VINのらんどくダイアリー

ご訪問ありがとうございます。 「一日一生」を銘にさまざまな人生を読書というツールを通して味わっていきたいと思っています。 響きこし言葉に貼れるさみどりの付箋そよぎて林となりぬ

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カテゴリ: 西村賢太

ここ2,3日やっと涼しくなりましたが、それまでの暑さといったら!

節電に向けての固い意志もどこへやら、お盆を挟んでエアコン漬けの毎日でした。


麺類大好きな夫は家にいるときのお昼は麺類と決めていて、最近は連日ソーメンが続いています。



体調がイマイチなので我慢して市販のめんつゆを利用していましたが、どうにも味が合わず肝心のソーメン自体もおいしくないので重い腰を上げて自家製のめんつゆを作りました。



めんつゆなんて本当はすぐ作れるのですが、我が家のリビングとキッチンの天井に張りついている感知器が異常な働き者でわずかなアルコールやみりんでも即座に反応してマンション中に鳴り響く警報が警備保障会社に繋がり、警備員の人が駆けつけて事情聴取の末、管理室のパネルでストップ操作するまで鳴り止まないので平身低頭という騒動をかなりの回数起こしていて恐怖症になっているのでたくさんの日本酒とみりんを使うめんつゆは恐くてキッチンでは作れないのです。



で、今回は玄関先にカセットコンロを置き、廊下側から扇風機で蒸発するアルコールを外に送りながら作りました^^;


今回も500mlペットボトルに2本作ったのでしばらく安心。   0321b299.jpg



市販のを使われているようでしたら簡単でおいしいので1度作ってみてください。


以下に大雑把な割合ですが記しておきます。


◆しょうゆ2:みりん1.5:酒1:だし1 に出し昆布を入れて煮立て沸騰する直前に鰹節をひとつかみ入れ沸騰したらガスを止めて2,3分置いてキッチンペーパーなどで漉してペットボトルなどに詰め替えて、食べるとき適当に冷水で割ります。



保存料も何も入っていませんが冷蔵庫でかなり長く保ちますし、そーめんつゆ以外にも煮物にも使用できておいしいのでお勧めです。





さて本日は西村賢太氏著『苦役列車』をご紹介します。


第144回芥川賞受賞作、『きことわ』の朝吹真理子さんとのダブル受賞でも話題になりましたね。


このブログでも『小銭をかぞえる』『暗渠の宿』のレビューをアップしていますのでよかったら読んでください。


過去に2度候補になり3度目の正直で射止めた芥川賞ですが、本人によれば川端康成賞の方に強い憧れを持っているそうです。



現在では珍しい破滅型私小説の書き手としての作品はどれもこれも半ノンフィクション的で著書と等身大の主人公の忸怩たる日常を描いています。



本書も例に漏れず、あちこちの作品でおなじみの内容が19歳の主人公・貫多のその日暮らしの日雇いの日々に初めてできた同世代の専門学校生との交流を中心に描かれています。



「僕もふだん誰とも話さないし、友達も一人もいない」という著者が貫多を遠して冷静にその理由を分析しながらも生来のこらえ性のない破滅的な性格ゆえに歯止めが効かない様子が仔細に描かれていておかしみを誘います。



23歳のとき大正時代の無名の作家・藤沢清造の作品に出合い「僕よりダメな人がいて、それで救われた」という著者は受賞に際し「自分よりダメなやつがいるんだなという気持ちになってもらえれば書いたかいがある。それで僕も辛うじて社会にいれる資格が首の皮一枚、細い線でつながっているのかなと思う」と述べておられます。



「友もなく、女もなく、一杯のコップ酒を心の慰めに、その日暮らしの港湾労働で生計を立てている十九歳の貫多。
或る日彼の生活に変化が訪れたが……。
こんな生活とも云えぬような生活は、一体いつまで続くのであろうか――。
青春に渦巻く孤独と窮乏、労働と痛飲、
そして怨嗟と因業を渾身の筆で描き尽くす、平成の私小説家の新境地」



本書が芥川賞を受賞したことには賛否両論があり正直私も頭には疑問符が並んでいて両手を広げて受け入れる作品とは言い難く、逆にあまり積極的に手を伸ばしたくない部類の作品ですが、読み出すと止まらない不思議な力をもっているんですよね。



作品全体にどれくらい負の自分を表わす言葉が出てくるか・・・少し拾ってみただけで出るわ出るわおもしろいほど。

「根が人一倍見栄坊にできている」
「自暴自棄な生来の素行の悪さ」
「学業の成績のとびぬけた劣等ぶり」
「根が子供の頃からたかり、ゆすり体質にできている」
「根が意志薄弱にできてて目先の慾にくらみやすい上、そのときどきの環境にも滅法流され易い」
「根が全くの骨惜しみにできている」
「生来の陰鬱な気質に加え、自ら人との間に垣根を作りたがる傾向」
「根が案外の寂しがり」
「自身の並外れた劣等感より生じ来るところの、浅ましい妬みやそねみに絶えず自我を侵蝕されながら・・・」



