
今日は町の本屋の話を少し。
20年ほど前までは地方都市にもいくつもの本屋がありました。
本が好きだった亡母にはお気に入りの本屋があって、女店主の方と親しくなってレジの奥の丸椅子に座ってお茶を飲みながら世間話をしていた光景が今でも鮮明に目に浮かびます。
わたしが大学生のとき、毎月一冊その本屋から買ってくれた漱石全集12巻は
今も唯一の本の宝として本棚に並んでいます。
自分のアルバイトのお金で買った世界文學全集とか日本文学全集はとっくに処分してしまいましたが。
そのお馴染みだった故郷の本屋も今は消えてしまった・・・。
大型書店の進出に巻き込まれず生き残っている本屋はどれくらいあるのでしょうか。
そして時は流れて・・・今ではamazonを代表する巨大なネット書店がそれに代ろうとしています。
そんな中、大阪の売り場13坪の小さな本屋「隆祥館書店」が話題になっています。
店主は二村知子さん。
メディアで取り上げられたのでご存じの方も多いと思います。
amazonや巨大な大型書店の向こうを張って、日本でトップクラスの販売数を記録する本が
何冊もあるという。
惚れ込んだ作家さんに熱意を伝えるとそれに応えて多くの作家さんが来店して
読者との縁を結んでくれるという。
その二村さんが始めたという「1万円選書」。
20の質問をして一人ひとりに合った本を選んで送るという試み。
娘がわたしへのプレゼントにネットで詳しく質問に答え、申し込みをしてくれたそうです。
半年以上前のことだそう。
以後待てど返信が来ない・・・きっと超多忙に紛れて忘れてしまったんだろうな・・・と娘。
もし多すぎて埋もれていた申し込みを見つけてくれたら嬉しいな。
どんな本を選んでくれるのか興味津々です。
「東京中央銀行大阪西支店の融資課長・半沢直樹のもとに、とある案件が持ち込まれる。
大手IT企業ジャッカルが、業績低迷中の美術系出版舎・仙波工藝社を買収したいというのだ。
大阪営業本部による強引な買収工作に抵抗する半沢だったが、やがて背後にひそむ秘密の存在に気づく。
有名な絵に隠された「謎」を解いたとき、半沢がたどりついた驚愕の真実とは―」(「BOOK」データベースより)
「半沢直樹」シリーズ6年ぶりの待望の最新作。
2004年『オレたちバブル入行組』
2008年『オレたち花のバブル組』
2012年『ロスジェネの逆襲』
2014年『銀翼のイカロス』
2020年『アルルカンと道化師』
著者の作品はすべて網羅していますが、やはりいちばん血沸き肉躍るのが「半沢直樹」シリーズ!
わたしは観ていませんがTVドラマでも大人気を博していたようですね。
「基本は性善説。だがやられたら倍返しだ」
わたしたちも含め拍手喝采する多くの人々は、社会の一員として組織に関わっている以上
半沢直樹になりたいけれど後先を考えると勇気が出ない・・・
そんなジレンマから応援という形になっているのではないでしょうか。
同じ勧善懲悪でも「水戸黄門」と違うところは「半沢直樹」が上級国民ではなく
一介のサラリーマンであるということ。
さて本書、時系列でいうとシリーズ第1作『オレたちバブル入行組』の前日譚に当たる作品、
「半沢直樹」シリーズファンならお馴染みの浅野支店長や小木曽、
そしてまだ頭取になる前の中野渡の名前もちらと出てきてファンサービスも満点。
半沢直樹が東京中央銀行の大阪西支店の融資課長として赴任して日が浅い頃に起こった
美術出版社の買収案件に端を発する物語。
TVでもおなじみの大和田に相当する悪代官役は業務総括部長の宝田。
今回は宝田が銀行内部に強引な根回しをして進めようとしている
M&A(企業売買)計画が軸になって物語が動いていきます。
その買収計画に絡んで登場するのが元ZOZOの社長・前澤友作氏を彷彿とさせる
新進IT企業ジャッカルの創業者・田沼時矢。
アートコレクターとしても有名な前澤氏がzozo社長時代にバスキアの絵を
123億円で落札したことは一時話題になりましたが、本書に登場する田沼時矢も
アートコレクターとして物語の核になるある画家の絵を集めているという設定。
その田沼時矢が業績低迷中の小さな美術系出版社・仙波工藝社を
法外な値を付けてまで買収したがっている真の理由は?
本書はその謎解きを通して銀行員・半沢の躍動が光ります。
タイトルになっている「アルルカンと道化師」は
ひとりの無名の画家が世界に認められるきっかけとなった作品。
〈アルルカン〉や〈ピエロ〉はピカソやセザンヌ、ルオーなどが好んで取り上げたモチーフのひとつ。
その魅力的なモチーフを取り上げた2人の画家の数奇な物語ともいえるでしょう。
これ以上は本を手に取ってのお楽しみということで記しませんが、
興味ある方はぜひどうぞ!
おすすめです!