にするようになりました。


ちょっとどぎつい言葉の印象なので、ずっと虐待を受けて育った子どもたちが使っているのかと思っていましたが、娘の視点で書かれたそれらの作品を読んでみると、あまりにも独りよがりだなぁという印象を受けることもしばしば。


成長過程において親の意見を重圧的と思っても抵抗できないでそれに従う・・・こんな図式の積み重ねの末に、独立して力をもった子どもがトラウマのように使う言葉。


こんなのが毒親だったら、私も・・・と子育てに多くの反省のある私はつい思ってしまいます。


子どもたちはどう思っているのだろう・・・怖いので一生聞かないでおこう。



さて本書に移ります。


ミステリー専門誌「宝石 ザミステリー」に掲載された6篇の短篇を一冊にまとめたものが本書です。


どれもこれも読後感の甚だよくないイヤミスの小品。


タイトルになっている「ポイズンドーター・ホーリーマザー」は最後の2篇として連作になっています。


これが直木賞候補になった作品というからちょっと驚き。


親から受ける抑圧と差別に心が毀れてゆく娘や、脚本家を目指す女の競争相手に対して複雑な気持ちをある形であらわにする女、母親の表面的にはやわらかい抑圧から逃げ出そうともがいた結果思わぬ形で復讐を果たす娘など・・・。


文章力、構成力はすごいのですけど、あまりに後味が悪い。


しかし、同じ行為、同じ言葉を浴びても受ける相手によっては捉え方がまったく間逆だったりする、好意から出た言葉でも相手を嫌っていれば悪意に取る。


そういう示唆を最後に用意して抜かりない作品ではありました。

2ヶ月ほど前のこと。

普段かなり疎遠になっている次男から電話がありました。

次男の勤務先は年1度のボーナスがそれまでの1年の勤務状態を査定して6月に支給されるのは聞いていましたが、本人の予想以上に多額が支給されたらしく、昇進と合わせて報告がてら電話してきたのでした。


そのとき会話の途中で、一部お小遣いとしてあげるよ、と言われていたのですが、言葉はありがたく受け取ったものの期待もせず忘れていたところ、先日思わぬ多額を振り込んでくれてびっくり!!


幼・小・中・高とかなりやんちゃで周囲に謝ってばかりの次男だっただけに、周りに迷惑をかけず毎日勤めているだけで有難く、上司の方々に心の中でお礼を言っているくらいなのに・・・これまでも帰る度にお小遣いをくれていましたが、もらったものを使うことが出来ずにいるなか、今回は「ごちゃごちゃ言わず使って!!」と厳命されたので何に使おうか目下考え中です。


普通の社会人になってくれて感謝、感無量です。





今回は湊かなえ氏著『母性』をご紹介します。

「『これが書けたら、作家を辞めてもいい。そう思いながら書いた小説です』
著者入魂の、書き下ろし長編。
持つものと持たないもの。欲するものと欲さないもの。
二種類の女性、母と娘。
高台にある美しい家。暗闇の中で求めていた無償の愛、温もり。
ないけれどある、あるけれどない。
私は母の分身なのだから。
母の願いだったから。
心を込めて、私は愛能う限り、娘を大切に育ててきました──。
それをめぐる記録と記憶、そして探索の物語」


女子高校生の自殺未遂事件が発端にあり、母の手記と娘の回想、そして教師たちの会話という3つの視点から綴られた物語となっています。

主題はタイトル通り「母性」について。


自分も含め母親になった経験を持つ人の中に自分の内なる「母性」と日々対峙しながら子育てをするという人は少ないのではないでしょうか。

待ったなしの子育て期間は「母性」云々などの精神論より、ご飯を食べさせ身の回りの環境を整えるのに精一杯で、第三者の○○がほめてくれるから、などと冷めた目で子育て中の自分の姿を振り返るなどということは、少なくとも私に関する限りありませんでした。


本書の主人公のひとり、母親は無償の愛で育ててくれた自分の母親に全幅の信頼を置き、絶えずその視線を捉えて満足してもらえることに無常の喜びを見出すという人。

そんな彼女が結婚し、娘に恵まれますが、育児の段階でよき母になり自分の母親に褒めてもらうことを唯一の目的とすることで徐々に培われていった母娘間の歪みを炙り出しています。

どこから見ても完璧な母を「演じている」母と、それを見抜いている娘の、交互に語り継がれる言葉が、何とも粘着質で、正直途中で放棄しようかと思うほど私には合いませんでした。


著者の作品は概して、何気なく見過ごしていけば難なく過ぎる心の深遠を更に深く掘り下げてテーマを立てるという傾向があり、重苦しさにもう読まない、と思いながら、また懲りずに手に取るというところが魅力なんでしょうけど。


この作品もいろいろな場面に小さな仕掛けがあり、最後にそれらが繋がるという形態でしたが、率直に言えば、著者ご自身がこの「母性」というテーマに酔いすぎている、と思わせる、そんな作品でした。

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