これら自己分析確かな性格が災いしてか初めてできた友人との関係が崩壊に向かう様子が綿々と綴られているのが本書。


他作品ではその崩壊の対象が女だったり仕事だったりという徹底的なダメんズストーリーですが読了してしまうんですよね・・・感想にもならないレビューでした。

生きているということ
いま生きているということ
それはのどがかわくということ
木もれ陽がまぶしいということ
ふっと或るメロディを思い出すということ
くしゃみをすること
あなたと手をつなぐこと

生きているということ
いま生きているということ
それはミニスカート
それはプラネタリウム
それはヨハン・シュトラウス
それはピカソ
それはアルプス
すべての美しいものに出会うということ
そして
かくされた悪を注意深くこばむこと

生きているということ
いま生きているということ
泣けるということ
笑えるということ
怒れるということ
自由ということ

生きているということ
いま生きているということ
いま遠くで犬が吠えるということ
いま地球が廻っているということ
いまどこかで産声があがるということ
いまどこかで兵士が傷つくということ
いまぶらんこがゆれているということ
いまいまが過ぎてゆくこと

生きているということ
いま生きているということ
鳥ははばたくということ
海はとどろくということ
かたつむりははうということ
人は愛するということ
あなたの手のぬくみ
いのちということ
 (谷川俊太郎氏:「生きる」)

こんな当たり前の日常を奪われた被災地の人々のことを思うと胸が塞がれる毎日です。

特に放射能汚染地区に家がある人々はご自分の自宅にゆっくり物を取りに帰ることさえ許可がいるそうです。

禁を犯したら罰金。


抗議に対しては人の命を守るためというりっぱな名目で従わざるを得ない状況下に置かれていますが、この詩に書かれているような自由を奪われた生活はどんなにつらいものでしょう。


原発凍結に踏み切ったドイツやスイスに続いてイタリアも凍結法案が可決されたそうです。


確固たる代案がない状態で安易に声を上げられないことは承知していますが、日本もこれを厳しい教訓として粛然とした姿勢で前に進んでほしいというのが願いです。




さて今回は西村賢太氏著『暗渠の宿』をご紹介します。

第29回野間文芸新人賞受賞作。



今年早々第144回芥川賞を受賞され特異な経歴で話題になった西村賢太氏のデビュー当時の作品が本書、2004年「文学界」に掲載された「けがれなき酒のへど」と2006年「新潮」に掲載された「暗渠の宿」の2篇が収録されています。



このブログでも先日著者の別作品『小銭をかぞえる』のレビューをアップしていますので著者の経歴とともに見ていただけたらと思います。
         『小銭をかぞえる』はこちら → 



「しみじみ女が欲しい、ごく普通の恋人が欲しい――。
切望して手酷く裏切られ、ついに手に入れた女と念願の同棲を始めるが……。
貧困に喘ぎ、酒に溺れ、嫉妬に狂って暴力をふるい、大正期の作家藤澤清造に熱烈に傾倒する男の、過剰な欲望渦巻く過激な恋愛譚。
いま最も注目される作家のデビュー作『けがれなき酒のへど』を併録」



何の飾りもなく徹底的に心の負の部分を書き綴った露悪趣味という言葉ぴったりの内容、見方を変えれば愚直すぎるほどの率直さで己の心の動きを綴った私小説。



1冊でやめようと思いながらついつい手に取ってしまう不思議な吸引力があるんですよね。



その内容も他作品の評などを読むとすべて3つの柱 ――女性との普通の恋愛に憧れながら願いが叶えられず風俗に通う嘆きの物語と、思慕に似た敬愛の情を抱く明治時代の小説家・故藤澤清造に関する話とやっとこぎつけた女との同棲生活の悲惨な内容の話 ―― で構成されています。



藤澤清造に対する常軌を逸したような純粋な傾倒と女に対する歪んだ傾倒という両極端なアンバランスの狭間で綱渡りのような危なっかしい日常の揺れ動く気持ちの吐露は共感を呼ぶどころか目を背けたくなるほどですが絶妙なバランスをとって成り立っているところがなんともすごいと言えます。



表題作に使われている「暗渠」は私にとって聞きなれない言葉だったので夫に聞いてみると
「地下に設けられていて外からは見えない水溝」だそうです。


なるほど、作品の内容にぴったりのいいネーミング。



夢にまでみた一般の女性との同棲生活を手に入れた結果大切に扱うと思いきや、通常の人間関係を構築できないという生来の捻じれた性格が災いして相手を打ちのめすまで暴言を吐いたり、モノを壊したりの暴挙やむがたく、やがては破綻を感じさせる結末で終わるのも前作と同じ。



