
ラディッシュをいたずら書きしてみました
私は何でもシンプルが好き・・ということにしみじみ最近気づいています。
書店で本を購入する折は必ず「カバーも袋もいりません」と伝えます。
ほんとうはレシートももらいたくないのですが、あとであらぬ疑いをかけられてもいけないので一応もらいます。
そういえば以前、ポシェットに家から文庫本を入れて本屋さんに入り、疑いをかけられたことがありましたっけ。
インターネットでの購入はそんな願いが届くすべもなく、amazonなどで本、その他を購入すると過剰包装のような形で届くのがとても苦手です。
特にamazonで本以外のものを購入すると、その何倍もの大きな箱に機械的な梱包形式で送られてくるのにいつも違和感があります。
靴を買って靴箱なしで、とお願いしたら形が崩れるので、と半ば強制的に入れられたこともあり、世の中は過剰包装イコール丁寧的な考えに溢れているような。
シンプル嵩じて過剰に自分を飾っても中身のお粗末さがより透いて見えるような気がしておしゃれも苦手、お化粧もなし、装飾品もほとんど身につけません。
ずっと前ビーズアクセサリを大量に創っていた時期があり、今でも押入れに眠っていますが、さすがに数点はと思い、すぐ着けられるように壁に掛けているので、最近はときどきネックレスをすることもありですが、みんなが珍しがるほど。
亡くなった母はおしゃれにとても関心が深く、元気だったときはデパートの馴染みのお店で私や女孫の服を見繕って買うのを楽しみとしていましたが、私がほとんど受けつけなかったのでどんなに悲しかったかと母の心情を振り返るとき、後悔でいっぱいになります。
千の風になりてわれを護るとふ母なる風かカーテン揺るる
若さゆえとはいえもっともっと寄り添って過ごすべきだったと戻らぬ過去を悔やんでいます。

「出会い頭の本、酒が進む本、人生最後の読書・・・・・・
「本」がなければ、きっと人生は味気なかった
ノンフィクション界の泰斗が、“人と本”への愛を綴った
自選エッセイ86本を一挙収録!!
読書の楽しさを知らずして、一生を終えるのはもったいない!」
ことのほかノンフィクションの分野が好きな私はいままでさまざまな作品を読んできましたが、本日ご紹介する後藤正治氏もすばらしいノンフィクションの書き手のお一人です。
その受賞暦を挙げてみると・・・
1985年『空白の軌跡―心臓移植に賭けた男たちー』で潮ノンフィクション賞
1990年『遠いリング』で講談社ノンフィクション賞
1995年『リターンマッチ』で大宅壮一ノンフィクション賞
2011年『清冽 詩人茨木のり子の肖像』で桑原武夫学芸賞
このブログでもある孤高の画家・石井一男さんの半生を描いた『奇蹟の画家』 、マラソンの有森裕子、競馬の福永洋一ら6名の生き様を描いたスポーツノンフィクション『奪われぬもの』 、生体肝移植において世界を先導する手術技術の進展に大きな原動力となった田中紘一教授を中心とする京大チームの歩みを追った『生体肝移植-京大チームの挑戦-』をご紹介していますのでよかったら読んでください。
さて本書に移ります。
「読書を取り巻く環境は移り変わっていくが、人が〈言葉〉を不要とすることはありえない。
人生のなかでだれも、切実に〈言葉〉を求める時がある・・・
読み手の内的な求めがあって書物はある。
普遍的な名著というものはなく、その人の、その時々における名著なのだろう」
極めて深い共感が得られる言葉です。
世の中に永遠不滅のものなど何もなく、私たちの心もそのときどきの環境の変化、あるいは経年によって少しずつ変化していきます。
人生の途上のある時点で切実に求めるもの-言葉を通してその求めるものを探す旅、それが読書であるといえるのではないでしょうか。
本の中で求めていた言葉と出逢ったときの歓びは対峙している現実の苦しみを一瞬でも解放してくれる魔法の力があります。
少なくとも私にとっては読書はこのようなもの。
本書にもさまざまにきらめく宝石のような言葉がありました。
1 ひと言の余韻(雲は少しずつ動いている―仲田明美;呼んでくれるものを待っている―石井一男 ほか)
2 書の解題(報道とは何か―『河北新報のいちばん長い日』;認識と選択―『抗がん剤だけは止めなさい』 ほか)
3 読書日記(ぶられ書店派;面白がる精神 ほか)
4 書を評す(確かな灯―『フランクル「夜と霧」への旅』;表現への希求―『ホームレス歌人のいた冬』ほか)
5 散歩道(戦争体験世代の遺言;不易なるもの ほか)
5章からなる本書はどれも充実した内容ですが、特に1章がきらめいています。
わが国で脳死移植が閉ざされていた長い時代の一時期にアメリカでの心臓移植を待ちながら死んでいった仲田明美さんとの出会いを描いた一文、『奇蹟の画家』として上梓された作品の主人公・石井一男さんとの邂逅を描いた一文、王貞治さんとの出会い、また現在よくない話題で医学界を揺るがしている神戸国際 フロンティアメディカルセンターの田中紘一氏が京大医学部移植外科教授だった時代、脳死肝移植を受けて命を与えられた乾麻理子さん、そして著者が大ファンという藤沢周平さんのこと-長女の遠藤展子さんとの鼎談を通して見えた人間・藤沢周平さんの姿を描いています。
「普通でいい。普通の人が一番えらいんだ」
そのほかNHKの「クローズアップ現代」のキャスター・国谷裕子さん、歌人・道浦母都子さん、登山家・山野井泰史さん、オノ・ヨーコさんなど。
それぞれの分野でこの人ありといわれる人々との出会いで生まれた美しい言葉の数々が胸に響きます。
傍に置いて時折開きたい作品のひとつに加わりました。
ぜひどうぞ!