ところどころに挟み込まれる藤澤清造への異常な執着というか尊敬心が同棲生活における金銭の基盤をも破壊するほどの傾倒ぶりには驚きを通り越してお見事という感じです。



平成の破滅型私小説作家といわれる所以が作品のそこここに漂い、それは常識人の枠を大きく超えてドロドロ状態で浮遊しているというきわめてユニークな雰囲気。


なのに手を取らずにはいられないのはどういうわけか自分でも分析不能ですが、また他作品が目につけば読んでみようと思う吸引力のある作家さんです。

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九州在住のブログ友から桜の開花宣言が届けられました。


「東北の桜 それでも春を待ち」

朝日川柳に掲載されていた川柳です。


同じく先日の天声人語に玄侑宗久氏の桜に関する一文が紹介されていました。

「非日常の時間が、束の間の開花に伴って訪れる。
それは死にも似て、職業も地位も年齢もいっさい関係のない世界である。
日本人は、ときおりそうして非日常の祭りをすることで日常をほぐし、エネルギーを充填して日常に戻ってくる」


桜にはこのように不思議な力がありますが、これほど未曾有の災害や人災に見舞われた被災者にとってどれほどの慰めになるのでしょう。


いやおうなく大切な人との別離を一瞬で余儀なくされた人々にとってはより深い悲しみや絶望を誘うような気もします。


「君帰らず何処の花を見にいたか」 

桜の季節に早世した友に問うた夏目漱石のこの句のほうが気持ちに寄り添うのではないでしょうか。



日ごとに数を増す死者の方々のご冥福と遺された方々にどうか生きるエネルギーをお与えくださいと祈るばかりです。



写真の色紙は先日我が家に来てくださった知人の趣味が書道と知り、無理矢理揮毫していただいたものです。


期せずして震災で被災された方々にぴったりの内容で勇気づけられるのでアップしてみました。

何とも味がある筆と達磨ではありませんか。





さて本日は西村賢太氏著『小銭をかぞえる』をご紹介したいと思います。


今年芥川賞を受賞されたユニークな経歴の方として有名になられましたね。

2006年『どうで死ぬ身の一踊り』で第134回芥川賞&第19回三島由紀夫賞候補
2006年『一夜』で第32回川端康成文学賞候補
2007年『暗渠の宿』で第29回野間文芸新人賞受賞
2008年『小銭をかぞえる』で第138回芥川賞候補
2011年『苦役列車』で第144回芥川賞受賞


中卒、逮捕歴あり、風俗大好き、友だちゼロプラス個性的な風貌の著者ですが、こうして歴を見ると堂々たるもの。


23歳のとき大正時代の無名破滅型作家・藤澤清造氏の作品に出合い、「僕よりダメな人がいて、それで救われた」と私淑、以来破滅的な生を描く私小説にこだわり続けてきたと語っていらっしゃいます。


「自分よりダメなやつがいるんだなという気持ちになってもらえれば書いたかいがある。それで僕も辛うじて社会にいれる資格が首の皮一枚、細い線でつながっているのかなと思う」



藤澤清造氏に対する思い入れは半端ではなく没後弟子を自称し、「藤澤清造全集」を自ら編集刊行することをライフワークに決め、前述の文学賞の賞金はすべて清造全集の資金に充てるというほどの傾倒ぶりです。


その他、Wikiによると清造の墓標をもらい受けて自宅に保存している他、清造の菩提寺である石川県の西光寺に月命日の墓参を欠かさず、自ら西光寺に申し入れて「清造忌」を復活させた他、清造の墓の隣に自身の生前墓を建てているそうです。



本書『小銭をかぞえる』でもその常識外の傾倒ぶりが至る所で出てきます。


「金欠、妄想、愛憎、暴力。
救いようもない最底辺男の壮絶な魂の彷徨は、悲惨を通り越し爆笑を誘う。
新芥川賞作家の傑作私小説2篇」


◆醜い容姿、しつこい閨事、貧乏、中卒、多汗症に加え生来の短気、弱い者苛めを好むという「私」がようやく掴んだ恋人との同棲生活の波乱の日常の末の悲惨な結末を描いた「焼却炉行き赤ん坊」

◆「藤澤清造全集」の自費刊行の印刷代金の支払いを巡っての同棲相手の「女」との掛け合いの結果破滅へ突き進む過程を描いた「小銭をかぞえる」


2篇はどちらも生来の短気、自己中心などが災いしてやっと掴んだ「女」との関係が破綻する予感を感じさせる結末で幕を閉じていて、女側からみると破綻が当然という「私」の究極のダメ男ぶりがこれでもかと描かれていて共感どころではない内容ですが、そんなダメ男を証明するかのような羅列の文章には妙なしめっぽさや言い訳がましさがなく、短気の果ての暴力的行為もただ事象のみが並べられている点が唯一の救いといえばいえなくもないでしょう。


他作品も読んでみたいと思わせる作家さんではありませんが、文章力は只者ではないことをうかがわせる魅力があり、受賞に繋がったのが理解できます。


野間文芸新人賞を受賞した『暗渠の宿』が手元にあるので今一度読もうとは思っていますが。

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